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トム・クランシーの空母

カテゴリー:未分類

著者:トム・クランシー、出版社:東洋書林
 現代のニミッツ級空母は、4.5エーカーに集積されたアメリカの小都市に相当する。いつでも一日に700海里以上も移動でき、完全な医療支援、機械整備、ジェット・エンジン試験室、給食活動、コンピューター支援、発電その他を提供できる。
 一隻の空母は60〜70億ドルの価値をもち、6000人以上を雇っているビジネス体であるが、従業員の平均年齢は21歳以下である。
 一個の空母戦闘群に国は200億ドルの資産を投入する。乗艦している1万人の兵士に食事、給与、医療を提供しなければならず。その運用・維持に年10億ドルの費用がかかる。現在、アメリカは12個の空母戦闘群の維持を計画している。通常、2〜3個の空母戦闘群が前方展開している。
 空母には離艦する航空機に速度を与えるカタパルトがある。これは基本的に蒸気動力ピストンである。キャデラックを1キロ先まで飛ばす力がある。
 空母に着艦するのは難しい。2階の窓から白鳥を飛びおりさせ、地面上の郵便切手を舌で見つけ出すことに匹敵する。
 作業が適切なら、20秒から30秒おきに1機を空母に着艦させることができる。
 冷戦時代には、毎年10万人の新兵を採用していた。平和な現在でも毎年5万人ほどを必要としている。新兵募集の目標は、高校卒業が95%、うち65%の知能指数がクラスの最上位にあることとしている。
 1970年代半ばから、空母には男女別々の寝台設備とトイレの区画をもつよう改造された。今では、女性まで殺人マシーンに組み込まれているのですね。
 ニミッツ級空母には6000人が乗る。空母要員として士官155人、水兵2890人、航空要員として士官365人、下士官2500人が乗っている。
 また、ジェット燃料9000トンと爆弾・爆薬・ミサイルを2000トン積んでいる。
 F14・トムキャットは全長19.1メートルの複座・双発の戦闘機である。そして、写真偵察ができる。前方と下方を見るカメラ、航空機の両側を水平線から水平線まで撮影するパノラマ・カメラ、航空機の直下を掃査する赤外線スキャナーをつんでいる。デジタル・カメラとなっているので、飛行中に空母に解像度の高い画像を送ることができる。写真をとって情報士官が確認するまで5分しかかからないシステムで、これは移動目標を迅速に攻撃するために必要な情報を戦闘群指揮官に提供できる。
 トムキャットの最大の欠点は、購入と維持に要する巨額の費用である。
 アメリカ軍の原子力空母の日本寄港が日常化しつつあることを私は大変危惧しています。日本は本当に独立国家といえるのか、根本的な疑問を感じるのです。
 横須賀基地に原子力空母ジョージ・ワシントンが2年後に配備されようとしています。これはアメリカ軍の世界的規模での再編の一環です。アメリカ国防省が今年2月に発表した国防計画の見直しによると、航空母艦や戦略原潜・攻撃型原潜の60%をアジア向けに太平洋に集中配備するということです。横須賀基地への原子力空母の母港化は、そのカナメをなすものです。
 過去の海軍は海上の戦争だけを考えていればよかったが、グローバリゼーションがすすんだ現在では、陸上の作戦に全面的に関わらなくてはいけない。つまり、海から陸上に攻撃をしかけ、大陸のなかにまで軍事的支配を広げることが海軍の中心目標になっている。
 また、石油節約のため、原子力推進艦船をアメリカはさらに重視している。なにしろアメリカ政府機関全体の一日の石油消費量33万バレルの90%をこす30万バレルをアメリカ軍がつかっているのです。
 アメリカ軍の世界戦略にどっぷり組みこまれている日本ですが、それが強まれば強まるほど、戦争に巻きこまれる危険は高くなります。おーいやだ、いやだ。私は絶対にいやです。やっぱりヤンキー・ゴーホームです。

レンタルお姉さん

カテゴリー:未分類

著者:荒川 龍、出版社:東洋経済新報社
 訪問して引き出そうとする相手が、仮に「ノー」だと拒んだとしても、それが100%の「ノー」だとは限らない。相手が口にした「ノー」のなかにも、いまの生活ではいけないという危機感にもとづいた、30%のイエスが隠れているかもしれない。そんなイエスを信じてがんばる。30%のイエスを、創意工夫で40%、50%へと大きくしていく。それがレンタルお姉さんの仕事だ。
 レンタルお姉さんという語感からは、何かいやらしいイメージを抱かせそうになりますが、これはまったくそういうものではありません。ニートとも呼ばれる若者たちを家庭の外へ、実社会の中へひっぱり出そうという仕事なのです。
 レンタルお姉さんたちは何かの資格をもったカウンセラーや医療関係者ではない。フツーの20代、30代の女性たち。レンタルお姉さんは、ともかく相手の言い分を受けとめる。受けとめることで相手を尊重する。けっして相手を否定しない。
 レンタルお姉さんの仕事は、ニートの若者と交流して、彼らが自宅に引きこもる生活をやめさせること。そして就学や就労に向けて新たな行動を起こさせること。それは、手紙、電話そして訪問という順序ですすめられる。最初に本人に会うまでに3ヶ月から半年。ひきこもりをやめさせ、新たな生活を始めさせるのに半年というのがひとつの目安となっている。手紙は手書きが原則。メールもダメ。
 彼らに社会に出るための練習段階として、NPO法人(ニュースタート)が運営する「若者寮」に入ることをすすめる。ここで同じような経験をもつ若者たちと共同生活をし、仕事・体験をしてもらう。寮生活は平均1年3ヶ月。最長2年。卒業生は、この7年間で500人をこえる。
 ただ、レンタルお姉さんと本人の関係が悪化してしまうこともある。あのレンタルお姉さんだけは絶対に許せないと、徹底して毛嫌いされることすらある。だけど、ひきこもり生活をやめさせ、新たな生活を始めさせることが彼女たちの仕事だから、ときには悪役に徹しなければならない。自分が嫌われても、本人の危機感をあおって家の外へと踏み出させる。
 訪問先の相手と仲良くなることは得意でも、引き出す相手に嫌われたくないと思う人では、レンタルお姉さんはつとまらない。
 自宅に引きこもって感情の起伏さえない生活を送っている若者が怒ったら、それは全身のありったけの感情を総動員して相手にぶつける最大限の自己表現。ひとつの前向きなシグナルととらえる。
 ところが、56歳のひきこもりも相手としている。もちろん、もはや若者ではない。本ニートと言うしかない。30年間も、家にとじこもっている人がいる。
 引きこもり生活が長くなると、表情を失っていく。まるで能面のような顔になった若者もいる。他人と話して喜怒哀楽の感情をつかう機会がないから。感情が退化すれば、表情も消える。声を出して話す必要がなくなるから、声も極端に小さくなる。言葉がうまく出てこなくなる若者もいる。私も司法試験の受験勉強を部屋に閉じこもって、一日中ほとんど人と話をしない生活をしていて、失語症になってしまったと心配したことがあります。つい、それを思い出してしまいました。
フリーターは213万人。ニートは64万人と推定されている。
 若者といっても、会社員経験のある20代、30代のニートが最近ふえている。退職型ニートと呼ばれる。30代は対応が難しい。この退職型ニートは社会人経験があるため、プライドも高く、自分をニートと一緒にするなと強く拒絶する。リストラや退職などの挫折体験と就職できないことへの焦りなどもあって、かなり精神的に屈折していることが多い。
 レンタルお姉さんは、訪問先の親とは極力コミュニケーションをとらない。
 親は、子どもの言動の揺れにふりまわされず、毅然とした態度をとる必要がある。しかし、たとえば、本人の意思を尊重するフリをして、父親として進路に迷う息子の方向づけをするという責任を負うことなく、問題を先送りしている親が多い。子どもと同じで親自身も孤独。親戚や近所づきあいもあまりない。世間体はあるので、子どもがニートだということを隠したい気持ちは強い。
 レンタルお姉さんが子どもを引き出しにかかれば、親はニートの子どもを家から押し出そうとする必要がある。その両方の働きかけがないと、ニートのひきこもり生活をやめさせるのは難しい。
 ニートの親の多くが、勤務先やパート先以外の社会との接点をあまりもっていない。会社と家との往復だけで、ろくに近所づきあいもない。親である前に、一人の人間として、自分の人生を楽しくネットワークやノウハウがとても乏しい。親自身があまり楽しそうに人生を生きていない。子育ては失敗が許されないもの、と考えている親が意外に多い。親子ともども失敗への許容範囲がとても狭い。
 ニートとは、実は親たち自信の問題でもある。だから子どもがニートになって自宅にひきこもると、親も相談できる人がいなくて、家族全員が社会から簡単にひきこもってしまう。うんうん、なるほど、そういうことだったのですね。よくわかりました。
 現代日本社会の実相がよく分かる本でした。
 街路樹でセミが鳴きはじめました。庭に早くもアキアカネが飛んでいます。日曜日、いつもより早起きして仏検(準一級)の口頭試問を受けてきました。いつも緊張します。5分前にペーパーを渡されます。2問あって、うち一問を選んで3分間スピーチをします。一問は、このところ子どもの虐待が起きているのをどう考えるかでした。こちらはパスして、二問目の勝ち組・負け組についてどう考えるかと選びました。メモをとらずに頭のなかで3分間スピーチをまとめるのって本当に難しいんですよ。昨年はまるでダメでしたが、今年はトツトツと話して、なんとか試験官と対話らしき格好はつきました。10分足らずのやりとりですが、たっぷり一日分の仕事をした気分になりました。

三日月が円くなるまで

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著者:宇江佐真理、出版社:角川書店
 神田堀に架かる栄橋を渡ると久松町だった。
 この出だしで、江戸の町並みと人々の営みにスィーッと引きずりこまれてしまいます。函館市に生まれ、今も同地に住む(?)団塊世代の著者の鮮やかな筆力で心地よく江戸の暮らしを味わうことができます。
 古道具屋と薬種屋を兼ねる紅塵堂(こうじんどう)に下宿することになった25歳の刑部小十郎の話が展開していきます。といっても、藩主の汚点を雪(そそ)ぐために指名された庄左衛門の助太刀をする役目です。決して気のすすむ役目ではありません。入居そうそう、主の娘に笑われて、小十郎は気を悪くします。でも、この娘、口は悪くても案外に気だては優しそうなのです。
 行雲流水(こううんりゅうすい)の心持ち、だとか、床見世(とこみせ、商品を売るだけで人の住まない店)だとか、見知らない言葉が頻出するのも時代物ならではです。
 小十郎は曹洞宗のお寺で特訓を受けることになります。東司の作法を真先に教えこまれます。
 東司に就いたら蒲(かま)でこしらえた草履に履き替え、衣の端をもってかがんで用を足す。汚してはいけない。声を上げてもいけない。はなをかんだり唾を吐いてはいけない。落書きしてはならない。歌ってはならない。
 用を足したら、また草履を履き替え手洗い場で備えつけの灰を手にとり、三度洗う。次に、土を水に点じて三度洗う。さらにサイカチの実の粉を取り、水桶に浸して丁寧に洗う。都合七度。
 次は行鉢と呼ばれる食事の作法。応量器と呼ばれる五鉢ひと揃いになった食器を使用する。応量器には、畳を濡らさないようにする水板と鉢単と呼ばれる敷物がついている。そして、サジやハシと一緒に袋に収められる。
 私も一度だけ永平寺を訪れたことがあります。春のことだったと思いますが、木立の奥深くにありました。そこで、食事やトイレの作法のことを聞かされたことを思い出しました。真理を究めるにも、まずは形から入るということのようです。
 小十郎たちは、結局、仕返しに失敗します。庄左衛門は責任を取らされ、市中引きまわしのうえ、獄門となりました。武士の身分を離れて浪人になっていたからです。
 引き廻しの行列は、小伝馬町の牢屋敷から江戸橋、八丁堀、南伝馬町、京橋、札ノ辻まで行って引き返し、赤羽橋、溜池、赤坂、四谷、牛込、小石川、本郷へ向かい、上野、浅草、蔵前を通り、馬喰町から牢屋敷へ戻る行程だった。
 小十郎は、それでも運よく処分を免れ、ついには恋する町娘と晴れて結婚できました。
 江戸時代の結婚も、その気になればかなり融通無げのところがあったようです。武家と養子縁組すればよかったのです。いつもかつも四角四面に江戸の人々が生きていたと考えるのは正しくありません。

旅と交遊の江戸思想

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著者:八木清治、出版社:花村書房
 文化元年(1804年)、筑後国は福嶋町(八女市)の作右衛門一行19人が伊勢神宮へお参りに出発しました。72日間の旅です。伊勢神宮だけではありません。厳島神社、金比羅宮、高野山、京都・奈良の神社仏閣もこまめにまわっています。
 そして、40年後の天保14年(1843年)にも、今度は同じ福嶋町の清九郎一行17人が、ほとんど同じ順路で68日間の旅をしています。順路ばかりでなく、途中に立ち寄った社寺、高野山の宿院、京都・大阪の宿泊先などもほとんど共通しています。つまり、規格化・画一化された観光旅行のコースが設定されていたのです。
 そして、天保6年(1835年)には、筑前国須川村の古賀新五郎重吉以下総勢76人に及ぶ一行が、ほぼ似た順路で68日の旅行をしています。
 いずれも旅行日記が残っていて、道中、どこで何を食べたのかまで記録されているのです。伊勢神宮は信仰から娯楽へと性格を変えていたと著者はみていますが、まったくそのとおりでしょう。
 2月から4月にかけての農閑期とはいえ、2ヶ月もの旅行を20人とか70人の集団で農民がしていたという事実に圧倒されてしまいます。
 元禄時代に日本に滞在していたドイツ人医師ケンペルは、自らの見聞にもとづいて、日本人について「他の諸国民と違って、彼らは非常によく旅行する」と書いています(「江戸参府旅行日記」)。
 貝原益軒は福岡藩士でしたが、江戸へ12回、京都へ24回、長崎へ5回も出向いています。旅人益軒と呼ぶのは、ぴったりの言葉です。益軒にとって旅は楽を得る方法であり、とかく旅行は辛いものという考えとは無縁でした。
 文人墨客の遊歴は、体のよい出稼ぎだったという評価があるそうです。文化人たちは、全国を旅行して、地方の富裕な人々から家宝の鑑定を依頼されたり論語を講義して謝礼をもらっていたのです。

人間らしく、誇りをもって働きたい

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著者:三上礼次、出版社:自治体研究所
 私も韓国には何回か行ったことがあります。といっても、いつも弁護士会同士の交流で行ったもので、実は釜山だけなのですが・・・。
 その釜山にある労働組合の委員長が2003年10月に工場内のクレーンで首吊り自殺しました。労組委員長が自殺するなんて珍しくないんだそうです。この本によると、韓国では労組委員長の自殺が相次いでいるというのです。ちっとも知りませんでした。
 韓国の社会には、これまで長いあいだ、労働争議で会社側が蒙った被害額を、労働者個人に賠償させるために告訴するという悪習がある。会社側は損害賠償請求と仮差押を労働組合弾圧の手段として乱用しており、損害賠償請求額は560億ウォン、仮差押額は790億ウォンにのぼる。
 訴訟に負けた労働者は、労組の資産はもとより、労働者の賃金や家屋敷まで取り上げられる。自殺した労組委員長は、財産を差押えられ、労組指導者として労働者の利益を守れない状況に追い込まれていた。ほかにも労組委員長が焼身自殺を図った例が紹介されています。日本では想像もできない事態です。
 少し前、国鉄が国鉄労組に対して巨額の損害賠償請求の裁判を起こしたことはありましたが、労組委員長の個人責任が問われたことはなかったように思います。
 韓国でも、日本と同じように、大量の非正規労働者がいて、大きな社会問題となっています。韓国と日本は、司法界も似ていますが、こんなところも同じなんですね・・・。
 非正規労働者は、政府の公式統計で労働者全体の32%、460万人いる。労働界の方では780万人いるとみている。ここ2年のあいだに100万人が増えた。銀行業では10人に3人以上が非正規。造船や流通業界では、非正規職の方が正規職の人数を上まわっている。
 近くて遠い国、韓国の実情を少し知ることができました。本文は50頁たらずの薄さです。さっと読めますので、一読をおすすめします。

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