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江戸の海外情報ネットワーク

カテゴリー:未分類

著者:岩下哲典、出版社:吉川弘文館
 鎖国というけれど、海外に開かれていたのは長崎だけではない。北海道の松前氏はアイヌとの貿易を介してロシアや中国東北部(山丹)の文物を入手していた。
 薩摩藩は、朝鮮からの密貿易船のための朝鮮通詞まで養成していた。
 ペリー来航については、1年前に、オランダ商館から長崎奉行を通じて幕府老中に通告されていた。幕府の対応は、この予告情報にもとづいて、それなりに心がまえをもってなされた。
 徳川家康に慶長7年(1602年)ベトナムからの象が献上された。
 その5年前、慶長2年に大阪城の秀吉にルソン総督から象が献上されている。秀頼とともに秀吉は象を見物し、瓜と桃を手ずから象に与えたという。
 大分豊後のキリシタン大名大友宗麟にも、カンボジアの象が献上された。
 もっと以前には、応永15年(1408年)に、スマトラ島の有力華僑から室町4代将軍足利義持に黒象が献上されている。
 慶長7年から126年ぶりの享保13年(1728年)、象が日本に渡来した。徳川吉宗の時代である。長崎にベトナム産の象(オス、メス各1頭)が上陸した。しかし、まもなくメス象は病死し、オス象のみが江戸へのぼった。
 文政4年(1821年)には、ラクダも渡来した。文久3年(1863年)には、横浜にサーカスの象が上陸した。
 このように、江戸時代は、鎖国といっても、決して完全に閉ざされた国ではなかったのです。

ヨーロッパとイスラーム

カテゴリー:未分類

著者:内藤正典、出版社:岩波書店
 共生は可能か、というサブタイトルがついています。デンマークの漫画家がマホメットをテロリストのように描き、それがデンマークの新聞にのり、ヨーロッパ各地の新聞に転載されました。イスラム教信者の人々が怒るのはもっともです。日本人だって、天皇が凶悪な殺人鬼のように描かれたら、怒り出す人は多いのではないでしょうか。
 ところが、ヨーロッパの人々は、概して、それは表現の自由の範囲内のことではないか、言論弾圧はしたくないし、問題にする方がおかしいと言って平然と開き直っています。本当に言論の自由の範囲内なのでしょうか・・・。
 麻生太郎外相が講演会で、日本の植民地だったから台湾は教育程度が高くなったと講演しました。これって、台湾の人が聞いて許せるでしょうか。私なら絶対に許せません。
 麻生太郎が居酒屋で知人に対して同じことを言ったのなら、私は許します。ところが、日本国の外務大臣の肩書きをつけて、公開の場所で公衆に対して放言したのですよ。日本が中国・台湾・朝鮮半島を侵略して植民地としたことは反省すべきことではありませんか。しかし、そんな麻生外相の発言に対して手を叩いて賛同する日本人が少なくありません。最近は、若者に増えているようです。自虐史観から抜け出せ、などと叫んでいます。しかし、歴史の真実に目をふさいではいけません。
 ムスリムはキリスト教徒を敵視しなかった。イスラム王朝の支配下におくときには、庇護を与える代わりに人頭税の支払いを求めた。必要経費を払った安全と一定の自由を享受するのだから、不平等だと感じていなかった。
 ところが、キリスト教徒は過去1000年以上にわたってムスリムを敵視してきた。ヨーロッパの社会は、中東・イスラム世界に対して、たえず恐怖と嫌悪を抱き続けてきた。ムスリムによる統治は、宗教の相違を承知のうえで共存を可能にするものだったが、キリスト教のヨーロッパはそれを理解しなかったし容認もしなかった。
 フランスには500万人のムスリムが住み、ヨーロッパで最多。ドイツには300万人のムスリムがいて、そのうちトルコ出身だけで260万人いる。ヨーロッパ全体には
2000万人のムスリムがいる。
 衛星放送のおかげで、母国トルコとヨーロッパの距離は近づいた。しかし、その結果、ヨーロッパ在住のトルコ系移民とドイツ社会の心理的・文化的距離は、逆に遠くなっていまった。
 少なくとも友人になるためには、相手を知り、相手が何を考えているかを洞察する能力が必要だ。これが他者への思いやりだ。ドイツ人一般にその能力が欠けているわけではない。しかし、相手がトルコ人だと、この能力は働かない。それがドイツ人だ。
 これはドイツに住む、成功したトルコ系移民の言葉です。うーむ、そうなのかー・・・。日本でも同じことが言えそうだな、ついそう思ってしまいました。アメリカ白人なら尊重するのに、黒人とか同じアジア系の人に対しては、いわば見下してしまう傾向が日本人にはあるように思います。
 イスラム教には、金銭や商売をいやしいものとする考えがまったくない。そして、強者が弱者を救済するのは、あらゆる人間関係の基本をなす道徳とされる。
 フランス語の会話教室に毎週かよっていますが、そこで初めてマホメットをテロリストに擬している漫画を見ました。日本の新聞には転載していないから、それまで見たくても見ることができませんでした。ところが、インターネットの画面では簡単に見ることができるのですね。これまた、便利なようで、怖いことですよね。

食品の裏側

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著者:阿部 司、出版社:東洋経済新報社
 怖い本です。つい目をそらしたくなってしまいました。でも、毎日の生活の基本である食べもののことですから、目をよーく見開いて、最後まで読み通しました。
 著者は理学部化学科を卒業し、食品添加物の専門商社に長く勤めてきました。食品添加物を売り歩くセールスマンでした。でも、あるとき、自分の家で子どもたちがミートボールを美味しそうに食べるのを見てガク然としたのです。「そんなもの、食べたらいけない」こう叫んだといいます。
 スーパーの特売用ミートボールは何からつくるか。牛の骨から削りとる、肉とも言えない端肉。そのままだとドロドロだし、水っぽくて味もない。そこで卵をうまなくなった廃鶏のミンチ肉を加えて増量し、ソフト感を出すために組織状大豆たんぱくを加える。そして、ビーフエキス、化学調味料を大量に加えて味をつける。歯ざわりを滑らかにするため、ラードや加工でんぷんも投入する。機械で大量生産するので、作業性を良くするために結着剤や乳化剤も加える。色をよくするために着色料、保存性を上げるために保存料とPH調整剤。色あせを防ぐために酸化防止剤をつかう。これでミートボールができあがる。いや、まだまだある。ソースは、氷酢酸を薄め、カラメルで黒くして、化学調味料を加えてソースもどきをつくる。ケチャップの方は、トマトペーストに着色料で色をつけ、酸味料を加えて、増粘多糖類でとろみをつけ、ケチャップもどきをつくる。これで、やっと商品になる。結局のところ、添加物を30種類ほどつかっている。つまり、本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉を、添加物を大量に投入して「食品」に仕立てあげたということ。こんなミートボールは、自分の子どもには決して食べさせたくない。それが著者の出発点でした。
 添加物商社の3大お得意さまは、明太子、漬物、ハム・ソーセージ。
 明太子。これは添加物で、どうにでもなるもの。ドロドロに柔らかく、粒のない低級品のタラコでも、添加物の液に一晩漬けるだけで、たちまち透き通って赤ちゃんのようなつやつや肌に生まれ変わる。身も締まって、しっかりした硬いタラコになる。
 ハム。100キロの豚肉のかたまりから、130キロのハムをつくる。肉用ゼリー液を豚肉のかたまりに注射器で打ち込む。
 コーヒーフレッシュは、植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、ミルク風に仕立てたもの。だから使い放題にできるのだ。
 一般に日本人が摂取する添加物の量は1日平均10グラム、年間4キロ。日本人の食塩摂取量は1日12グラムなので、それと同じくらいということになる。
 コンビニのおにぎり。甘みを出しておいしくするためアミノ酸などの化学調味料や酵素が加えられ、保存性を高めるためにグリシンが入っている。フィルムがするっと抜けるために、乳化剤や植物油をつかう。こうやって10種類ほどの添加物がつかわれている。
 このようにして日本人の舌は、今や完全に化学調味料に侵されてしまっている。味覚が麻痺して天然の味が分からなくなっている。
 食品を買うときには、必ずひっくり返して裏を見よう。台所にないものが少ないもの、台所にないカタカナがぞろぞろ書いてあるようなものは買うのを避けよう。
 加工度が高くなればなるほど添加物は多くなる。安いものには飛びつかないこと。安いのには理由がある。うーん、毎日の食生活にはかなり気をつけているつもりでしたが、本当に怖いことだと改めて反省させられました。

21世紀の特殊部隊

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著者:江畑謙介、出版社:並木書房
 主としてアメリカ軍の特殊部隊がつかっている特殊装備が紹介されています(下巻)。
さまざまな小火器、通信機が紹介されていて、驚きます。
 携帯式翻訳機(フレーズレター)には、アフガニスタン作戦用のものがあり、パシュトン語、ダリー語、ウルドゥー語、アラビア語の1500のフレーズがおさめられていて、電子合成語でフレーズを発音することもできるそうです。
 防寒用の下着は4層になっていて、マイナス40度まで耐えられる。
 防弾チョッキはケブラーというアラミド系の人造繊維をアメリカのデュポン社が開発し、世界の90%を占めている。この防弾チョッキは14〜16層で構成され、ナイロン製より50%も軽い。3キログラムほどの重さ。20層とすると6キロの重さになって、長時間の着用と敏捷な動きが難しくなる。
 シークレットサービスや要人のつかう防弾チョッキは2キロほど。ただし、防弾チョッキの耐弾性が高まると、命令した衝撃による身体への外傷性障害(ブラント・トラウマ)が問題となる。やはり、身体は打撃を受けるのである。
 飛行機、ヘリコプター、船などについても、特殊装置の概説があります。
 先日、天神の映画館で「ジャーヘッド」というアメリカ映画を見ました。アメリカによる湾岸戦争のとき、砂漠地帯へ侵攻したアメリカ海兵隊の兵士の生活を紹介しています。
 海兵隊の新兵教育とその訓練過程については、ずい分前に見たベトナム戦争のときの映画「ハンバーガー・ヒル」とまるで同じでした。要するに人間をバカそのものにして、何も考えず、ためらいなく人を殺す殺人マシーンに仕立てあげるのです。そのしごきはすさまじく、軟弱な私にはとても耐えられそうにありません。
 湾岸戦争のとき、狙撃兵として出動を命じられ、イラク軍の幹部を殺そうとしたとき、突然、「撃つな」と命令されます。空爆で片づけるからだというのです。
 人間が人間を殺すことがいかに大変なことかということ、同時に、空爆によって大量無差別にイラクの市民が殺害された現実が描かれています。
 アメリカが世界の憲兵だなんて、とんでもありません。それはアメリカの勝手な思いあがりでしょう。世界の各国、各民族はアメリカのために生きているわけではありません。アメリカのおかげで平和が保たれているのではありません。むしろ逆ですよね。世界中で起きている戦争に戦争にアメリカが関わっていないものがあるでしょうか・・・。私は絶対にアメリカによる世界支配なんて許しません。

金沢城のヒキガエル

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著者:奥野良之助、出版社:平凡社ライブラリー
 いやー、面白い。ホント、おもしろい本です。たくさん本を読んでいると、ときどき、これっていう本にぶちあたります。そんな本です。カエルの本ですが、人間の生き方まで考え直させる、そんな素晴らしい本です。
 カエルはわが家の庭にもたくさんいます。小さなツチガエルと梅雨時のミドリガエルです。この本に登場するのは、大きなヒキガエルです。昨年、金沢城を見物してきましたが、金沢城内にまだ金沢大学があったころ、大学教授が10年のあいだ、夜な夜な城内を徘徊し、夜行性のカエルたちの生態を調べあげたのです。うーむ、学者ってすごーい・・。
 ところが、ヒキガエルたちは、最後には絶滅してしまったのです。メダカも今や絶滅の危機に瀕していると言いますが、カエルの世界も安穏としておれない世の中になってしまいました。みんな人間のせいなのです。罪深い人間です。いつまでも万物の霊長なんて威張ってはおれないはずなのですが、てんで、その自覚に乏しいのが人間です・・・。
 著者は、金沢城本丸跡付近にいるヒキガエルのうち1526匹について個体識別し、 10年間も観察しました。
 ヤマカガシはカエルを専門に食べるヘビだ。だから、ヤマカガシを見たらカエルはすくんで動けなくなる。そんな話がある。そこで、著者は生まれてまもない小さなヤマカガシをヒキガエルの前に置いた。すると、どうだろう。ヒキガエルはのそのそと歩いてヤマカガシをのぞきこみ、ぺろっと舌をくりだして頭から呑みこんでしまった。カエルがヘビを食べるなんて、ええーっ、そんな・・・。
 カエルの個体を識別するため、4本の足から1本ずつ、計4本を切り落とす。カエルは前足に4本、後足に5本の指をもっている。だから、左前足、右前足、左後足、右後足の順に切りとった指の番号をならべて4桁の数字をつけ、それを個体番号とするのだ。カエルの足を切り落とすとき、そのたびにカエルは目をつむり痛そうな顔をする。最後には全身からうっすらと毒液をにじませる。相当こたえているようすだ。だから、いつも、ゴメンネ、と声をかけて切ったと著者は弁明する。
 ヒキガエルは自分の繁殖池をだいたい決めて、めったに変えない。ヒキガエルは乾燥に適応していったグループで、オタマジャシから変態して上陸するや、繁殖期以外は一生、水の中には入らない。ヒキガエルは日没後に活動し、雨がふると時間にかまわず出てくる。
雨が降ってヒキガエルが活動をはじめるのは、降雨とともに地表にあらわれる好物の餌を求めてのことである。
 ヒキガエルは虫やミミズ、ナメクジやカタツムリなどを食べている。ミミズの一匹でものみこむと、満足してねぐらに帰り、当分、地面に出てこない。ヒキガエルは信じられないほど無欲で、わずかな餌で満足し、蛙生の大半を寝て暮らしている。
 蛙は口からは水を飲まず、体表から土のなかの水分を吸収している。だから、ねぐらの土が湿ってさえいれば水分は補給できる。ヒキガエルは乾燥に強く、体重が半分になっても死なない。
 変温動物のカエルは身体の芯まで冷えきって代謝はほぼ止まってしまうから、冬眠中はほとんどエネルギーを使わない。ヒキガエルの一年のなかで、冬眠の4ヶ月ほどが一番安全な時期でもある。
 ヒキガエルの繁殖は交尾とはいわず抱接という。メスが産み出した卵に体外でオスの精子をかける。そのため、オスがメスの背中に乗り前足でしっかりと抱きかかえる。オスの前足は前年秋から太くなりはじめ、繁殖期にはポパイの腕のようにたくましくなる。そのうえ、前足の指の背側に黒いざらざらしたかさぶたのようなものが発達して、メスに抱きついたときのすべり止めの役を果たす。メスは、卵でお腹がふくらんでいる以外に変わりはない。オスはメスの2〜3倍もいるので、抱接できないオスは多い。
 オスは昂然と頭を高くかかげてメスを待つ。しかし、お互いにまったく没交渉で、それぞれただひたすらメスの来るのを待つ。オス同士でのナワバリ争いというものはない。カエルは動いているものにとびついて抱きつく。相手がオスだったとき、そのオスは鳴いて間違いだと教える。これをリリースコールという。おい、はなせよ、というわけ。
 ヒキガエルは夏は夏眠、秋にちょっと働いてすぐに冬眠。春に10日ほど繁殖に精を出したらすぐに春眠する。
 ヒキガエルのオスは3歳で成熟し、最高11歳まで生きる。メスは4歳で成熟して卵を生み、最高9歳まで生きる。オタマジャクシから子ガエルになって上陸したあとの夏に 97%の子ガエルは死んでしまう。
 ヒキガエルはケンカしない。餌をとる場所も寝る場所も共有。他の個体に干渉せず、勝手に生きている。ほぼ完全な個人主義者の集まりが、ヒキガエルの社会である。オス同士も争うことはない。
 ヒキガエルにも障害をもつものがいる。著者の観察したなかに3本足のカエルがいました。でも、立派に8年間は生きのびたのです。あくせくせずに生きているカエル社会の話です。人間社会も参考とすべきではないでしょうか。
 実は、この本は私が大学生時代のころの観察をもとにしたものなのです。そのころの様子も軽妙なタッチで描かれています。公務員削減などで人間社会にうるおいがなくなっていることの問題点も指摘されています。ちょっと気分転換したいと思うときに読む本として、おすすめします。

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