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日露戦争の兵器

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著者:佐山二郎、出版社:光人社NF文庫
 中国の大連には何度か行ったことがあります。一番最初に行ったときには、まだ旅順市内は外国人に開放されていないということでした。しかし、その後、行けるようになりましたので、二〇三高地や東鶏冠山堡塁力などを見学してきました。
 この本は、日露戦争当時につかわれていた兵器を写真つきで解説したものです。二〇三高地をめぐる凄惨な争奪戦がいかにすさまじかったか、いろんな本に書かれているのですが、こうやって兵器の写真を見ると、また一層イメージが湧いてきます。
 有名な28センチ榴弾砲はさすがに巨大で、10トン半もありました。これを、なんと人力だけで山上へ持ち上げている写真があります。また、二〇三高地に、これから胸と背の双方に爆薬をからって突撃しようとする日本軍の決死隊の写真もあります。これは、今ひんぴんと起きているイラクにおける自爆攻撃と同じようなものだったのでしょう。死んだら本当に天国に行けると思えたのか、かなり疑問ですが・・・。
 二〇三高地は、いま観光バスでのぼると、何の変哲もないなだらかな丘のような山並みです。ここをめぐって、何万、何十万人もの将兵が死んだなんて、とても信じられません。

一枚摺屋

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著者:城野 隆、出版社:文芸春秋
 さすが松本清張賞を受賞した小説だけのことはあります。ぐいぐいと読み手を引っぱり、飽かせません。本格的モノ書きを志向する私も、こんなストーリーを新人で書けるんだったら、あきらめるしかないか、そんな絶望感にとらわれてしまうほどです。ところが、新人といっても、奥付をみたら、なんと私と同世代ではありませんか。いや、それなら、もしかして、ひょっとすると、ぼくだって・・・、そんな気が急にしてきました。
 それはともかく、時代は幕末の大坂(当時は、大阪とは書きません)です。読み切り瓦版、いえ、もぐりの瓦版づくりを主人公としています。幕末の大坂には不穏な動きがあります。そして、少し前には大塩平八郎の乱が起こっています。物語はなんと、その大塩平八郎の乱の生き残りがひき起こすのです。時代背景など、読んでいて安定感があるとオビにあります。そのとおりです。江戸の時代小説の書き手がまた1人ふえた気がします。

へんな虫、百面相

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著者:難波由城雄、出版社:光人社
 そのままポストカードになる昆虫たちの写真集です。へんな虫というけど、フツーの昆虫たちの顔がアップでとられているだけなのです。
 オニヤンマの顔があります。その緑色した複眼は、子どものころ、何回となくしげしげと見入りました。いったい、たくさんあるこの眼はどこを見ているのだろうと不思議に思いました。
 クワガタもいます。夏休みになると昆虫採集に出かけました。昆虫の標本づくりに挑戦したこともありますが、それほどうまくは集めることができませんでした。クワガタもカブトムシも山に行ってなんとかつかまえました。今では道路端でも売っています。昆虫が売りものになるなんて・・・。
 カマキリはわが家の庭にもたくさんいます。オスは交尾したあと、メスに食べられてしまうという話があります。食べられないうちに逃げおおせるオスもいるようですが、オスって、どこでも実は哀れな存在なんですよね・・・。
 30年以上も弁護士をしていると、やはり本当に強いのは女性であって、男なんて弱いもんだとつくづく思うのです。ですから、やっぱり女って弱いんですよね、とか、女は損ですねと嘆く相談者に対して、女性の方が平均寿命で6年以上も長生きしていますし、キンさんギンさんは106歳まで生きておられましたけれど、男はせいぜい泉さんの100歳だったんじゃないですか、と反問することが多いのです。いかがでしょうか・・・。

アウシュヴィッツ博物館案内

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著者:中谷 剛、出版社:凱風社
 日本人青年がアウシュヴィッツ博物館で唯一の外国人公式ガイド(嘱託)として働いているというのです。私も、アウシュヴィッツ強制収容所跡地にはぜひ一度は行ってみたい、現地に行って人類史上最悪の愚行の現場に立って、人間とは何者なのかということを改めて考えてみたいと思っています。
 ところが、この本によると日本人の青年はあまり行っていないのですね。韓国からは年に2万人あまり行っているというのに、日本からは年に6700人ほどで、しかも年輩者が中心だというのです。もっと日本人の若者にも出かけてもらわないといけません。
 海外旅行大好き人間の多い日本なのですが、楽しいところではないので敬遠するのでしょう。残念なことです。といっても、現地はかなり交通の便がよくないようです。それでも著者は、この町に一家をかまえて14年になるというのですから、たいしたものです。
 博物館案内というわけですから、アウシュヴィッツの隅々まで図解と写真で説明されていますので、強制収容所当時のことが、かなり想像できます。でも、体験記を読まないと本当の苦しみや辛さは伝わってきません。ただ、その体験者も既にすっかり高齢者となっています。きちんと若者に語り継いでいく責務が、大人の私たちにはあります。
 ガス室で殺された人の半分は女性。収容所登録者の3割が女性。最大のとき、一時期4万5000人の女性が強制労働に従事させられていました。収容所の隣りに大きな戦時工場(I・G・ファルベン)などがあり、そこで働かされていたのです。
 なんともいいようのない辛い現実ですが、人類の歴史の真実から目をそむけるわけにはいきません。

未来をひらく歴史

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著者:日中韓3国共通歴史教材委員会、出版社:高文研
 日本と中国、韓国という3ヶ国の研究者と教師が3年間、国際会議を10回も重ね、共同して編集・執筆した近現代史のテキストです。画期的な労作だと思います。
 前事不忘、後世之師
 これは、歴史を忘れずに未来の教訓とするという中国のことわざです。いま、日本では「新しい歴史教科書をつくる会」が全国各地で、日本は侵略戦争なんかしていないという歴史的事実に反する、間違った内容の教科書を子どもたちに押しつけようとしています。でも、日本がしたのは侵略戦争ではなかった、アジアの民衆を欧米列強の植民地支配から解放し、生活向上に役立ったのだということを、中国や韓国に行って、また東南アジアの国々に行って胸をはって主張できると本気で思っているのでしょうか・・・。
 実は、私の父も三井の労務係りとして戦前の朝鮮半島へ人間を駆り出しに出かけたことがあります。強制連行の直前のことでした。あまり悪いことをしたという自覚が父に見られなかったので、不思議に思って尋ねると、当時、あっちには食うものも仕事もなかったので、彼らは日本へ喜んでやってきたというのです。これも、日本政府が当時、朝鮮半島から米を強制的に供出させていたことの結果なのです。そのことも、この本に明らかにされています(71頁)。現象だけをみていると、間違って理解することもあるのです。
 だれでも、楽しくない記憶は早くなくしてしまおうとする傾向がある。気楽に楽しく生きていきたいから。しかし、悪い記憶をなくしてしまうと、また倒れてしまうことがないとは限らない。過去のあやまちを覚えておくと、同じあやまちを犯すという愚かさを避けることができる。そうなのです。
 ところで、日本に流れ着いた朝鮮人漂流民が16世紀末からの270年間に1万人ほどいたそうです。すごい人数です。でも、考えてみれば当然ですよね。それだけ近いわけですから。同じように中国や朝鮮に漂流した日本人もいて、お互いに送還しあっていました。その程度の交流はあったわけです。
 清朝末期の政治家として有名な李鴻章は、生涯にわたって自分は外交の名手であると自負し、多くの重要な外交交渉にあたった。しかし、多くの不平等条約は、彼の手によって調印されたというのが歴史的な事実である。なるほど、そうですよね。
 日本が韓国を併合したのか強占したのか、国際法からみて不法かどうか、日本の学者のなかで結論が出ていないと書かれています。
 1905年の第二次日韓協約(乙巳条約)は強制によるものだという点では理解が共通していても、「併合」以後の35年間に及ぶ植民地支配は国際法からみて不法だという点で韓国の学者は一致しているが、日本では一致をみていないというのです。本当でしょうか・・・。韓国では強制的な占領を意味する「韓国強占」と呼ばれていることを初めて知りました。知らないことは本当に多いものです。
 そして戦後60年近くたった2004年に、韓国政府は、「反民族行為真相糾明特別法」を制定し、親日派の調査に政府として取り組んでいます。つい先日、氏名公表がなされたという報道がありました。まさに親日派とは反民族行為をした存在なのです。このことを私たち日本人はもっと重く受けとめる必要があると思います。
 これは決して自虐史観などという低次元のものではありません。

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