法律相談センター検索 弁護士検索

三面記事の栄光と悲惨

カテゴリー:未分類

著者:ルイ・シュヴァリエ、出版社:白水社
 パリにあるポンピドゥー・センターは大統領の名前をとったものですが、そのポンピドゥー元大統領と同世代の著者による近代フランスで報じられた三面記事の研究です。
 1847年8月、プララン公爵夫人が殺害された。犯人は子どもたちの家庭教師と不倫をしている夫である公爵しか考えられない。しかし、公爵を逮捕するには国王が貴族院議長の命令がない限り許されない。そこで、プララン公爵は自分の屋敷にとめおかれた。しかし、民衆は納得せず、屋敷周辺に集まり、一般市民と同じように裁いてギロチンにかけろと叫んだ。一週間後、公爵は毒を仰いで自殺する。民衆は怒り、自殺を許した当局を批判し、矛先は貴族制ひいては七月王政そのものへと向かった。これが七月王政の瓦解を早めた。
 フランス映画の傑作といわれる「天井桟敷の人々」にも登場するラスネールという人物も紹介されています。殺人・窃盗などの罪で死刑になった人物です。映画にも泥棒大通りというシーンがあり、どことなく猥雑な雰囲気がよく出ていました。
 近代フランスのセンセーショナルな犯罪がいくつも紹介されています。でも、今の日本なら、まったくそんなフランスにひけをとらないほど、異常な犯罪ばかりになってしまっていますよね・・・。

遙かなるノモンハン

カテゴリー:未分類

著者:星 亮一、出版社:光人社
 1939年(昭和14年)5月に起きたノモンハン事件については、いくつかの本を読みましたが、この本は、ノモンハン事件の舞台となったところに著者が出向いて、そこが今どんな様子なのかを写真で紹介しているところに目新しさがあります。
 ノモンハン事件で、日本軍(関東軍の精鋭)はまさに惨敗した。ソ連軍の新式戦車などの物量に圧倒され、肉弾突撃をくり返すばかりだったのだから敗れるのも必然だった。しかし、日本軍は、ここからほとんど何も学ばなかった。責任者を形ばかり更迭しただけ。最前線から生命からがら脱出してきた将兵を、なぜ玉砕しなかったのかと叱ったあげくに冷遇し、ソ連軍の捕虜となって送還された将校にはピストルを与えて自決させた。しかし、小松原司令官や辻参謀たちはのうのうと生きのびた。なんとむごいことでしょうか・・・。
 ソ連軍のジューコフ将軍はスターリンに次のように報告した。日本兵は強かった。下士官はよく訓練され、頑強に戦った。しかし、古参の士官と高級将校は訓練が不十分で、積極性が無く、紋切り型の行動だった。関東軍の作戦参謀も同じことを指摘している。前線指揮官は第一級で、下士官や兵も戦闘に習熟して優秀だった。しかし、中・小隊長に弱点をかかえるものが多く、大隊長はもっとも手薄だった。
 今でも、精神訓話だけが好きな日本人って、多いですよね。科学的というか合理的な裏づけもなくても部下に無理強いする上司がみちみちているように思います。とくに昨今の国会方面は、そんな人間ばかりという気がします・・・。

戦場の現在

カテゴリー:未分類

著者:加藤健二郎、出版社:集英社新書
 早稲田大学の理工学部を出て、建設会社勤めのあと戦場ジャーナリストになったという異色の人物によるレポートです。
 中米・中東・東欧・アジア・アフリカなど世界各地の戦場に出かけて写真をとってきました。現地で何度も捕まった体験をもっています。本当に危ない瞬間を何度となくくぐり抜けてきたことがよく分かる本です。どうして、こんな危ない目にあおうとするのか不思議な気がします。でも、著者のそんな行動のおかげで、私たちは安全地帯にいて寝っころがりながらも世界の実情の一端を知ることができるのですから、少しは感謝しなくてはいけないのでしょうね・・・。
 逃げるときには、たくさんの人が逃げる方向へは行かないことが重要だ。
 戦場では、実際に人が殺されるのはあまりない。しかし、戦況報告はたいてい大きく誇張される。それは、現場にいた者のほとんどすべてが、戦闘を大げさに捏造することによってトクをするからだ。
 今回のイラク戦争では、アメリカ軍は通常なら侵攻する前に空爆によってイラク軍を叩くはずなのに、それをしていない。それは、イラク軍が抵抗しないことに確信をもっていたからだ。イラク軍には組織的な抵抗をする戦力がなく、イラク兵には戦う意思をもっていない。これをアメリカ軍は事前に察知していた。なーるほど、ですね・・・。
 日本の自衛隊でも、実際にイラク復興のため実働するのは、1日わずか50人程度でしかありえない。では、自衛隊はイラクに何をしに行っているのか。それは日本の国防のためでも日本人の安全のためでもなく、ましてやイラク人のためなどであるわけはない。自衛隊をイラクへ派遣する目的は、自衛隊の運用範囲拡大のための前例つくりである。つまり、本当の目的は、日本国内における自衛隊の地位向上、権限拡大、運用範囲の拡大である。現地イラクの事情とは関係のないところで、日本政府の思惑によって決まってなされていることなのである。
 うーん、そうなんですよね。そうとしか考えられません。真面目にイラクの人々への人道支援をしたいのなら、世界のNPOに資金援助すればもっと効果的だということは既に大勢の人が言っていることです・・・。

イラクー湾岸戦争の子どもたち

カテゴリー:未分類

著者:森住 卓、出版社:高文研
 1991年1月に始まり、わずか43日間で終わった湾岸戦争が終わって7年後の1998年にイラクへ行った写真家による写真集です。劣化ウラン弾が今なお大勢のイラク人とりわけ子どもたちを苦しめていることがよく分かります。
 劣化ウランは半世紀に及ぶ核兵器や核燃料の生産過程で生み出される。だから、総計 110万トンの半分近くがアメリカ(47万トン)であり、ロシア(43万トン)。しかし、日本も2600トンも生み出している。これは放射性廃棄物として厳重に管理・保管しなければならない。そのためには莫大な費用がかかる。
 ところが、劣化ウランが固くて重いことに着目してアメリカの兵器産業は兵器に利用することを考えついた。劣化ウラン弾は戦車に命中すると、分厚い装甲を貫通し、その摩擦熱で一気に燃焼させて乗員を焼き尽くす。同時に煙霧状(エアロゾル)化する。これは広範囲に拡散する。
 巡航ミサイル・トマホークも劣化ウラン弾がつかわれた。結局、広島に落とされた原爆の2万倍から3万倍の放射能がペルシャ湾岸地方にばらまかれた。その結果どうなったか。イラク南部のバスラ市では、湾岸戦争前の1988年にガンで死亡した人は34人だった。ところが、1996年219人、98年428人、00年に586人、01年には608人と急増した。
 無脳症の赤ちゃんの写真があります。生まれたときから頭部の上半分が欠損しています。口から泡を吐き出し、何時間も生きてはおれません。白血病に苦しむ子どもたちもたくさんいます。治療薬のため頭髪が抜けおちてツルツル頭となった少年のつぶらな瞳が印象的です。
 ミルクが買えないため栄養失調で死にかけている赤ちゃんは、ガリガリで顔が尖っています。水頭症の赤ちゃん、皮膚ガンの少年、腹水がたまってお腹がポンポンに膨れあがっ
た少年の写真が次から次へ紹介されています。子ども専用の墓地もあります。一日に4、5人が埋葬されます。広い墓地にたくさんの墓標が見えます。どれもこれも目を逸けたくなるものです。でも、私たちは現実をしっかり見つめるべきです。
 そんななかでも、イラクの子どもたちの目が輝いているのが救いです。学校はスシ詰め。遅れて登校すると座る机もありません。床にすわりこんでノートをとります。
 いったいイラク戦争とは何だったのか。それはイラクの人々に何をもたらしたのかを考えさせる貴重な写真集です。

それでもやっぱりがんばらない

カテゴリー:未分類

著者:鎌田 實、出版社:集英社
 がんは冷やしたらダメ。乳がんや子宮がん、卵巣がんなど、女性のがんはあたためなければいけない。体温が上がると、がん細胞とたたかうリンパ球が働きやすくなる。免疫機能は温度が上がった方が働きやすくなる。身体を温めるのは、がんの予防にもなる。また、副交感神経を刺激すると、リンパ球が増える。だから、がんとたたかうためには、ホッとしている時間をつくることが大切。
 余命告知はあたらないことが多いわりに、本人や家族を暗い気持ちにして免疫機能を低下させる。免疫機能を上げるためには、希望をもてる話をすべき。ところが、あとで家族から責められないように、医師はことさら厳しく告知する傾向がある。そんな言葉にまどわされず、希望を持ち続けることが大切だ。
 著者は父親から一度も誉めてもらったことがないそうです。厳しく、怖い父親だったようです。叱られて、叱られて、ぼくは育った。こう書かれています。学校の百メートル競走で1位になっても父は誉めてくれなかった。学校の試験でいい点をとっても父は誉めてくれなかった。余力を残しているのを見抜いていたからだ。全力を出しきらない息子を父親は認めようとしなかった。
 うーん、なんだかよく分かりません。なぜだったんでしょうね・・・。私は、それほど父親から直接誉めてもらったという記憶はありませんが、それでも叱られて、叱られて、ということは決してありませんでした。
 なんだか、ほのぼの、ほんわり軽い気持ちにしてくれる本です。カットの絵も癒し系です。私と同世代の著者は定年まであと10年を残して、院長として勤めていた病院を早期自主退職してしまいました。すごい決断です。がんばりすぎないで、自分に正直に生きていきたいという著者の静かな訴えがよく伝わってくる本です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.