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生かされて

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著者:イマキュレー・イリバギザ、出版社:PHP研究所
 都会の排ガスでうす汚れた魂がホースで水をじゃぶじゃぶかけて洗い流された。そんな気がしました。読み終わったときすがすがしい気持ちに浸ることのできる本です。そんな感想を口に出して何のはばかりもない本です。いえ、この本に描かれている情景は実に悲惨なのです。ところが、それを語る口調に救いが感じられるので、なんとなくホッとしてしまいます。
 ことが起きた場所は、アフリカのルワンダです。1994年、100日間で100万人のツチ族と穏健派のフツ族が虐殺されてしまいました。当時、大学生だった著者は、そのまっただなかで、なんと牧師宅の小さなトイレに女性ばかり8人で3ヶ月もこもって、ついに生き延びたのです。信じられない奇跡が起きました。彼女たちを殺そうとしたのは、ついこのあいだまで親しく話していた隣人であり、友人だった人々です。彼らは気が狂ったように大鉈(おおなた)、ナイフ、銃をもって殺戮(さつりく)してまわりました。著者の父も母も、アフリカのよその国に留学中だった長兄一人を除く兄弟みんなが殺されてしまったのです。なんと、むごいことでしょう。
 ルワンダはアフリカのなかでも小さな国の一つ。そして、もっとも貧しい国でもあり、また、一番人口過密な国だ。ルワンダでは、家族一人ひとりが違う苗字をもっている。両親が子どもが産まれると、それぞれに特別の苗字をつける。赤ちゃんが生まれたとき、父か母か、その子をどんなふうに感じたかによって苗字をつける。著者の名前イリバギザは、ルワンダのキニヤルワンダ語で、心もからだも輝いて美しいという意味。なるほど、写真でみる彼女は輝く美しさです。
 著者は、両親からルワンダが三つの部族から成り立っていることを教えられませんでした。差別を嫌う親の方針からです。
 多数派のフツと少数派のツチのほか、ごく少数の、森に住むピグミー族に似たツワがいる。ツワは、身長が低い。ツチとフツの違いを見分けるのは難しい。ツチは背が高く、色があまり黒くなく、細い鼻をしている。フツは背が低く、色が黒く、平たい鼻をしている。といっても、フツとツチは何世紀にもわたって結婚しあってきたので、遺伝子は入り混じっている。
 フツもツチも同じキニヤルワンダ語を話し、同じ歴史を共有し、同じ文化だ。同じ歌をうたい、同じ土地を耕し、同じ教会に属し、同じ神様を信じ、同じ村の同じ通りに住み、ときには同じ家に住んでいる。みんな仲良くやっていた。なんということでしょう・・・。これでは、日本人のなかの九州人と東北人の違いほどもないのではありませんか。同じ日本人であっても、毛深かったりそうでなかったり、背の高低があったりして・・・。
 ところが、1973年の革命で権力を握ったフツの大統領は、学校の生徒数や政府関係の人数は、人口の割合によると宣言した。フツ85%、ツチ14%、ツワ1%。これによって、ツチは高校からも大学からも、そして収入の良い職場からも追い出された。それで、著者も成績が良かったのに公立高校に入れなかったのです。
 ルワンダがドイツの植民地になったとき、また、ベルギーがその後を継いだとき、ルワンダの社会構造をすっかり変えてしまった。ベルギーは、少数派のツチの男たちを重用し、支配階級にした。ツチは支配に必要な、より良い教育を受けることができ、ベルギーの要求にこたえてより大きな利益をうみ出すようになった。
 ベルギー人たちが、人種証明カードを取り入れたために、二つの部族を差別するのがより簡単になり、フツとツチとのあいだの溝はいっそう深くなっていった。
 フツは、子どものときから、学校でツチを絶対に信じてはいけない。彼らはルワンダにいるべき部族ではないと教えられる。毎日、ツチに対する人種差別をみながら育つ。学校そして職場で。ツチを蛇とかゴキブリと呼んで、蔑(さげす)むことを教えられる。
 いよいよ大虐殺がはじまります。大統領が率先してデマ宣伝を大声でくり返すのです。ゴキブリどもを消毒しろ、ラジオでこう叫びます。
 ところが、インテリの父は信じないのです。ナチス・ヒトラーがユダヤ人の大虐殺をはじめたときと同じです。まさかそんな馬鹿なデマ宣伝を民衆が信じるはずがない。しかし、通りにはたちまち血に飢えた狂った大群衆であふれました。ツチと見たら殺す。それを止めようとした穏健派のフツもためらうことなく殺していきます。
 ツチの人々が逃げこんだ教会堂を取り囲み、火をつけて全員殺す。競技場に逃げて集合した人々を機関銃と手榴弾で全員殺戮してしまう。
 女性だけ6人がシャワー付きのトイレのなかに逃げこみました。牧師宅でも、そこしか安全なところはないのです。牧師は注意します。
 「トイレを流したり、シャワーをつかったりしないように」
 「この壁の反対側にトイレがある。そこは同じパイプでこことつながっている。どうしてもトイレを流したいときには、そこを誰かがつかうまで待つ。そして、確実に同時に流すこと」
 7歳、12歳、14歳、55歳の女性たちです。一人また一人と、当然、生理にもなる・・・。ずっとトイレにいたにもかかわらず、いま誰かが用を足しているところを思い出さない。匂いに苦しめられたことも思い出さない。
 牧師が食べ物をもってきたときだけ食べる。夜中の3時か4時まで現れないこともあり、まったく姿を見せない日もあった。飲み水はもってきてくれた。食べものも、余りものしかもってこれなかった。気づかれないためだ。
 6人いたのに、また2人の女の子が増えた。ところが、すき間はかえって増えた。人間が縮んでしまったから。十分に食べられないことから衰弱し、ほとんど一日中もうろうとして過ごしていた。著者も体重が18キロは減った。
 そして、驚くべきことに、この状況で、著者はなんと、英語の勉強を始めたのです。狭いトイレに女ばかり8人がこもって2ヶ月たった時点です。英仏辞典と英語の本を2冊、牧師は差し入れてくれました。
 フランス語のできる著者は必死で英語を勉強し、たちまちものにしました。
 著者が隠れていたトイレの写真があります。3ヶ月間、8人の女性が過ごしたとはとても思えない、本当に小さなスペースです。
 フランス軍に救われて、なんとか国連の仕事をするようになって、著者は刑務所に入れられている虐殺者のリーダーに面会します。そのとき、彼女は、私はあなたを許しますと言ったのです。私には、とても信じがたい言葉です。人間の気高い精神のほとばしりです・・・。
 アンネの日記とはまた違った魂をゆさぶる手記です。ぜひ、お読みください。あなたも、きっと、生きてて良かったと思うと思います。こんな感動を味わうことがきるんですから。

ドイツ戦車、戦場写真集

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著者:広田厚司、出版社:光人社
 戦車って戦場では万能の兵器のように見えますが、実は故障率が高かったのですね。ナチス・ドイツ軍が1993年にポーランドに侵攻したとき、戦車の4分の1が故障したというのです。
 ロンメル将軍もアフリカで戦車を動かしたわけですが、砂漠の砂とホコリは戦車の敵でした。戦車のエンジンの寿命を3分の1にしてしまいました。
 ナチス・ドイツ軍は、修理システムが十分でなく、また、多種の車輌による部品のため戦車戦力の15〜30%はムダにしていた。つまり、ヒトラーのナチス・ドイツ軍は補給のことを十分に考えていなかったのです。
 装甲部隊の作戦と戦力維持のための組織力に欠けていた。
 そして、ドイツ軍の機能化師団にとってもっとも深刻だったのは、燃料不足で進撃速度が落ちたこと。補給ラインが伸びて燃料が届かない。列車での輸送は、軌道幅が違うためにできない。船は黒海にソビエト艦隊がいて実行できない。空輸では、とてもまかなえない。さらに、ソ連軍のT34戦車にドイツ戦車は負かされていた。
 ヒトラーの求める狂信的な「撤退せず」という指令が、いつもドイツ軍の装甲部隊の致命傷となった。
 200枚もの戦場におけるドイツ戦車をとった写真集です。そこに戦争に悲惨さはまったく出てきませんが、その愚かさは十分に分かります。スターリングラードやレニングラードの戦いなどを先に紹介しましたが、それらの戦場の様子を具体的にイメージできる本です。

超・格差社会アメリカの真実

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著者:小林由美、出版社:日経BP社
 アメリカに26年も暮らしてきた著者が、自分の経験と知見をもとに、アメリカとはどういう国なのか、日本がアメリカのような国になっていいのかを根本的に問いかけた本です。
 アメリカの社会は4つの階層に分かれている。特権階級、プロフェッショナル階級、貧困層、落ちこぼれ。
 特権階級は、400世帯しかいない純資産10億ドル(1200億円)以上の超金持ちと5000世帯の純資産1億ドル(120億円)以上の金持ち。
 プロフェッショナル階層は、35万世帯の純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と純資産200万ドル(2億4000万円)以上で、かつ年間所得20万ドル以上のアッパーミドル層からなる。彼らは、高給を稼ぎ出すための高度な専門的スキルやノウハウ、メンタリティをもっている。
 特権階級とプロフェッショナル階級の上位2階層をあわせた500万世帯、これは総世帯の5%未満となる、に全アメリカの60%の富が集中している。アメリカの総世帯数1億1000万のうち、経済的に安心して暮らしていけるのは、この5%の金持ちたちだけ。
 アメリカは、人類の求める究極の社会なのか。アメリカの本質を理解した人は、ためらうことなく、一言で、ノーというだろう。
 アメリカの人口2億9000万人のうち、16%の4500万人は医療保険をもっていない。大人の5人に一人は医療保険がない。
 減税というのは、ワーキング・クラスからの徴税を大幅に増やし、投資収入で生きるトップクラスの税負担を減らす、というもの。
 アメリカの中産階級は、1970年代以降、アメリカの国力が相対的に低下する過程で、徐々に二分化してきた。メーカーなどで働く中産階級の大半は、貧困層への道をたどっている。
 アメリカ社会の最下層にいるのは、社会から落ちこぼれている層で、貧困ラインにみたない人々。アメリカの人口の25〜30%を占めている。
 著者は日本がアメリカのような国になってはいけないことを強い調子で訴えていますが、まったく同感です。

ユーゴ内戦

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著者:月村太郎、出版社:東京大学出版会
 チトーの率いていたユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国は、チトーの死後、1991年初夏から1995年冬の内戦のなかで解体していった。
 ボスニア内戦の犠牲者は20万人、難民は250万人。1981年のボスニアの人口は412万人だったから、全人口の5%が死亡し、60%が居所を追われたことになる。
 ボスニア内戦と同じ時期に起きていたルワンダ内戦と比較すると、ルワンダでは1994年4月からの3ヶ月間で人口750万人のうち50万人以上が虐殺された。ところが、国際社会の注目はボスニア内戦に集まり続けた。それはなぜか?
 アフリカでは、それまでも大虐殺が何度もあっていたのに対して、第二次大戦後のバルカン半島では、終戦直後のギリシア内戦、1956年のハンガリー動乱、1989年12月のルーマニアの混乱を除くと、大量の流血を目撃する事態とは無縁だったから。
 そもそも、ユーゴ内戦は民族紛争なのだろうか。クロアチア内戦で実際に戦ったのは、クロアチア人主体のクロアチア政府警察隊、国防軍とセルビア人武装部隊だったことは事実だ。しかし、民族紛争として単純にとらえきれない面がある。各民族の構成員全員が民族を争点とする民族政治を求めていた訳ではなく、かなりの人々が他民族共存状態の継続や復活を希望していた。また、武装部隊の民族構成も必ずしも民族的に単一ではなかった。
 では、なぜ深刻な内戦が続いたのか。
 それには、各民族の政治指導者の自己保身とデマゴギー戦略が大きいようです。それまでユーゴスラヴィアを支配していたチトーは、両親をクロアチア人、スロヴェニア人としていた。チトーは1980年5月4日に、87歳で亡くなった。
 セルビア人共和国軍は、短期的には戦況を有利に導いたかもしれない。しかし、長期的には欧米に根強いセルビア人悪玉論が強まるという悪影響をもたらした。こんな評価があります。ここでもマスメディアの操作が有効だったのです。
 クロアチア軍がセルビア人勢力に勝ったのは、軍人コンサルタント企業が軍備の増強や部隊の訓練などによってクロアチア軍を増強しただけでなく、作戦内容も助言したからだという指摘がある。
 ユーゴ内戦を事実経過にしたがって丹念に分析した学術書ですので、読みやすい本ではありません。それでも、結局は軍事行動だけで決まるものではなく、投票結果が大勢を決めているという気がしました。やはり、力だけでは何ものも長く支配することはできないのです。良識は必ず生きている。しかし、その前に多大な犠牲を払わなければいけないことがある。こういうことのようです。
 でも、やっぱり政治家のデマゴギーって許せませんよね。小泉の優勢民営化選挙のとき刺客で負けた議員のほとんどが自民党に復党しました。なぜかマスコミが大きく取り上げませんが、年末までに議員が復党すると、自民党に2億5000万円の政党助成金が入るのですよね。これって、もちろん税金なんです。自民党をぶっつぶせ、は一体どこへ行ったのでしょうか。国民をバカにするのもほどがあります。それなのに、自民党の安倍内閣の支持率が6割以上だなんて、とても信じられません。いったい日本人はどうしたんでしょうか・・・。

悪魔のささやき

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著者:加賀乙彦、出版社:集英社新書
 ハンディな新書ですけれど、中味はギッシリ詰まっていて、興味津々、ともかく面白く、知的刺激に充ち満ちている本です。
 たとえば、今の日本社会は刑務所化しているという指摘がなされています。
 マンションも学校もオフィスビルも、鉄とコンクリートの塊でつくられ、整然として人間管理が行き届いている。好きなものを食べ、気に入った服を選んで着ているようで、実は食料品も衣類も、画一的な大量生産品。刑務所というのは一般社会と無縁なところだという思いこみを捨て、身のまわりを眺めてみると、けっこう似ているところが多い。
 囚人は刑務所に閉じこめられっぱなし。それに対して、私たちの生活は、果たしてのびのびと生活を楽しんでいると言えるだろうか。
 社会が刑務所化すると、刑務所で起こるのと同じような問題が発生する。その一つが、心理学でいう爆発反応。ほんの些細な刺激で完全キレ、予想外の行動をとる。
 社会の刑務所化によってひきおこされるもう一つの問題が、関心の狭隘(きょうあい)化。刑期が10年から無期にわたる長期囚は、興味をもつ対象の幅が極端に狭い。話題のほとんど、いや、すべてが、ごはんの内容、看守の動向、囚人仲間の悪口というような刑務所内の日常生活に関することに限られる。外の世界で起こっていることについては、政変も戦争も娯楽も文化も、まったく関心がない。日々の単調な生活、狭い時空に自己の精神をぴったり合わせてしまっている。
 これをプリニゼーションと呼ぶ。そのような状態に陥っている本人は、そのことに気がつかない。新聞や週刊誌を読み、テレビをなめるように見ているはずなのに、かえって他人のことに無関心になっている。興味は一過性のものにすぎない。
 いつもいらいらして、心に余裕がない。自分のことだけで一杯いっぱいで、他人の都合や気持ちには極端に狭量。刑務所化する社会で暮らすストレスから、自分を抑制する力が弱まり、ちょっとしたことでキレやすくなっているのは子どもだけではない。
 うーん、なるほど、言われてみればそうですよね。
 自殺のかわりに人を殺す。人を殺し死刑になることで自分を破滅させようとする。そんな犯罪者は決して少なくない。破滅したいのなら自分一人で命を絶てばいいけど、それは寂しいし、怖い。自分自身をふくめた人間全体に対する不信感や憎しみ、自分の不遇を周囲の人や社会のせいだと考える被害者意識があるため、他人を巻きこんでしまう。
 なーるほど、そうなんですか・・・。
 日本の知識人は、学識は豊富で知性が高くても、本当の意味で自分の思想をもっていない人が多い。いやあ、そうなんですよね。これは、自戒をこめた私のつぶやきです。
 人の心には残虐性や殺人への願望が隠れている。低きに流れる怠惰さや依存心も、たっぷりと持ちあわせている。性悪説や性善説といった単純な二元論では人間は割り切れない。悪魔や天使のささやきのようなものによって、内なる悪しきものや善きものが呼び覚まされやすく、その表れ方も激しい。
 人間は誰もが弱く、罪深く、心の奥底に悪しきものを棲まわせている。今のような混沌とした時代においては、無自覚に暮らしていると、内なる悪魔に突き動かされ、悪をなしてしまう危険性が高くなる。
 うむむ、なるほど、なるほど、たしかにそうだよなー・・・。そんな納得の指摘が満載の本でした。

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