著者:倉谷 滋、出版社:岩波科学ライブラリー
人間は母体のなかでヒトとなっていくとき、祖先の動物の進化の歴史を忠実にたどっていくというのが反復説です。私は、ずい分前からこの説を信じてきました。
この本は、それは本当なのかと疑問を投げかけています。考えてみれば、動物の進化の歴史といっても、そんなに単純ではありませんので、いったい反復する進化とは何をさすのか、という疑問もわいてくるわけです。たとえば、カメは原始的な存在ではなく、むしろワニやトリに近いというのが、最近の分子進化的な解析によって判明したことです。つまり、生物が進化するといっても一本道ではありません。そこには例外だらけなのです。
下等動物とか高等動物という表現がなされることがあるが、それはとても一義的に定義できる用語ではない。実際の発生は一直線には進まない。なーるほど・・・。
よくよくかみしめて読めば分かるかもしれませんが、わずか100頁たらずの本書には難しすぎて理解できないところが多々ありますので、簡単には要約できません。
でもでも、単純に進化の過程を個体の発生過程でくり返す、そんなことは言えないということだけは、私にもなんとなく分かりました。
2005年9月30日


