法律相談センター検索 弁護士検索

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

カテゴリー:未分類

著者:山口真美、出版社:平凡 赤ちゃんはもっとも身近にいる、未知の生命体だ。
 なーるほど、そうなんですよね。これは3歳未満の体験を誰も何ひとつ語ることができないということからくるものにもよります。
 姿形は私たちと同じ人間ではあっても、何を見て何を考えているか、まったく分からない。私たちの近くにいるにもかかわらず、赤ちゃんは別世界の住人なのだ。
 赤ちゃん学は、この30年ほどですすんだということです。ちょうど私の弁護士生活と重なっています。少しは私の認識も進歩したでしょうか・・・。実はまったく心もとないものがあります。クライアントには決してそんなことは言えませんが、実は法律の知識がかなり怪しくなってきているのです。今では絶えず弁護士になりたての若手に確認しておかないと不安です。ホントのことです。いえ、なにも若年性のアルツハイマーにかかったと「告白」しているのではありません。ちょっとでも縁が遠くなると、その分野についての知識が急速に忘却していくということなんです。これは、まったくの自然現象です。少なくとも本人はそう考えています。
 先天性の白内障を手術して治したとき、どうなるか。よくても色が分かる程度で、形や景色を読みとるには、ほど遠い。つまり、網膜に光が到達しただけでは世界は見えない。風景も文字も、実は、あらゆるものが、見るのはとても難しいこと。眼があるというだけで、見えることにはならない。
 胎児のときから音を聞き、生まれた直後でも眼が見える。生まれたばかりの新生児の視力は0.001程度。生後半年でも0.2程度の視力しかない。眼の水晶体(レンズ)の焦点は大人にあわせてできているので、赤ちゃんの小さな眼球にはあわない。レンズの焦点は眼球が成長したときにあうよう、網膜のうしろで結ばれるようになっている。
 見る経験は、受け身の状態ではムダだということが分かっている。自ら積極的に環境に関わりながら見ることが必要なのだ。動きを見ることは、形を見ることとはまったく異なるものだ。脳の異なる部位が働いている。
 赤ちゃんには、目新しいモノに注目し、見慣れたモノには注目しないという特性がある。赤ちゃんにとって、人間の顔は、目や鼻、口といった部分ではなく、それらが並ぶ配置こそが大切なのだ。たとえば、赤ちゃんは、生まれてから2日間、母親の顔を見た時間が11時間から12時間を超えると、お母さん顔を好むようになる。これも、生まれたばかりの赤ちゃんをじっくり観察して分かったものなんです。学者ってすごい忍耐力と想像力を必要とするんですね。
 ところが、ニホンザルは、育てられた種の顔を好む。たった3時間の見る経験で、お母さん顔への好みが成立する。ヒトの6倍の速さだ。すごーい。
 生後3ヶ月の赤ちゃんは、サルの顔もヒトの顔も同じように分けへだてなく個体を区別する能力がある。しかし、生後7ヶ月になると、大人と同じように、サルの顔では個体の区別はできなくなり、ヒトの顔だけを区別するようになる。これは母国語の習得に似ている。生まれてすぐの赤ちゃんは、あらゆる言葉の母音を聞き分ける能力をもつ。ところが、生後10ヶ月になると、自分の母国語を聞き分ける能力だけを残し、他の言語の母音は聞きとりにくくなる。
 学習とは、何でも受けいれた段階から、自分の環境にあるものへと特化することをさすのだ。なーるほど、そうだったんですか・・・。社新書

テレビ政治

カテゴリー:未分類

著者:星 浩、出版社:朝日新聞社
 テレビと政治と世論の危ない関係。新聞とテレビ、国民により影響を与えているのは、テレビで86.5%。これはオビの言葉です。本当にテレビは世論操作の有力な道具です。小泉首相を批判するコラムを書いたら、すぐにコラムを批判する投書が80通も来たそうです。がんばっている首相に失礼だとか、かわいそうだという内容の投書です。私にはとても信じられませんが、恐らく本気なのでしょう。小泉べったりに洗脳されている日本人がかなりいることを意味しています。
 小泉改革のおかげで、郵便局の離島での集配が廃止に追い込まれています。なんでも効率(もうかるかどうか、だけです)から、田舎の不採算局が次々に廃止されていくのは必至です。でも、小泉は、選挙のときにはそんなことはないと断言して国民を欺きました。
 そして、いま高齢者に地方税が10倍になるという重圧がかかっています。「週刊ポスト」が大きな特集を組みました。そんなことは分かっていたはず。小泉はそう言うでしょう。でも、小泉を支持した高齢者は、まさか自分のフトコロを直撃する改革があるなんて夢にも思いませんでした。
 リハビリを6ヶ月で打ち切るという新たなシステム改悪は、私の母にも及びました。たしかに、うちの母にとってリハビリは、もう客観的には効果が期待できません。でも、身内としては、それでもいいのです。カッコだけでもリハビリ中ということでいいのです。必要なお金も負担します。でも、6ヶ月たったからといって、せっかく入った病院を追い出されてしまいました。弱い者いじめの小泉改革のおかげです。
 この本は、朝日新聞の政治記者とメディア政治の研究者の二人による共著です。朝日の記者は東大大学院政治学研究科の特任教授でもありました。
 小泉首相が閣議で解散を決めた8月8日夜の記者会見を中継したNHKの視聴率は、なんと27%という異例の高率となった。投票率が高いと自民党は不利という最近の選挙の傾向とは逆の結果となった。選挙への関心が高まり、ふだん棄権していた有権者が投票所に足を運んだことが、自民党の圧勝につながった。つまり、多くの国民が小泉にだまされて自分の首をしめに投票所に向かったことになります。
 東大の石田英敬教授は、総選挙の真の敗北者はテレビだと主張する。なぜなら、コイズミ劇場にテレビが支配されてしまったから。
 刺客騒動は話題を呼び、世間の関心を集め、当初あまりパッとしなかった毎分視聴率も急上昇した。こうなるとテレビ制作者は弱い。やはり数字がとれた方がいいと考えてしまう。自民党内のお家騒動は、人気時代劇の「暴れん坊将軍」のように、見ていて面白い。ここを小泉はうまく利用した。
 小泉の作戦は、国会議員を飛びこえ、さらには自民党員まで越えて一般有権者の支持を集めることだった。それによって、党員や国会議員への影響力を高めようとしたのだ。
 小泉が国会議員や支持団体の枠をこえて投げかけた「自民党をぶっ壊す」というメッセージは大衆的人気を博した。新聞は権力を批判するが、テレビはコントロール可能。テレビは商売だと割り切って接していた。
 小泉は、ワンフレーズ・ポリティクスという批判に対して、「いくつも話すと、もっとも不快な部分を拡大して報じられる。一つのことしか言わなければ、どのメディアも仕方なくそれを報じる」と切り返した。
 テレビでくり返し唱え続け、なおかつ、そのメッセージをいくらか実現させることで国民に一定のリアリティーを感じさせる。これが小泉の戦略だった。
 日本は世界最大の新聞大国である。毎日、朝夕刊あわせて7000万部以上が発刊されている。それでも、今やテレビにかないません。日本人は、このまま流されていくだけなのでしょうか。

朴正熈、最後の一日

カテゴリー:未分類

著者:趙 甲済、出版社:草思社
 「ヒトラーの最期の10日間」を思い出させる本です。独裁者の孤独な生活が描かれています。最近みた韓国映画「大統領の理髪師」を、映像という点で視覚的に想起しました。
 韓国では、最近、朴正熈を見直す動きが強まっています。その娘が野党の代表者として人気を集めているのは、その具体的なあらわれでしょう。でも、私には、野蛮な軍人であり、民主化を阻んだ独裁者としか思えません。
 朴正熈が側近の金載圭KCIA部長から宴会場で射殺される一日を詳しく描いた本です。図と写真もついていて、状況がよく分かります。朴正熈が射殺されたとき、2人の若い女性が宴会にはべっていたというのを知っていましたが、なんだかいかがわしい状況を想像していました。でも、女子大生と女優の2人はギターをもちこんで歌っただけのようです。それどころか、宴会場は車智?・青瓦台警護室長とKCIA部長の激しい応酬でトゲトゲしい雰囲気だったようです。
 1979年10月26日、朴正熈はKCIA部長に射殺された。62歳だった。この年の10月初め、金載圭の命令で、KCIAの元部長・金炯旭がパリで暗殺されていた。 
 青瓦台の本館には、職員が夕方6時に退庁したあとは。525坪の本館に大統領と2人娘のほかは、宿直当番の秘書室職員と警護官のみ。都市のなかの孤島になった。
 朴正熈の書斎兼執務室には600冊の本があったが、小説やエッセイ・詩集は一冊もない。彼は実用主義者だった。「金日成」「資本論の誤訳」などの日本語版もあった。
 その日、朴正熈の演説には、いつもの張りがなかった。独特の、鉄を叩くようなキンキンと響く声ではなく、力が少し抜ける感じだった。
 映画「シルミド」で有名になった金日成暗殺部隊の創設を命じたのは、朴正熈でした。
 朴正熈大統領と、その側近だった金桂元、金載圭、車智?の3人の元軍人は身長が164センチと小柄だった。
 車智?は傲慢、金桂元は調整力不正、金載圭は肝臓病病み。
 権威主義的な政権の核心においては、最高権力者の耳と目を独占しようとする競争が熾烈さを増す。誰よりも先に情報を提供し、権力者の公的的な先入観をつくりあげることが、この権力ゲームのやり方だ。車智?室長が影の権力者の地位を、こうしたゲームに活用していたため、秘書室長と情報部長は常に一歩出遅れた。
 車智?は佐官将校として除隊したにすぎないのに、陸軍大将出身の秘書室長と陸軍中将出身の情報部長、それもずっと年上の2人を、まるで部下のように扱った。
 朴正熈は、郷里の後輩であり、陸士の同期生であり、そして自分の庇護のもとで育ててきた金載圭を甘く見ていたのか人前で金載圭の無能力さをなじることが多々あった。
 この日の宴会では、車智?と朴正熈がまるで口裏をあわせたかのように金載圭を一方的に追いこんだ。これが決定的な要因となって、激しやすい金載圭は車智?を殺してしまおうと思いつめ、そのためには朴正熈が邪魔となった。朴正熈はあの傲慢な車智?を偏愛してきた。そして今夜も一緒になって私を追いこんでいる。許せない。金載圭の鬱屈した感情は殺意へ変わった。
 金載圭は朴正熈の射殺直前に2人の部下に警護員たちの暗殺指令を下したが、そのとき自由民主主義のために、と言っている。KCIA部長は、長期政権に対する国民の不満を確認していた。釜山での非常戒厳令事態をふまえての認識だ。
 金載圭は、まず車智?の右手首をうった。そのあと数秒して、足もとがふらついたままの姿勢で朴正熈を見下ろし、胸をうった。朴正熈は「何をしておる」と言ったまま、目を閉じ、胡座をかいたまま動かなかった。金載圭の拳銃(ワルサーPPK)はこの2発をうったあと故障して動かなくなり、金載圭はあわてた。
 金載圭の部下に倒された警護官たちは防弾ベストを装着していなかった。
 金載圭の頭のなかには、朴正熈の殺害までのスケジュールしかなく、それ以降の行動計画は何ひとつ考えていなかった。現場にいて殺害状況を目撃した2人の女性は20万ウォンの小切手をもたされて帰宅させられた。現場保全も遺体の安置も、支配確保もまったくなされていない。
 大変緊張しながら2時間かけて一気に読み通しました。緊迫した状況がよく伝わってきます。そして、このあとに登場するのが全斗煥です。軍人って、本当に嫌な人種です。昔も今も、洋の東西を問わず、人殺しと自分の栄誉しか考えていない連中ばかりですから・・・。

きみのいる生活

カテゴリー:未分類

著者:大竹昭子、出版社:文芸春秋
 いやあ、とっても面白い本でした。あの日頃嫌われもののネズミが、こんなにも人間に似た動物だったなんて、ちっとも知りませんでした。
 パソコンのパーツを買いに行った夫が、目ざすパーツを見つけられずに、帰り道にマウスではなく本物のスナネズミをペットショップで買ってきたのです。そのスナネズミのしぐさの可愛いらしいこと。まるで人間そっくりなのに、ついつい笑ってしまいます。
 漢語に鼠牙雀角(そがじゃっかく)という言葉があるそうです。まったく知りませんでした。ネズミの歯とスズメのくちばしという言葉ですが、訴訟沙汰を意味します。費用がつもりつもって家が破産するさまを、ネズミの歯やスズメのくちばしが壁を屋根を傷めるさまになぞらえた言葉です。弁護士である私にとっては、少し複雑な心境になります。
 初代クロは、著者が畳に座っていると、そばにやってきて、「ねえ、ちょっと」と言いたげにその膝に手を置く。いかにも人恋しそうな様子で、足とちがって手が気持ちを伝えるものであることを伝える。
 寝そべっているときとは違って、好きなことに集中しているときの目はピカピカと光り、動きは躍動感にあふれて生き生きしている。上手だねえ、とほめようものなら、ますます得意そうになる。「目を輝かせる」という表現があるが、目の動きと意識の関係に文字どおりの意味があるのに感銘する。初代クロは、感電してあっけなく死んでしまいました。本箱の裏にもぐりこんで電気のコードをかじってしまったのです。
 二代目のクロを飼いました。性格がまるで初代と違うのです。たとえば初代はパンが大好きでしたが、二代目はまったく無関心でした。初代のクロは無鉄砲で、自分の思うように動かないと気がすみませんでした。二代目クロは用心深く、いろいろな予測を立てながら慎重に行動します。
 このスナネズミはモンゴル生まれです。「動物のお医者さん」に出てくるネズミだそうですが、私は読んだ覚えがありません。私は本が好きですから、子どもたちにもたくさん絵本をよんでやりました。ネズミの出てくる絵本は何冊もあります。いわむらかずおの「14ひき」シリーズ(童心社)の絵もいいですよね。「のばらの村のものがたり」シリーズはイギリスの絵本です。家庭内のこまごまとした食器類などもよく描けています(講談社)。斎藤惇夫の「冒険者たち・・・ガンバと15ひきの仲間」(岩波書店)は、珍しいことにドブネズミのガンバが主人公です。男の子のたくましさを感じました。子どもたちに読み聞かせた本は、今も大事に全部とってあります。押し入れなんかでなく、居間のすぐ身近なところに置いています。孫でもやってきたら、また読んであげようと思うのですが。
 三代目モモは、鏡の前をとおるときには、必ず立ち止まって自分の姿を眺めいる。自分を美しいと感じているらしい。毛づくろいにも念が入っている。まず手先で口のまわりを丹念にふく。しだいに範囲を広げて顔ぜんたいをなでつけ、次に頭を下げて両手を首のうしろにもっていき、毛をはらう。まるで人間がシャンプーしているときの格好にそっくりだ。
 しらばくれる、という感情は動物にもあって、悪いことをしたあとには、決まって、しらっとした顔をしている。
 三代目モモは、マッサージされるのを好んだ。自分でマッサージしてもらいところを指示する。こる場所は人もネズミも変わらない。やめると、つむっていた目をパチッとあけて、もう終わり?という顔をする。なんと・・・!
 三代目のモモは老衰で死んだ。スナネズミの寿命は3年。
 そのあと、つがいのスナネズミを飼って、とたんににぎやかになりました。一匹一匹がとても性格が違うのですが、それを著者はよく観察していて、笑わせますよ。
 新しいことを試してみるのは、つねに女なのです。
 ごはんが苦手のネズミがいます。あのネバネバした感触がダメなのです。チーズも食べるのと食べないのがいます。いやー驚きです。
 アポ計画で生物衛星にスナネズミも乗ったそうです。
 ネズミも心身症にかかる。イジメにあうと、太ったからだがみるみるうちにしぼみだし、毛のつやもなくなり、このまま衰弱して死ぬ日も間近いとまで思われた。
 最高時には13名(匹ではありません)のスナネズミを飼った観察記録です。写真もあり、飽きない面白さです。集団で飼うと、また違った意味で人間臭くなるというのも一興です。
 きのう(日曜日)の早朝、母が亡くなりました。93歳ですので、天寿をまっとうしたと思います。父は25年前に亡くなりました。母の伝記を読みものにするのが途中となっていますので、これから完成をめざします。時代背景をふまえて人の一生をあとづけるというのは自己認識がとても深まります。蝉がうるさく鳴く真夏の一日でした。

わが名はヴィドック

カテゴリー:未分類

著者:ジェイムズ・モートン、出版社:東洋書林
 1817年にヴィドッグの12人の部下は、811人を逮捕した。殺人者15人、窃盗犯341人、古買屋38人、脱獄囚14人、監獄に戻らない者43人、詐欺師46人。
 ヴィドッグは、警察につとめているのに、本人は1796年の文書偽造事件の有罪判決が生きていて、指名手配中であった。
 ヴィドッグは、パリ警視庁の特捜班長に任命された。給料は6000フラン。
 ヴィドッグは、1832年、世界初の探偵事務所を設立した。年会費20フラン、面接一回につき5フランという料金だった。
 私立探偵を頼んだ依頼者からその法外な値段を聞いて驚いた弁護士は多いと思います。なにしろ1週間、浮気相手の尾行追跡で300万円支払ったというのは珍しくありません。
 ヴィドッグの私立探偵としての仕事の多くは借金の取り立てでした。
 1847年、ヴィドッグの探偵事務所は閉鎖された。
 ヴィドッグは、犯罪者や容疑者の肉体的特徴を記録したカードの集積を始めた。まだ指紋がつかわれていない時代である。
 ヴィドッグはバルザックの大犯罪者ヴォートランの原型であり、ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」のジャヴェール警部とジャン・ヴァルジャンの両者のモデルでもある。そして、シャーロック・ホームズの好敵手アルセーヌ・ルパンのモデルでもある。
 犯罪者が警察の側にまわり、部下にも元犯罪者をたくさん集めて、犯罪者の検挙で成績を上げるという話です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.