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クジャクの雄はなぜ美しい?

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著者:長谷川眞理子、出版社:紀伊国屋書店
 10年前にも読みましたが、増補改訂版ということですので、また読んでみました。
 著者は人類学者ですが、最近では法曹の世界にも関わっています。裁判官を10年ごとに審査する機関が最近つくられましたが、そのメンバーの1人でもあります。このところ、裁判官が再任されないケースが増えているのですが、どこの世界にも思想・信条のレベルではなく、ふさわしくない人がいるものです。この分野における著者の積極的な関わりを大いに期待しています。
 なぜか知りませんが、JR久留米駅にもクジャクが飼われています。クジャクの雄が見事な羽をいっぱい広げている姿をたまに見かけますし、甲高い叫び声を聞くこともあります。ちょっとばかり、ぞっとする叫び声で、耳をふさぎたくなるのですが・・・。
 イギリスの学者がクジャクの行動をずっと観察していて、雌は配偶者を決めるまでに2羽から7羽、平均3羽の雄を訪ね歩く。配偶者として選ばれたのは常に雄のなかでもっとも目玉模様の数の多い雄だった。目玉模様は一羽の雄の尾羽に合計140個以上もある。どうやって目玉模様の一番多い雄を選び出せるのか・・・。
 ところが、日本の伊豆シャボテン公園にいるクジャクたちを10年かけて調べたところ、目玉模様の数は雄の繁殖成功度となんの関係もないことが分かったというのです。なんということでしょうか・・・。
 そして、日本でクジャクのあの「ケオーン」という甲高い鳴き声こそが、繁殖成功度と関連していることが判明しました。「ケオーン」という頻度の高い雄ほど、雄性ホルモンであるテストステロンの濃度も高かったのです。
 それにしても、ダーウィンが雌による配偶者選びを提唱したとき、当時の学者たちが声をそろえて、雌の好みが一定であるなどということは、人間の経験からして、まったく支持できないと反対したのだそうです。ふむふむ、なるほど、ですね。分かる気がします。
 オーストラリアのカエルは、雄の声の周波数を聞き比べ、ゆっくり時間をかけて自分の好みの周波数で鳴く雄を見つけて歩く。一晩のあいだに5、6匹の雄をめぐる。ここにも法則があることが分かりました。
 雌ガエルの体重は一匹ごとに少しずつ違う。でも、自分の体重の70%の雄とペアになっている。鳴き声の周波数は体重によって変わる。体格が小さいほど、高い周波数を出す。雌は、雄の声に耳を傾け、その周波数によって自分の体重の70%の体重の雄を見つけて選び出す。というのも、雌は雄を背中に乗せ、一粒ずつ卵を産み、それに雄が一粒ずつ精子をかけていく。だから、自分が背負える重さで、かつ、自分の卵に最大限受精してくれる雄を選ぶようにしているというわけだ。うむむ、すごーい。
 オオヨシキリという小鳥がいます。一夫多妻です。このオオヨシキリでは、雌は歌のレパートリーの豊富な雄を好み、そんな雄は多くの雌と繁殖し、生まれる子の数も多いということです。音痴の私は、オオヨシキリにうまれなくて良かったと思いました。
 ところで、鳥類の95%は一夫一妻です。しかし、学者が例のDNA鑑定で調べてみたところ、つがい以外の相手との交尾そして、つがいでない父の子がうまれるのは70%の確率ということが判明した。つまり、鳥の世界では「不倫」はあたりまえなのだ。これって人間と同じということですよね。でも、著者は、動物の行動のなかに人間の価値や道徳を見ようとしてはいけないと主張しています。うーむ、そうかもしれないけど・・・。
 この本によると、雄と雌との関係は、配偶相手の獲得をめぐる同性間の競争と配偶相手の選り好みと、雄と雌の葛藤と対立、という三つの軸で考えなければいけないとされています。ふむふむ、そうなのか、と思いました。
 選り好みという行動があるため、全員がハッピーになることは滅多にない。
 本当にそうなんですよね。だからヨン様に多くの女性があこがれるのですね、うん。

私のアフガニスタン

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著者:駒野欽一、出版社:明石書店
 駐アフガニスタン日本大使がアフガニスタンの復興のために活躍していることを知りました。やはり、日本は自衛隊を派兵するのではなく、もっと地道な国際貢献をすべきだと思います。そして、日本もフランスなどのように、もっとNPOの活動を支援すべきです。
 著者はDDRの運営委員会の委員長の要職にありました。DDRとは、武装解除、除隊、元兵士の市民社会復帰支援活動のことです。軍閥が群雄割拠するアフガニスタンで治安を回復して民生を安定させるために不可欠な活動です。国連の活動の一環ですから、私も DDRに声援を送りたいと思います。
 アフガニスタンは人口の3分の2が読み書きができず、人口の80%が交通不便な農村地帯です。そんな人口2500万人のアフガニスタンで大統領選挙のために1050万人が有権者登録をし、70%が投票したのです。すごいことです。国民はBBCとかVOAの現地語放送で、かなり外の出来事をつかんでいるといいます。
 DDRを前進させるために東京で開いた会議も役に立ったということです。
 アフガニスタンの指導者は、みな大変演説がうまい。なぜか。
 自分たちは、食べるものも武器・弾薬もままならないなかでの闘いを余儀なくされてきた。お腹をすかした部下に戦いを続けさせるのは大変なこと。彼らを説得するために、何を、どう言うか一生けん命考えた。教養があるわけでもない若い兵隊を納得させるには、こちらも必死に考えて話さなければならない。
 なーるほど、ですね。
 カブール市内には、日本から持ちこまれた中古自動車が氾濫していて、交通渋滞もあっているそうです。
 著者は現地の言葉であるタリー語を話せ、集会での挨拶をうまくこなしてきたとのこと。平和憲法をもっているからこそ、諸外国が日本を信頼している。このことを改めて思い知らされたことでした。日本もフランスにならって、もう少し自主的な外交努力をすべきではないでしょうか。いつもいつもアメリカに、下駄の雪のように、くっついているばかりでは情けなさ過ぎます。その意味で、私は日本の外交官の仕事はちっとも評価していないのですが・・・。

宇宙はなぜ美しいのか

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著者:キース・J・レイドラー、出版社:青土社
 この本には、いろんな数字が紹介されています。
 まずは、原子の大きさです。直径1ミリのボールベアリングがあったとする。これをどんどん大きくしていって、それを構成する原子1個が直径1ミリの大きさになったとしたときには、ベアリング自身は直径10キロメートルになっている。
 1リットルの水は3×1025 個の分子が含まれている。その数の水分子をつなぎあわせて一本の糸をつくったとする。その長さは、なんと10兆キロメートル。これは、1光年より少し長い。この糸は、地球と月とのあいだを1200万回も往復できる。
 原子と原子核の大きさの違い。原子を半径10メートルにまで拡大したとすると、その体積はバスの体積になる。ところが、そのとき原子核の半径は1ミリよりも小さい。今度は原子核を本の大きさにまで拡大したとすると、電子は1キロメートル以上も離れた先にある。
 金は、原子核の質量が大きいため、電子が光の速度に近い速さで動いている。これが金と銀が違って見える理由。うーん、これはなんだかよく分かりません。
 地球にもっとも近い恒星はプロキシマケンタウリ星で、4.3光年離れている。
 いまマッハ30(音速の30倍。毎秒10キロメートル)ですすむ宇宙船があるとする。光速の3万分の1。だから、1光年の距離を旅行すると、3万年かかる。それで、プロキシマケンタウリ星に到着するには13万年かかる。
 惑星をもつらしいもっとも近い恒星だと20光年先のところにあるから、そこに着くには60万年もかかる。惑星上でなければ生命は維持できない。しかし、それにしても60万年というのはあまりにも長い。
 人間の1個の細胞はブリタニカ大百科事典30巻の10倍の情報を蓄えることができる。ところが細菌の細胞はずっと容量が小さく、100万分の1ほどなので、新約聖書に含まれた情報くらいしか蓄えられない。
 ヒト細胞の核を100万倍に拡大してスーツケースの大きさにしたとする。すると、そこにある一本の染色体は長さ50キロメートル、太さ1ミリになる。つまり、スーツケースに太さ1ミリ、長さ50キロメートルのひもを46本詰めこんでいることになる。細胞はこれをやり、しかも46本の糸の上にあるコドン(塩基)のひとつひとつにアクセス可能なのである。1人の人間の全細胞の全DNAを引き伸ばせば、それは地球と月のあいだを8000回も(太陽となら250回)往復する。
 実際には、たった1本の染色体の長さが5センチであり、46本の染色体の全長は2メートル。それが小さな核のなかに詰めこまれていて、詰めこまれたあと相応の化学反応ができる。いやあ、すごい、すごい・・・。
 極大の世界と極小のそれとが似ているというのも、胸がワクワクするほどの面白さですよね。

小泉純一郎、血脈の王朝

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著者:佐野眞一、出版社:文芸春秋
 今の有権者は、スポーツ紙で政治を知り、ワイドショーでそれを確認している。
 この本に、このように書かれています。本当にそのとおりだと思います。そうでなければ、小泉・自民党が「大勝」できたはずはありません。この言葉は、小泉首相の秘書をつとめる飯島勲が記者にもらしたものです。このように、小泉首相はメディアにどう映るかを徹底して研究し、計算しているのです。
 小泉人気とは、突き放した見方をすれば、国民とメディアが総結託した構図のなかに、真紀子人気を光景として浮かびあがった蜃気楼にも似た現象だ。
 国民とメディアが結託したとは、私にはとても思えません。メディアの手のひらの上で国民は踊らされているだけでしょう。また、蜃気楼は間違いありませんが、意外なことに、残念なことに、かなり長続きするものではあります。
 小泉首相には心を開いて話せる盟友やブレーンは1人もいない。異常なほどの孤独癖がある。しかし、実姉の信子にだけは、どんな細かいことでも話をしているようだ。ところが、この信子は独身のまま小泉の世話をしてきたものの、マスコミとはまったく没交渉で、写真も今から40年前のものが1枚公表されているだけ。うーむ、なんという政界奥の院なのでしょう。今どき写真をとるなんて、マスコミがその気になったら、いとも簡単なことだと思うのですが・・・。
 小泉は周囲にほとんど誰も寄せつけず、肉親の信子を唯一心の拠り所として、その政権を長期化しようとしている。それほど一国の首相に近い存在でありながら、写真もないなんて、マスコミはだらしなさすぎます。
 小泉の祖父である小泉又次郎は普選運動の闘士として庶民の人気が高かった。逓信大臣を2度もつとめている。この又次郎は、鳶(とび)出身で、背中から二の腕、足首まで入れ墨を入れていた。なるほど、そんな人物がいたのですか・・・。
 小泉政権は、支持率、アメリカ、マスコミ、財務省の4つの要素で支えられている。唯一の支持基盤が国民的人気にあることが自分でも分かっているから、テレビカメラがまわっているときと、回っていないときとでは、別人のように小泉の態度が変わる。
 スイッチが入ってアドレナリンが出ているときは、すごくテンションが高い。ところが、アドレナリンが出ていないときは、声も聞きとれないくらい小さく、話もまったくつまらない。テレビカメラがまわっていないと、ものすごくお座なりな対応になる。その落差は日増しにひどくなっている。
 ふーん、なんとなく分かる対応です。それくらいの軽い男なんですね。こんな薄皮まんじゅうのようなペラペラ男に日本国民がいつまでも黙ってついていくとは思えませんし、思いたくないのですが・・・。
 この本には、田中真紀子がいかに人間としてつまらない、わがまま勝手をしてきたか、その実像が描かれています。でも、つい最近、新聞に、小泉首相を鋭く批判するコメントを寄せていました。若者はテレビなんか見るばかりで考えが足りなくなっている。もっと新聞や本を読んで自分の頭で考えようという訴えものっていました。その点はまったく同感です。田中真紀子の人間像には共感できませんが、たまにはいいこと言うと、つい手を叩いてしまいました。

ジーニアス・ファクトリー

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著者:ディヴィッド・プロッツ、出版社:早川書房
 ノーベル賞受賞者の精子をもらってわが子を育ててみたい。そんなことを夢見る女性がこの世には少なくないようです。
 妊娠しないので医師に診てもらったら、夫がベトナム戦争で負ったケガのせいだと分かったわ。そんなとき、ドナーが全員ノーベル賞受賞者だという画期的な精子バンクができたって話を聞いたのよ。なんて素晴らしいのかしらと思ったわ。あなたの父親は、ノーベル賞受賞者なのよ。
 母親から、こんな告白を聞いて、子どもは素直に喜べるものなのでしょうか・・・。
 1980年、アメリカはカリフォルニア州に精子バンク「レポジトリー・フオー・ジャーミナル・チョイス」が創設されました。1999年に資金難から閉鎖されるまで、200人以上の子どもがそこから誕生しました。創設者のロバート・グラハムは「10人の賢人は1000人のばかに勝る。人類は知的淘汰によって進化を管理できる」と豪語したそうです。ところが、実際には、ノーベル賞受賞者が高齢であったせいか、その精子を利用した女性は誰ひとり妊娠しませんでした。
 高齢者の精子から生まれた子どもの先天的欠損症のリスクは高いとのことです。遺伝的異常をきたしやすいため、ドナーは40歳以下に限定する精子バンクがほとんどです。
 1988年のアメリカ当局の調査によると、このとき精子バンクは数百軒あり、 1万1000人もの医師が人工授精術を実施していた。年間3万人の子どもが匿名のドナー精子で生まれていたから、既に100万人のドナー・ベイビーが誕生していることになる。
 そして、ドナー・ベイビーは成長してから自分の父親を知りたくなる。このところ、インターネットをつかって精子バンク家族を探し出そうとする試みが増えている。ヤフー・サイトにも2004年には3000人が登録している。探しているのは恋人ではなく、父親や子どもである。これによって血縁者が出会ったのも600件をこえている。
 ところで、刷り込み理論というのがあるそうです。父親側から刷り込まれた遺伝子は、根源的な感情や直感的な行動をつかさどる大脳辺縁系に関わりがちである。つまり、天才児をつくるためのに必要なのは、母親の方なのだ。だから、今や健康的で知的な女性の卵子はいまや垂涎の的で、いかがわしい巨額ビジネスを生んでいる。スマートで若い女子学生なら、健康な卵子を売って、1万ドル、2万ドル、果ては5万ドルの大金を手にできるようになっている。母親側の遺伝子が生まれてくる子どもの知性に関係するという認識が広まれば、この卵子バブルはもっとひどくなるだろう。うむむ、なんということ・・・。
 このグラハムがつくりだした天才児がいました。2歳でコンピューターを操り、5歳でハムレットを読み、IQは180。この天才児は成人してから次のように語りました。
 高いIQをもっているという事実は、ぼくを善人にも幸せにもしなかった。知性が人格をつくるのではない。それを生むのは、愛情ある家庭で愛情ある両親が、子どもに重圧を与えずに育てること。血筋で優れた人間をつくるとは思わない。
 子どものころから人目にさらされてきたことは、彼の人生を大いに歪めたようです。いつも人目にさらされぬいていたから、内気で孤独だった。子どもにとっては、もっと安心できる環境で育つ方がずっとよいのだ。
 なるほど、なるほど、そうなんだー・・・。すごく納得した気分になって最後のページを閉じました。

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