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志ん生長屋ばなし

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著者:古今亭志ん生 30年ほど前、ひところ落語のテープをよく聴いていた。子どものころ、落語全集があったので、それも読んでいた。ラジオでも広沢虎造の浪曲や古今亭志ん生の落語を聴くことがあった。
 私の同期の裁判官に、今もたまに高座に出るほど落語にうちこんでいる人がいる。難しい法律の話をさせても、いつのまにか落語を聴いているような気分になり、頭のなかにすーっと入ってくるから不思議だ。やはり人の心をつかむ話術というのは、すごい力がある。
 志ん生の長屋を舞台とした古典落語を読むと、いつのまにか寄席にすわって落語をじっくり聴いているような気がしてくる。座布団にちょこんとすわって、道具といえばせいぜい扇子と手ぬぐいくらいなのに、この世のものすべてそれらで表現されるという不思議な世界が目の前に現出する。
 江戸時代の長屋に生活していた庶民のたくましい息づかいが伝わってくるところが実にいい。 
、出版社:ちくま文庫

スノーモンキー

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著者:岩合光 有名な動物写真家による長野県の地獄谷のニホンザルの一年と一生をうつした大判の写真集です。眺めているだけで、なんだか心がゆったり、ほのぼのとしてきます。
 白い雪を頭にかぶりながら、温泉につかっているサルの写真は、まるで、タオルを頭の上にのせて雪見酒を飲んで顔が赫くなってしまった人間(ヒト)の写真です。子ザルたちが群れをなして遊んでいる写真には生命の躍動を感じます。母ザルと子ザルとのあいだの親密な関係もうつされています。人間の赤ん坊とそっくりです。
 春になって木々が芽ばえてくると、サルたちも生き生きしてきます。ヤマザクラの花も食べます。サルの赤ん坊は、4月から6月にかけて次々に生まれます。必死で母ザルにしがみつく赤ん坊ザルの可愛いらしさといったら、ありません。そして、姉さん子ザルが赤ん坊の面倒をみたがるのです。
 秋は、サルたちの交尾期。オスもメスも顔や尻を真っ赤にします。秋のオスは、ひたすら交尾に集中するのです。メスもそれを受けいれます。
 サルは母系家族。ほら、似てるでしょ。そう言われても、なんだかみんな同じような顔に見えます。でも、じっくり見ていると、たしかにサルごとに違った顔をしていますし、似てもいる気がしてきます。
 サルの寿命は25年から30年と言われています。ひっそりと死んでいくそうです。
昭、出版社:新潮社

兵士であること

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著者:鹿野政直、出版社:朝日新聞社
 兵隊は一銭五厘の葉書で、いくらでも召集できる。
 このようによく言われます。しかし、これには2つの間違いがあります。召集令状は葉書では送られていません。役場の兵事係の人が一軒一軒たずねて手渡すのです。郵便配達夫ではありません。召集令状は受領証がついていて、本人が何時何分に受けとったというハンコが必要で、左の方には汽車の無料乗車券がついていました。それに、葉書は1銭5厘のときもたしかにありましたが、日中戦争が本格化したころには2銭になっていました。
 1942年にコンドームが軍需物資として3210万個つくられています。「慰安所」へ行かない兵士がいると、その兵士は特殊視されました。慰安所へ行かない兵士は気違いだとののしった将校がいました。ある陸軍軍医中尉の報告にのっています。
 日本軍が中国の女性を腰ひもでくくって地雷踏みをさせていたという話も出てきます。山羊や羊の群と同じことをさせていたのです。むごいことです。
 中国戦線に配置された兵士たちが、故郷への手紙のなかで、ほぼ一様に伝えるのは、中国人の抵抗の強さでした。日本兵も強いが、支那兵も相当がんばります、と書いていました。小便一丁、糞八丁という言葉をはじめて知りました。尿意・便意を催し、用を足しているあいだに、部隊がその距離ほどをいってしまうという意味です。
 ある軍曹が、突如便意を催し、やむなく道路のそばのヤブで用を足し、終わって道路に出てみたら、もはや見渡すかぎり人の気がなかった。つい先ほどまで敵の跳梁していた壕所にたった1人いる。かつてない恐怖を覚えた。なんとなく、分かる情景です。
 当時の青年は、人生25歳説をとなえていたというのです。戦争のなかで、長く生きることはまったく保障されていなかったわけです。私は、今やその2倍以上も生きていますが、本当に良かったと思います。まだまだ、知りたいこと、やってみたいことがたくさんあります。
 にもかかわらず、現代日本で人生25歳説を実践しようとする若者がいるのです。もっと自分を大切にしようよ、と私は叫びかけたい気分です。
 日本人は平和ボケしている。そのように言う人がいます。でも、人を殺したことのない人ばかりの社会って、本当にいいことだと私は思います。韓国と違って徴兵制のない日本では、幸いなことに軍隊に無理矢理に入れられて人殺しの訓練をさせられることもありません。人を殺すことも、殺されることもない今の日本の平和を大切に守りたいと思います。
 アメリカでは人を殺せるようになって初めて1人前の男と認められるという本を読んだことがあります(ダグラス・スミス氏の本です)。なるほど、私の世代でいうと、ベトナムの戦場に駆りたてられて、大勢の罪なきベトナム人を殺しまくりました。たくさん殺せば殺すほど英雄になるのです。その点は、お隣の韓国でも同じでした。
 でも、私は、アメリカみたいな戦争をしかける国に日本をしたくありません。ですから、私は日本国憲法9条とりわけ2項を絶対に守り抜きたいと考えています。

勝つ工場

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著者:後藤康裕、日本経済新聞社
 日本の企業は中国に引き続き続々と進出しています。2004年の対中投資額は55億ドルで、過去最高でした。世界からの対中投資額も600億円を超えました。ところが、このところ、中国で「安く」モノをつくって日本で売るというより、「中国でつくり、中国で売る」というスタイルが中心になりつつあります。日本企業が日本でモノをつくるのを復活させはじめたのです。そのひとつがキャノン。
 キャノンは大分にデジタルカメラ製造工場をもっています。デジタルカメラの生産コストに占める人件費の比率は1%以下。人件費の安さはコスト競争力の決定的な要因とはならないことが背景にあります。
 そして、キャノンは国内生産の25%を自動化、無人化するが、これは決して人減らしが目的ではない。安定雇用こそ「勝つ工場」の要因だとみているのです。
 日本の製造業は、いま海外展開をさらに進めながら、同時に国内事業を拡大・強化する二正面作戦をとり始めている。生産よりも研究・開発を国内で優先させる戦略にもとづいている。
 九週間一本勝負の原則が、日本だけでなく、今や世界市場に共通している。発売から9週間が勝負。発売した機種が一週間ごとに価格をおとしていくスピードがかつてなく速くなっている。
 企業は開発した技術の特許出願をしない。その代わりに、公正証書をつくって、公証役場に預託しておく。後に特許権者が現れても、先発明を証明して、無償で使用できるようにしておくのだ。特許出願しておくと、海外の企業から模倣されてしまう心配がある。ヨーロッパの企業の特許出願が少ないのは、このような事情があるためで、開発力が弱いからではない。「勝つ工場」の条件は細部に宿る。
 うーん、日本企業が生き残っていく条件は厳しいのですが、やはり努力すれば道は開けていくものなんだ・・・。この本から多くのものを学ばされました。日本人も、まだまだ捨てたものではありません。
 最後に、この本とは関係ありませんが、小泉首相のように靖国神社の公式参拝を強行し、過去の日本の侵略戦争を美化するようでは、中国・韓国をはじめとする東南アジア諸国から日本は信頼されず、経済的にも行き詰まってしまうと思います。
 日本の経済発展は憲法9条を中核とする平和憲法にも裏付けられていることを日本人はもっと自覚すべきだとつくづく思います。

諫早の叫び

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著者:永尾俊彦、出版社:岩波書店
 わが家のまわりにはたくさんの田んぼがあります。もうすぐ稲に白い小さな花が咲きます。残念なことに、減反の対象となっている休耕田もあちこちに見かけます。田んぼに雑草が生えているのを見るのはわびしいものです。地球規模では食糧不足のため飢えている人が何百人もいるというのに、食糧自給率を高めようとしない小泉政策には首をかしげるばかりです。なんてったって、自動車をつくっているだけでは日本人は生きていけないのですよ・・・。
 無理矢理に減反政策をすすめる一方で、海を埋め立てて干拓地を農地にするというのですから、小泉政治って理解不可能です。こんな矛盾だらけの政権を支持している日本人って、いったい何なのでしょう・・・。
 でも、はっきりしていることは、日本人にとっての長期的な展望とは無関係に、短期的に(つまり、その場限りでは)大型公共事業をすればゼネコンが喜ぶことは間違いないという現実があります。日本は戦後一貫して、この自民党型政治によって動いてきました。でも、本当にこれでよいのでしょうか・・・。
 マリコンという言葉を、私は初めて知りました。有明海の漁場の底質「改善」のために砂をまく覆砂(ふくさ)事業というのが行われているそうです。もちろん、国が税を投入しているのです。97年度から01年度までの5年間に、福岡・佐賀・熊本・長崎の4県で78億円、02年度は40億円です。これには自民党のボス議員の1人である古賀誠代議士が大きな力を発揮しているそうです。こうした覆砂事業をするのがマリコン。覆砂事業を受注する上位4社は三井建設、若築建設、佐伯建設、東亜建設、いずれも2億円以上。これらのゼネコン会社などから、古賀誠代議士は公表されているだけでも、1000万円以上の政治献金を受けとっているのです。ちなみにマリコンの大手は五洋建設です。
 有明海のノリ生産の不振は深刻です。自殺や一家心中が相次いでいます。親を殺して自分の死のうとしたけれど死にきれなかった漁民の殺人事件を担当した弁護士は私もよく知っている人です。まさに誤った国家政策の犠牲者としか言いようがありません。
 自己破産申立も多発していますが、法的救済を受けることなく、夜逃げしてしまう人も多いようです。減反政策をこのまますすめて日本の将来はあるのか、ゼネコン以外に益のない埋立(干拓)をすすめて漁業をつぶして本当にいいのか、私たちはよくよく考え直す必要があると思うのです。

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