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だれが源氏物語絵巻を描いたのか

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著者:皆本二三江、出版社:草思社
 源氏物語をカラー写真で写しとったような絵巻物があります。いったい誰が描いたのか、実証的に追求していった本です。なーるほど、そうだったのか、うん、そうなんだよなー・・・と納得できる本です。一読をおすすめします。
 結論を先に明かしてしまうと、著者は紀の局、長門の局などを中心とする女房たちが集団で描きあげたものとしています。絵巻は1120年代の前半ころに完成しました。
 源氏絵巻の製作の主力となったのは、古今の絵や書に造詣の深い女房たちだった。実際の製作は、専門絵師に近い技量をもつ者をふくむ多くの女房たちの協同作業だった。
 なぜ、そのように言えるのか、著者は絵のスタイルをこまかく検討していきます。
 指示書きまでされた下図が、彩色の段階で変更されている箇所がある。どう見ても専門絵師の手になるとは思えない描写が散見され、それがそのままにされている。これらは指揮系統が明確であったであろう工房では考えられない。しかも女性の手になると思われる箇所がある。
 当時、女絵と男絵と呼ばれるものがありました。
 女絵は静的で理想化を追求し、男絵は動的でリアルを追求する。男絵では人物の身体プロポーションは5頭身から6頭身で、そのころの人々の正しいプロポーションをあらわしているものだと思われる。ところが、源氏絵巻の方は、多くが8頭身、ときに10頭身にもなっている。そして、男性絵師が描いた女性の鼻は、なぜか大型化する傾向がある。女性の鼻としては大きすぎる。
 源氏絵巻には、素人画と思える表現が混じっている。高い技量をもつ専門絵師が、故意につたなく描くとは考えにくい。むしろ、製作に携わった集団に素人がいたと考えた方が自然だ。うーん、そうなのかー・・・。
 このあと、著者は、現代の男の子と女の子の絵には本質的な違いがあることを立証していきます。女の子は絵空事を描くのに対して、男の子は現実のどこかにある風景のような、根底にリアリズムへの希求がある。なるほど、そう言われたら、そうかもしれません。
 色をつかい、色を組み合わせることに喜びを覚えるのは女性の性質。これは昔も今も変わらない。男には色の話はつまらないもの。男の子の描いた絵には、人物の鼻が省略された顔はない。むしろ、写実的で大きな鼻があらわれる。ところが、女の子は3人の1人は鉤鼻を描き、鼻自体が省略されることもある。
 男の子の絵は動きをともなっていて、女の子の絵の方は静的である。
 これらをふまえて源氏物語絵巻を見ると、男性の登場人物より女性の方が自然に描けている。男性はすべて女性的な風貌であり、真に男性的な男は1人も見あたらない。このように、人物表現には、描き手の性が色濃く投影される。だから、源氏物語絵巻を描いていたのは、先に述べたとおり、女性集団だというわけです。

憲法改正

カテゴリー:未分類

著者:渡辺 治、出版社:旬報社
 自衛隊がイラク(サマワ)に派遣されている今日、日本国憲法は現実にあわせて変えた方がいい。もう憲法は死んでしまっている。憲法9条は解釈改憲でズタズタになってしまい、何の役にも立っていない。
 本当でしょうか・・・。著者は、もしそうなら憲法をわざわざ「改正」する必要はないはずだと指摘しています。
 改憲派は、ひとつの根拠に、解釈改憲で憲法9条は現実とあまりにも違ってしまっているから、9条を「改正」して、もう少し現実に近づけ、現実を規制できるものにしようと言っている。では、たとえば憲法14条で男女平等がうたわれているが、現代日本の社会で男女平等が実現していると考えるのか。依然として女性差別が根強く存在しているのが現実だ。でも、だからといって、憲法14条を「改正」して現実に近づけようという議論があるだろうか。
 著者は、このように指摘しています。なるほど、ですよね。
 憲法というのは、現実とまったく一致しているということはない。そもそも、憲法と現実がぴったり一致していたら、憲法にわざわざ規定することはない。憲法の規定というのは、その理想の実現に向けて政治や社会を変えていくよう、国家や大企業などの社会的権力を義務づけている規範なのである。このように、憲法は現実とつねに緊張関係をもち、一定の距離があるものなのだ。
 なるほど、なるほど、まったくそのとおりだと私も思います。
 イラク国民に多国籍軍のなかで残ってもらいたい国を世論調査すると、日本がトップだった。これは、日本の自衛隊がイラクの人をまだ1人も殺していないから。なぜ、そうなっているかというと、自衛隊が憲法9条によって手足をしばられているから。
 9条改憲の狙いは、自衛隊を武力行使目的で派兵することを認めることにある。現在の改憲の目的は、国連決議のあるなしにかかわらず、自衛隊が武力行使目的で海外に行けるようにする点にある。
 しかし、9条改憲だけを突出させると、国民の強い反発を買うので、改憲派は甘いオブラートに包もうとしている。なぜなら、一般的な改憲賛成は56%にのぼるが、9条改憲については反対51%、賛成36%だから。改憲賛成と9条改憲賛成との間にはギャップがある。オブラートになるのは、「知る権利」「プライバシー」「環境権」など・・・。
 9条改憲に反対する人は51%なので、3000万人となる。ところが、政党でいうと9条改憲に反対している共産党400万人、社民党300万人の合計700万人でしかない。残る2300万人は、9条改憲に反対しつつ、自民党か民主党に投票していることになる。だから、この2300万人の人に改憲反対の声をあげてもらうことに成功すれば、改憲は阻止できる状況が生まれるのである。
 なるほど、そうなんですね。まだ、あきらめるのは早すぎます。
 今度、「敗北した」民主党の代表となった前原誠司代議士は43歳の若さですが、典型的なタカ派です。憲法9条2項を削除(廃止)して、日本を強い国にすると言っています。恐ろしいことです。
 私たちは、憲法9条がまだ決して死んではいないこと、9条があるため日本は軍事大国化できていないこと、9条は依然として守るに値することをまず確認する必要がある。
 そうなんだ、そうだよね。私は思わず手をうってしまいました。
 憲法9条があるからこそ、朝鮮戦争のときも、ベトナム戦争のときにも、アメリカの要請にもかかわらず、日本は海外派兵しなくてすんだ。自衛隊は結成50年になるが、いまだ1人の外国人も日本の市民も殺していない。こんな軍隊は世界上どこにもない。まさに軍隊らしからぬ軍隊なのである。政府は、9条をなくして、アメリカ軍と組んで自衛隊が海外に侵攻することを考えている。
 いま日本の自衛隊の実力は「殴る側の大国」になっている。しかし、戦前の日本の教訓を学ぶ必要がある。殴る側は、容易に殴ったことを忘れるが、殴られた側は、いつまでもその痛みを忘れることができない。
 二大政党制というのは、保守二大政党制であり、中・下層の市民を切り捨てて、市民上層の意思だけが政治に反映する政治的仕組みをつくることだ。アメリカの二大政党は、どちらもイラク攻撃賛成、新自由主義改革賛成。イラク攻撃に反対する人にとっては投票する相手がいないのだ。
 うーん、そうなんですよね。日本もそうなってしまいそうで、困ってしまいます。
 小泉・自民党のすすめている構造改革は、多国籍大企業の競争力を強化するために、既存の政治が大企業に課してきた負担や規制を取り払って大企業の自由を回復させる改革のこと。そして、それは2つの柱からなっている。それは、大企業の負担を取り除くための改革と規制緩和からなっている。
 なかなか鋭い指摘に、たびたびうなずいて、赤エンピツをたくさん引きながら読みすすめていきました。わずか140頁ほどの小冊子ですが、ズシリと重たい内容があります。憲法改正論議の背景を知ることのできる絶好の冊子として強く一読をおすすめします。
 ちなみに、著者は私の1年先輩ですが、その語り口は本当にさわやかです。「九条の会」の事務局を担当し、がんばっています。

草花のふしぎ世界探検

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著者:ピッキオ、出版社:岩波ジュニア新書
 このところ、あまりの暑さに閉口して山にのぼっていませんが、月1回は近くの小山にのぼることにしています。わが家から380メートルの頂上まで、およそ1時間かかってのぼります。おにぎり弁当とミニ缶ビールをリュックに入れて、頂上付近にある開けた草原でお弁当を開きます。下界でアリのようにうごめいている人や車を眺めながら、気宇壮大な心境でおにぎりをほおばると、全身が充実感に包まれます。冬は、石のベンチの上で寝ころがってしばし日光浴をします。夏でも、さすがに頂上は涼しい風邪が吹いていますので、上半身裸になって憩いのひとときです。
 四季折々の草花を眺めながら歩くと、自然のなかに身体が溶けこんでいく気がします。おかげで、花や植物の名前も少しずつ覚えられるようになりました。
 この本には、4月上旬に地上へ顔を出したアズマイチゲが白い花を咲かせるまでの3日間の連続写真が紹介されています。なーるほど、ね。そう思っていると、次は、1ヶ月ちょっとしたらやがて枯れていく様子まで連続写真で紹介されているのです。こうやって、野に咲く花の一生を見てみるのも面白いものです。ところが、このアズマイチゲは、花を咲かせるまでになんと10年近くもかかっているというのです。まさに花の生命は短くて・・・、ですね。
 夏の高原の写真があります。私は、大学1年の夏、学生セツルメントサークルの夏合宿で4泊5日、那須の三斗小屋温泉に行ったことがあります。黒磯駅からバスに乗って、終点で降りて2時間ほど山道を歩いたところにある秘境の温泉です。そのころは電気もなく、ランプ生活でした。煙草屋旅館と大黒屋旅館の2つがあり、私たちは煙草屋旅館に泊まりました。50人ほどの男女学生が日頃の地道な実践活動を交流し、生き方を語ったのです。とても刺激的な合宿でした。周囲の野山にハイキングにも出かけました。黄色いニッコウキスゲやキンバイソウそして紫色のマツムシソウ、ヤナギラン、シモツケソウ、ハクサンフウロ、橙色のクルマユリなどが、あっそうそう、湿原地帯もあり、その水辺には水芭蕉の花も咲いていました。決して忘れることのできないなつかしい思い出です。
 ちなみに、翌年夏の合宿は、奥鬼怒の八丁の湯温泉でした。旅館に面した崖の途中に露天風呂があって、夜中にみんなで入って月見を楽しみました。

日露戦争の兵器

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著者:佐山二郎、出版社:光人社NF文庫
 中国の大連には何度か行ったことがあります。一番最初に行ったときには、まだ旅順市内は外国人に開放されていないということでした。しかし、その後、行けるようになりましたので、二〇三高地や東鶏冠山堡塁力などを見学してきました。
 この本は、日露戦争当時につかわれていた兵器を写真つきで解説したものです。二〇三高地をめぐる凄惨な争奪戦がいかにすさまじかったか、いろんな本に書かれているのですが、こうやって兵器の写真を見ると、また一層イメージが湧いてきます。
 有名な28センチ榴弾砲はさすがに巨大で、10トン半もありました。これを、なんと人力だけで山上へ持ち上げている写真があります。また、二〇三高地に、これから胸と背の双方に爆薬をからって突撃しようとする日本軍の決死隊の写真もあります。これは、今ひんぴんと起きているイラクにおける自爆攻撃と同じようなものだったのでしょう。死んだら本当に天国に行けると思えたのか、かなり疑問ですが・・・。
 二〇三高地は、いま観光バスでのぼると、何の変哲もないなだらかな丘のような山並みです。ここをめぐって、何万、何十万人もの将兵が死んだなんて、とても信じられません。

一枚摺屋

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著者:城野 隆、出版社:文芸春秋
 さすが松本清張賞を受賞した小説だけのことはあります。ぐいぐいと読み手を引っぱり、飽かせません。本格的モノ書きを志向する私も、こんなストーリーを新人で書けるんだったら、あきらめるしかないか、そんな絶望感にとらわれてしまうほどです。ところが、新人といっても、奥付をみたら、なんと私と同世代ではありませんか。いや、それなら、もしかして、ひょっとすると、ぼくだって・・・、そんな気が急にしてきました。
 それはともかく、時代は幕末の大坂(当時は、大阪とは書きません)です。読み切り瓦版、いえ、もぐりの瓦版づくりを主人公としています。幕末の大坂には不穏な動きがあります。そして、少し前には大塩平八郎の乱が起こっています。物語はなんと、その大塩平八郎の乱の生き残りがひき起こすのです。時代背景など、読んでいて安定感があるとオビにあります。そのとおりです。江戸の時代小説の書き手がまた1人ふえた気がします。

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