法律相談センター検索 弁護士検索

スパイのためのハンドブック

カテゴリー:未分類

著者:ウォルフガング・ロッツ、出版社:ハヤカワ文庫
 イスラエルにモサドというアメリカのCIAをしのぐ秘密諜報部があるというのは有名です。そのエジプト駐在員として大活躍し、エジプト政府に逮捕され、第三次中東戦争のときに5000人のエジプト人捕虜と交換に釈放されたという大物スパイが自分の体験をふまえて、スパイになる方法を一般人に向けて書いた本です。面白い内容ですが、私には、とてもスパイはつとまりそうにもないと実感しました。
 嘘に熟達していなければ、スパイとして決して成功しない。
 著者は捕まるまで5年間もちこたえたが、一般に現地工作員の平均稼働年数は3年間。ゾルゲは日本にどれくらいいたんだったっけ・・・。
 二重スパイに転向する工作員の大部分は、短期間に大金をつくるつもりでそうするが、その富を楽しむほど長生きした者はほとんどいない。
 スパイになりたいと思う人は多いが、いくじなし、ひっこみ思案の人、あるいは決断力のない人がこの業界に入る余地はない。規則は破るしかない。この仕事につく者はおのれの才覚だけをたよりに生き、そして生き続けるしかない。
 著者は元ナチス軍にいたドイツ人ビジネスマンを装いました。そこで、ロンメル・アフリカ軍団にいたことにするため、ことこまかいことまで記憶するよう100回も書いて努力したそうです。
 人生の盛りを情報部で過ごし、たびたび不愉快な目にあい、毎日のように自由や生命を失うような危険に直面した。その代償としてもらうわずかな手当では、いざというときのための貯金さえできない。しかし、そのいざという日は、情報部を退職するときに必ずやってくる。
 捕まったときは、相手がどの程度知っているか探りだそうとせよ。黙りこくってはいけない。相手と議論し、論争し、弁明せよ。英雄的沈黙を守ろうとしてはいけない。話し続けよ。もっとも大切なことは、相手に話し続けさせること。黙秘権の行使ではダメなんですね・・・。
 相手に悪口雑言をぶつけて怒らせよ。腹をたてた人は、自分のいうことに注意しなくなる。相手が具体的な証拠をつきつけてくるときは、十分な予備知識がある。ともかく殴ってくるときは、彼らの知っていることは少ない。全部知っていることはまずない。
 大きな嘘に小さな真実を混ぜる。ほんの少し真実を提供して相手に確かめさせ、それを手のこんだ嘘で飾りたてて違った方向に導くのだ。
 なるほど、なるほどと思いました。スパイになるのは大変ですし、スパイを続けるのはいかにも非人間的な大変な苦労をともなうようです。

スウェーデンの中学校

カテゴリー:未分類

著者:宇野幹雄、出版社:新評論
 コペンハーゲンには一度だけ行ったことがあります。落ち着いたすごくいい町でした。
 団塊世代の日本人男性が日本で大学を卒業したあとスウェーデンの大学に入り、卒業後、公立中学校の教員になります。その20年以上の体験をふまえてスウェーデンの教育状況が紹介されていますが、日本との違いも分かって面白い本です。
 中学校の生徒会は国会と呼ばれ、イジメをなくす委員会、快適委員会、授業委員会の3つから成っている。ということは、スウェーデンでも生徒のイジメはあるということ。
 スウェーデンの学校には、何らかの理由で学校の生徒名簿に名前がのらない生徒がいる。
 スウェーデンの高校・大学に入学するときには入学試験はない。たとえば中学3年の春学期の成績による内申書のみで、学力試験はない。だから受験塾もない。
 中学校には、中間テストとか期末テストとか、まったくない。しかも、一週間に同一クラスで2科目以上の試験をしてはならないという不文律がある。
 スウェーデンの中学校には、3年間のうちに合計5週間の労働実習がカリキュラムのなかに組みこまれている。生徒に給料は出ないけれど、何かプレゼントすることはある。
 日本では、わずか1週間の実習をする県が2つ(兵庫県と富山県)あるけれど、まだまだ。スウェーデンに学ぶところは大きいと思いました。

古代エジプト人の世界

カテゴリー:未分類

著者:村治笙子、出版社:岩波新書
 古代エジプトの神殿や墓の内部に描かれた絵やヒエログリフ(文字)をカラー写真で紹介しながら、その意味が解説されています。
 ヒエログリフは音と意味と両方をあらわす文字ですから、いってみれば漢字のようなものです。ロゼッタ・ストーンを解読したシャンポリオン以来の研究がすすみ、いまでは何が描かれているのか、だれの墓なのかすぐ分かります。それにしても、今から4000年とか5000年も前のことが手にとるように分かるなんて、すごいことですよね。
 手にとってながめるだけで4000年前の人々と「対話」できるのです。定価1000円の新書ですが、ずしりとした重みを感じてしまいました。

緑の島に吹く風

カテゴリー:未分類

著者:吉村和敏、出版社:知恵の森文庫
 カナダ東岸にある「赤毛のアン」の舞台、プリンス・エドワード島の写真と話が満載の楽しい文庫本です。残念ながら、私はまだ行ったことがありません。ぜひ一度は行ってみたいと思っています。
 ところが、写真家と巡るプリンス・エドワード島の旅というツアーを企画したところ、大当たりのつもりが、なんと9人の申し込みしかなかったというのです。驚きました。応募したのは全員女性でした。それはやっぱりねと思うのですが、それにしても、わずか9人だったとは・・・。よほど宣伝が足りなかったのでしょう。
 広い平原にポツンと建っている白い木造の教会はすがすがしさを感じさせます。川にそって、おとぎの国のような建物が並んでいます。紫色のルピナスが一面に咲き広がるお花畑があるなんて・・・。ルピナスはわが庭にも咲いてくれますが、何万本と咲いたら、それはそれは壮観な眺めです。
 冬になると一面の雪景色です。クリスマスツリーを玄関のところに飾り、建物全体を電飾で埋めている光景が紹介されています。今では、日本でもイルミネーションをする家をあちこちで見かけるようになりましたが、さすがに、この島では雪景色との取りあわせが絶妙です。ほんわか心が温まる気がしてくる写真です。
 しかし、なんといっても圧巻というか、心をホンワカさせてくれるのは、赤ちゃんアザラシの写真です。生後10日目という赤ちゃんアザラシの可愛い顔といったらありません。丸くて黒い大きな瞳が、こちらを「何してるの?」と見つめます。たれ目で笑っている赤ちゃん、ひっくり返って気持ちよさそうに氷原の上に寝ころんでいる赤ちゃんがいます。チョコンチョコンと手でつついて、現地の人がゴロンと半回転させても、その赤ちゃんはまだ眠っていたというのです。もちろん触っちゃいけないのでしょうが、ついつい触りたくなってしまう、そんな吸引力のある写真です。

イノベーションの経営学

カテゴリー:未分類

著者:ジョー・ティッド、出版社:NTT出版
 本文450頁の部厚いビジネス書です、ずっしり重量感があります。
 イギリスのサセックス大学の学者集団によるマネジメントのテキストです。
 マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」(1848年)が引用されています。久しぶりに読みましたが、現代ビジネス指南テキストで再会するというのは意外でした。
 「生産の絶えまない変革・あらゆる社会状態の止むことのない変化、永遠の不安定・・・。以前に確立された国内の古い産業のすべては、すでに破壊されたか、もしくは日々破壊されつつある、それらは新しい産業によって駆逐され・・・新しい産業の製品は、われわれの家庭ばかりか、世界の隅々において消費されている。国内の生産物によって満たされていた昔の欲望の代わりに、新しい欲望が現われ、・・・諸国民の知的な創造力が共有の財産となる」
 おやおや、これが今から160年ほど前に書かれた文章だとはとても思えませんよね。この本でも、不確実性と国際化とイノベーションが決して新しい現象ではないという例証として引用されています。
 ところで、イノベーションとは何でしょうか?
 この本は、いくつかの定義を紹介しています。
 イノベーションとは、機会を新しいアイデアへと転換し、さらにそれらが広く実用に供せられるように育てていく過程である。
 イノベーションとは、飛躍的な技術進歩を商業化すること(画期的イノベーション)のみを意味するのではなく、技術的ノウハウを少しずつ変化させ、実用化すること(改善もしくは漸進的イノベーション)をも包含する言葉である。
 企業機密がもれるのは、人から人へ話が伝わったりして防ぎようがない。しかし、蓄積された暗黙知は永く持続するし、とくにそれが特定の企業や地域と一体化しているときには、模倣することは困難である。
 日本の自動車産業のもつ優れた特質も、やがてアメリカの自動車製造企業に模倣され、両者の生産性の差は解消されていった。
 「コアの硬直性」が凝り固まってしまうと、それを取り除くためには、トップ経営者の入れ替えが必要になることがある。なるほど、だから、創業者オーナーだって追放するしかないことがあるんですね。
 世界最大の携帯電話機メーカーであるフィンランドのノキア社は、11の国で4万4000人を雇用しているが、その半分はフィンランド人。成長率が高かったので、ノキア社のスタッフの半分は勤め始めて3年以下、平均年齢32歳。売上げの9%が研究開発に費やされ、3分の1のスタッフがデザインと研究開発に従事している。
 稼働中のロボットの労働者1万人あたりの数は、イギリス21台、アメリカ33台、ドイツ69台に対して、日本は338台(1995年)。
 イノベーションの本質は学習と変革であり、それは時として破壊的でリスクが高く、コストがかかる。イノベーションを成し遂げるためには、このような慣性を克服するためのエネルギーと、物事の秩序を変えるのだという強い意志が必要である。
 イノベーションに内在する不確実性と複雑性によって、多くの有望な発明が外の世界に出る前に死んでしまう。だから、もともとのアイデアを擁護し、組織のシステム内を通り抜けるための支援に、エネルギーと熱意を注ぎこむ覚悟をもった、カギとなる個人またはグループが不可欠である。ゲートキーパーが必要だということです。十分に理解できたわけではありませんが、なかなか勉強になりました。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.