法律相談センター検索 弁護士検索

江戸の男色

カテゴリー:未分類

著者:白倉敬彦、出版社:洋泉社y新書
 男色(なんしょく)は、日本では奈良・平安時代の公家・僧侶の社会、鎌倉・室町の武家社会、そして江戸時代には庶民をもふくんで連綿と続いてきた性風俗です。
 織田信長と小姓の森蘭丸の関係はあまりにも有名です。これは主人と小姓との間の忠義(主従関係)と、武士間の年長者と年少者との念契(男色上の契約)という二重契約が成立していたと著者は指摘しています。武家社会では男対男の関係が、女色に優先していたという特徴があります。
 江戸時代、男色は梅の香のごとく清らかに芳(かぐわ)しい、というのが当時の主張(考え)であったそうです。とても本当だとは信じられません。
 この本にはたくさんの浮世絵、いわゆる笑い絵です、が紹介されています。いずれも、男色がいかに横行していたかということを意味しています。
 江戸時代、上級の武士たちが若者を男色の相手として楽しんでいたのですが、若衆狂いは女性も負けていなかったそうです。
 三代将軍家光の男色好きは有名だったとのことですが、五代将軍綱吉となると、寵童(ちょうどう)を150人もかかえていました。恐るべき人数です。
 江戸の武家社会は男色・女色とりまぜての融通無碑だったのです。
 男色を売る陰間茶屋が繁盛しましたが、18世紀中期以降は、役者買いの主役は女性にとってかわりました。
 それにしても、武士の息子たちまでが長振袖などを着て町中を闊歩していた、坊主が白昼堂々と陰子(男色を売る若い男)を連れて物見遊山に出かけていたというのです。江戸時代を固苦しいものと考えていると、とんだ間違いをしてしまうようです。

ローマのガリレオ

カテゴリー:未分類

著者:W・シーア、出版社:大月書店
 ガリレオは、立ち上がるとき、それでも地球は動いている(エプール・シ・ムオーヴェ)と小声でつぶやいたと一般に言われている。心の中ではそう確信していたかもしれないが、判事たちの前ではそれを出さないだけの思慮深さはもっていた。
 ガリレオを呼び出して裁いた検邪聖省の法廷は、ガリレオに対して七つの贖罪の詩篇を向こう3年間、週1回20分間唱えるという判決を下した。判決文が読みあげられたあと、ガリレオは膝まずいたまま暗唱し、正式な異端教棄の宣誓書に署名した。宣誓書は次のようなもの。
 私は異端の疑いが濃いという判決を受けました。それは、私が太陽は世界の中心にあって不動のものであり、地球は世界の中心にはなく動いているという説を信奉していたことによるものです。私は異端を放棄します。これから先、二度と口頭でも著述の形でも、ふたたび私に疑いがかけられるようなことを口にしたり断言したりいたしません。
 ガリレオは1632年に監獄に収監するという判決をうけたものの、実際には、トスカーナ大公のメディチ荘に移され、その後はシエーナ大司教の招待を受けて2、3ヶ月を過ごした。大司教はガリレオを善良なカトリック信者の賓客として扱い、夕食に招いた。それから、フィレンツェに戻った。フィレンツェではガリレオの著書である「対話」の値段が急騰した。もともと半スクードだったのが、6スクードにまではね上がった。
 ガリレオは、聖書が誤るはずはないが、その解釈には誤りが生じうるという立場だった。
 異端審問所の法廷では、被告は召喚されたら、自分の弁護はできず、ただ誤りを認めて撤回するしかなかった。自らの罪を認めて告白する方が賢いというよりは、無理やりそうするようにし向けられた。ただ、有罪が確定していたとしても、その量刑は尋問のあと初めて決定される。ガリレオの人間像に迫った本です。

非武装地帯

カテゴリー:未分類

著者:イ・キュヒョン、出版社:PHP研究所
 1979年、韓国の朴正熈大統領がKCIA部長に暗殺されました。以後、49日間にわたって大統領が不在という非常事態のなか、北朝鮮軍の精鋭部隊が非武装地帯に侵入してきます。それを韓国軍の捜索隊が阻止して、戦闘状態に入ります。
 当時、実際に部隊の一員として非武装地帯の警備にあたっていたという体験にもとづく小説だけに、圧倒的な迫力があります。
 北朝鮮軍が南侵のために掘りすすめていた地下トンネルが、これまでに4本発見されています。地下50メートルから160メートルの深さで、長さは2キロから3キロもあります。幅は2メートル、高さ2メートルほどです。北朝鮮は一貫して南のデマ宣伝だとしてきましたが、北朝鮮がつくったものであることは間違いないようです。この本では、北朝鮮による地下のトンネル掘進工事を発見するのを任務とする韓国軍の部隊がいたことを明らかにしています。
 この本や、「JSA」「シュリ」「シルミド」「ブラザーフッド」などの韓国映画を見ると、韓国と北朝鮮が朝鮮戦争後も、何度も本格的戦闘行為の寸前までいったことがよく分かります。それほど緊張度の高い社会だったわけです。
 それにしても、徴兵制度のある韓国に生まれなくて幸いでした。軍隊の理不尽かつ野蛮な鉄拳制裁には、「軟弱な」私なんか、とても耐えられません。しかし、そんな道理の通らない軍隊生活のなかでも要領よく泳いでいく人間がいるのですね。やはり暴力だけでは上に立てないようです。コネとお金と運をフルに駆使して上にはい上がっていくわけです。そうみると、案外、いまの「平和な」日本社会だって本質的にはそう変わらないのかもしれません。勝ち組、負け組などという嫌味な言葉が平然とまかり通る世の中なのですから。あー、やだやだ・・・。

E=mc2

カテゴリー:未分類

著者:ディヴィッド・ボダニス、出版社:早川書房
 アインシュタインがE=mc2 の論文を発表して100年になるそうです。
 光の速さを測定する方法というのを知りました。ガリレオの時代です。ある夏の夜、1マイル離れたふたつの丘の中腹に、それぞれランタンを持った人が立ち、1人がランタンの覆いを先にとり、その光が見えた瞬間にもう1人も覆いをとる。そこで生じた時間差が、光が平地をわたるのに要した時間というわけだ。しかし、この実権はもちろんうまくいかなかった。光があまりにも速すぎることが知れただけで終わった。
 18世紀のフランス。ヴォルテールの庇護者であり愛人でもあったデュ・シャトレ夫人は重りを柔らかな土の上に落とす実験をした。小さな球体を、前に落としたときの2倍の速度で落としたところ、球は土に4倍の深さの穴をつくった。速度を3倍にすると、深さは9倍になった。こうやって、物理学者は、物質の質量に速度の2乗をかけるということに慣れ、その物質のエネルギーを示す便利な指標を手に入れた。これがmc2の源なんですね・・・。
 ナチス・ドイツはノルウェーの工場で重水をつくりはじめていました。その開発を阻止するために、イギリス軍が精鋭をノルウェーの工場へグライダーで送りこんだ。しかし、 30人の若い兵士たちはナチス・ドイツに発見され、全員殺されてしまった。次いで、9人の亡命ノルウェー人が派遣された。今度はなんとかうまくいって、重水の製造工場は爆破された。これによってナチス・ドイツによる原爆開発は阻止されたのだ。
 こんなことがあったなど、ちっとも知りませんでした。

危ない食卓

カテゴリー:未分類

著者:フェリシティ・ローレンス、出版社:河出書房新社
 著者はイギリス人の女性です。フランスで休暇を過ごしたときのことを次のように書いています。
 フランス人が食文化を守りつづけていることに感心した。フランス人は地元で生産したものに誇りを持っていて、それを食すことを楽しんでいる。店の人は常に「ボナペティ」(たんと召しあがれ、という意味)と声をかけ、正午には店を閉めて帰宅し、3時間の昼休みをとる。
 そうなんです。3時間の昼休みはともかく、私がフランスに行きたいのは、美味しいものを楽しく味わうフランス人の生き方に賛同しているからでもあります。イギリスでは、それがありません。
 ファーストフードを大急ぎで胃の中に流しこみ、自宅のディナーでも調理ずみチキンと袋から出したカットサラダを盛りつけるだけ。
 著者はスーパーで売っているチキンの解体現場に潜入して働きました。実は、私の依頼者が先日、鶏肉生産工場に就職したのですが、その苦悩のほどをたっぷり聞かされました。要するに毎日、生きた鶏の首を包丁で切り落とす仕事なのです。この本では頸動脈切断機という言葉が出てきますので、イギリスでは、その仕事は機械化されているのかもしれません。私に話してくれた人の職場では、人間が手作業でしているそうです。殺される鶏の方も、危険を察知して、ひとしきり、ひどく暴れるそうです。そして、糞尿を周囲にばらまいたりして必死に抵抗するのです。それを抑えて短時間で次々に殺していく作業です。上司からは、誰かがやらなければいけない仕事だ。モノだと思えばいいし、そのうちに慣れてくるからと慰められたそうです。でも、私にはとても耐えられません。いかにも、辛そうな口調で語ってくれました。うーん、そうかー・・・、そうだろうなー・・・。私は、何と言ってよいか、返す言葉が見つかりませんでした。
 この本では、そのような悩みの次の場面が問題となっています。解体して生産されているトリ肉は、いったいどこの国で生産されたのか不明なほど、あちこちの国のトリ肉が混ざっていて、食品ラベルはウソだらけだというのです。
 チキンナゲットはトリの皮からできている。イギリス人はトリのむね肉を好み、日本ではもも肉が人気だ。足は中国で、砂袋はロシアで好まれる。膨大な量のトリ皮が残るので、トリ皮はチキンナゲット加工業者をめざして世界中を旅することになる。実は、風味のあるナゲットをつくるにはトリ皮を15%入れるのがちょうどいい。
 オランダ産の業務用チキンから、ブタのたんぱく質と大量の水が検出された。ウシ廃棄物を混ぜたトリ肉はイギリス全土に流通していて、チキンナゲットのメーカーがそれを使っている。最近の鶏舎には、3万羽から5万羽のニワトリを入れている。給餌も給水もコンピューター管理。ニワトリに与えるえさと水に寄生虫退治の薬や、必要に応じて大量の抗生物質が混ぜられる。
 1957年、食用ニワトリの平均生育期間は63日で、体重1キロあたり3キロのえさが必要だった。1990年代には生育期間は42日、えさは1.5キロですむようになった。2007年には、体重2キロのニワトリを生育する日数は33日になる予定。半減する。ところが、ニワトリ自身の健康が危なくなってきた。
 うーん、トリ肉もチキンナゲットも恐ろしい食品だったのかー・・・。
 この本は、また、食品の危険性だけでなく、巨大スーパーの進出が社会機構を壊すことも強調しています。
 地域の食料品店というのは食べ物を買う機会だけではなく、いろいろな社会機能をもっている。近所の人と出会って会話をかわす場であり、お年寄りや小さい子たちのふれあいがあり、人のつながりと安心感をもたらす場なのだ。ところが、郊外型ショッピングセンターができると、そのような機会も機能も喪われ、人の住む地域は「食の砂漠」地帯と化してしまう。
 イギリスでは、6大スーパー・チェーンが食品市場の4分の3を支配している。イギリスの食品の半分は1000軒の大型スーパーで売られている。いや、実は世界の食品小売業トップ30社は全世界の食品売り上げの3分の1を支配している。
 アメリカのウォルマートは世界一大きな小売業であるだけでなく、世界一売上高の大きい企業でもある。その売上高は2450億ドル。第二位はフランスのカルフールで、売上高は650億ドル。ウォルマートの4分の1でしかない。今後5年間で、小売が食品供給連鎖を完全に支配することになる。つまり、全世界の食をほんの数社の巨大グローバル企業が支配することになるのだ。
 日本人の好むエビ、あのブラックタイガーについても取りあげられています。
 抗生物質と成長ホルモンにどっぷりつかっている。ブラックタイガーは肉食動物なのでエビ一匹を育てるために、その体重の2倍以上のたんぱく質を与えてやらなければならない。えーっ、そうなんだー・・・。日本人は東南アジアの環境破壊の元凶なのか・・・。エビを食べるのも、ほどほどにしなくっちゃ。
 食は生きるうえでの最上の喜びのひとつ。そのために買い物をし、料理をし、食卓を囲むことで、人と人とは結びついてきた。人は人と食事を共にすることで、社会を築いていく。食を考えることは、私たちはどんな社会の一員でありたいのかを考えることでもある。
 うーん、怖い。いろいろと毎日の食生活のあり方の根本を考えさせられる本でした。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.