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古代オリエント史と私

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著者:三笠宮崇仁、出版社:学生社
 著者は昭和天皇の弟です。第二次大戦後は大学に入り、古代オリエント史を研究する学者になり、NHKに出演して連続番組でオリエント史を解説したこともあります。
 戦中(1943年)に、中国・南京の総司令部に行き、そこで日本軍の残虐行為を知らされました。陸士時代の同期生の青年将校が、兵隊の胆力を養成するには生きた捕虜を銃剣で突きさせるに限る、そう語ったそうです。また、例の七三一部隊に所属していた高級軍医は、国際連盟から派遣されたリットン卿の一行にコレラ菌を付けた果物を出したが成功しなかったとも語ったというのです。これらの言葉は、まさに氷山の一角に過ぎないというコメントがついて紹介されています。皇族の高級参謀にも隠せないほど、日本軍の残虐行為はひどい、目に余るものがあった、ということです。暴虐の日本軍と化した事実を著者は率直に認めています。
 皇族をかつぐのは絶対にやめてほしいと著者は訴えています。皇族の肩書を利用したり、儀礼的なロボットにしてしまったから、第二次大戦が起きた。このような自分の考えを述べています。
 日本国憲法の制定直後(1949年)、平和主義について、将来、国際関係の仲間入りをするためには、日本は真に平和を愛し、絶対に侵略しないという表裏一致した誠心のこもった言動をして、もっと世界の信頼を回復しなければならない。そう強調しています。この点は、今の本当にあてはまると、まさにそうだなあと、つくづく共感します。
 イラクへの自衛隊派兵はアメリカの侵略にあとから手を貸すのとまったく同じです。
 ところで、この本を読んで、いい言葉に出会いました。
 「暇があったら勉強しよう」と言うな、たぶん、あなたがたには暇は決してこないだろうから。これはユダヤのヒッレルという律法学者の言葉です。そうなんです。時間はつくり出すものなんです。まったく同感です。

虫をめぐるデジタルな冒険

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著者:小檜山賢二、出版社:岩波書店
 すごーい写真のオンパレードです。この世の中に、こんな生き物がいたのか。つくづく、この世の奥は深い。そう実感させられます。
 つやつやと輝き、ふさふさと羊毛のようにたおやかな厚手のコートをはおった貴婦人の装いその眼はトンボの複眼。見逃すところはない。触覚が長く伸び、身近なものをすべて感じとる。
 こくんぞ虫、もといコクゾウムシは米びつの害虫として有名です。えっ、そんなの知らない。そうでしょうね。害虫が穀物倉庫に生存するのは実は難しいこと。そんな指摘がなされています。なるほど、なるほど。いかにも人為的な環境ですから・・・。
 この本に紹介されているゾウムシの写真を見ると、人間が万物の長なんて偉ぶっているのが恥ずかしくなります。
 18世紀にリンネが分類したとき、昆虫は2000種もありませんでした。でも、その後の100年で昆虫は10万種となり、今は100万種です。ところが、アマゾンの熱帯雨林に2000万種、東南アジアに8000万種の生物がいると推定されているというのです。昆虫は3000〜5000万種はいるだろうといいます。蝶とハエとガは15万種、蜂が14万種というのに比べても、昆虫は圧倒的に多いのです。ゾウムシが属する昆虫は40万種。これは、自然界でもっとも成功したグループとされています。この本は、まさに、そのゾウムシをデジタル写真で微細にとらえたのです。その絶妙な姿かたちには、息をのむばかり。ただただひたすら圧倒されてしまいます。
 この本は、単にデジタルカメラでとった写真をのせたというものではありません。マイクロ・フォトコラージュといって、ミクロの映像をデジカメで合成していく作業についても紹介しています。実は、このあたりになると、私には、まったく理解できないところではあります。自然界の奥がいかに深いかを実感させてくれる写真が満載です。ぜひ、あなたも手にとって見てください。

時代劇のウソ・ホント

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著者:笹間良彦、出版社:遊子館
 山田洋次監督の最新時代劇映画「隠し剣、鬼の爪」に東北の海坂藩が、幕末期のことですが、洋式訓練をするとき、武士に左右の手を大きく振って歩調をそろえて歩かせるのに苦労しているシーンが出てきて、笑ってしまいました。
 この本には、江戸時代の武士や庶民は決して今のように左右の手を大きく振っては歩かなかったことが明らかにされています。左右の手を交互に大きく振って歩くようになったのは、明治以降の洋式軍隊や文明開化で普及した西洋風の歩き方、それに小学校の体育教育の歩き方が一般に普及してからのことなのです。それまでは、武士はいざというとき、すぐに刀を抜けるよう手はあまり動かさず、また歩き方も静かに交互に移す感じでした。映画では、武士はすり足で歩いていました。なるほど、ですね。
 この本には、意外な常識のまちがいがいくつも絵入りで指摘されていて、そうだったのかと思うところがたくさんあります。三つ指をついて挨拶するのも、武士の護身の心得だったとか、「えい、えい、おう」のかけ声も、「えい、えい」と呼びかけて「おう」とこたえるのが正しいやり方だとか、浪人と浪士は違うもの、いえぬし(家主)とやぬし(家主)は、同じ漢字を書いても違うとか、札付き(ふだつき)は勘当の予備軍だったとか、おおいに勉強になりました。

降る影、待つ光

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著者:熊谷秀夫、出版社:キネマ旬報社
 これまで150本以上の映画の照明を手がけてきた超ベテラン照明技師にインタビューした内容が本にまとまっています。映画の照明って、こんなに苦労し、工夫してるのか・・・、映画好きの私は感心しながら読みました。
 カラーだと白黒の1.5倍から2倍ほどのライトを使う。長谷川一夫のアップを撮るときには、ライトが8台必要だった。きれいにとるためだ。夜中になると俳優が急にやつれてくるから、撮らないようにする。お客をがっかりさせてはいけない。
 吉永小百合の顔に影が出ることは一切ない。顔というのは、どこからライティングしてもいいわけじゃなくて、その人を撮るのにいい角度というのがある。「あたしは右の方がいいからよろしくね」なんて言う人は、俳優としてはあまり大したことはない。吉永小百合はそんなことを言わない。言うより先に上手に坐る。言わなくって技術パートがちゃんと見抜いている。だから、渡辺えり子が「私も吉永さんのように当ててほしい」と頼んだ。そんなエピソードも紹介されています。
 リアルな光の中に、嘘の光がある。映画にはきれいに写さなくてはいけないことがあるから、嘘のライトが入ってくる。しかし、嘘の光が真実の光に勝てればいいのであって、その嘘をいかに、どこでつくか、ということが肝心なのだ。それは理屈ではない。映画には、嘘を重ねてリアルをつくるということがあるから・・・。ナルホド、ナルホド。

旅行者の朝食

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著者:米原万里、出版社:文春文庫
 著者初のグルメ・エッセイ集ということで、37本のロシアの小咄エッセイが満載です。
 古代ローマ人の宴席では、まず最初に卵が出たそうです。ただし、生のまま呑み込みました。ルネサンス期のイタリアも最初は卵で最後はフルーツでした。ただし、この卵はゆで卵。もっとも、現代イタリア人は生たまごだけでなく、ほとんど卵料理を食べないそうです。イタリアに行ったことのない私は知りませんが、本当でしょうか?
 アレキサンダー大王は、大遠征の最中、兵士たちに「キャベツを食え。キャベツは身体にいい」と言ってまわったとのこと。ローマでもキャベツは大の人気食でした。豚の脂身やロースハムとつけあわせて食べるのが好まれたそうですから、今と変わりません。
 ところで、署名の「旅行者の朝食」とは何でしょう?
 この本を読むと、ロシア(もちろん、ソ連時代です)の食生活の貧しさに関わるものだったことが分かります。興味があったら、この本を読んでみて下さい。

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