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トンデモない生き物たち

カテゴリー:未分類

著者:白石 拓、出版社:宝島社
 カモノハシは単孔類というほ乳類の仲間。電気を感じる力がある。電気センサーはくちばしにあり、表面上はただの小さな孔に見える。しかし、その奥には電気感覚をもった神経がずらりと並んだ部分があり、高感度な電気を感じる器となっている。カモノハシは、生き物が出す生体電気を探査していて、それを手がかりに、小エビやザリガニ、水生昆虫などを食べている。
 シロアリはアリとはまったくかけ離れた虫で、どちらかというとゴキブリに近い。ムヘイシロアリは敵が来ると、自分の腹部を爆発させ、体に含まれる有毒物質などをぶちまけて敵に浴びせる。まさに自爆攻撃だ。
 ザゼンソウという植物がある。むかし、尾瀬あたりで見たような気がします。ザゼンソウは、自分で積極的に初熱し、恒温動物のように一定温度に調節する。周囲が氷点下に下がっても、20度の体温を維持することができる。
 クモの糸は紫外線を吸収しやすい素材でつくられている。紫外線は昆虫類にはよく見える。そのため、紫外線を反射しにくいクモの巣は昆虫にはとても見えにくい。
 ウズグモの糸には静電気があるので、近づいた昆虫を引き寄せる。
 ウミホタルは、敵に襲われると、体内の分泌線からルシフェリンとルシフェラーゼを別々に、だけど同時に海中に吐き出す。そして、その二つが混ざると、両者の作用で青く発光する。体外発光する。
 ペンギンは、水中で翼を上げるときも下げるときも前進できる。ふつうは下げるときだけなのに。ペンギンは潜水する深さを計算して息を吸うときの空気量を調節する。浅くもぐるときはちょっと吸い、深いときはたくさん吸う。これは浮力とのかねあい。深いところでは体内の空気が圧縮されて浮力が減るため。浮力と重力がつりあい自由に泳ぎやすくなる。また、ペンギンはもぐっているあいだは、脳以外の臓器への血流を止めてしまう。翼の筋肉にも血液が行かない。筋肉は無酸素で動けるだけ動くのだ。ええーっ、そうなんだ・・・。信じられないことです。
 植物体内にも光をつかった高速通信システムがある。光が植物体内をかけめぐっている。この光は可視光ではなく赤外線。光ファイバーと違って、光が通路すすみながら、少しずつもれている。これは、植物体内に光が供給されていることも意味する。
 わが家にも夜になるとヤモリがよく登場します。窓ガラスにペタリと貼りついて動きません。このヤモリの足の裏は、1本あたり50万本もの繊毛におおわれている。この毛の先端とガラス物質との間に分子レベルの引力がはたらき、接着力のもととなっている。ファンデルワース力という。計算上は、ヤモリ一匹で40キロの重さを支えられるという。たいていの大人は、私ももちろん、天井のヤモリ2匹をつかんだらぶら下がれることになる。本当なんでしょうか・・・。実験したら面白いでしょうね。

君を乗せる舟

カテゴリー:未分類

著者:宇江佐真理、出版社:文藝春秋
 サブタイトルに髪結い伊三次捕物余話とあります。いつものことながらたっぷり江戸情緒を味わうことができました。
 函館に生まれた著者は団塊世代。今も函館に住んでおられるようです。
 はいはいができるようになった幼女が脇役として登場し、話の展開にふくらみをもたせています。このあたりの情景描写も心憎いものがあります。
 髪結い伊三次の裏の仕事は同心の小者。北町奉行所、定廻り同心の不破友之進の配下にある小者として探索に歩き、事件を解決していきます。若者愚連隊(旗本の二男・三男が主力)を取り締まろうと苦労し、また、若い女性の誘拐事件を鮮やかに解決します。
 漢字をたくさん知ることができます。木場(きば)。贔屓(ひいき)。丁場(ちょうば。得意先)。熨斗目(のしめ)。銀杏髷(いちょうまげ)。月代(さかやき)。仕舞屋(しもたや)。束脩(そくしゅう。謝礼)。例繰方(れいくりかた)。紙魚(しみ)。胡散臭い(うさんくさい)。
 江戸情緒にどっぷり浸るには、これらの小難しい漢字が読めて、意味が分かる必要があります。私の娘が漢検に挑戦中ですが、私も、いずれは受けようと思っています。やはり日本人なのですから、日本語を知る必要がありますので・・・。

1968年、世界が揺れた年(後編)

カテゴリー:未分類

著者:マーク・カーランスキー、出版社:ソニー・マガジンズ
 1960年代後半になって、フランスは消費社会に変わった。突然、フランス人は車を持つようになり、家庭に屋内トイレが設けられるようになった。とはいえ、1968年までに屋内トイレを設けた家庭は、パリの半数にすぎなかった。
 1958年、フランスは17万5000人の大学生がいたが、1968年には53万人と、イギリスの倍になっていた。ところが、フランスの学生は4分の3が落第して退学したため、学位取得者はイギリスの大学の半数でしかなかった。だからこそ、ドゴールは最初のうち学生運動を歯牙にもかけていなかった。ドゴールは、運動に関わる学生は単に目前の試験を恐れているのだと考えていた。大学には学生たちが溢れ、パリ大学だけで16万人の学生を抱えていた。学生がデモを始めれば、その大義に共感したデモ参加者が数えきれないほどに膨れあがることになった。
 フランス共産党は、初めから学生たちのすることすべてに反対していた。そんな偽りの革命家どもは正体を暴かれてしかるべきだ、ジョルジュ・マルシェ書記長はこう言った。労働組合も同調しなかった。労働者もドゴール政権に怒りをつのらせていた。だけど労働者は革命を望んでいなかったし、ドゴール政権を転覆させることには関心があったが、それ以外の学生たちの問題については、どうでもよかった。労働者が望んでいたのは、労働環境の改善であり、給料値上げであり、有給休暇を増やすことだった。労働者と学生は、別々の運動だった。労働者が望んだのは、賃金や工場の抜本的改革。学生が望んだのは、生活の抜本的な改革だった。
 学生運動の高名な指導者であるコーン・ベンディッドはユダヤ系だった。左翼運動には多くのユダヤ系が参加していた。
 68年6月23日、ドゴール支持者は43%の票を勝ちとり、国民議会での絶対多数を獲得した。左派は国民議会の半数を失い、ニューレフトの学生は議席を得ることができなかった。
 1968年秋、ビートルズは最初の自主制作レコードをリリースした。片面がレボリューション、もう片面がヘイ・ジュードだった。
 アメリカで黒人暴動が起こるたびに、法と秩序を指示する白人有権者が増え、黒人とその権利にうんざりする人が増えた。人種差別撤廃運動に対する白人側の巻き返しは、一般にホワイト・バックラッシュと呼ばれた。ニクソンは、このバックラッシュ票をかき集めた。
 1968年の1年間のうちに1万4589人のアメリカ兵がベトナムで戦死し、アメリカ人戦死者の総数はそれまでの2倍となった。1968年は、もっとも犠牲の多い年だった。ひどい一年の締めくくりがリチャード・ニクソン大統領の誕生だった。
 この年、ビアフラで100万人が飢えに苦しみ、ポーランドとチェコスロバキアで理想主義が叩きつぶされ、メキシコで大虐殺が起こり、世界じゅうの反体制派が殴られたり無惨な目にあわされた。そして誰よりも世界に希望を与えた二人のアメリカ人が暗殺された。
 クリスマスの日、3人の宇宙飛行士が月面から100キロの軌道を周回し、上空から月面が灰色の荒涼としたでこぼこであることを明らかにした。
 1968年。私は大学2年生でした。6月から学園紛争が始まりました。いえ、他人事(ひとごと)のような紛争という言葉をつかいたくはありません。それに一兵卒としてかかわったものとしては、やはり学園闘争と呼びたいのです。大学がもっと学生の叫びと要求を真剣に受けとめてくれるものになってほしいと心から願っていました。ただ矛盾するようですが、もう一方では、勉強したくないという気持ちも強くありました。大学受験のような、押しきせの講義に対して反発していたのです。もちろん、好奇心の方は人一倍ありました。まったく矛盾する存在であり、行動でした。まさに20歳前後の分別のない年頃だったのです。この年に体験したことは貴重な青春のひとこまとして、今でも私の原点となっています。

1968、世界が揺れた年(前編)

カテゴリー:未分類

著者:マーク・カーランスキー、出版社:ソニー・マガジンズ
 60年代後半の学生は、60年代前半の学生にはない体験をした。そのひとつが徴兵である。徴兵によって学生たちは、何千人というアメリカ兵が殺し殺されている戦争にいやでも駆り出される。
 もっと重要なのは、残酷で無意味な暴力に溢れた戦争そのものの様子が毎晩テレビに流れ、どんなに非難しても、こうした学生たちには戦いを止める力はなかったということだ。18歳で徴兵されるのに、21歳未満では選挙権すら与えられていないのだ。
 アメリカの選抜・徴兵局は、ひと月に4万人の若者を徴兵する計画だったが、その数は4万8千人となった。ジョンソン政権は研究課程の学生に対する徴兵免除を廃止し、7月に始まる会計年度のあいだに15万人の大学院生を徴兵すると発表した。この政策は、大学院への進学を考えていた若者たちに大きな衝撃を与えた。ローズ奨学金を受けてオックスフォード大学の大学院へ進学することになっていた、ジョージタウン大学政治学部4年のビル・クリントンもそのひとりである。大きな衝撃を受けたのは大学院にとっても同じこと。一年生として入ってくる20万人の新入生を奪われてしまうと訴えた。
 マーティン・ルーサー・キングは、アトランタの有名な聖職者の裕福な家庭に育った。FBIはキングの行動を執拗に追跡した。写真をとったり、周辺に情報提供者を送りこんだり、会話を録音して監視した。
 フーバー長官はキングと共産主義者とのつながりを暴くという名目をたてていたが、実際はまったくつながりがなかった。FBIが握った動かぬ証拠は、キングが日頃から何人もの女性と性的関係をもっていることを裏づけるものだった。キングは、セックスはストレス解消法だと言っていた。公民権活動家の多くもセックスにふけっていたから、キングを批判できなかった。キングが女性を追いまわしていたのではない。行く先々で女性に追いまわされていたのである。
 FBIはキングの情事に関する写真などを目ぼしいジャーナリストに提供した。しかし、それを報道しようとする者はいなかった。60年代には、この手の話題はジャーナリストの品位と倫理に関わるものとみなされていたからだ。
 キングが40歳にならないうちに白人脱獄囚に暗殺されたというニュースが広がると、たちまち暴動がアメリカ全土ではじまった。暴力事件は120都市の黒人居住地区で起きた。殺された黒人はワシントンDCだけでも12人にのぼった。
 この年、私は大学2年生でした。本当に世界が揺れた年です。日本は大変好景気が続いていましたが、学生は街頭デモをくり返していました。私も、銀座の大通りを何度もフランスデモで行進しました。深夜のことですが、壮観でした。なんだか世界を支配したかのような気分で,とても爽快でした。同じときにアメリカの青年は徴兵制のもとでベトナムの戦場へ狩りたてられていたのです。同世代の日本人青年がアメリカに行っているときに徴兵されてベトナムに送られ、日本に帰ってきたときに亡命を表明するということもありました。

がん遺伝子は何処から来たか?

カテゴリー:未分類

著者:J・マイケル・ビショップ、出版社:日経BP社
 原題は「ノーベル賞獲得法」だったそうです。ノーベル賞を受賞した著者が、それに至る経緯も紹介しています。
 男の成功の陰には女性の呆れ顔がある。なんとなく分かる言葉ですね。
 自分が本当に必要とされている場所を選ぶできであり、進むべき道を見栄などで決めてはいけない。まことにもっともな指摘です。私も今の弁護士という職業、そして今の活動場所(ホントに田舎です)に決めて良かったと本当に思っています。
 三つの教訓を得た。第一に、その分野の専門家よりも、外から見ることのできる立場の人間の方が鋭い観察をすることがある。経験不足だからといって。ひるむ必要はない。第二に、自分の想像力に信頼を置くべきだ。たとえ通説と矛盾する内容であっても、というより矛盾するときこそ、自信を持たなければならない。第三に、常識に挑戦する知的態度が不可欠だ。平均以上の成果を上げようと思うのなら、危険を覚悟しなければならない。
 この指摘にも、すごく同感します。
 人に知識を伝えたいという欲望は、体の中から自然にわき出てくるものだ。身構えてするものではない。理屈も不要だ。これは文化の中で生きる人間として一種の義務であり、使命でもある。私のなかにも、私が理解しえたことを世の中の人に分かりやすく伝えたいという欲望があります。それはふつふつと湧いてくるもので、止めようがありません。私が、弁護士になって1年に1冊以上は本を出版してきたのは、その結果です。義務感とか使命感というより、ともかくおのれの心が命ずるままに本を書いて出版してきたということです。残念なことに、あまり売れませんので、最後はタダで配っています。
 異質な者を受け容れる集団には、寛容な姿勢とともに優れた才能がおのずと備わっている。日本の社会そして日本の大企業に、この寛容さが失われている気がしてなりません。異なった思想・信条の人も広く包摂する集団こそが明日への飛躍を保証するのだということが忘れられているように思います。
 多くの微生物は、人間が安心して快適な生活を送り、人生を楽しんだり、ときには快楽を味わったりするために不可欠な存在、少なくとも重要な役割を果たしている存在なのである。ヒト1人につき100匹もの微生物が生息している。たとえば、私たちの体に進入してくる一過性の微生物のうち、有害な菌が容易に定着してしまうことがないのは、正常細菌叢が退治してくれるからだ。排便後、トイレットペーパーをいくらつかっても、肛門の周囲の皮膚表面には何百万という腸内細菌が付着する。だが、数時間のうちに、この部位にふだんから住みついている細菌が侵入者を一掃してしまう。
 ヒトの体は300兆個の細胞の集合体である。だが、細胞は単なる構成単位ではない。内部に精緻な仕掛けをもち、生きて呼吸する。機能を果たすために体内を移動することもある。その機能はまちまちで、それぞれ任務が決まっている。化学物質レベル、あるいは分子レベルの言葉で互いに会話もする。増殖能力をもち、人の場合、生まれて死ぬまでに述べ1京回(1兆の1万倍)分裂する。各細胞は、自分がいつ、どこでどのように仕事をすればいいか把握している。この秩序が乱れると、がんが発生する。がん細胞は、他の細胞とのあいだで取り結ぶ社会契約を無視し、無秩序な増殖を続け、版図を広げる。
 ヒトの体内では、一生のあいだに少なくない数の細胞ががん化につながるような異常をきたすと考えられている。そして、たいていは手に負えなくなる前に、初期の段階で正常な状態に回復するよう処理される。しかし、まれにそのままがん化のプロセスがすすみ、一個のがん細胞が分裂を続けて塊を形成する。こうした歯止めのきかない増殖によって致命的な結果がもたらされる。
 がん細胞はがん細胞を生む。がん細胞の機能は細胞から細胞へと受け継がれていく。
 がん細胞とは何か。私たちは何を考え、どうすべきか。さすがにノーベル賞を受賞した人は違いますね。いろいろ示唆に富むことの多い本でした。

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