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アサギマダラ、海を渡る蝶の謎

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著者:佐藤英治、出版社:山と渓谷社
 アサギマダラは、一見すると弱々しく見えるが、実は、とても丈夫。薄い翅には張りがあり、少々のことでは破れない。胸を少し押したくらいでも弱らない。そして、なにより長生きする。モンシロチョウの平均寿命が14日なのに、アサギマダラは1000キロ以上の渡りをして半年後につかまったものもいる。
 アサギマダラの幼虫の写真がたくさん紹介されています。まるでハラペコ青虫なのですが、黄色の斑点の目立つ垢抜けしたデザインです。
 アサギマダラには毒があり、アサギマダラを食べたクモは、「ぺっ、まずいや」と言って逃げていく。その毒は、食べる草から仕入れる。しかし、カマキリなど、その毒に平気なものもいて、アサギマダラも食べられることは多い。
 アサギマダラは、夏に台湾から飛んできて、東北地方などの高原に姿を見せる。秋になると、南へ移動する。そして晩秋には、暖かいふるさとで過ごす。1500キロメートル以上もの大旅行をするわけである。
 どうして、こんな長距離を蝶が移動するのか?
 どうやって海を渡っていくのか。海上では、風に身をまかせて渡るのか、それとも方角を知っていて羽ばたくのか。海を渡る方法は最大の謎となっている。
 喜界島で確認された蝶には、800キロメートル以上離れた和歌山県でマークされて、わずか4日後につかまったものがいる。夜も跳び続けたのか、途中どこかで休んだのか。
 でも、どうやって蝶が1000キロ飛んだとこが分かるのでしょうか。それは、つかまえた蝶にマーキングするからです。蝶の翅(はね)に油性のフェルトペンで記号を書いて放すのです。いまでは1年間に数万頭のアサギマダラにマークをつけて放しているそうです。ちなみに、蝶は1羽2羽ではなく、1頭2頭と数えるそうです。
 アサギマダラの求愛行動は、オスがメスを待ち伏せするタイプだ。オスはメスを追いかけ、メスにフェロモンをかがせて、その気にさせる。交尾は長いときには12時間にもなる。そのあいだじっとしていることもあれば、一方が他方をぶら下げて飛んでいくこともある。
 ちょっとみると、アゲハチョウに似た蝶です。日本中どこにも見かける蝶です。私もマークのついたアサギマダラをつかまえてみたいと思ったことでした。

北朝鮮に潜入せよ

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著者:青木 理、出版社:講談社現代新書
 韓国映画「実尾島」(シルミド)は大変な迫力がありました。まさしく衝撃の映画です。1968年1月21日、北朝鮮の武装工作員31人が板門店近くの軍事境界線を密かに突破し、4日後に、ソウルの大統領官邸(青瓦台)近くにまでやってきて銃撃戦を展開するという事件が起きました。生け捕りされた1人は、今では韓国で牧師をしているそうです。 大統領の首を取りに来た。そう言われて腹をたてた朴正熈大統領は仕返しを命じた。そこで、同数の31人からなる金日成攻撃の特別部隊が創設されたのです。先ほどの映画は、この苛烈な訓練風景を生々しく描いていました。
 この31人を訓練したのは空軍諜報部隊で北派工作のベテランだった金淳雄(キムスンウン)。31人は、やがて24人に減っていた。そして、北侵命令を撤回された彼らはソウルに直訴するべく蜂起するのです。
 この実尾島部隊を主管していたのが、KCIAの李哲熈局長。この李局長は、KCIA次長補として金大中拉致事件においても中心的役割を果たしています。
 私は、この本を読んで、韓国が武装工作員を派遣しようとしたのは実尾島部隊だけと思っていた浅はかさを思い知らされました。その前にも後にも、韓国は大量の武装工作員を北朝鮮に派遣していたのです。1950年から1999年まで6446人いたというのです。そして、これは公式発表で、その実数はもっと多いとみされているのです。
 韓国国防省によると、1951年から1994年までの間に、北派工作員として1万 3835人を養成し、そのうち7987人が死亡または行方不明になったとのこと。実に6割以上です。北朝鮮から武装工作員が南下するだけではなかったのです。私は、認識を改めました。
 問題は、国が全責任をもつという甘言で派遣しながら、現実には、まったく何の手当もしなかったということです。まさしく国が国民を裏切ったのです。
 そうなんです。いつだって国をあてにすることはできないのです。だって、支配層の顔ぶれが変わってしまえば、そこで責任の所在は曖昧にされてしまうのです。それが現実です。なんといっても、組織を動かしているのは、人なのですから。

なぜ、伊右衛門は売れたのか

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著者:峰 如之介、出版社:すばる社
 私の名前(昴)だから、この本をすすめるわけでは決してありません。一つの商品をつくり出す過程が描かれているのに心魅かれたからです。前にもトヨタのプリウスをつくり出す過程を描いた本を紹介しました。
 開発者が何かをやりたいと言ってきたとき、提案された企画に対して自分が100%反対の考えを構築できなかったら、やらせる。なぜなら、止めるとこでチャンスを喪失するからだ。部下のチャレンジングな企画を抑制する思考方法を身につけてしまうと、人間って弱いもんだから、いつの間にか挑戦できない思考に染まってしまう。
 開発者として実現しなければならないのは、飲んだときの実感だけではなく、飲み終わったときに、また飲みたいと思う微妙な感覚だ。過去に開発したヒット商品に共通している味覚は、もう一度飲みたい気持ちになる微妙な味覚設計にある。
 味覚を敏感しておくためには満腹は大敵。敏感な味を感じとれる体調を維持するためにも、朝食は摂らない。空腹の午前中に味覚を評価して、午後から味覚レシピを工夫する。
 臭覚を研ぎ澄ますため、タバコはもちろんのこと、家庭生活においても、臭気を発する生活商品は一切つかわない。
 研究段階でおいしい味が実現できても、マスプロラインで同じ味が大量生産できる保証はない。伊右衛門の場合、無菌充填に加えて、微粉末の茶葉を使用する初めての試みだったので、生産ラインの構築が大変だった。
 2004年3月16日。店頭に並んだ伊右衛門は、あっという間に売り切れ、発売4日目で出荷停止を発表した。無菌充填、石臼挽き茶葉、粉末処理、オリジナルボトルなど、ものづくりへのこだわりが逆にアダとなって、急激な増産がままならない状況だった。
 清涼飲料史上、最速で年間販売額5000万ケースを達成し、1000億円超の販売金額を実現した。
 緑茶を140度という高温に30秒間さらし、ペットボトルに飲料を充填して85度の高温で30分間殺菌する。これをホットパック方式という。これは優れた殺菌効果がある反面、度重なる高熱の影響によって緑茶本来のうまみがそこなわれてしまう。
 2002年当時、コンビニで売られていた緑茶飲料はホットパック方式、加熱殺菌方式で生産されていた。殺菌効果はあがるが、緑茶本来の旨みは損なわれる。そこで香料を添加したりしていた。それでも完全殺菌できないため、抗菌作用の強い、つまり渋いカテキン含有量の多い茶葉を選ぶことになる。すると渋みが強くなる。まずくなるわけだ。
 緑茶本来のいれたての旨みが実感できるには、非加熱無菌充填方式をめざすことになる。
 緑茶を愛飲しているのは20代から50代の男性。急須でいれた緑茶を毎日飲用している。そこで、次の3つが必要条件とされた。その一、日本的スローライフ感を具現化する。その二、急須でいれた本格的な味わいを具現化する。その三、お茶のつくり手の顔が思い浮かぶこと。
 プレゼンがうまくいったときは、部屋全体がシーンと静まりかえって、質問さえ出ない。なーるほど、そうなんですね。ちなみに、田上尚志弁護士(島根県浜田市)は、プレゼンはパワーポイントよりマックのキーノートが断然優れていると喧伝しています。
 茶の水色から茶葉のダメージを推しはかることができる。赤みがかっているということは、お茶を生産する工程で茶葉に傷がついてしまったことを意味する。茶葉に傷がつくと、そこから発酵がすすんでしまうので、どうしても水の色が赤くなってしまう。
 熱湯を入れて2分間待つのは、おいしいお茶の飲み方ではない。研究者としては、茶葉の味や性質を十分に引き出し、審査するための飲み方。上級茶といわれる茶葉は70度くらいのお湯をいれて飲むのが一番おいしい。
 最後までこだわったのは、味にほのかな甘味をつくり出す石臼挽きの超微粒子粉末の混入技術。味にまろやかさを出す隠し味につかった。粉末の状態が少しでも粗すぎるとボトルの底に粉末茶が沈殿し、商品としては見た目が非常に悪くなる。そこで、1ミクロン以下の超微粉末をつくる石臼挽き技術を徹底的に追求して、究極のまろやかな味を実現した。
 炎暑としか言いようのない残暑が続いています。水分補給にペットボトルの緑茶は欠かせません。伊右衛門の味はどうして出来あがったのか、そのネーミングにはどんな苦労があったのか、ヒット商品がつくり出されるまでの過程が手にとるように分かり、大変勉強になりました。

今日、ホームレスになった

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著者:増田明利、出版社:新風舎
 実に身につまされる本でした。なにしろ、私とまったく同世代の人々が、帰るべき家がなく、公園などで寝起きしているというのです。実に悲惨です。
 ところが、世の中には、ホームレスなんて気楽な稼業でうらやましいという意見があったり、働く意欲のない彼らには何の権利もなくて当然だと高言する人が少なくありません。私には、とても信じられません。冬には凍死寸前、夏は蚊に襲われ、いずれも安眠できない。若者に襲われたり、病気になったらどうしようもない。そんなホームレスに誰が好きこのんでなるというのでしょうか・・・。
 ホームレスになった理由は、失業・倒産、病気で高齢のために働けなくなったことなど。前職は、正社員、会社経営者、自営業者などが4割を占める。まさに明日は我が身かもしれないのです。50も半ばを過ぎた高齢で雇ってくれるところがどれだけあるでしょうか。路上警備の人々の日焼けした顔を見るたびにそう思います。
 家庭崩壊、熟年離婚。これらは、それまでの会社人間で家庭生活を放棄したツケがまわってきたとも言えるものです。私なんか、身震いしてきそうです。
 13人のケースが紹介されていますが、いずれも、悲惨です。大手総合商社の財務部次長だった52歳は、今や雑誌拾いで1日1000円の収入、食事はコンビニの廃棄弁当。ところが、今もスーツを着ている。
 49歳の外資系投資銀行ファンドマネージャーをしていた男性は、今はゲーム喫茶のサンドイッチマンが仕事。日当6000円。彼は、なんとボーナス込みで2000万円の年収を誇っていた人です。
 ゼネコン営業部長だったという56歳の男性は、雑誌拾いとアルミ缶回収で1日1500円の収入。体調不良で野垂れ死に寸前。
 自動車部品メーカーの管理職だった57歳の男性は首切りを仕事としているうちに、自分も解雇通告を受けてしまいました。雑誌拾いで収入は1日500円。意地悪した先輩や退職を迫った役員を包丁でメッタ刺しにする夢を何度もみるという。怖いですよね。本当に何回かありましたからね、そんなことが・・・。
 生まれ変わっても、サラリーマンにだけはなりたくない、もう嫌だね、と言います。よほど辛かったんですね。57歳だと、ハローワークに行っても求人ボックスさえないというんです。ああ、どうしましょ。
 ホームレスの男性の一週間の生活が紹介されています。本当に大変です。
 身体の清潔に気をつけている人は生き延びるが、そんなことどうでもいいと思っている人は短命で死ぬ。そんな統計があります。
 私も、家出してホームレスをしていた人から法律相談を受けたことがあります。全身から発散する独特の異臭に息が詰まりそうでした。本人はもう慣れて何も感じなくなっているのです。この本は、よく調べてあります。現代社会の矛盾をえぐるノンフィクションでした。

イラクと自衛隊ブログ

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著者:岡本 宏,出版社:アメーバ・ブックス
 バクダッドの危険はテロに巻きこまれること,サマワの怖さは自分がテロの対象になっていること。
 イラクではタクシーに乗ったら助手席に座らなければならない。日本の感覚で後部座席に座ってはいけない。ひと目で外国人と分かってしまい,テロリストの恰好の餌食となる。
 イラク派遣の自衛隊員に支給される危険手当は1日3万円。3ヶ月いたら、それだけで300万円になる。すごい高給優遇です。しかも、一日一時間だけ働けばいいのです。新聞報道によると、イラクに派遣された陸上自衛隊員は3ヶ月交代で、2年半のあいだに合計5500人。各方面隊は600人ずつ派遣したが、本隊は500人で、業務支援隊が  1500人。この500人のうち、自衛隊宿営地の管理と警備に各200人。したがって復興活動にあたったのは、なんと600人のうちわずか100人のみ。施設部隊50人と衛生部隊50人。しかも、活動時間は当初こそ1日3時間だったのが、路上爆弾攻撃を受けた2005年6月からは、なんとなんと1日1時間のみ。いやあ、驚きました。こうまでして、小泉首相はイラクに自衛隊がいた実績をつくりあげたかったのです。といっても、正当性がまったくない戦場で生命を危険にさらしたくなんてありませんよね。
 大切なのはGNN。義理(G),人情(N)と浪花節(N)。これは万国共通。
 ABCが大切。当たり前のこと(A)を,ボーッとしないで(B),ちゃんとやる(C)。
 昼間は41度,夜は32度。この32度でも肌寒い。湿度がないから。
 イラクでは昼食がメインで,ご飯を食べるのは昼だけ。夜はパンだけで,軽めの食事となる。だから,夜レストランに行って,ご飯を注文しても出てこない。
 イラク人は,見た目から10引いた年齢が実年齢であることがほとんど。それだけ苦労していることなんでしょうね。
 サマワでは,すべての女性が家庭から出ることはない。
 この本は,中日新聞社の写真記者がイラクのサマワに派遣されたとき,ブログで日記を書いたものをまとめたものですから,臨場感があります。迫真のドキュメントとありますが,まさしく危険と隣りあわっせだということが伝わってきます。ただ,著者がイラクにいたのは2004年3月24日までです。サマワは,その後,ますます危険地帯になったような気がします。
 そんなイラクとサマワの実情が日本人にほとんど知らされていない現実があります。そのうえで小泉政権はタカをくくっているのです。許せません。そして、航空自衛隊のほうはイラク全土を飛んでアメリカ・イギリス軍の支援活動をしています。日本人の多くは、自衛隊はイラクから完全撤退していると思っているんじゃないですか。
 あつ、そうでした。もうひとつ、海上自衛隊がいました。こちらはアフガニスタンの復興支援ということでインド洋まで出かけているのですが、いつのまにかイラク侵略戦争をすすめているアメリカ軍の補給活動までしています。
 マスコミって、こんな実情を報道していませんよね。ホントに困ったことです。

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