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大人の食育

カテゴリー:未分類

著者:服部幸應、出版社:NHK出版
 本来、日本人は8000個ほどの味蕾をもっているのに、そのほとんどがきちんと機能しなくなっている。味覚障害がふえている。濃度を高くしないと味を感じない人が多くなっている。それはインスタント食品などの調理済加工食品を小さいころから食べ続けていることが原因になっている。インスタント食品やスナックなどの加工食品には苦みの強い防腐剤などが多く入っているので、その苦みを消そうとして調味料を大量につかうため、微妙にまずくなる。それがひとの味覚を麻痺させている。
 味蕾はリキッド状のものでないと感知しない。食べ物を口に入れてよくかみ、唾液とまぜて初めて味蕾は味を感じる。舌は、先よりも奥の方がセンサーがより密集している。味は舌で65%、上あごで10%、のどで25%感じる。ビールはのどごしという。たしかに、舌の真ん中からのどまでが、味の70%を感じる。
 味覚の基本は8歳までに決まる。なるほど、ですね。マックやケンタなど、ごまかしの味に小さいころから慣らされてしまったら、食べる前からジャブジャブとソースをかけてしか食べられない。なんでもかんでもマヨネーズをたっぷりかけてしまうという人間ができあがってしまうのですよね。可哀想です。
 ワインのテイスティング。アロマをまず鼻でかぎとります。それまで閉じこめられていたぶどう品種の香りです。次ぎにグラスをそっとクルクル揺らしてみます。これをスワーリングといいます。立ってきた香りがブーケです。次ぎにワインを口に含みます。含んだとき、軽く空気を吸って、鼻からフワッと出します。そのとき感じる香りがパルファンです。この3段階がワインのテイスティングです。なるほど、今度これを覚えてやってみることにしましょう。
 フランスの3つ星レストランに友人のため予約しておいたところ、その友人たち(5人分)が無断で行かなかったとき、パリまでトンボ帰りでお詫びに行ったという話が紹介されています。それほど、友情を大切にするのかとびっくりしてしまいました。
 鉄板焼きのステーキ店は、実は、美味しい食べ方ではないそうです。むしろ、3ミリくらいに肉を削ぎ切りして、表面をカリッと焼いて食べる方が香りも高く、味も出て美味しいということです。厚い肉を鉄板で焼くと、中の血液や水分によって肉が蒸されて、長く焼くと、それだけ肉はまずくなるといいます。
 へー、そうなのか、知らなかった・・・。さすが料理学校の校長先生だけあります。やっぱり、美味しいものをおいしくいただきたいものです。ファーストフードとか、まがいものはいやですよね。

怪帝ナポレオン?世

カテゴリー:未分類

著者:鹿島 茂、出版社:講談社
 すべての世界史的な大事件や大人物は二度あらわれる。一度目は悲劇として、二度目は茶番として。ヘーゲルはこう述べた。これはマルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」の一節です。私にもそのイメージは強烈でした。私と同世代の著者によるナポレオン3世を復権させようと試みられた本です。
 なるほど、その目的はかなり達せられているように思います。でも、結局のところ本当は茶番だったのではないのか。そういう思いも拭いきれないものがありました。466頁もの大部な本です。ナポレオン3世の生い立ちから、その限界まで、かなりよく分かる本となっています。
 ルイ・ナポレオンは、若いころ牢獄でサン・シモンやプルードンを読み耽っていたというのです。その影響はずっと続いていました。
 労働者階級は、なにものも所有していない。なんとしても、これを持てる者にかえなければならない。労働者階級は、現在、組織もなければ連帯もなく、権利もなければ未来もない。彼らに権利と未来を与え、協同と教育と規律によって、彼らを立ち直らせなければならない。
 これが「共産党宣言」が書かれる4年前のルイ・ナポレオンの言葉だというのには腰が抜けるほど驚いてしまいました。ルイ・ナポレオンが大統領に当選したのは、フランスの田舎に住む人々の大半が読み書きができず、ただ耳から入った候補者の名前が親しみのあるものかどうかだけで選ばれたということによる。これにもびっくりします。まるで今日のイメージ選挙と同じです。
 ルイ・ナポレオンの反対派は普通選挙の廃止を狙った。直接的にそれをしたのでは民衆が暴動を起こすので、骨抜きにする方法を考え出した。左翼的な都市部の労働者からのみ選挙権を取り上げるために、有権者の資格を定住期間3年以上の者に限るとした。都市部の労働者の多くは出稼ぎの季節労働者の多くは出稼ぎの季節労働者だったから、これによって1000万人の有権者のうち300万人が参政権を失った。パリでは有権者の63%が資格をなくした。
 でも、今の日本でも同じことが行われましたよね。小選挙区制です。お金のかからない選挙になるという「美名」で(もちろん、真っ赤な嘘です)小選挙区制になって、国民のさまざまな意見が国会に反映するのが本当に難しくなりました。今では、中選挙区制に戻すべきだというのが、良識ある人の常識になっているように思います・・・。
 ルイ・ナポレオンはナポレオン3世になってから、労働者階級に向けた政策を実施していきました。労働者共同住宅をつくり、親が授業料を支払えない子どもへの無償教育の保障、困窮者への裁判費用の免除と官選弁護人の選任、などです。
 オスマンと組んでパリの大改造にも着手し、断行しました。今のパリをつくりあげたのです。しかし、晩年のナポレオン3世はドイツとの戦争にみじめに破れ、ドイツの捕虜になってしまいました。ここらあたりの記述になると著者の弁論は冴えません。やっぱり茶番だったな、そう思ってしまいました。
 マルクスの本を久しぶりに読み返してみたいと思ったことです。

洗脳選挙

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著者:三浦博史、出版社:光文社ペーパーバックス
 イメージ選挙を演出して何度も勝った実績を誇る選挙プランナーによる選挙必勝のマニュアル本です。選挙の裏側って、こんなことにもお金が動くのかと思うと嫌になりますが、事実から目をそむけるわけにもいきません。
 選んだつもりが、選ばされていた。サブ・タイトルにあるとおり、徹底して候補者について虚像のイメージを有権者に売りこみ、投票に駆りたてます。その手の内を知れば知るほど、有権者はもっと賢くならなければいけないんだな・・・と、つくづく思います。
 人の印象は目からの情報によってほとんど決まってしまう。人の印象を決めるのは、服装や身体の動きといった目からの情報が55%、声の調子や話し方が38%、話の中身が7%である。要するに、演説内容よりも外見が大切なのだ。だから、候補者には歩き方まで直してもらう必要がある。候補者は自分の十八番の演説をすればいい。街頭演説は、とにかく十八番を絶対に歌い続けること。演説の中身は関係ない。
 マニフェスト(政策)パンフは売れなくてもよい。売る姿勢が大切。
 選挙用ポスターの写真を選ぶときには候補者の要望は無視する。カメラマンも、いきなりポーズをとらせるようなのはダメ。はじめに30分ほど候補者と雑談し、候補者のいろいろな顔を客観的に見て、自然な顔を頭に焼きつける。そのイメージした笑顔がとれるようにシャッターを押す。これが本物のプロだ。
 選挙カーは、いつものウグイス嬢にまかせるより、男、つまりカラスボーイの素人っぽい熱意でやる方が今では受ける。
 選挙では、普段やっていないことは絶対にやってはいけない。奇をてらったパフォーマンスは、一時的に話題になっても、全体としては候補者にとってマイナスでしかない。
 アメリカの大統領選挙の投票日の3日前にビンラディンのテープが全米でテレビ放映されました。このビデオは、事前に押収していたテープを使ったブッシュ陣営の「最終兵器」だと著者は解説しています。ビンラディン・サプライズの効果でブッシュは大統領選挙に勝てたというわけです。これが本当なら、誤った世論操作もいいとこですよね。それでも、権力には「寛大な」アメリカでは、ほとんど問題になっていません。アメリカ国民は、それほどみな飼い慣らされてしまったのでしょうか・・・。
 それにしても、選挙プランナーがこんなにも活躍できるなんて、馬鹿げています。日本の有権者はもっと目を覚ます必要がある、しみじみそう思ったことです。

ストレスとうつ

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著者:徳永雄一郎、出版社:西日本新聞社
 日本人の自殺者は1978年から1997年までは年間2万人から2万5000人でした。ところが、1998年から年間3万人台になって、今日に至っています。男女比では男が72.5%。50代が25%、40代が16%、30代が13%です。働き盛りの男性の自殺が増えているのです。たしかに、弁護士である私も自殺のケースを扱うことがしばしばです。
 うつ病は人口の5%、軽いうつ状態の人は15%いるとみられています。年間35万人がうつ病によって退職し、軽いうつ状態を含めると105万人が退職していると想像されます。現在の高校中退者は8万2000人。高校生の5%がうつ状態に陥っているとすると、4200人がうつ状態で退学している可能性があります。
 著者は、うつ病を病気ととらえず、1人の人間の生き方が壁にぶつかったと考えて診察していると言います。有明海に面した「海の病棟」というストレス専門の病棟をもうけているのが全国的にも有名です。 私も見学したことがありますが、精神科の閉鎖病棟とはまったく違って、明るいホテルのような病棟でした。有明海の潮の満ち引きを窓からゆったり眺めることによって、自然の変化するリズムをじっくり身体で感じることができるのです。朝、のぼってきた太陽の光を全身に浴びて、自分が地球の生き物のひとつであることを実感することができます。そのことによって、それまで自分こそ社会の中心だと思って張りつめていた気持ちがふっと解き放たれていくのです。
 実は著者は、私の中学校のときのクラスメートなのです。おだやかな人柄です。うちの人間ドッグに入りに来いよ。頭のなかまで診てあげるから、と親切な言葉をかけられました。とんでもない。身震いして、ありがたくお断りしました。脳の異常がついに発見された、なんてなりたくありませんからね・・・。あなただったら、どうしますか。診てもらいますか。入りたいなら、紹介しますよ・・・。

先物地獄のワナを解き明かす

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著者:宮崎耕一、出版社:民事法研究会
 著者は法政大学経済学部教授。商品先物取引で大損をした人が知人にいて、その裁判に関わったことから、先物取引の実態を知り、このような本を書くようになったという。
 私は弁護士になってまもなくから先物取引被害の相談を受け、これまで20年以上にわたって、裁判をし、交渉をしてきた。今も進行中の事件が片手ほどある。
 先物取引は予測のつかない相場の世界。でも、間違いなく言えることは、長く取引をしていたら、確実に損をしてしまうということ。客は殺されもするし、自然死(自滅)もする。だから、なんでこんな客殺し商法が政府公認で存在しうるのか、不思議でならない。といっても、先物取引の会社に言わせると、証券会社もみんな同じ事をしている。なぜ、うちだけが目の敵にされなければいけないのか。年寄りが死蔵している金融資産を取引社会にひっぱり上げることで社会に大きく貢献しているのに・・・。
 うーん、そう言われたら、そうなんだろう・・・。でも、悪いものは悪いこと。巧妙なアプローチで近づき、甘言に乗せて大金をだましとる商法は許されないと思う。大勢の人に読んでほしい本だ。

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