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宮澤喜一回顧録

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著者:御厨 貴、出版社:岩波書店
 自民党の元首相が何を言うのか、あまり期待もせずに読みはじめましたが、意外や意外、戦前から戦後、そして現代政治について、かなり思い切って裏面も紹介しながら語っていますので、面白く読みとおしました。たとえば、宮澤元首相は憲法9条を変える必要はないと言うのです。これには私も、まったく同感です。
 現に自衛隊が50年いる。それは事実だ。でも、だからといって条文そのものを変える必要はないだろう。いま誰も自衛隊をやめろと言っているわけではないし、そうかと言って、わが国は外国で武力行使をしてはいけないということは多くの国民が承認していることなのだから、なにも憲法9条2項を変えなければならないことはないのではないか。9条を中心に改正することは入り用のないことだ。
 同じく、宮澤元首相はイラクへの自衛隊の派遣についても批判的です。
 イラク戦争は、かつてのアメリカではありえなかった先制攻撃をしかけたもの。ところが、大量破壊兵器はなかったし、9.11とイラクに直接の関係のなかったことが明確になった。そして国連の安保理事会で多数の賛成を得ることなく、ブッシュ政権が先制攻撃をかけた。このような問題のあるブッシュに対して、小泉首相は少し踏みこみすぎたのではないか。ブッシュはネオコンにひっぱられている。そこに、イギリスのブレアほどではないが、小泉首相がコミットしていることに少し不安をもつ。日米安保条約はたしかにある。しかし、だからといってここまでアメリカに踏みこみすぎることがいいのかどうか。
 幸い自衛隊はこれまで攻撃を受けずに仕事をしているからいいようなものの、実際には宿営地の外へ出て、思ったほど仕事ができているわけではないし、場合によってはいつゲリラの攻撃を受けるかも分からない状況におかれている。いま武力行使はしていないが、何者かに襲われたら正当防衛せざるをえない。そのとき死んだとか殺したとかいうことになりかねない。そいう立場に自衛隊を置くことを日本の憲法は果たして想定していただろうか。やや疑問を持っている。
 小泉首相についても危ないという不安感が拭えないようです。次のように語っています。
 小泉首相の政策を徹底していくと従来からの自民党の支持基盤そのものが崩されることになる。自民党は既存の現役候補者をかかえているので新人が出ない。民主党の方が出世の早道になっている。官僚出身も民主党に行く人が増えている。民主党は、私にいわせるとやや仮面をかぶったまま、政権交代が可能な政党としてのイメージを獲得していくのではないか。自民党は公明党にかなり寄っかかっているところがあるので、民主党はいいところまで伸びていくのではないかと予測している。とくに小泉改革が本当に成功していけば、自民党が立っている基盤そのものがかなり緩むので、これは思わぬ展開をしないとも限らないと感じている。
 宮澤元首相は、日本がこれだけ経済大国になって、安全を他国に依存しているだけでいいのか、今後もアメリカ頼りでいいのか、という点も問題提起しています。ただ、自主独立をとるべきだという強い主張でもないようですが・・・。
 内閣の閣議なんて、実は議論する場なんかじゃない。このように率直に紹介されているのも驚きでした。なるほど、言われてみればそうなんでしょう。前日に開かれる次官会議ですべて決まっていて、それを承認するだけのセレモニーなんですね。
 アメリカとの単独講和について、反対する人がいるけれど、当時はあれしかなかったんじゃないかと開き直っています。うーん、そうかなー・・・。私は動揺してしまいました。また、日米安保条約に反対する運動についても、あれは中味のない騒ぎだったと、一言のもとに片づけられています。そうはいっても、日米安保条約のもとでアメリカの横暴さはますますひどくなっていると思うのですが・・・。
 戦争を体験した70歳以上の自民党長老に戦争反対の声が強いのは頼もしいのですが、戦争を知らない30代、40代の政治家にいかにも「勇ましい」好戦派が多いのは困ったことです。いったい自分とその家族が率先して外国の戦場、たとえばイラクへ出かけるとでもいうのでしょうか。もちろん、私は戦場へ行きたくないし、子どもたちにも行かせたくなんかありません。

アメリカCEOの犯罪

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著者:D・クィン・ミルズ、出版社:シュプリンガー・フェアラーク東京
 ハーバード、ビジネス・スクールの教授がアメリカ企業の実態を暴き、皇帝CEOとそれを支える取締役会、会計士そして弁護士の犯罪性を厳しく糾弾した本です。日本の監督法人と企業内弁護士も胸に手をあてながらぜひ読んでほしいと思いました。
 まず、CEOたちが権力の乱用をはじめた。それに会計事務所や弁護士そして投資銀行が投資家の信頼を裏切って加担した。銀行家やアナリスト、ブローカーは組織的な詐欺をしなければ投資ビジネスで裕福な生活はできない。ところが、投資家が貪欲だったから騙されたなどと嘘をついて自己弁護している。 CEOにストック・オプションが与えられるようになってから、会社の株価が上がるとストック・オプションによってCEOに莫大な富をもたらすことから、CEOはどんな手段をつかってでも、株価を引き上げたいという強い誘惑にかられるようになった。それは、たとえ会社が破綻し、株主が貧乏になろうともだ。売り上げと利益を水増しし、株価を急速につり上げるためには詐欺も働く。取締役会も株主を裏切ってまでCEOのために行動する。そして、その裏切りは寛大な報酬ないし退職金で報われる。
 CEOの冷酷さが表面化したのは1990年代になってからのこと。1990年から2000年に、CEOに支払われた報酬は511%増加した。それに反して、一般労働者に支払われたのはわずか37%増だった。CEOの報酬と一般労働者の賃金との比率は1980年に55対1であり、1990年に130対1であったが。2000年にはなんと580対1にまでなった。
 かつて会計士は、公正な帳簿管理者たらんとした。しかし、1990年代には、ゲームのプレーヤーになった。会社が債務を投資家の目から隠すのを手伝ったり、CEOが大金を懐に入れる手伝いをするようになった。会計は相当厳格な規律にもとづくものと世間で思われているが、実は裁量の幅は大きい。しかも、会計事務所はコンサルティング業務でもうけようとして、監査をCEOに甘くした。大手企業は監査法人に対して、監査手数料の3倍をコンサルティング・サービスの手数料として支払っている。
 弁護士も、かつては自らを企業の良心の守護者だと思っていた。しかし、弁護士も、日常的に、法律違反が明らかになるような情報をいかに当局に隠すのかをアドバイスし、テクニカルに合法だと思われるように仕立て上げるようにアドバイスしている。法律をいかにしてねじまげるかに弁護士も頭をひねっている。だから、投資家や株主が会社の顧問弁護士によって守られることは期待できない。大変厳しい指摘がなされています。日本の企業内弁護士は大丈夫でしょうか・・・。
 メリルリンチのような投資会社やアナリストたちは、内輪では二束三文、くだらない最低のものと見ていた会社を投資家に「買い」だと推奨していた。今や投資家はアナリストを信頼すべきではない。そのうえ、CEOには失敗しても巨額の報酬が与えられる。会社の業績が悪くても、会社が倒産しても高額の退職金(ゴールデン・パラシュート)をもらえ、オプションの現金化が認められている。
 ビジネス・スクールは、大学を卒業して実社会で数年のあいだ経験を積んで入学するから、平均は26歳である。彼らは、20年間働いて大金持ちになり、ヨットで楽しむことを目ざしている。倫理講座なんて必要ない。金もうけして何が悪いのかという雰囲気がビジネス・スクールにはある。
 何だか心が寒々となってくる本です。こんな状況のアメリカを日本がお手本にしてよいとはとても思えません。いかがでしょうか・・・。

死んでも返せ

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著者:夏原武、出版社:宝島社
 ヤミ金融の内側へ突撃取材していますので、暴力金融の実態がそれなりに分かります。
 むかしは登録していない金貸しを「ヤミ金」と言っていましたが、今は登録していても「ヤミ金」と言います。とんでもない暴利をむさぼっている業者のことです。登録料はわずか15万円(ちょっと前までは4万円)で、これで新聞広告をうてるようになるのですから、安いものです。
 ターゲットは懲りない借金依存症の人々です。これが実に大群なのです。にもかかわらず、このところクレ・サラ相談が激減しています。東京では半減したそうです。福岡でもかなり減っています。なぜ?
 多額の借金をかかえて二進も三進も(にっちもさっちも)いかなくなった人は多いのです。ところがヤミ金からの取り立てにあって怖くならないと(お尻に火がつかないと)、公的な相談所にはいかず、その日暮らしをしてしまう人が多いということです。ヤミ金規制法が少し実効性をあげているため、相談にいくべき人たちが相談に出かけていないということだと思います。手遅れにならないうちに、然るべきところに相談に行った方がよいと思うのですが・・・。

福祉工学の挑戦

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著者:伊福部 達、出版社:中公新書
 カエルの眼の機能はミサイルの発射装置に利用されている。カエルの眼は静止しているものには反応しないが、動いているものには敏感に働く。ミサイル発射装置は飛んでくる飛行体をいち早く探知しなければならないからだ。
 ハエの舌はラジオのFM装置と同じ機能をもっている。ハエの舌からは一定の周波数をもった電気信号パルスが常に出ている。ハエの舌に甘いものが触れると急にパルスの周波数が高くなる。甘さの度合いによって周波数の高さが異なる。信号パルスの振幅を変化させず、周波数を変えて情報を伝えるのは、FM装置と同じ。
 福岡に天才的なインコがいた(今もいるのかな?)。鉄腕アトムやどんぐりころころなど20種類の歌がうたえ、笠地蔵や般若心経などの長文も話せる。
 人はヘリウムを吸うと、誰でもドナルドダッグのような声になる。これは、ヘリウムが窒素に比べて軽いため、音速が速くなり口のなかでの共鳴音が高くなるから。
 聾は社会活動をするうえで、また人間がものを考えるうえで必要な音声という道具を失うことになる。その意味では盲より聾の方が不自由である。これは三重苦のヘレン・ケラー女史の言葉。
 身体に障害をもつ人に役立つ技術の開発はどんどんすすめてほしいものだ。ところで、男と女で声の質が違うのはなぜなのか、以前から疑問を抱いている。どうしてなのか、その理由を知りたい。誰か教えてくれないかしらん・・・。

江戸時代の村人たち

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著者:渡辺尚志、出版社:山川出版社
 江戸時代の庶民の生きざまを知れば知るほど、日本人って昔からあまり変わっていないんだな、つくづくそう思います。この本は今の長野県諏訪地方の村々をターゲットにして、そこに住む人々の生活を残された資料にもとづいて再現したものです。
 村同士で治水や入会などでしきりに裁判をおこしていました。日本人って、昔から裁判が好きなんですよね。しかも、その裁判は江戸でするのです。ですから、今の長野県の人々が東京高裁に出かけるようなものでしょう。半年間で320両のお金をかけていました。仮に1両を10万円とすると、3200万円かけていたわけです。このお金を村は藩から借りたりしていました(公借)。利率は年12.5%です。村役人の名前で借りるのですが、その担保に村役人個人の所有地を提供したのです。ということは、村役人の個人所有地であっても、村全体の利益のためという制約が課せられて当然という法意識があったわけです。所有権絶対というのではないのです。
 また、裁判のために村の代表として江戸に出かけた人たちに不手際があったときには、村人の投票で新しい代表を選ぶことが行われていました。そもそも、村役人の選出も投票(入札、いれふだ)が一般的でした。ただし、投票できるのは戸主のみです。被選挙権についても大前(おおまえ。村役人に就任できる家柄の者)と小前(こまえ。大前以外の者)とで争いがありました。小前側は、これまで大前が独占してきた村役人の被選挙権を小前にも解放せよと要求したのです。最終的には5人の村役人のうちの1人が小前から選ばれるようになりました。
 村役人にはそれなりの能力が求められます。村に寺子屋がつくられ、師匠を村の外から5年の任期で招くということもありました。村人も教育熱心だったのです。同じように、医者も村外から招きました。

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