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政治改革論争史

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著者:臼井貞夫、出版社:第一法規
 著者とは、先日、ある会合で初めてお会いしました。といっても、親しく話でもしたというのではなく、この本をぜひ読むようにすすめられたのです。まあ、せっかく先輩の書いた本なら、読んであげなくっちゃ、という思いでFAXで注文して読んでみました。
 あまり期待せずに読みはじめたのですが、議院法制局からみた政界裏面史は意外に面白いものでした。まあ、それも、日本の政治が激動期だったので、それをあとづけているからかもしれません。それにしても、平成3年から6年にかけての「政治改革」推進のマスコミ・キャンペーンは異常といえるほどのものでしたね。
 平成5年にいたっては、現状維持派に対して「守旧派」なる言葉を投げつけ、選挙制度改革の世論誘導までした。その積極推進派は学者とマスコミ関係者が多い。
 私も、当時を思い出して、なるほど、そうだったと思います。マスコミによる小選挙区で日本は良くなると言わんばかりの大ゲサで間違ったキャンペーンに辟易もしましたが、国民は素直に誘導されてしまいました。今でも2大政党制を絶対視して、民主党なる自民党分派を天まで高くもちあげ、「左翼」をバッサリ切り捨ています。フランスで若者の解雇を容易にする法律(CPE)に反対するデモやストライキが盛りあがったとき、国会で決めた法律を街頭デモで覆すなんて民主主義に反する暴挙だ。日本のマスコミはこのように非難したのです。とんでもない民主主義観です。
 議員立法の立案過程は、政党または議院から依頼があると、電話でまたは議員室を訪問して疑問点を質し、依頼の趣旨を確定し、関係法律等の調査を行い、原案を起案する。起案中に疑問が生じると、さらに依頼者側に説明をしながら、要望を聞き、細部を調整し、課段段案の最終案を確定する。そして、局内の審査を経て法律案が策定される。
 著者の属する第一部第二課の7人は、平成5年2、3、4月の2ヶ月あまり、一切の休暇なく、連日の深夜勤務、このうち完全徹夜2日で懸命にとりくんだ。土・日勤務の次の月曜日には弁当の空箱で部屋の入り口が埋まるほどだった。
 議院法制局は、起案するが、国会での議論の推移に任せ、積極的に憲法判断をしないという場合もある。
 議院法制局には2つの役割がある。一つは、客観的な意見を述べる法制局の役割。もう一つは、依頼者の意見の補佐をする法制局の役割である。内閣法制局が内閣や閣法のため、どんな理屈でもいうのと同じ役割を果たすべきである。こんな考えがあるそうです。後者には驚きました。へ理屈つけろ、というんですよね。
 平成5年は著者の人生のなかでも、とくに大変だった。とにかく忙しかった。19回の休日出勤、2回の完全徹夜をふくみ、数えきれないほどの深夜・早朝勤務。10数回にも及ぶ午前2時、3時のタクシーでの帰宅(1回、1万8,500円かかる)など。平均睡眠時間は1日4時間を割っていた。電車のなかで立ったまま眠るのが、しばしば。膝がガクンと折れて、全身が吊革にぶら下がる。とにかく寝たい、風呂にゆっくり入りたい、床屋に行きたい。これが、この年の個人的願望だった。
 細川内閣の存立を支えた二大ブレーンは、閣内にあっては武村正義官房長官であり、閣外にあっては小沢一郎・新生党代表幹事であった。小沢代表幹事が連立与党各派のなかでイニシアチブをとれたのは、市川公明党書記長との固い連携があったから。
 この小沢一郎が、今や民主党代表です。細川・武村・市川の3氏は、そろって政界を引退してしまったのと対照的です。
 現行の小選挙区制度の生みの親として、著者は2人の議員をあげています。故後藤田正晴と小沢一郎です。2人とも、誤った政策をすれば他の政党がこれに取って代われるという常に緊張感ある政治を実現する必要があると強く主張していた。しかし、ベタナギ国会と呼ばれるほど、今や国会の議論は低調になっている。それは、世論と国会との勢力比のギャップが大きすぎることにある。
 そこで、著者は、衆議院は全国比例代表制に、参議院は都道府県代表制に変えるべしと提唱しています。私も、もろ手をあげて、これに賛同します。
 国民の政治離れを防ぎ、国民と国家の一体性を今後とも維持するためには、より民意を反映した選挙制度の方が国家としても繁栄するのではないかと思う。
 著者の考えです。同感です。私も、国民の多様性を保障することこそ、日本が全体として発展していく前提条件だと確信しています。金子みすずの詩ではありませんが、人はいろいろいるから、いいんです。画一的ばかりでは矛盾がないので、発展もしません。いかがでしょうか?
 連休が明け、ジャーマン・アイリスが花盛りです。薄い青紫色の気品のある大きな花に心が魅かれます。

書きたがる脳

カテゴリー:未分類

著者:アリス・W・フラハティ、出版社:ランダムハウス講談社
 書くことは人間の至高の営みに一つである。いや、書くことこそ至高の営みである。そうなんです。まったく同感です。よくぞ言ってくれました。私は、こうやって毎日毎日、一時間以上は机に向かって書いています。ええ、そうです。キーボードを叩いているのではありません。ペンを握って、一字一句、手で書いているのです。そっちの方が断然はやいのです。
 書くためには、読む必要がある。言葉には色が見える共感覚がある。ホント、そうなんですよ。私も年間500冊以上の単行本を読み、定期購読の雑誌が5冊以上、そして毎日、新聞を5紙読んでいます。本を読むと、なんだか著者の語りが聞こえてくる気のすることもあります。
 ドストエフスキーは側頭葉てんかんの患者だった。異常にモチベーションの高い作家である。ルイス・キャロルも同じ病気だった。ほかにも、同じ患者としてモーパッサン、パスカル、ダンテ、フローベルなどがいる。
 アイザック・アシモフは、死ぬまでに477冊の著書を完成させた。すごいものです。なんとも言いようがありません。私も、この30年間、年に1冊以上の本を出してきました。今も、2冊の本を完成させようとがんばっています。
 百万匹のサルに百万台のタイプを叩かせておいたら、いつかは傑作が生まれるかもしれないという説があった。しかし、インターネットのおかげで、この説が間違っていることが証明された。うーん、なるほど・・・。といっても、いまやケータイで小説を書く人がいて、それをケータイで読む大量の読者がいるというのです。とても信じられません。どうやって著者はインスピレーションを湧かせるのでしょうか。
 絵画や音楽のときには右脳が活性化するが、書くときには左脳の活動が活発になる。
 一般人の強迫的な読書は、生まれつきの性質と学習があいまって、さらにときには違う世界に避難したいという傾向も働いている。そう、そうなんです。私も、毎日、トラブルの渦中に首をつっこんでいますので、トラブルのない、心静かな世界に逃れてみたいのです。ですから、それを逃避と言われると、抵抗感もありますが、そうなんだろうなと自分でも認めざるをえません。
 書きたいという衝動は、もっと基本的な衝動、つまりコミュニケーションをしたいという衝動から派生した二次的な衝動だ。うーむ、まったくそうですね。
 言葉は最初の向精神薬だった。言葉は、慰める、楽しませる、感情のはけ口となるなど、いくつかの方法で気分をよくしてくれる。言葉が気分を変える最後の技術は、感情のはけ口となること。人間は不満を言いたいという根深い必要性をみたすために言葉を発明した。だが、気持ちを吐き出してほっとするためには、聞き手がたとえ黙っていても、熱心に耳を傾けてくれることが、ぜひとも必要なのである。話していると、脳は脳内麻薬を放出して気分を改善してくれる。書くのは、おしゃべりの代わりだ。おしゃべりほど効き目はないが・・・。
 私の脳も、まさに書きたがる脳なんですよね。

制服捜査

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著者:佐々木 譲、出版社:新潮社
 これが本物の警察小説だ。オビに書かれているキャッチ・フレーズに偽りはありません。「うたう警官」(角川春樹事務所)も北海道警の醜い側面を鋭くえぐった面白い警察小説でしたが、今回もじっくり読ませました。その筆力に感心します。たいしたものです。
 稲葉警部の不祥事が発覚して以来、北海道警は警察官の管理を極端に厳しくした。ひとつの職場に7年在籍した者は無条件に異動させる。同じ地方で10年勤めたら有無を言わさず、よそへ移すことにした。その結果、所轄の警察署にはベテランと呼ばれる捜査員がまったくいなくなった。経験の必要とされる刑事課強行犯係の年配刑事が、べつの地方で運転免許証の更新事務に携わる。小さな町で地元と長い信頼関係を築いてきた駐在所の警察官が、札幌で慣れない鑑識の仕事についている。犯罪者の検挙率が多少落ちてもかまわない。それより稲葉警部のような暴走する警官を出さないことの方が重大事だ。これが道警本部の方針。ふむふむ、そういうことが警察の世界で起きているのか、知らなかった。
 無能な刑事は、まわりの人間の人生をあっさりとぶち壊す。
 こんな鋭い言葉が出てきて、しびれます。
 駐在所の警察官の最大の任務は、被害者を出さないことではない。犯罪者を出さないこと。選挙違反の摘発だって、簡単にしてもらっては困る。選挙違反に手を染めるのは、地域への献身の証なのだ。それを摘発する警察は、地域の事情を知らない馬鹿役所だ。
 昔ながらの有力者による買収・供応という選挙違反がはびこるのは、ごめんです。でも、戸別訪問やビラ配りは一刻も早く全面解禁すべきです。
 駐在所に単身赴任した警察官が、地域の事情を少しずつのみこみながら、地域の政財界の有力者から圧力を受け、軋轢のなかで、所轄署ともたたかいながら犯人究明に乗り出していく苦労話でもあります。すごく読みやすい警察小説でした。
 ところで、私の住む町の身近な交番が2つも最近なくなってしまいました。警察官は大幅に増員されているのに、地域からはいなくなっているのです。これで地域の安全をどうやって守るというのでしょうか。
 日本の警察は優秀だと長く言われてきましたが、最近ではあまり評価されないようになっています。スーパーで万引きしたら、すぐに捕まります。私は今、コンビニでタバコ2箱を万引きしようとした青年の国選弁護人です。もちろん、万引きを放任しろ、なんてことは絶対に言いません。でも、暴力団がのさばっているのを本当になんとかしてほしいと市民の一人として思います。多くの市民の商売の邪魔になっているのですから。それに重大事件はなかなか捕まりません。ましてやグリコ事件のような知能犯は容易に捕まらない。いろんな理由があるでしょうが、その一つに警備・公安警察の優遇があるように思います。なにしろS(スパイ)対策費として、支出のチェックを受けないお金を自由に処理できるのですから、腐敗が起きないはずはありません。この本でも、駐在所の巡査の関心事が、教職員組合の動向と民主党と共産党の裏事情だという話が紹介されています。政権党を守ることが国家秩序の維持なんだ。ゴミのような事件なんて、どうでもいい。そこには、こんな警察トップの本音が隠されています。やはり、警察官にも労働組合を認めるべきです。

コールガール

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著者:ジャネット・エンジェル、出版社:筑摩書房
 イエール大学で修士、ボストン大学で人類学博士号を取得した女性が、昼間は教壇に立ちながら、夜は娼婦として生活していた。男は娼婦をどう扱うか。娼婦は客をどうみているか。女性人類学者が自らの売春体験をつづった、驚きのノンフィクション。
 これはオビに書かれている言葉です。こんなことって本当にアリか・・・と思うと、スナップ写真もあって、どうやら本当のようですから、驚いてしまいます。アメリカって、まったくもって変な国ですよね。もっとも、アメリカにも東電OLが・・・と書かれていますので、私が知らないだけで、日本もあまりアメリカと変わらないのかもしれません。
 コールガール組織で働く女性の少なくとも半分、もしかすると4分の3が車と運転手をあてがわれており、その大半は学生寮に住む女子学生だ。
 コールガール組織の元締めをしている女性の取り分は1時間で60ドル。2時間なら 120ドル。この1時間の仕事をとるための電話の交渉は、たいてい2分そこそこですんでしまう。しかし、彼女は2分で60ドル以上の仕事をしている。客を入念にチェックして、女の子たちの盾となり、危険を承知のうえで新聞の広告欄に自分の名前と電話番号をのせている。
 彼女は午前2時に営業を終える。午前2時以降にコールガールを求めて電話してくるのは、やけっぱちになった問題ありの連中だからだ。
 彼女のコールガール組織は小さく、その規模の小ささから摘発を免れることができた。経営者はひとり、待機するコールガールも20人そこそこ。この程度の組織では、警察にとっては逮捕のしがいがない。
 著者は、彼女のもとで仕事をつづけ、週に4、5人のお客をこなした。お客をとらない日は彼氏と会い、この2つを完璧に分けていた。お客とするのは仕事、彼氏とはセックス。 コールガールがダブルを好む一番の理由。それは、お金だ。ダブルの仕事は、客の支払いもダブルになり、それぞれ一時間分の料金を稼げる。ふところが暖かい客をうまく乗せれば、契約時間の延長も難しくない。一時間で仕事を切りあげて次に電話を待つより、延長のほうがはるかに楽だ。
 コールガールが気にするのは、セックスの中身や回数ではなく、むしろ無為につぶす時間のほうだ。新規の客と連絡をとり、ほんとうに自分でいいかどうか確認し、相手が何を求めているか探りを入れる。これが結構手間だし、ストレスにもなる。だから、35歳の著者にとって、コールガールしているときは、コカインは習慣であり、日課だった。コカインのない朝など考えられなかった。
 若いコールガールのなかには、高額の報酬を得ることに慣れっこになっている人がいた。彼女らは金遣いが荒い。突然、大金が稼げるようになり、良識的な判断ができなくなってしまう。八方ふさがりの困窮生活を長く続けてきた若い女が突如として大金を手にしたら、なおさらのこと。金遣いが荒くなると、よりいっそう多くの仕事をこなさなければならない。それによってこの仕事にともなう危険もいっそう増すことになる。
 客は自分の思っているほどにはコールガールを支配してはいない。コールガールは客の欲望を探り、相手が自分を支配したがっていると読みとれば、それ相応に対処する。
 この仕事をしているかぎり、誰かと深い仲になったときは気の重い二者択一に直面することになる。つまり、エスコート・サービスで働いていることを打ち明けるか、それとも嘘をついて押し隠すか。隠せば、いつか見つかるのではないかと恐れつつ毎日を過ごすことになる。だが、打ち明けたところで、どうなるのか。その関係が破局を迎えるまで、そう長くはかからないはず。
 結局、実生活においても、客を相手にするのと同じような関係しか、男たちと結べないのではないか。退屈な妻とありきたりのセックスをすることに飽きた男たちが、性的ファンタジーを満たすという、ただそれだけが目的で求めるにすぎないのではないか・・・。 売春に携わる多くの女性がドラッグの奴隷になっている。ドラッグは女たちを仕事の奴隷とするために故意に押しつけられる。人の命がそれほど安く扱われている。依存症は恐ろしい病だ。
 私も弁護士を長くしていますが、新規の客と接するときには毎回、緊張しています。ほんとうに自分でいいのか、相手が何を求めているのか探りを入れます。相性のない客だったら、あとでトラブルになり、支払った着手金の返金を求められることもあります。コールガールと弁護士は似たところがある、なんてことは言いません。でも、職業としてみたときには、どこの世界でも共通するものがあるという気がします。

ブンブンブン ハチがとぶ

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著者:國房 魁、出版社:新日本出版社
 「ドンと鳴った花火だ」「かあさん、おかたをたたきましょ」に続く「歌いたくなる写真集」シリーズの3冊目です。まだ見ていない人は、一度、本屋の店先で手にとってみて下さい。子どもたちの笑顔にひきこまれてしまいますよ。見てる方まで自然に楽しくなって、つい笑顔がこぼれてくる本です。
 子どもたちが自然のなかで、伸び伸び、目が光り輝いています。野山のなか、雪のなか、田んぼのなかで焦点が見事にあっています。さすがはプロのカメラマンです。脱帽です。
 子どもたちが木登りしています。ジャンプして飛び上がっています。ミドリガエル(青蛙)を小さい鼻の頭にのっけています。そんな動きの一瞬を写真にすばやく切り取っているのです。たいした力です。
 古沢小学校の1年生は、全員で15人しかいません。梅雨どきの田んぼの道を一列に並んで傘を差しながら下校していきます。カラフルないい映像です。都会では絶対に見れません。雑木林でカブトムシをつかまえます。真剣な目つきです。
 いつのことだか思いだしてごらん
 あんなことこんなこと あったでしょう
 うれしかったこと おもしろかったこと
 いつになってもわすれない
 大人のちょっと疲れた傷ついたこころを十分いやしてくれる素敵な絵本でもあります。2500円は、ちっとも高くなんかありません。だって、明日に生きる勇気が自然にわきあがってくるのですから。

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