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金大中救出運動小史

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著者:鄭 在俊、出版社:現代人文社
 民団中央本部の団長を歴任した権逸氏について、著者は厳しく指摘しています。
 彼は日帝の傀儡満州国で検事をつとめ、祖国の独立・解放を目ざして活動する人々を捕まえて刑罰を加える、日帝の走狗だった。民族叛逆罪に該当する人物だ。解放後も日本官憲と親しく内通し、朴正煕 政権の忠実な下僕だった。
 民団中央本部のなかでは、外交官の大使よりKCIA(韓国中央情報部)から来た公使が実権をふるっていた。民団組織内では、KCIAから大使館に赴任してきた領事、参事、書記官という肩書きの情報部要員がやたらと権勢を誇り、彼らの言動が絶対的影響力を発揮していた。
 朴正煕 政権は、在日韓国商工人および資産家からさまざまな名目で金品をしぼりあげた。その金額は、韓国政府が民団に支出する10億円の数倍になるだろうと言われた。しかし、在日同胞の金をしぼりあげる役割はKCIA要員だけではなかった。同郷出身の与党国会議員らがさまざまな縁故で芋づる式に人脈をとどり、ときには民団中央本部の幹部が手先となって、在日一世の事大主義的思想と情緒を巧みに利用した。多くの在日資産家は、権力ににらまれたときの恐ろしい「不運」を予防する対策として、あるいはソウルで困ったことが生じたときに逆に利用する打算から支出に応じていた。
 金大中事件が発生したのは1973年(昭和48年)8月8日午後1時すぎ、東京九段のホテル・グランドパレス22階です。このころ、私は横浜で弁護士をしていました。白昼堂々、日本において、国際的にも有名な韓国人政治家を拉致するKCIAには驚き、かつ日本人として怒りを覚えました。
 著者は金大中救出運動を日本において全力をあげて取り組みました。そして、金大中が大統領に就任したとき、就任式にも招待されたのです。ところが、意外なことに金大中は著者をまったく無視し、冷遇します。なぜ、なのか・・・。
 金大中は671頁にも及ぶ長大な自伝を発刊していますが、そこに在日韓国人による救出運動について一言もふれていないとのこと。著者は、そのことに怒っています。私も、その怒りは理解できます。いったい、どういうことなのでしょうか・・・。
 金大中は大統領になって、自分の拉致事件の真相を知ることができたはずです。個人的には、その詳細を知ったことでしょうが、その真相を国民に広くオープンにすることはしませんでした。なぜなのでしょうか・・・。これも韓国現代史の謎のひとつだと私は思います。

八犬伝の世界

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著者:高田 衛、出版社:ちくま学芸文庫
 「八犬伝」は小学生のころ、胸をワクワクさせながら読んでいた記憶があります。最近、「八犬伝」全集を買って読もうとしたら、現代語訳ではなかったので、これはしまったと思って本棚に飾ったままになっています。
 この本は、「八犬伝」について、見事に分析し、評価しています。さすがは学者です。たいしたものだと、ほとほと感心してしまいました。
 「八犬伝」は、本当に息の長い本です。たとえば、八犬士の所在と名前が出そろうのは、初版(文化11年、1814年)が出てから13年目の文政10年(1827年)のことです。八犬士が全員めでたく会同するのは25年目の天保10年(1839年)のことというのです。まったくもって、気の遠くなるような話です。
 江戸城を築いた太田道灌は管領扇谷定正の重臣であった。扇谷定正は、道灌の高い評判をねたんで、自分の館に招き入れて謀殺した。
 「八犬伝」において八犬士は相互に位階的に対等である。これが特徴のひとつ。だから、八犬士がすわるときも、たとえば八畳の座敷に八人の団坐(まとい)の席が円環状に配してある。大八を除く七犬士たちは、それぞれに物語に主役であり、脇役ではない。
 「八犬伝」の読者は、江戸時代すでに北は松前(北海道)から、南は筑前(福岡)、薩摩(鹿児島)に及んでいました。馬琴は読者サービスとして、「八犬伝」の意義を解説する本まで出しているそうです。
 「八犬伝」は中国の「水滸伝」をもとにしています。私も「水滸伝」を読みましたが、同じように胸をドキドキさせながら読んだ記憶があります。それでも、単に日本と中国という、お国柄の違いというだけではない違いを感じました。
 「八犬伝」をぜひ再び完読してみたい。そんな気にさせる分厚い文庫本でした。

狼の帝国

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著者:ジャン・クリストフ・グランジェ、出版社:創元推理文庫
 パリに住むアンナは不可解な記憶障害に苦しんでいた。高級官僚である夫は、アンナに脳の生検をすすめる。そのころ、パリの街で不法滞在のトルコ人女性たちが何人も殺された。その死体の顔はひどい損傷があった。なぜか・・・。
 昨年、久しぶりにパリに行ってきました。英語はまったく話せない私ですが、フランス語の方はなんとか日常会話には不自由しませんので、外国に行くならやっぱりフランスです。12年前にノートルダム寺院すぐ近くのカルチェ・ラタンのプチ・ホテルに1週間泊まったこともあります。ゆっくりパリの良さを味わうことができました。この本は、そのパリの裏側、怖い面を教えてくれます。
 テロリストの力はひとつだけ。それは秘密だ。やつらは気のむくままにどこでも攻撃する。それを止めるにはひとつしか方法がない。ネットワークに入りこむことだ。やつらの脳に入り込むんだ。それをやって初めて、すべてが可能になる。
 トルコ人の起源は中央アジアの草原にさかのぼる。その祖先はアジア人のように切れ長の目をして、モンゴル族と同じ地域に住んでいた。たとえば、フン族はトルコ人だった。こうした遊牧民族は中央アジア全体に広がり、10世紀ころ、キリスト教徒のいたアナトリアに押し寄せた。
 ヘロインを液体にする。麻薬をプラスチック梱包材の気泡に詰める。液体になった最高級のヘロインを梱包材に隠れて送り、空港の貨物区画で受けとるのだ。
 推理小説なので、詳しい内容を紹介できないのが残念です。パリにトルコ人による暗黒街があること、フランス警察の一部がそれにつるんで甘い汁を吸っていること、美容整形が意外なほど発達していることなど、この本を読みすすめていくうちに分かります。
 それにしても、技術の発達が人間の心を野蛮な方向におしすすめるとしたら残念です。でも、ホリエモンやそれをもてはやしているマスコミを見ていると、暗い気持ちになるのも事実です。
 パリの暗黒街の話なんて他人事(ひとごと)だと思うと大きな間違いです。日本でも、そして福岡の中洲でも、裏で支配して甘い汁を吸っているのはヤクザなのです。残念なことに暴力追放のかけ声を唱和するだけでは決してなくならないのがヤクザです。

パチンコ、30兆円の闇

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著者:溝口 敦、出版社:小学館
 パチンコ業界については、これまでに何冊も本を読みましたが、この本を読むと、最新のIT化の波に乗って大変な状況にあることを知り、驚かされます。
 パチンコ業界の売上は30兆円。これは、自動車産業41兆円、医療関係31兆円に匹敵する規模です。中央競馬3兆円、競輪1兆円、競艇1兆円、宝くじ1兆円、ゲームセンター6千億円、テレビゲーム・ゲームソフト5千億円です。
 30兆円の売上は、全国で1万6千店です。パチンコ店ひとつで年間20億円の売上。従業員総数は33万人。関連業種を含めると40万人。アメリカのカジノ産業の従業員は36万人なので、ほとんど同じ。アメリカのカジノにおいてスロットマシーンで遊ぶ客は平均7千円つかうのに対し、日本のパチスロは平均1万3千円。
 1995年には、年2900万人がパチンコして遊んだ。それが2003年には1200万も減って1740万人になった。だけど売り上げは30兆円のまま。ということは1人あたりの投資金額が増えて、射幸性が高くなっている。パチンコ店の業界ナンバー1、2位の店の売り上げは1兆円前後。
 換金の仕組みは、法的にあいまいであり、警察のさじ加減ひとつなので、警察はいいようにパチンコ店を扱える。
 パチンコ店をつくるのに10億円はかかる。でも、銀行が借りてくれと列をなすほど。といっても、パチンコ店が過当競争に入っているのも事実。警察官は、生活安全課に行きたがる。警察署長は異動するたびに500万円ほどの餞別が入ってくる。3回動くと家が建つ、と言われているほど。警察はパチンコに関するかぎり、上から下まで握っている。パチンコ店は警察のいい子にならなければ、営業停止だって喰らいかねない。
 警察OBはパチンコ業界に再就職する。警察OBは一県あたり1000人もパチンコ業界に再就職している。業界の序列では、一番に警察が偉く、次にパチンコ台のメーカーが偉い。その下がパチンコ店。
 パチンコ店は小作人、パチンコ台メーカーが地主。そして、その上に悪代官の警察がいる。パチンコ台は、遠隔操作されている。ファンは、パチンコで遊んでいるつもりでも、実は業界にいいようにもてあそばれている。
 私は国選弁護人として、体感機をつかっていたことがバレた若者の事件を2件やりました。体感機は、低周波治療機に他の部品を組みあわせてつくったものです。1セットで 100万円前後するのですが、たしかに当たる確率はいいそうです。でも、それだからこそ、パチンコ店も異常な気配に気がつきやすいのです。
 パチンコ、スロットマシーン攻略法でだまされたというケースも扱いましたが、この本によると、そんな攻略法なんて存在しないということです。
 パチンコ台の性能を検査する保通協という組織があります。そこでは、職員96人のうちの3分の1、32人が警察出身者です。会長は、つい最近まで元警察庁長官でした。ここは試験検定料だけで年に16億円あまりもかせいでいます。
 うーむ、すごい。パチンコ店の表と裏を眺いてしまって、なんだか暗い気分になってしまいました。

白バラの祈り

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著者:フレート・グライナースドルファー、出版社:未来社
 いま上映中の映画「白バラの祈り」の完全版シナリオが本になっています。
 1943年2月18日、ミュンヘン大学でゾフィーは反ナチのビラをまきました。それが見つかり、ゲシュタポに連行され、裁判にかけられます。なんと裁判で死刑が宣告され、4日後にはギロチンにかけられてしまいました。ビラを大学にまいた、それだけで、たった4日間の裁判によってギロチン刑とは・・・。とても信じられません。
 この本は、旧東ドイツの秘密警察の文書保管所にあったゾフィーの尋問調書によって取調べ状況を刻明に再現したという点に価値があります。
 ゾフィーは普通の女子大生であったようです。ヒトラーユーゲントのメンバーにもなっています。ゾフィーは婚約しており、彼はドイツ軍大尉で、東部戦線にいました。ゾフィーの弟もドイツ軍兵士です。
 ゾフィーは、ナチが精神障害をもつ子どもたちを毒ガスで処理したことを知って、大変なショックを受けました。それを尋問官に問いただすと、彼らには生きる価値がないという答えが返ってきました。なんということでしょうか・・・。尋問官は、ユダヤ人殺害も子ども殺しも、すべて嘘だと言いはります。
 そして、ゾフィーに対して、兄を信頼して単に手伝っただけじゃないのか、と甘い声でささやきかけます。助命しようという良心があったのでしょう。でも、ゾフィーは、きっぱり断わりました。それは真実ではないと言い切ってしまいます。
 ゾフィーの国選弁護人は、被告人であるゾフィーと目を合わせようともしません。彼の言葉は次のとおりです。
 長官、私はなぜ人間にこのようなことができるのか、まったく理解できない。私は兄の被告ハンス・ショルに対して適正な刑を求める。妹の被告ゾフィー・ショルには、やや穏やかな刑を望む。彼女は、まだ若い娘だから。
 ゾフィーは、法廷で堂々と自分の信念を貫きます。裁判官に向けた彼女の言葉は次のようなものです。
 私がいま立っている場所に、もうすぐあなたが立つことになるでしょう。
 この言葉を聞いていた傍聴席の人は怒りというより、困惑と不安にさいなまれていました。直ちに判決が言い渡されます。死刑の宣告です。ハンス・ショルが叫びます。
 今日はぼくたちが処刑されるが、明日はおまえたちの番だ。
 ゾフィーの方は、恐怖政治は、もうすぐ終わりよ、と言いました。
 法廷内にいた司法実習生が、すぐに恩赦の嘆願書を提出するよう両親にすすめます。しかし、直ちに却下されるのです。
 最後の面会のときの父娘の会話が紹介されています。父は、すべては正しいことだった。おまえたちを誇りに思っているよと呼びかけます。ゾフィーは、私たちは全責任を引き受けたわ、と答えました。もう、おまえは二度とうちには帰ってこないのね、という母に対して、ゾフィーは、すぐに天国で会えるわよ、と答えたのです。
 ゾフィーは、1943年2月22日の午後5時、ギロチンにかけられました。
 このとき死刑になったのは、7人です。そのほかにも、13人が懲役刑に処せられています。
 ゾフィーの死後、さらに戦争は2年以上も続き、何百万人もの人々が殺されていきました。でも、決っして、ゾフィーたちの行動が無駄で終わったというわけではありません。ドイツでは、このように反ナチのために生命をかけて闘った人々を思い出させる映画がくり返し製作・上映されます。日本ではそれがほとんどないのが、本当に残念でなりません。

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