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大江戸飼い鳥草紙

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著者:細川博昭、出版社:吉川弘文館
 江戸時代にもペットブームがあった。それは大名だけでなく、生活に余裕のできた庶民のあいだにも広がりをみせていた。
 「南総里見八犬伝」の作者、滝沢馬琴もそのひとりである。馬琴は長編小説のほか、長く詳しい日記を書いて残した。そのなかに、鳩やカナリアを飼い、繁殖させていたことも書かれている。馬琴は一時期、70羽の小鳥を飼った。鳩に執着し、8種17羽を飼っていたこともある。そして、カナリアは20年にわたって飼い続けている。
 この本によると、ヒヨドリはヒナから飼うと、実によく馴れる鳥だということです。しかも、カラスを除くと、とび抜けて頭がよく、人間をきちんと認識するのだそうです。ヒヨドリはヒーヨピィーヨと毎朝けたたましい声でわが家の周辺を飛びまわっています。かなりあつかましい小鳥だと思いますが、頭がいいなんて知りませんでした。わが家のサクランボの実は、毎年、ヒヨドリのエサになっています。サクランボの桜の木は既に満開を過ぎました。いつも3月半ばには満開になるのです。
 江戸や大阪には鳥を販売する鳥屋があり、また好んで鳥の繁殖をする者もいた。長崎から外国の鳥も日本に入ってきていた。
 鳥屋は、幕府によって店の数が制限され、勝手な商売は禁止されていた。といっても、江戸の市中には、40軒から60軒の鳥屋がいた。
 日本で古くから芸をする鳥として知られていたのはヤマガラ。吊した丸い輪の中を通り、再びとまり木に戻る「輪くぐり」などの芸を見せた。
 小鳥のさえずりや羽色の美しさを競う「小鳥合」はウズラとウグイスが主だった。
 江戸時代初期のブームは、庶民がウズラを飼いはじめたこと。
 鳥の実用的な飼育書や解説書が次々に出版されている。
 当時の庶民の数は、江戸で50万人、大阪で35万人前後。それなのに、江戸で15万頭、大阪で10万頭ほどの犬が飼われていた。これって、かなり比率が高いですよね。
 江戸の庶民生活って、案外、ゆとりがあったようです。

ゴッド・ブレス・ミー

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著者:福田慶一郎、出版社:新風社文庫
 ゲイの人たちは、どこかでみんな孤独なのだ。
 ゲイ仲間からうつされたHIV感染者の勇気ある告白の本です。エイズ患者に対する偏見は一般社会だけでなく、エイズ治療専門病院にもあることを告発しています。
 ゲイの仲間を見つける場所を、ゲイの専門語で発展場と呼ぶ。それは、トイレ、ポルノ映画館、夜の公園、ゲイ専門のサウナ、ゲイビーチなど。これらは、その場限りの性処理の場だ。
 ゲイの人たちの社交場は、いわゆるゲイバー。ここには、恋愛の道程を楽しみたいか、仲間たちとの会話を楽しみたい人たちが集まってくる。そこは、ふだんの生活で自分を偽って生きていることからたまったものを吐き出し、同じ悩みをもった人同士が何のためらいもなく素の自分を出せる場でもある。
 ゲイの世界で一晩を共にする相手を見つけるのはたやすい。しかし、だからこそ何が幸せなのかが分かりにくい。
 女性との結婚を選んで子孫を残したとしても、その後、キッパリとゲイの道から足を洗った人はいない。
 ゲイだけにわかりあう特殊な視線がある。一度、二度、三度と視線がからみあい、数秒のあいだに視線の会話をかわす。一度目の視線は互いを確認しあうもの、二度目の視線での会話は互いがゲイであることを確認し、三度目で互いが好感をもったことを共有しあう。
 なるほどと、これを読んで思いました。愛する者同士のひらめきなんでしょうね。一目ぼれの・・・。
 エイズという病は、体調の悪さと、もう一つ精神的な痛みを伴う。
 エイズウィルスに感染したとしても、決して性欲が消え去るものではない。ゲイの人たちの感染者に、その意識が薄らいでいる。少しずつ、少しずつ感覚が麻痺しつつある。それは確かだ。本当に怖いのは、感染しているにもかかわらず、検査も治療もせず、いまだに多くの人とのフリーセックスを楽しんでいる人たちだ。なるほど、本当にそうですよね。
 エイズ感染者の勇気ある体験告白記です。

元アイドル

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著者:吉田 豪、出版社:ワンマガジン
 私はテレビを全然見ないし、芸能界にも歌謡曲にもまったく興味がないので、アイドルと言われてもちっともピンと来ない。でも、活字になると、好奇心から読んでみたくなる。この本を読むと、アイドルの世界、そしてその生活がいかに苛酷なものか、すこしばかり想像できる。
 元アイドルは人間不信に陥る人が少なくないし、自律神経失調症になる人が多い。芸能界にはイジメるのが好きな人がいる。わざわざ追いかけてきて嫌味を言ったり、ドラマでわざとセリフ変えてみたり、裏と表がすごい人だとか・・・。
 こいつら、いつか散弾銃でブッ殺してやりたいと思った。嫌な連中を全員一ヶ所に集めて爆弾で殺してしまったら、どんなに気持ちいいことだろう、なんて考えてしまう。
 それで、20歳のときに自律神経失調症で具合が悪くなってしまった。
 学校でいじめにあったアイドルが意外なほど多い。目立つ存在だったので、ねたまれたのだろう。オーデション受けているうちに分かってきたことは、どんなドラマでも主役って、最初から事前に決まっているということ。その裏には、お金がからんでいたり、プロダクションとテレビ局の関係とか、汚いものがいっぱいある。
 アイドルの睡眠時間が2時間というのはウソではない。恋愛する暇もない。撮影で8時間、完全徹夜ということもあった。4日目ぐらいから座るのも危険になる。寝ちゃうから。そうすると、顔どころか、精神的にもボロボロになる。
 人生で何を消したいかといったら、あの2〜3年間を消してしまいたい。
 仲間の集まりに顔を出さないと悪口を言われて無視されるって恐怖心から、何があっても電話ひとつですぐ飛んでいった。だから、遊んでいたのに、それがまたストレスになっている部分もあり、すべてが悪循環になっていた。
 芸能界って、取り替えのきかない世界だと思われているけれど、実は簡単に取り替えできるところ。あの人がいなくなったら無理だと思われるくらいの人が姿を消しても、結局は、何ごともなく芸能界はすすんでいく。
 タレント仲間も嫌い、スタッフも嫌い、ファンも嫌いっていう状態になる。もう人間が全部嫌になってしまう。
 23歳のとき、ジャックダニエルを泣きながら1本飲んでしまったら、翌日、お婆ちゃんみたいに肌がシワシワになっていた。病院に行ったら、内蔵がおかしくなっていて、それが全部顔に出てきていたことが分かった。
 元アイドルの人は、大体、自律神経をおかしくしたり、自殺を考えるくらい追いこまれたりしている。
 セスナに乗ってゲロを吐いたときも、カメラの前では元気に笑顔で手を振って、下向いて吐いてまた出てきて手を振る、そんな感じで仕事を続けた。
 給料は、せいぜい6万円とか10万円。脱いだら3倍というので脱いだら、なんと15万円に上がっただけ。
 衣装代は自腹で、寮費も給料から引かれてしまう。デビューして貧乏になっちゃった。
 服は自前で、同じ服を2度と着たらダメ。お金を払いながらアイドルやってる感じ。給料は7万円。服は母に買ってもらってた。全部で1000万円にはなる。芸能活動でペイなんかできない。
 すさまじい世界ですね・・・。

働く過剰

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著者:玄田有史、出版社:NTT出版
 かつての大学新卒の採用といえば、学生が特段の専門的な知識を身につけて卒業してくることを、採用する企業は長く求めてこなかった。むしろ、学卒者自身が知識で事前に武装するよりは、無地のキャンパスであることを望んだ。採用後に企業色に染めやすいことを求め、何らかの思考的な色づけを持った人物を回避するというのが、企業側の態度と言われてきた。
 即戦力志向とは、つまるところ、育成軽視の別表現にすぎない。即戦力偏重は競争力の低下につながる。アメリカの業績優良企業は、すべて即戦力重視といった素朴な先入観とは、あまりにかけ離れている。日本でも、不況下において成長している中小企業ほど、実は能力開発に積極的な場合が多い。
 偏った人間は何があっても、どこに出しても恥ずかしくないように、絶対に一人前にする。だから、将来そいつが独立したいとか、もっと別の世界で働きたいというのなら、気持ちよく送り出してやる。そんなやつがいる方が、後輩にこっても目標になっていい。
 30代男性ホワイトカラーの多くが、長時間働いていることの弊害として、職業能力の開発が困難となっている事実を指摘する。
 女性の活用が業績に結びつく。アメリカでは、女性の割合が高いほど、業績が高くなっている。日本でも女性の比率が高い会社ほど、高利益をあげている。
 非正社員に対する「使い捨て」意識が潜んでいる会社や経営者には、情報漏えいなどのきついしっぺ返しがくるだろう。そもそも正社員でも非正社員でも、社員が退職するときに、その会社や職場の責任者がどのように立ちふるまっているかは、人材の育成に限らず、むしろ職場の良好な雰囲気の育成にきわめて重要な意味をもつ。コンビニをみると、経営がうまくいっているお店ほど、店長がフリーターの育成に熱心に取りくんでいる。
 団塊世代は、日本の労働者史上、長期雇用とそのもとでの年功賃金の恩恵を一番に受けた世代であり、そして最後の世代になるだろう。正社員希望の傾向は、実のところ、若者のあいだできわめて強い。若者の正社員へのこだわりは、弱まるどころか、むしろ強まっているのが実際だ。雇われて働くのではなく、自らの力で独立して働こうという志向は若者のなかで急速に衰えつつある。独立というリスクのある働き方を多くの若者が希望しなくなるなかで、きわめて特異な存在であることが、若きIT長者への注目を集めている。
 ニートは、共通して人間関係に疲れている。ニートは、不透明で閉塞した状況のなか、働くことの意味を、むしろ過剰なほどかんがえこんでしまっていたりする。ニートが象徴するのは、個性や専門性が過剰に強調される時代に翻弄され、働く自分に希望がもてなくなり、立ち止まってしまった若者の姿だ。
 ニートが増えたのには、個性発揮や専門性重視を過度に求めすぎた時代背景がある。ナンバーワンになるのは難しいが、オンリーワンになるのだって簡単ではない。そんな現実のなかで、やりたいことがないので働けないと考え、自己実現の幻想の前に立ち止まってしまったニートを、時代の犠牲者と呼んでも言い過ぎではない。
 ひきこもる若者を引き出すには、生活のリズムをつかむこと。とにかく朝6時半に起きて、みんなで朝の散歩をする。それが、すべての始まりだ。身体を動かす。そして、それを継続する。仕事に一番大事なのは、なんといっても継続できる力だ。そして、たくさん失敗する体験を積むこと。小さいころから、負ける経験をたくさんすることが大切。親から期待されたという経験がない状態で育ってきたことが、積極的にやりたいことがない若者をうんでいる。
 いろいろ大いに勉強になる本でした。さすがは学者です。

お客さん、お会計すんでませんよね

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著者:井崎弘子、出版社:新風舎
 スーパーでの万引事件を国選弁護人として弁護することがコンスタントにあります。覚せい剤の使用事件と同じくらいに多いのではないでしょうか。
 財布に何万円か入っているのに、主婦が2千円足らずの食料品の万引をくり返すというケースは決して珍しくありません。たいていは妻を無視する無理解な夫へのあてつけのようです。いえ、万引する行為自体がスリルという快感を覚えているのだろうと思われるケースもあります。
 私が腰を抜かすほど驚いてしまったケースは、30代の既婚男性が女性下着のみを万引していたというものです。彼は捕まるまでに、なんと段ボール箱に20箱ほども貯めこんでいました。狭いアパートの室内に積み重ねていたのです。女性下着を見ながらマスターベーションしていたようですが、なぜ終わったらすぐに捨ててしまわなかったのか、不思議でした。警察は、女性下着を庁舎3階の大講堂の床一面に広げ、その写真を証拠として提出しましたが、それは壮観でした。
 万引しようともくろんでいる怪しい人物の目の動きは自然ではない。きょろきょろと周囲をうかがっている。商品をあまり吟味せずにカゴに入れる。カゴの中を見ずに周りを見る。もっているバッグの口は、きっちり閉まっていない。
 万引を見つけたときには、相手の話をよく聞く。説諭にマニュアルはない。もしマニュアルどおりにやると、自分の心からの言葉でないから、相手の心にひびかない。
 説諭には慣れというものはない。大事なのは、相手の話をよく聞くこと。そして、気持ちをこめて話すこと。本人が万引の理由を言いはじめたときには、言葉を止めてしまうような質問をはさまず、最後まで聞く。理由をしっかり話させることによって、相手の気持ちをほぐす効果があるし、心を開いてくれる。
 結構多いのが内部犯行。スーパーの店員の万引、そしてレジ係の横領。店員がペアになって万引することがある。
 レジ係の不正で多いのは、返品の利用。いかにもお客さんが返品に来たかのように自分で返品の操作をする。レジで架空の返品代をうち、たとえば3000円を、自分のポケットに入れてしまう。
 内部犯行だと思うときには、関係者全員に面接する。そのとき、店員の手の動きでかなり分かる。手がよく動く人はやましいところがない。疑われることを怒っている人は、自然と拳を握りしめているし、大げさにかぶりをふるったりする。反対に、怪しいと思う人は手を机の下に隠したままでしゃべる。怪しい人はあまり話さない。
 レジの犯罪は案外多く、ひとつのスーパーで年間10人はいる。
 私も、スーパーのレジ係の横領事件を担当しました。返品を利用したのですが、2年ほどで2000万円もの横領額になっていました。そのお金はパチンコ代に消え、さらに莫大な借金をかかえてしまったのです。弁護士の実務にも役立つ本でした。

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