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江戸の好奇心、花ひらく「科学」

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 池内 了 、 出版 集英社新書
 江戸時代についての本は相当よんできたつもりの私ですが、この本に接して、いやいや、まだまだ知らないことがいかに多いか、思わずため息が出ました。でも、そんな出会いがあるから、人生って面白いのですよね・・・。
 たとえば、江戸時代にはアサガオ栽培が盛んで、変わりアサガオがもてはやされ、高値で取引されていました。これは私も知っていました。
 アサガオは奈良時代には、その種は「牽牛子(けんごし)」と呼ばれ、下剤として重宝された薬用植物だった。江戸時代に入るまで、花の色は青だけだった。四大将軍野家綱の時代の本(1664年)には青と白の2色になった。ところが、17世紀末になると、赤や浅黄(淡青)、そして瑠璃(るり)色の花も生まれた。18世紀半ばに第一次アサガオブームが起きて、アサガオは地味な花から派手な花へ変貌した。19世紀半ばに第二次アサガオブームが起き、明治に入って、第三次ブームも起きている。
 次に菊です。18世紀前半の本に、金7両(35万円)で菊1鉢が売買されたと記されている。菊の「1本造り」は、1本の台木に接ぎ木して100種もの異なった菊の花を咲かせた。
 菊の花を持ち寄って、左右に別れて優劣を競い合う「菊合わせ」があっていた。入選すると、「勝ち菊」とし、負けたら「負け菊」を決めていた。
 オモトも高値で取引されていた天保年間(1803~44年)がオモト人気のピークで、1鉢が100両とか200両することがざらだった。
そして、タチバナ。18世紀の終わりころ、タチバナは「百両金」として1鉢300両とか400両で取引されていた。種1粒が何両もしていた。
 次に、驚くべきことにネズミを江戸の人々は飼っていて、毛色の変わったネズミや形・大きさの異なるネズミを生み出していた。たとえば、白ネズミとか・・・。とくに大坂には白ネズミの需要があったようです。そのうえ、ネズミに芸を仕込んでいたのでした。
 金魚。江戸時代に金魚がブームとなり、そのときから庶民にも身近な存在となった。江戸時代初期は、金魚は非常に高価だった。ビードロの金魚玉が発明されてから、庶民に広まった。懇切丁寧な金魚の飼育法が紹介されています。
江戸には鳥ブームも起きました。鳥を飼って、鳴かせる。カナリア、ハト、イソヒヨドリを多数飼っている人は目立つばかり・・・。
 江戸時代に入ると、庶民が広く虫を飼い、誰もがその音を楽しむようになった。スズムシ、ミツバチ、カイコ(蚕)。いやはや、現代日本人と、ちっとも変わりませんよね、これって・・・。
 江戸時代の人々は好奇心が旺盛で、遊び好きで、凝(こ)ると、損得を忘れて夢中になる、そんな気質にみちあふれていた。改めて、江戸時代の人々を見直しました。
(2023年7月刊。1210円)

極楽征夷大将軍

カテゴリー:日本史(室町)

(霧山昴)
著者 垣根 涼介 、 出版 文芸春秋
 植木賞受賞作品です。といっても私は、賞をもらった本だから読んでみようと思うことは、まずありません。書評を読んで面白そうだと思えば読んでみることにしています。その意味では同じく直木賞をもらった『木挽町(こびきちょう)のあだ討ち。』(永井紗耶子)には、ぐいぐいと書中の世界に引きずり込まれてしまいました。たいした力技(ちからわざ)の作家だと、ついつい唸ってしまいました。
本書も、よく出来ています。ともかく面白くて、ええっ、室町幕府を始めた足利尊氏って、こんな人間だったの・・・と、思わず首を傾(かし)げてしまったものです。それでも、戦(いくさ)になると、勝ってしまうし、周囲に武士たちが集まってくるのです。「やる気なし、使命感なし、執着なし」。これが足利尊氏だったというのです。呆れてしまいます。
 足利家には家政を取り仕切る高(こう)一族がいました。また、上杉家もまた足利家に仕える郎党。足利家を高家と上杉家が支えながら、さまざまな困難を乗り越えていきます。その過程が実に生き生きと描かれているのですが、結局のところ、勝利してしまえば、お定まりの内紛が始まります。鎌倉幕府において源頼朝が死んだあと、北条家が執権として全権を握りますが、次々に「邪魔者は消せ」とばかりに北条家に敵対し(そうな)武士集団は排除されていくのです。「鎌倉殿の13人」というテレビドラマが、それをテーマとしたようですね(私はテレビは見ません)。
 鎌倉の北条政権と敵対し、戦いに敗れて隠岐の島に流されていた後醍醐天皇が、ひそかに島を脱出して、倒幕の兵を厳げた。
 足利家は、源氏の嫡流に最も近い血筋の御家人だという強烈な自負心がある。むしろ、本来なら、平氏の木っ端に過ぎなかった得宗家(北条家)より以上に鎌倉幕府を引き継ぐ資格がある。足利「高」氏は後醍醐天皇から「尊」氏という名前を授かった。しかし、天皇は、尊氏を権力の中枢には近づけないようにした。そして、天皇が恩賞を与える権限をひとり占めにして次々と行使していった。まったくの身内優先。これには「選にもれた」武将たちの怒りと不満は当然のこと。
 足利尊氏が南朝と敵対しているとき、北朝を創立するのに活躍した公卿(日野資名(すけな)がいた。日野家は、歴代の足利将軍家に次々と正妻を送り込み、公卿としての権勢を極めた。史上もっとも有名な正室は八代将軍・義政の妻・日野富子。悪名高いというべきなのでしょうか・・・。
 征夷大将軍に就任したあと、向こう見ずな蛮勇を発揮したのは日本史上で尊氏のみ。さすがは変わった大人物でした。面白く読み通しました。
(2023年8月刊。2200円)

あなたの知らない昆虫植物の世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 野村 康之 、 出版 化学同人
 食虫植物は日本にも生育しているし、熱帯だけでなく、温帯植物もいる。
 ウツボカズラの捕虫器の中にたまっている液体はほとんど水なので、手が触れても何の問題がない。獲物が入る前なら無菌だから、飲料水として飲める。消化酵素が利く前に、虫たちは窒息死か衰弱死している。
食虫植物はすべて緑色植物であり、光合成している。
食虫植物の捕食器は、ほとんど、葉が変化したもの。
 食虫植物は、世界に11科18属800種以上いる。
 食虫植物の捕食方法において罠はじつに巧妙であり、獲物を逃がさない仕掛けがこらさえれている。食虫植物の多くは、明るく、湿った、貧栄養な土地に生育している。
 食虫性は、決して良いことばかりではない。捕食器は普通の葉にはない欠点がいろいろある。捕食器の光合成効率は悪い、風雨や他の生物によって破壊される危険も大きい。
 日本で多くの食虫植物の姿が消えている原因は、水質の悪化や流入水の減少にある。
 食虫植物は、獲物から窒素、リンあるいは炭素を得ることで、大きな利益を受けている。
 食虫植物のことを楽しく学ぶことが出来ました。わが家の庭に以前に咲いていた時計草(トケイソウ)も食虫植物の仲間のようで、驚きました。
(2023年6月刊。2420円)

続・韓国カルチャー

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 伊東 順子 、 出版 集英社新書
 私は韓国映画は比較的よくみているほうだと思います。といっても、Netflixは全然みていません。みるのは、あくまで映画館で上映される映画です。テレビでドラマをみることはありませんし、みるつもりもありません。韓流ドラマもみていません。こちらは、好みの問題です。
 映画を通して韓国社会の実像・実際を知ることができるというのは本当だと私も思います。
 巨大な高層マンション団地の真ん中にある小学校には校門が4つあり、どの校門を利用するかで、その子の家族のステイタスが分かる。
 韓国では、近年、25階建て以上の高層マンション団地が続々と誕生していて、今や韓国人の6割がアパート暮らし。日本に多い5階建の小型マンションは「ビラ」と呼ばれる。
 韓国人にとって家は、住むところではなく、投機の対象。韓国の富裕層の多くが、不動産投機で形成されている。農村地帯でも人々は一軒家ではなく、マンションで暮らすことを望む。韓国は「不動産階級社会」と言われるほど、住まいによる階層の序列化が見える形で進んだ。
 富裕層が江南に住むようになったのは「子どもの教育」に原因がある。政府が15校もの名門高校を半ば強制的に江南に移転させ、「江南は教育環境のよいエリア」という定評ができあがった。しかも、名門中学も江南に移転し、よい進学塾まで密集するようになった。
実際に暮らしてみると、韓国の大型マンション暮らしは快適。効率化、最適化という点で、「タワマン共和国」は理想的。
 同じマンションに暮らす人々の生活スタイルも似ている。高級団地には高級車が並び、庶民向け団地には庶民の車が並んでいる。それはそれで居心地がいいだろう。
 韓国の宗教人口は、1位がプロテスタントで970万人、2位が仏教で760万人、3位はカトリック教で390万人。
 保守系の大統領はプロテスタントで、革新系の金大中、廬武鉉、そして文在寅はカトリックだった。
 統一協会の信者はわずか2万人で、なぜ日本でたくさんの信者を獲得したのか、韓国人は不思議がっている。ひなびた農村に日本人女性の統一協会信者が少なからず今もいる。
 大企業のオフィスが集まり、富裕層が暮らす江南は、ソウル市全体で25区からなるうち3つの区を指す。この3区で徴収される財産税だけでソウル市全体の4割をこえている。それほど富が集中している。
 韓国の高校3年生が大変なのは、そこに「受験のすべて」が集中するから。中学校の入学試験が廃止され、高校受験は実質的になくなった。韓国では大学受験が人生初の大勝負になってしまっている。
 韓国の高校では、基本的に部活動がない。
 ほかにもいろいろありますが、日本と似ているようで、こんなに違うのか・・・と思わせるのが韓国社会のようです。それにしても、韓国映画は面白いものが多いと私も思います。
(2023年7月刊。980円+税)

金正恩の核兵器

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 井上 智太郎 、 出版 ちくま新書
 北朝鮮が宇宙空間に衛星を打ち上げると、日本政府は日本の上空を通過する(した)といって、Jアラートを発令します。「ミサイルが落下するかもしれませんから、地下壕や地下室に避難しましょう。机の下に潜り込みましょう」などと危機をあおり立てます。でも、私の身近に地下室なんてありませんし、テーブルの下に潜り込んで助かるミサイルなんて一体あるのでしょうか(ありえません)。
 はっきり言えることは、北朝鮮の軍事的脅威をあおり立てることによって、日本の大軍拡予算に賛同するよう国民を誘導(誤導です)していること、それにNHKを初めとする日本マスコミが乗せられ、電波ジャックさせられていることです。なにしろ、少し前まで年間3兆円台だったのが、4兆円となり、来年度は何と8兆円近い、今では大軍拡予算に驚かなくなっている日本人ばかりになってしまいました。危険な徴候です。
 金正日体制のときは18年間で16発のミサイルが発射された。ところが金正恩体制下では、ミサイル発射が11年間に150発、2022年の弾道ミサイル発射は59発にのぼった。また、核実験のほうは6回も行った。
 アメリカは、1958年から1991年までの34年間にわたって韓国に戦術核兵器を配備していた。ピークの1967年には、核兵器システムが8種類そして核弾頭950個が沖縄にあった。
 北朝鮮は、1950年代にソ連の支援で核開発に着手した。
 北朝鮮での核兵器開発には100~150の組織、人員にして9000人から1万5000人が従事しているようだ。ミサイル開発にしても同じように50の研究機関、3000人の科学者・技術者を含む1万5000人が従事しているとみられている。合計3万人規模だ。
 金正恩は、これらの科学者や技術者を厚遇し、優先的に住宅を供給している。
 朝鮮人民軍の総兵力は128万人。人口(2544万人)の5%にあたる。北朝鮮の兵役は、男性8~9年、女性6~7年だったが、今は、男性7年、女性は5年に短縮されている。人的資源を経済活動に振り分けるためだ。
 中国の地方都市で働く北朝鮮人労働者の月給は2000元(4万円)ほど。国への上納金などを含めると、1割も残るかどうかという実情にある。
 北朝鮮では政府公認のハッカー集団が活躍している。そのうえで、仮想通貨を窃取している。
 ロケット(ミサイル)の液体燃料は発射直前に燃料を注入する必要があり、発射まで時間がかかるし、その分、敵に見つかりやすくなる。
 朝鮮人民軍は食料や弾薬など、あらゆる物質を6ヶ月分備蓄するように定めている。
北朝鮮の核開発を、実は私たち日本人が主体的に支えているのではないかと、本書でも指摘されています。それは民間も政府も、です。闇の部分があるのです。
いろいろ実際と、裏に隠されているところを見抜く必要があると思いました。
(2023年4月刊。940円+税)

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