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御家騒動

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著者;福田千鶴、出版社:中公新書
 この本を読むと、日本人って、実に裁判が好きな民族なんだなとつくづく思います。殿様に能力がなかったら、ことをオーバーに言いたててまで幕府に書面で殿様を交代させる裁きを求めるのです。そんなことはちっとも珍しいことではありませんでした。幕府の方も、御家騒動があったら待ってましたとばかりにお家断絶(改易)ということではなく、なんとかお家を存続させようとあの手この手をつかいました。
 これって、なんだか、これまでの私たちの常識と違いますよね。この本によると、将軍家光の寛永末年(1644年)までの御家騒動80件のうち、そのため改易されたのは18件でしかありません。10万石以上だと、堀(越後福島)、最上(出羽山形)、生駒(讃岐高松)の三家のみだったのです。幕府が御家騒動を大名統制の口実として利用したという説は成り立たない。これが、この本の結論です。うーん、そうだったのか・・・。まいりました。
 いま福岡の裁判所は上ノ橋(かみのはし)門から入って左側のところにあります。そこに栗山大膳の屋敷がありました。そうです、黒田騒動の立て役者です。寛永9年(1632年)、筑前福岡藩の黒田家を揺るがす大騒動が勃発しました。主君黒田忠之はまだ30歳にもならぬ若さでした。藩主は側近を重用するばかりですから、当然のことながら家老の大膳たちは面白くありません。
 忠之は大膳を手討ちする手はずをととのえたものの、大膳が病気を理由として出仕せずに失敗します。ついに大膳の屋敷を兵力で取り囲みました。このとき大膳の屋敷に立て籠もった将兵は600人ほど。鉄砲200挺、大砲も6門ありました。一触即発の状態でしたが、幕府が調停に入り、大膳は退去に応じました。この退去の様子がすさまじいのです。火縄に点火した状態の鉄砲20挺、大膳は棒を突きたてた侍50人と、火縄に点火した鉄砲250挺、槍100本とともに退出しました。まさに武装集団そのものです。大膳は陸奥盛岡の南部家にお預けとなったものの、五里四方歩行自由の身でした。もちろん、黒田家は安泰です。黒田騒動のとき、あやうく市街戦が始まるほどの状況だったというのを、私ははじめて知りました。
 対馬宗家の重臣柳川調興との紛争も興味深いものがあります。宗家の主君(宗義成、30歳)は要するに凡愚だったようです。一つ年長の柳川調興はすこぶる怜悧(賢い)と朝鮮通信使からも評価されていました。しかし、国書書き替えが発覚してからも、結局のところ宗家は安泰で、柳川の方が津軽へお預けとなったのです。お家大事というか、幕府は秩序維持を重視したのです。
 承応4年(1655年)には、久留米の当主・有馬忠頼が参勤途上の船中で小姓に殺害されたそうです。幕府は病死の届けを認めて、3歳の子に遺領相続を認めました。
 肥後人吉の相良家でも寛永17年(1640年)にお下(した)の乱が起き、人吉城の三の丸が焼け落ちるほどの戦闘がありました。これは、なんと主君の相良頼寛が重臣の相良清兵衛が従わないとして、幕府老中に訴え出たというのです。まるであべこべですよね。何十人もの死傷者が出たというのに、清兵衛は弘前藩に配流されただけで命は助かっています。将軍お目見えを許された身だったからです。
 17世紀の前半までは、主家が滅亡しても、すぐに従臣の家が滅亡するという観念はなく、主家の代わりに従臣が立つことも認められていたというのです。
 江戸時代についての常識が、またひとつ化けの皮をはがされた思いがしました。

全裏手口!オレオレ事件簿

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著者:日名子 暁、出版社:廣済堂出版
 オレオレ事件とヤミ金融の舞台裏がよく分かる本です。それにしてもホント大勢の人がコロッと騙され、大金を簡単に送金してしまうものですね。驚いてしまいます。それだけ人間関係が希薄になったということでしょうか。お年寄りは信じこみやすいと同時に、会話に飢えているという指摘もあります。電話は夜かかってくるのではなく、昼間、それも午後2時から4時ころが多いといいます。
 この本に宮城県警の巡査長(47歳)が交番に保管されていた書類をもとにオレオレ詐欺を働いたという事件が紹介されています。ホンモノに言われたら信じるのも当然です。
 でも、たいていは20代の若者がアルバイト感覚でやっているんです。若者向けの就職情報誌に「固定給50万円プラス歩合給」とか「自由出勤、学歴不問、固定プラス歩合100万円」という広告をのせていたのです。素人を集めてマンションの一室で教室を開いて特訓します。あとはいろんな名簿をつかって、数うちゃあたる式で電話をかけまくります。一度あたったら何度もしゃぶり尽くす。騙されやすい人はやはりいるのです。
 ただ、東北はだましやすいけど、九州は東北に比べるとヤミ金はやりにくいという話が紹介されています。カネを借りたら返すという常識が東北では今も生きているけど、九州ではそれが通用しないというのです。うーん、そうでもないように思うのですが・・・。
 ヤミ金の回収にあたる人間は脅し文句を並べたてるわけですが、脅して相手がビビれば、ザマァみろと気分よくなる。脅す快感を一度知ると、それは病みつきになるとあります。私も、以前、サラ金の元店長から同じ話を聞きました。家庭でムシャクシャしたことがあると、朝からガンガン回収の電話で怒鳴りまくる。そうすると、気分がすっきりするというのです。やられた方は大変なストレスを感じるのですが・・・。
 取立にあったり変な督促を受けたとき、弁護士に相談してもらえれば役に立つことが、この本にも書かれています。警察に通報したことのある客にはK、弁護士に相談したことのある客にはBなどのマークをつけて、要注意人物だとしているのです。弁護士が出てきたら上の本部にまわし、深追いはしません。警察の手入れを受けたとき、証拠隠滅のやり方を具体的に書いた危機管理マニュアルまであるそうです。
 オレオレを働く若者たちはゲーム感覚でやっていて犯罪意識は薄く、割のいいアルバイト、ちょっと危ないかなという気軽さでやっているようです。そして、彼らをつかう暴力団は90%以上をピンハネするのです。
 金持ちのジイちゃんたちから騙しとったお金をつかえば景気回復につながる。だからオレたちはいいことをしてるんだ。そう言って開き直った若者がいたそうです。初めて聞く言葉ではありません。インチキ詐欺商法の連中はいつもこのように自分を正当化します。天下の野村証券だって同じことをしてきて、あんなに大きくなったじゃないか。そう言われると、なるほどそうかもしれないと思ってしまいます。

旭山動物園物語

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著者:古舘謙二、出版社:樹立社
 子どもたちが小さいころには、私も動物園によく行きました。残念なことに、もう久しく動物園には行っていません。幼い子どもがいるというのは、手がかかって大変だと言えばそうなのですが、本当はとても幸せなことだと今しみじみ思います。いえ、全然そんなところに行かないというのではありません。少し前に鹿児島と沖縄の水族館に行って、海の神秘を改めて堪能してきました。
 北海道の旭川市には、私も一度だけ行ったことがあります。盆地ですから、夏は北海道とは思えないほどに暑くなり、冬はマイナス30度にまで冷えこむまちです。そんな旭川にある動物園が、今や東京の上野動物園を抜いて日本一の入場者数を誇っているというのです。なぜ、でしょうか・・・。
 この本には、ペンギンの行進の写真が紹介されています。両側に人間が列をつくって見物するなかを、ペンギンたちが往復500メートルを群れをなしてよちよち散歩していくのです。折り返し地点では、寝そべってすべったりして10分ほど遊び、それに飽きたらまた引き返すそうです。いえ、動物園がペンギンたちに散歩を強制しているのではありません。ただペンギンの本能を生かして、人間はただ見守っているだけなのです。なんだか見てるだけで楽しくワクワクしてくる写真ですよ・・・。
 オランウータンの空中運動場というのもあります。高さ17メートルの2本の柱に長さ13メートルの鉄骨を渡し、その下にロープを張っています。もちろん、オランウータンはその高くて長いロープを伝わって散歩するのです。安全ネットなんかありません。野生のオランウータンは高さ30メートルの木の上で生活していますし、握力は人間の10倍、400キロもあり、とても用心深い性格なので、落ちるわけがないのです。人間は、下から見上げて眺めるだけ。これを渡り切ってはじめてメスに一人前のオスと認めてもらって、ついに赤ちゃんが生まれたというエピソードが紹介されています。うーん、なるほど、ですね・・・。
 人間の赤ちゃんとシロクマがにらめっこした話には、つい笑ってしまいました。人間の赤ちゃんは目の前に来た白クマさんを興味津々で見ています。ところが、クマの方は目の前の赤ちゃんをエサのつもりで食べようと思って近づいているのです。なーるほど・・・。 ホッキョクギツネは寒さに強く、マイナス70度になってはじめて震えはじめるそうです。すごーい。動物たちが毎日のびのび生活している様子がよく分かる、そんな動物園です。私もぜひ行って見てみたいと思いました。また旭川に行って、動物園に行き、そして帰りに有名なラーメンを食べて心身ともに温まってこようっと・・・。

倒産の淵から蘇った会社達

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著者:村松謙一、出版社:新日本出版社
 倒産寸前の会社を再生させることに情熱を燃やして取り組んできた東京のベテラン弁護士の体験をまとめた本です。個人の破産・再生を専門としている私にも大変勉強になりました。
 人間にとって大切なことは、生命・自由・財産の順番であり、家・屋敷などの財産は三番目に大事なものにすぎない。そうなんです。ところが、一番目に大切な生命を投げ出して財産を守ろうとする人のなんと多いことでしょう。銀行が他の支払いは止めても生命保険の掛け金(月40万円)だけは社長に支払いを続けさせていたという話が紹介されています。とんでもないことです。この4月から、保険契約をして2年以上たたないと自殺のケースでは保険金がおりないことに変わったと聞きました。その前は1年でした。2年になったり、1年になったり、時々、生保会社の都合で変動しています。
 著者は連帯保証制度を見直すべきだと提案していますが、まったく同感です。つい先日も、日掛け金融が、借り手の主婦と相互に連帯保証させあって自己破産申立しにくくしているケースを扱いました。安易に連帯保証人になるのは考えものですが、法制度としても考え直すべきだと私も思います。
 また、返済期間をあまり考えすぎない方がよいという指摘には、なるほど、これは良い考えだと感心しました。まず返済期間ありきという概念を捨てたら、もっと世の中は楽しく活気が出てくるというのです。借入金が40億円。年に1000万円を返済している。返済に400年かかる。でも、利息の年9000万円はきちんと支払っている。社員に給料を支払い、給与も若干アップさせた。会社は幸せに経営していけるし、社員も生き生きと働いている。400年かかる約束でも、みんながそれでいいのなら、いいじゃないか。著者の指摘に、なるほど、そのとおりだと膝をうってしまいました。
 会社を再生するには、特定の取引先に大きく依存しすぎないこと。この指摘は弁護士の業務にも言えることです。会社再生とは、つきつめたら人間救済なのである。うーん、なるほど、そうだよなー・・・。ついつい、うなずきました。
 免除益など、企業の税金のことなどは理解できませんでしたが、会社経営に無理をしている人には手にとって読んでほしい本です。
 ところで、この本の題名って、漢字が難しすぎませんか。出版社のセンスを疑ってしまいました。もっと、分かりやすい題名にしてほしいものです。

心理テストはウソでした

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著者:村上宣寛、出版社:日経BP社
 ええーっ、ロールシャッハ・テストとかクレペリン検査って、何の科学的根拠もなかったのー・・・。あまりの驚きで、ついのけぞってしまいました。いったい、これはどういうことなんだ・・・。受けたみんなが馬鹿を見た。サブ・タイトルはそうなっています。マジ、ホントカヨー。いまどきの若者言葉でツッコミを入れたくなる本です。
 私はAB型ですが、だからどうだと言われても困ります。私は私なのですから。だから、この本で血液型で人間の正確が判定できるなんて何の根拠もないインチキな話だと改めて解明されても、私はちっとも驚きませんし、動揺もしませんでした。政治家もマラソン選手もタレントも、みんな血液型分布は日本人の平均的分布と変わらないことが立証されています。ところが、教育評論家・阿部進は血液型を保育に活用するよう九州地区の幼稚園教師研修会で講演した(2004年8月、沖縄)というのです。まったくバカげています。
 さて、ロールシャッハです。1884年、スイス生まれ。37歳の若さで亡くなっています。いまアメリカではロールシャッハ・テストはまったくあてにされないものになっています。ほかの検査なら10分ですむのに、これは平均4時間もかかり、そのうえ、ほとんど科学的根拠に乏しいというのですから、お粗末すぎます。同じようにクレペリン検査も信頼性に乏しいということです。
 この本は、最後に、速読法についてもコテンパンにやっつけています。あれは単なる金もうけの手段にすぎない。賢くなるためには分からない本を読まないといけない。分からない本はゆっくり読まないといけない。賢くなるには速読法は必要ない。
 そうなんです。本が早く読めることを自慢している私も、別に速読法をマスターしたわけではありません。私の興味と関心の度合いで、結果として本が速く読めるというだけなのです。いまも出番を待っている本が机のそばにうず高く積みあげられています。読みたい本がたくさんあるというのは、私にとって幸せなことなのです。だから、特別に意識することなく、自然に本は速く読めるのです。

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