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巨大投資銀行(上)

カテゴリー:未分類

著者:黒木 亮、出版社:ダイヤモンド社
 案件としては、1件あたり最低100万ドル(2億5000万円)は儲かるものを追ってほしい。細かいビジネスはモルガン・スペンサーのビジネスではない。
 小説のはじめのころに出てくる上司の言葉です。なんという世界でしょうか・・・。一人あたり年間純利益で100万ドル上げていれば、何とかクビがつながる。200万ドルだと安泰。ええーっ・・・。
 自分、そして秘書。2人のアナリストの給与、直接経費、間接経費など一切合切を含めると、年間コストは100万ドルかかる・・・。うーん、なんという金額でしょう、まったく想像を絶します。
 朝起きると、顔を洗い朝食をとりながら、今日一日、どんなことをして、どんな展開になるか、すべて、予想する。すると、全身にアドレナリンが流れ、だんだん興奮してくる。その興奮状態で会社に行って、仕事に取りかかる。これがインベストメント・バンクで生き残る道だ。うひゃー、という叫び声を、ついあげてしまいました。私も、朝のうちに今日一日のスケジュールを予想し、頭のうちに自分のとるべき言動を予習します。それでも、ここまでは・・・。
 これは、年収5000万円の世界です。とてつもない金額が一瞬のうちに世界中を駆けめぐり、そこで、丁々発止の取引をしている人々の話です。私は、とてもこんな生活をしたいとは思いません。神経がすり減ってしまうだけ。お金の本当のありがたみも、まったく分からなくなってしまうとしか思えません。そして、ちょっとでも勘の鈍った人間は、たちまちお払い箱になるのでしょう。それでも、やめたときに大金が手元に残っていればいいのでしょうが・・・。あぶく銭になって消えているのではありませんか。
 いえ、それより心配なのは、精神状態がまともであるかどうか、です。余計な心配だと言われるかもしれませんが、私にはそれが一番の心配です。
 スイスの金融機関が日本の富裕層をターゲットとした活動を展開しているそうです。ターゲットにする富裕層とは、資産2億円以上。しかし、実際に狙うのは10億円以上で、なかでも核になるのは50億円以上の層だといいます。信じられない金額です。日本でも超リッチ層がアメリカ並みに生まれているのですね。
 いったい、どれくらいリッチ層がいるのでしょうか。最近の新聞によると、純資産額が1兆円から5億円までの富裕層は81万世帯。これは、前年比33%増。5億円以上のスーパーリッチ層は5万2千世帯で、前年比21%増。5000万円から1億円までの準リッチ層は280万世帯いるといいます。やはり、日本もアメリカ並みの格差社会になってしまったようです。「美しい国」どころか、アメリカのように怖くて醜い国になりつつあります。小泉内閣の5年間で、日本はすっかり変わってしまいました。でも、私はめげずに人々の心が通いあう社会をめざしたいと思います。

チャベス

カテゴリー:未分類

著者:ウーゴ・チャベス、出版社:作品社
 ベネズエラのチャベス大統領がキューバの革命家チェ・ゲバラの娘であるアレイダ・ゲバラのインタビューにこたえて語った内容が本になっています。
 今、アメリカのブッシュ大統領がもっとも倒したい男、憎々しく思っているのが、このチャベス大統領です。チェ・ゲバラの解放の夢を継ぎ、アメリカのラテン・アメリカ支配に対して果敢に挑戦中です。
 ウーゴ・チャベスは1954年生まれ。元軍人。1998年にベネズエラの貧困層の支持を受けて大統領に当選。アメリカが裏で操った2002年の軍事クーデターで危うく殺されかかったものの、国民の圧倒的な支持を得て生き延び、クーデターをつぶしてしまいました。以後、何度もの選挙を圧倒的支持で乗り切っています。
 アレイダ・ゲバラは1960年生まれ。チェ・ゲバラの娘で、父親と同じ医師(小児科)です。
 チャベスに反対する右翼、財界勢力は職業俳優を雇ってチャベスの声を真似させた。反対政党の指導者は(殺して)油で揚げてしまおうと呼びかけた。これはすごい効果をおさめた。それでも、チャベスは、なんとか乗りこえることができた。
 それまでの議会はチャベス反対派ばかり。だからチャベスは、国民投票を実施し、制憲議会を選出することにした。議事堂には、1998年の選挙で選ばれた、チャベスが少数派の国会と、チャベスが多数の制憲議会が同居することになった。議事堂の右翼棟と左翼棟で同時に憲法が審議された。
 チャベスは、「軍が街へ」というスローガンを打ち出し、軍人が市民ボランティアとともに街頭に出て働くようにした。
 チャベスは軍隊を変える努力を怠らなかった。チャベスの運動にとって重要なのは、士官学校や主要な基地を討論の場としてつかうことだった。市民の心をもつ兵士と軍人意識をもつ市民をつくることをチャベスたちは狙った。
 チャベスは大統領として教育制度の改革に取り組んだ。公立学校の入学時の寄付金集めを廃止したところ、子どもたちが大津波のように学校に押し寄せてきた。兵営などを校舎に改造していった。実に、予想した倍の60万人の子どもが入学した。
 チャベスは人民銀行をつくり、小口融資を始めた。
 チャベスは私企業を国有化するのではなく、国営企業を設立した。
 チャベスと民間企業との関係はあまり良くない。私企業の多くは堕落してしまっている。というのも、政治的商売と腐敗によって、反民族主義的で無国籍化したエリートだから。資本家にとって重要なのは経済的利益であって、主権や、死者が何人出るかなどには全く無関心だ。関心があるのは、財布の中身や銀行のドル口座の残高だけ。
 チャベスは識字運動に大々的に取り組んだ。これにはキューバの支援を受けている。
 2003年の6ヶ月間で、識字運動によって100万人が読み書きを覚えた。ベネズエラでは現在、人口の60%が勉強している。石油公社の資金をもとに奨学金制度を設けた。目標は、40万人を対象に1人月額100ドルを支給すること。しかし、まだ目標には達していない。
 数学の教科書はキューバのハバナで印刷されている。スペイン語などを教えるビデオやテレビもハバナから来ている。ベネズエラは、以前はキューバに石油を売っていなかったが、今は売っている。
 この本を読むと、新興国の若く有能な指導者が熱っぽく理想を語っていることがよくよく伝わってきて胸を打たれます。しかし、訳者が解説しているように、ベネズエラの現実は決してバラ色ではありません。
 貧困層の多くにとっては生活が著しく向上したとの実感は依然として乏しく、富裕層をはじめとする旧支配階層との先鋭化している対峙関係や犯罪激発などで、社会的緊張はゆるむ気配を見せていない。石油収益を私物化する腐敗や、チャベスら指導部がいくら笛を吹いても踊らない不能率な官僚主義も深刻な問題のままだ。
 ベネズエラの再生を目ざすチャベスの意気込みをよく伝えてくれる、元気の出る本です。

フラガール

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著者:白石まみ、出版社:メディアファクトリー
 ぜひ見ることをおすすめしたい映画です。炭鉱で首切りがすすむなか、炭鉱夫とその娘たちの働く場としてハワイアンセンターが計画され、見事に成功させた実話をもとにしています。
 炭鉱長屋の生活が再現されています。かつては見慣れた光景ですが、福岡県内でも今はどこにも残っていないのではないでしょうか。CGでボタ山と炭鉱長屋が再現されていますが、実に壮観です。そこには人々の泣き笑いがありました。わたしの両親も炭鉱で働く人々相手の小売酒屋を20年以上営んでいましたから、本当になつかしい光景です。
 この本は、映画の台本をもとにしたものですが、映画とは少し異なる部分もあります。
 東京から炭鉱娘たちにフラダンスを教える先生が招かれます。SDSのトップダンサーだった彼女は、まったく経験のない、ド素人の炭鉱娘を見て絶望してしまいます。
 やっぱりさ、あんたたちには一生無理だと思うよ。
 これに気の強い紀美子が反発します。一生無理だなんて決めつけねえでくんちぇ。たしかにド素人かもしんねえけど、やるしかねえ。炭鉱だって、いつダメになるか分かんねえし・・・。
 それで、先生は条件をつけます。私の言うことをすべて聞くこと。言われたとおりになんでもやる。いちいち質問しない。口答えも一切なし。あと、どんなに辛くても絶対に泣かない。これが守れるんだったら教えてもいいけど・・・。
 フラダンスを踊るフラガールの話です。実は、わたしも舞台の上でフラダンスを踊ったことがあるのです。ちゃんとした衣装をつけて踊りました。というのも、わたしの事務所にしばらく本職がフラダンス教師という女性(今も九州一円で活躍されている田上やよい先生です。その折は大変お世話になりました)がいたからです。そのときの写真をお見せできないのが残念です。
 フラダンスは奥が深い。フラの動きは実は手話である。フラは、もともと文字を持たないハワイの人々が、子孫に文化や伝統を伝えるために踊った神聖なもの。
 私は、で両手を上にあげ、円をつくり、あなたを、で波乗りの形をつくる。そして、愛しています、で両手をくるくると回し、右手をすべらせる。
 それまで私は、フラダンスのことをいわばエロチックな腰ふりダンスだとばかり思って馬鹿にしていました。実は文化だったんですね。
 先生は真剣になって生徒である炭鉱娘たちを教えはじめます。娘たちも必死になりはじめました。
 お客様は、あなたたちの笑顔とダンスを、お金を払って見にくるの。だから、常に最高の笑顔を心がける。それがプロよ。バカみたいに笑うの。どんなに辛いときだって、舞台の上では笑ってなきゃいけないの。それがプロなんだから・・・。
 炭鉱娘たちは開場前に宣伝のための巡業に出ます。でも、お客はフラダンスなんてストリップショーとしか思っていません。とうとう、紀美子たちフラガールは切れてお客とケンカしてしまいます。帰りのバスの中ではフラガールのなかで非難しあい、ケンカまで始まってしまいました。先生がブチ切れます。
 なにが一山一家なのよ。できないならできないなりに、助けあうとか励ましあうとか、そういう気持ちにならないの。炭鉱娘なんてこんなもんだ、と思われて悔しくないの。もう辞めちまいなさい。見てるこっちの方が恥ずかしいわ・・・。
 そこまで言われて、フラガールはしゅんとして気をとりなおします。
 昭和41年1月15日、いよいよハワイアンセンターのオープンです。入場料は大人 400円、子ども200円。キャッチフレーズは、1000円もってハワイへ行こうです。なんと、初日に1万人が押し寄せたといいます。
 初日のフラダンスはまさに圧巻です。蒼井優は実に見事に踊ります。フラガールたちの踊りも最高でした。汗が全身にほとばしり、見ているわたしまで手に汗をかいてしまったほどです。主演の松雪泰子がひとりで演じたタヒチアンダンスも息を呑む見事さでした。
 最近ちょっと疲れてるな。そんな思いをしている人には絶対おすすめの映画です。空気が入りますよ。

アイフル元社員の激白

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著者:笠虎 崇、出版社:花伝社
 そもそも、浪費する人間を国家も企業も望んでいる。着実に貯金し、無駄遣いせず、物を大切にして、なかなか物を買わない、なんていう人間が増えたら、今の日本の経済システムではたちまち不景気になってしまう。ホントにそのとおりだと私も思います。浪費を前提として今の日本は成り立っています。
 借金してまで物を買わせようと、国家も企業もマスコミも必死になって、国民を借金漬けにしようとしている。そのことに気づかなければ、他人事だと思っている多重債務者に、あなたもなってしまうかもしれない。これも、まったくそのとおりです。多重債務に陥るのは、決して一部の不心得だけではありません。
 著者は、アイフルは狙い撃ちされたのだと主張しています。というのも、アイフルが銀行系列に入らずに独自路線をすすんでいるからだというのです。
 アコム、プロミスは銀行の軍門に下ってしまった。独自路線をいくアイフルは体制側・既得権益側にとっては、邪魔な出る杭なのだ。
 うむむ、そう言えるのですか。知りませんでした。そんな観点がある、なんて。
 金融庁は、国民無視の銀行を保護するための出先機関でしかない。まことに、そのとおりでしょう。サラ金の金利引き下げ問題で果たした負の役割を見たら、いよいよ明らかですよね。銀行とサラ金が一緒につくったサラ金CMがテレビでバンバン流されている。プロミスと三井住友銀行のアットローン、アコムと三菱東京UFJ銀行のDCキャッシュワンなど。ともかく、テレビも新聞・雑誌も、サラ金からの広告収入に大きく依存している。問題が起きれば批判キャンペーンを行い、そこで視聴率を稼いでもうける。そして、ほとぼりがさめたら、再び大量にサラ金CMを流して、またもうける。まことに、まことに、そのとおりです。テレビのサラ金CMこそ、諸悪の根源と言えるでしょう。あれが浪費をあおり、多くの国民を借金漬けにしてしまったのです。
 CM好感度白書によると、チワワで人気を集めたアイフルが、二年連続で一位になったそうです。借り入れをあおって多重債務者や自己破産者を増やしているのは、他でもない、テレビ局なのだ。そのとーり。
 お金にだらしのない人間は生活がだらしない。というより、生活がだらしないから、お金にもだらしなくなる。部屋が汚い債務者ほど返済が遅れる可能性が高い。きれいに整理整頓されている家は、返済もきちんとしてくれる可能性が高い。借金とは、生活習慣の問題。
 なるほど、まったく、そのとおりです。ですから、借金漬けから脱け出すのは容易ではありません。毎日の何気なく過ごしている生活を根本的に変えていく必要があるからです。
 サラ金は、借りようという人に借金のつかい道を執拗に訊く。それは、つかい道がしっかりしているかどうかで、その人の計画性と回収見込みが分かるからだ。これまた、なるほどですね。サラ金まみれの人がどうしてこんなに多いのか、どうしたらよいのか、について、元サラ金の有能な社員だった人の率直な指摘です。いくつかの異論はありましたが、同感できるところの多い本でした。

赤ちゃん学を知っていますか?

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著者:産経新聞取材班、出版社:新潮文庫
 赤ちゃんの目の前に二つの皿がある。一つは赤ちゃんの大好物なクラッカーが山盛り。もう一つは大の苦手な生のブロッコリー。そして大人が、赤ちゃんの目の前でクラッカーの入っている皿から一つを取り出して「うわっ、まずい」と顔をしかめる。続いて、ブロッコリーを取り、「おいしーい」と顔をほころばせて大喜びで食べる。そのあと、赤ちゃんに、「ひとつ、ちょうだい」と、その大人が手を出す。さあ、赤ちゃんは、どうするか?
 1歳2ヶ月の赤ちゃんは、迷わず自分の大好きなクラッカーを取って差し出す。1歳半の赤ちゃんは、自分は大嫌いなブロッコリーに手を出して大人に差し出した。1歳半になると、自分はクラッカーが大好きだけど、目の前の大人はブロッコリーが好きだと理解している。1歳半未満だと、自分と他社の区別がつけられない。だから、自分の好きなものを他人にも渡す。ところが、1歳半になると、自分と他者がそれぞれ別の欲求をもっていることが分かる。ひゃあー、そうなんですか。私もぜひ実験してみたいのですが、子どもたちには赤ちゃんがまだ生まれそうもありません(結婚もしていません)。残念です。
 ベビーサインをつかった子どもには、つかわない子どもに比べて、会話能力が4ヶ月半ほど進んでいる。ベビーサインというのも、かなり意味があるようですね。
 ヒトは、他の動物に比べて、おっぱいの出具合が悪い。生存という観点からみると、できるだけ連続して吸ったほうが効率がいいはずだが、これも言葉を習得するための本能的行動だという。赤ちゃんが吸うのを休むと、母親は、「よし、よし」と揺する。そして、赤ちゃんは、再び自分からおっぱいを吸いこむ。
 ヒトの赤ちゃんは、あおむけの姿勢をとることで、早い時期から両手を自由に動かせるようになった。あおむけやおすわりという姿勢こそ、ヒトがヒトになるカギを握っている。
 言葉の意味を解さない赤ちゃんにとって、大人の語りかけは、あなたに興味がある、私を見てくれるとうれしい、というメッセージなのだ。赤ちゃんの行動やしぐさ、音に丁寧に応じることの積み重ねで、赤ちゃんに、自分のやることは相手に反応をさせる効果があると思わせる。つまり、自分が主人公なのだ、と。その自己肯定の感覚が自信や意欲につながり、言葉を伸ばす。うむむ、なるほど、そうなんですか。
 面倒くさがって、赤ちゃんに言葉を記憶させるためにテレビをつかってはダメ。親がそばにいて、きちんと相手をしてあげないと効果がない。赤ちゃんがおとなしくテレビの画面を見ていることは、決して集中力がついたわけではない。
 乳幼児にテレビを見せるとき、巻き戻して見ない、一回に30分、終わったらスイッチを消す、誰かと一緒に見る、見終わったら同じ時間だけ外で遊ぶ。これが大切。
 赤ちゃんにとってテレビは百害あって一利なし。テレビに子守りをさせたら、親子間のふれあいがもてない。
 母乳は赤ちゃんが欲しがるあいだ、欲しがるように与えればよい。断乳すると、赤ちゃんは一番大好きなお母さんに裏切られたと思ってしまう。母親にとっても、乳房を吸われることによって、分泌されるホルモンは母親の下腹部やお尻の脂肪を母乳の脂肪に変える。長く母乳を与えると、母親は美しいプロポーションになれる。
 赤ちゃんって、ヒトがヒトになる前の大切な一時期だということがよく分かる本です。身近なわが家にいないのが、残念でたまりません。
 黄金色の稲穂が垂れ下がり、そばに紅い曼珠沙華が咲いています。百舌鳥の甲高い声も聞かれ、一気に秋の気配となりました。暑い、暑いと言っていたのが嘘のようです。

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