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カストロ

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著者:レイセスター・コルトマン、出版社:大月書店
 著者はイギリス人。元駐キューバ英国大使だった人です。カストロについて書かれた本を読むのは2冊目です。モンカダ兵営襲撃事件がいかにも血気盛んな青年たちの暴発のようなものであり、よくぞカストロが生き延びられたと感心しました。また、グランマ号に乗ってキューバに進攻したのも、初めからうまくいったわけではありませんでした。大勢の仲間を失って山地へ逃れたあと、徐々に勢力を回復していった実情を知り、革命とは死と紙一重のたたかいなんだと改めて思い知りました。
 カストロは人口1100万人の島に既に40年間も君臨する「独裁者」です。共産党一党独裁で、反対政党は許しません。ところが、悪いニュースや恥になるような問題を国民に隠すことがほとんどありません。ですから、多くのキューバ人が自分の国の政治に関わっているという意識を持っています。なにしろ、北朝鮮と違って、カストロは大衆の面前で、延々何時間も話し続けるのです。何をそんなに話すことがあるのか不思議なほどです。国連総会でも4時間半の演説をしたという最長記録があります。よその国の人は退屈したに違いありませんが、キューバ人は辛抱強いのでしょうか。それとも、よほどカストロの話が面白いのでしょうか・・・。
 アメリカの大統領は、この間、9人も変わったというのに、ちっぽけな国の「独裁者」はただ1人続いているのです。この本は、カストロが政治家として権謀術数をめぐらして権力を維持してきたことを冷静なタッチで暴いています。なるほどと思いました。
 キューバ人の平均寿命は76.15歳。小学校は教師1人に生徒20人。中学校は15人。ですから、文盲率は0.2%。住民163人に医師1人。投票率は95%以上。教育と医療は完全に無料。新聞によると、ベネズエラに今キューバ人医師が1万人以上も派遣されていて、その代償として石油をもらっているそうです。
 ところが、学生や看護師たちが臨時収入を目当てに売春に走るという現実もあります。メキシコやスペインから多勢の中年男性が飛行機に乗って買春にやって来るのです。
 カストロは弁護士でもありました。ハバナ大学法学部を卒業して弁護士になったのです。このころは共産党とは一線を画していました。ストライキのために解雇された労働者、土地から追い出された農民、暴動をおこして投獄された学生の弁護も引き受けていました。
 カストロは非暴力主義者ではありませんでした。山に入ったあと、農民がスパイとなってカストロの居場所を権力に通報していることを知ったときには処刑させてもいます。
 カストロはアメリカと同じようにソ連も嫌っていたようです。私はヤンキー帝国主義と同じくらいソビエト帝国主義が嫌いなんだ。このように叫んだという話が紹介されています。アメリカがケネディ大統領の時代に亡命キューバ人などを応援してキューバに侵攻したことがあります。ピッグズ湾事件です。このとき、アメリカは見事に失敗しました。ケネディ大統領はこの失敗の責任を追及されて暗殺されたという説は今も有力です。
 また、キューバ危機のときには、カストロは交渉のカヤの外におかれていて地団駄を踏んでいた様子も紹介されています。ソ連の軍事力を過信していたわけです。
 カストロの女性遍歴もかなり詳しく紹介されています。国民に国家の重大事を公開するのを原則としているカストロですが、自分の私生活は別です。まさに国家機密とされ、国民には知らされませんでした。何人もの女性との間に多勢の子どもが生まれたようです。でも、北朝鮮のように後継者にすることはありませんでした。そこは明らかに違います。
 なにしろ、首相が自宅からボディガードもつけずに自転車で通勤するという国なのです。カストロの親族だって、物を買うのに行列に並ぶのはあたり前。この国には珍しいことに特権階級が見当たらないといいます。本当かしら、と思いますが、どうも本当のようです。もし間違っていたら、教えてください。
 日本から遠い国ですが、一度ぜひ行ってみたいですね。

警察内部告発者

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著者:原田宏二、出版社:講談社
 私よりひとまわり上の世代ですが、その勇気に心から敬意を表したいと思います。思わず襟をただしながら読みすすめていきました。「うたう警官」(角川春樹事務所)は、この本を読むと、まさにノンフィクションなんだと思いました。まさかと思うようなことが実話なんですね・・・。なにしろ130キログラムの覚せい剤、大麻2トンの密輸、そして「クビなし拳銃」が警察署内の引き出しにゴロゴロしているなんて、とても信じられない日本警察の現実です。
 著者の勇気とあわせて、告発に同行した札幌の市川守弘弁護士の不屈の闘志にも拍手したいと思います。だって、弁護士だって心のなかでは警察が牙をむき出したら恐いと思っているんですから・・・。ただ、本件では著者や市川弁護士が用心したことに加えて、ジャーナリズムが一定の役割を果たしたことも、身を守る盾になったのだと思います。それも、中央ジャーナリズムではなく、地方の「道新」(北海道新聞)のがんばりです。それに比べると、西日本新聞は警察に対してはやや腰くだけの感を受けて仕方ありません。
 著者が警察の裏金問題を告発するために記者会見にのぞもうとするとき、何人もの記者から、やめた方がよいとアドバイスされたそうです。ジャーナリズムの堕落ぶりを改めて痛感しました。そんな記者に報道の自由を言う資格なんてない。私は怒りすら感じました。
 「クビなし拳銃」という言葉を私は始めて知りました。犯人はいないのです。ただ、どこからか拳銃が出てきて、それを押収するのです。稲葉警部は8年間に100丁の拳銃を 押収し、そのうち64丁がクビなしだったというのです。開いた口がふさがらない異常さです。
 警察の裏金づくりが体験と日誌にもとづいて淡々と語られますから、なるほど、なるほどと、よく理解できます。会計検査院が来るときには、東京からわざわざ警察庁の係官がやって来て、予行演習させられるというのです。
 部外者からすると、署長交際費など、必要経費はなるべく認めればいいように思うのですが、そこは恐らく人間の欲望がからんでいるのでしょうね。税金がかからず自由に好きなように使える裏金というものはなかなかなくなりそうもありません。とくにひどいのは警備・公安警察のようです。協力者(スパイのこと。S)をかかえこむために必要だということで、その実態はまったく明らかにされていません。ところが、刑事警察の2倍から4倍近くの支出が認められているというのです。彼らが相も変わらず「共産党対策」と称して甘い汁を吸っているのかと思うと、腹が煮えくり返ってりそうなほど全身が怒りにふるえました。
 著者は「明るい警察を実現する全国ネットワーク」という組織をつくって活動をすすめているとのことです。福岡でも、ぜひ応援したいものだと思いました。警察の裏金問題はまだ終わっていないのですから・・・。

荒野の庭

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著者:丸山健二、出版社:求龍堂
 芥川賞を受賞した作家だそうですが、私は小説を読んだことはありません。ただ、この本に出ている文章には、たしかにハッとさせられる鋭いものがあります。
 自分の人生を生きるのに、何の遠慮がいるものか。ここら辺りでひとつ居直ってみよう。そして、生きたいように生きてみよう。
 なるほど、そうですよね。私も、ずい分前から、したくないことはしないようにしてきました。カラオケのあるスナックなどには行きたくもありません。たいていの演歌は聞くだけで虫酸が走ってしまいます。ホステスさんに下手なおべっかをつかいたくもないので、クラブにも足をいれたくありません。ゴルフとかテニスなど、集団で競技するより、庭をひとりウロウロして、雑草を抜きながら、花を愛で、四季折々の風の香りをかぎつつ、鳥と声をかわしあうのが自分の性にあっているのです。近くの山々の緑を眺め、空の色が暮れ泥(なず)んでいく様子を見ていると、その一瞬が地球創世の貴重なひとときにも思えてきます。
 著者は長野県の山中に居を構え、庭をつくり、そこに花と樹を植え、世話をしながら1年半に1作の小説を書くということです。さすがに花や樹々の写真が実に生き生きしています。水もしたたる美人。そんな言葉がぴったりの花がうつっています。なにしろ花びらに本当に水玉がのってころがっているのです。紅いクレマチスの花が出ています。我が家にもクレマチスをたくさん植えています。気品のある純白のクレマチスの花を見るといつも、心がハッとときめきます。花にはチョウがやってきます。生き物は人間だけではないのです。私も、花が咲くと写真をとります。ほどよくとれた写真はみんなに見てもらいたくなって、弁護士会に売りこみます。月報の一面を飾ったこともあります。わが子のようにうれしく思いました。大自然を身近に感じながら生きるのは、うれしいものです。これも私が年齢(とし)をとった証拠でしょうか・・・。
 このブログに私のとった写真をのせて皆さんにお見せしたいとかねがね思っていましたところ、トラックバックにマコさんの素敵な写真がのっていました。風に揺れるクレマチスって、本当に風情がありますよね。赤紫色の花弁のクレマチスは奥ゆかしい深みがあります。雨にうたれてひっそり咲いている純白の花弁のクレマチスはえも言えぬ気品があります。冬の花たちが次々に紹介されますので、眺めていて飽きることがありません。まさに癒しの写真です。マコさん、ありがとうございます。

ネアンデルタール人の正体

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著者:赤澤 威、出版社:朝日新聞社
 「彼らの悩みに迫る」というサブ・タイトルがついています。その生活だけでなく、思考にまで迫ってみようという意欲的な本です。そのあらわれのひとつが、復元写真と図解です。石器をつくり、火を燃やし、動物を家族で解体し、骨髄をしゃぶっているカラー口絵が紹介されています。
 毛皮を口にくわえ、歯でなめしていた状況や、死者を埋葬するとき、花をとって投げ入れていた様子も描かれています。あっと驚いたのは、ネアンデルタール人に背広を着せると、もちろんヒゲもそっていますが、まるで現代人と同じ格好になるということです。
 しかし、ネアンデルタール人はわれわれ現代人の祖先ではありません。ネアンデルタール人はヨーロッパ周辺の寒冷地にいてアジアには住んでいませんでしたが、絶滅してしまいました。クロマニヨン人との混血説は否定されています。
 人類がアフリカ起源であることはよく知られています。しかし、アフリカ起源は600万年前と20万年前と、2回あったそうです。改めて認識しました。いずれにせよ、現代人がアフリカ人を共通の祖先とすることは間違いない事実なのです。白人だから優秀だとか、黄色人種だから偉いとかいっても、何の根拠もないことがよく分かります。
 縄文時代の日本の人口は20万人くらいだったことが紹介されています。へー、そんなに少なかったのか、と驚いてしまいました。
 化石骨の分析から、何を食べていたのかまで分かる。そんな指摘があるのにもビックリです。タンパク質コラーゲンの同位体を分析すると、タンパク質がどのような植物に由来するか復元できるというのです。ネアンデルタール人は食肉中心の食生活であり、クロマニヨン人は動物の肉だけでなく、淡水魚も食べていました。
 ネアンデルタール人は、数万年間、毎日毎日同じことを繰り返していたと推定されています。現代人の私たちからすると、何の変化もなく、退屈でおもしろくない生活だったことでしょう。そこにどんな悩みがあったか、こたえはもちろん出ていません。

星野道夫と見た風景

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著者:星野道子、出版社:新潮社
 写真家・星野道夫がカムチャッカ半島でヒグマに襲われて8年もたったそうです。奥さんが事故の真相を明らかにしています。彼はテレビ番組の取材に同行していたのです。このとき、心ない人物がヒグマを確実に撮影するために、ヒグマをおびき寄せようと考えて人間の食料を与えたらしいのです。ロッジを離れて、ひとりテント生活を送っていた彼を、お腹を空かしたヒグマが襲いかかりました・・・。
 キャンプ生活のときには、身のまわりに置かない、食後はすぐに食器を洗って片づける。そんなアドバイスを、奥さんは彼から受けていたと書かれています。彼が大変用心深かったことがよく分かります。惜しまれてなりません。
 それにしても新鮮なカットの写真集です。どれも生命の躍動を感じさせます。クマの親子が寄り添っている風景は、全身で信頼していることがよく伝わってきます。そして、アザラシの赤ちゃんの可愛いことといったら、ありません。白いぬいぐるみなんてものではありませんね、これは・・・。オッパイ飲んで満ち足りてスヤスヤ眠っている赤ちゃんの黒くぬれた鼻は生命力にみちあふれています。夕日にかがやく一群のカリブーたちの写真も傑作写真です。
 手にとって頁をめくるだけでも、ひととき心をなごませてくれる、いい写真集でした。

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