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集中力

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著者:谷川浩司、出版社:角川ワンテーマ21(新書)
 将棋を始めたのは5歳のとき。大山康晴、中原誠も同じで5歳のとき。羽生善治は6歳の終わりころ。うーん、なんという早さでしょう。そのころ私は、いったい何をしていたのか、思い出すこともできません。
 子どもが将来、将棋に強くなるかどうかは、思いついた手をどんどんさしていけるかがポイント。考えこんで指す子は強くはなれない。何か自分はこういうねらいを持っているのだということが、指し手に現れている子が伸びる。一時間かけて一局指すより、一局を10分、20分と数多くどんどん指す方がよい。直感的にどんどん指していく。知識や技術に頼るのではなく、閃いた手を指すのが、将棋に強くなる第一条件だ。そして、棋士の本当の強さの基盤になるのが集中力だ。うむむ、なるほど、そうなんですね・・・。なんだか、良く分かりますね、この指摘。
 20代の棋士には、将棋は技術がすべてだと考え、毎日6〜8時間も将棋の勉強にうちこむ人は珍しくない。しかし、30代になっても一日の大半を将棋盤に向かっているだけだという生活では、ちょっと問題がある。将棋の強さは、技術の占める面も大きいのだが、技術を100%出すには、その人の内面の奥深さが必要である。刻々と変化する局面に単純に対応し、こなしているだけでは、何も打開できない。状況をのみこみ、判断し、先を読む内面の広がりが重要である。将棋の研究以外に何かをプラスアルファできないと勝ち続けていけない。その意味で、30代に人間としての厚みを増やさないと、40代、50代と長く勝ち続けていくことは難しい。
 世界は違っても、弁護士についても同じことが言えると思います。法律論だけでなく、大局観が弁護士にも求められるのです。
 将棋を指しているあいだは、相手と会話を交わすことも、顔を見ることもない。視線は、せいぜい胸あたりまでで、神経は盤上に集中している。しかし、将棋を通じて、対局中の互いの考えや局面での心理は分かる。
 他人の力強さに焦っていては、自分の将棋に集中できるわけがない。
 トップにいる棋士の実力とは、不安と迷いのなかで、正しい手を選び、指せるという強さだ。そのためには、子どもの頃から、どのような厳しい局面でも、自分で考えるしかない。また、自力で考えるからこそ、勝つ喜びもあるという自覚を培うことが大切なのだ。
 集中力は、もって生まれた才能とは違う。好きなことに夢中になれるという誰もが子どものころからもっているもの。才能はそれほど必要ではない。最初の気持ちをずっと持ち続けられること、一つのことを努力し続けることを苦にしないことが、もっとも大事な才能なのだ。集中力の基本は、好きであることの持続。
 勝負に限らず、自分のペースを守り、集中力を維持するためには、感情をコントロールすることが大事だ。怒りで冷静さを失い、自分を見失ってしまうのでは損でしかない。
 焦らない、あきらめない。常に自分に言い聞かせた言葉である。小さなミスに焦らないという気持ちで集中していれば、「しまった」と焦らなくてすむ。プロの将棋では、とんでもない大ポカで負けるよりも、小さなミスが積み重なって負けるケースが多い。
 対局日が近づいても特別なことはしない。朝起きて、三度の食事をきちんととって寝る。睡眠だけはしっかりとって、ふだんの生活と同じレベルに対局があるのが望ましい。負けることに耐えられず、潔さを失ったら、将棋界から立ち去り、勝負から遠ざかるべきだ。
 うーん、なるほど。そうなんでしょうね。だから私は、勝負事には近づきません。そんなに潔く負けを認めることなんて、できっこないと自覚しているからです。
 小さな新書版ですが、内容にはズシリと重たさを感じさせるものがあります。さすが名人の言うことは違いますね。

わたしはCIA諜報員だった

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著者:リンジー・モラン、出版社:集英社文庫
 10代のころからスパイにあこがれていた女の子。スパイ小説の読みすぎです。ハーバード大学を優秀な成績で卒業して、あこがれのCIAについに入りました。
 CIAのスパイというのは、実はCIA局員ではなく、CIAのケース・オフィサーによってアメリカのために通常は金銭と引き換えにスパイ行為を働くよう勧誘された、不運な愚か者のこと。CIAは、そんな情報提供者を見つけて、査定し、関係をつくり、仲間に引きこむ。これを勧誘サイクルと呼ぶ。
 CIAに入ってすぐ過酷な訓練が始まった。一緒に入った仲間の大半は、鼻持ちならない傲慢な連中の集まりだった。日頃から、自分たちは最高であり、最優秀だと意識させられる。子どものように甘やかされ、大きな任務に貢献しているかのように錯覚させられた。
 厳しいサバイバル訓練を受けさせられる。毎朝、自分の車の安全を点検・確認させられる。海外に住むようになったら必要になると言われて。しかし、これで誇大妄想に陥り、やがて正気を失ったケースは数知れない。
 CIA内の不倫は珍しいことではない。尾行者をまくコツも教えられた。尾行者は変装する。しかし、靴を見る。靴の方まではめったに変わることがない。
 ケース・オフィサーとして情報提供者に会ったものの、きわめて疑わしい人間だった。嘘を言っているとしか思えない。CIAを金づるにしているのだ。
 9.11があってCIAが動揺したのは、ゲームの規則にしたがって動かない人間がいると分かったから。冷戦が終わり、伝統的なスパイ対スパイの戦法がもはや通じなくなった。だけど、CIAは今もなお、ゲームをやめたくない男性たちの集まりだ。
 著者がCIAを辞めたいと思った理由はたくさんあったが、イラク侵攻はアメリカがとったもっとも間違った方向だという確信が大きい。9.11の事件を起こしたテロリストの組織を撲滅しようとする努力がなんの実も結んでいないという事実をあいまいにするための、まったく不要なでっちあげの陽動作戦としか思えなかった。
 CIAの上司はこう言った。ブッシュ大統領は戦争をしたがっている。我々の仕事は、大統領にその理由を与えることだ。
 この話を聞いて著者は仰天した。それで、辞める決心がついた。
 CIAに入って、たちまち幻滅してしまったインテリ女性の体験記として面白く読みました。かの恐るべき謀略機関の総本山であるCIAも、なかの実情を知ると、たいした組織ではないようです。

リビアを知るための60章

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著者:塩尻和子、出版社:明石書店
 リビアはアフリカ大陸で4番目に広い国土をもつ国。日本の4.7倍。広大な国土は、93%が砂漠地帯。サハラ砂漠からリビア砂漠がある。しかし、紀元前6000年ころまでサハラ砂漠の大部分は森林や草原だった。リビアには、常に水をたたえて流れる河川は一本もない。食料供給の4分の3は輸入に頼っている。
 スペインはリビアを支配したが、労力を要する植民地支配を避け、港湾だけ支配した。
 イタリアのリビア支配は、オスマン帝国の支配とは比較にならないほど苛烈なものだった。30年間のイタリア支配下で、全リビア人の4分の1が死亡した。1998年になって、イタリアはリビアに対して、占領の賠償金として2億6000万ドルを支払った。
 革命を起こしたとき、カダフィ大尉は27歳でしかなかった。砂漠の遊牧民の子である。
 リビアの人口は900万人。97%がアラブ系とベルベル系の混血。アラビア語が唯一の公用語。しかし、英語はよく通じる。
 リビア人は、ほとんど誠実で穏やかな人柄。おとなしい国民性だが、驚くほど誇り高い人々でもある。
 日本で有名なカダフィ大佐は、カッザーフィーという。37年間も、この広大な国を支配している。革命の直後に、イギリスとアメリカの巨大な軍事基地を撤去させた。銀行は国有化し、新聞社・教会・政党を閉鎖した。石油のメジャー会社の言いなりをやめた。イタリア人やユダヤ人の不在地主の土地も没収した。
 カザーフィーは、首相でも大統領でも、まして国王でもない。わずかに大佐であるだけ。18歳以上の国民すべてが直接国政に携われるという建前のシステムだ。直接民主主義といっても、実際には、上に向かって権力が集中するピラミッド構造であり、あらゆることの決定権がピラミッドの頂点に存在する独裁体制になっている。

風に吹かれて豆腐屋ジョニー

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著者:伊藤信吾、出版社:講談社
 バイヤーから、あと5円だけ下げろ、あと10円下げろと迫られる世界から解放され、メーカー主導で納得のいく豆腐をつくる。これだけいい豆をつかい、これだけ製法を工夫したから、この値段になりますと。そういう直球勝負をする。いわば、ハレの日に食う豆腐をつくっている。
 普通、天然にがりをつかって、1俵の大豆から400丁の豆腐がつくれる。すまし粉(硫酸カルシウム)をつかえば、同じ1俵で500丁、グルコノデンタラクトンなら700丁もつくれる。しかし、豆腐屋ジョニーは1俵から300パックもできない。
 木綿豆腐の場合、固めたあと水にさらして、包丁で四角く切る。水分を抜いたり、水にさらしたりする過程でうま味が逃げ出してしまう。うま味という点では、寄せ豆腐のほうがおいしい豆腐にできる。水をゆっくり抜いていけば、限りなく濃厚な豆腐になる。
 こぢんまり作ると絶対に売れない。客の心理は量が半分になったら、値段が3分の1に下がらないと高いと感じてしまう。
 北海道など北でとれる大豆は甘みが多いのに、タンパク質が少ない。九州など南にとれる大豆は甘みが少ないけど、タンパク質が多い。豆腐の場合、にがりに反応させて固めなければいけないので、タンパク質が少ないと固まりにくい。なお、この「甘み」というのは、大豆のうま味のことであって、砂糖の甘みとはまったく別物。
 豆腐の旬は、やっぱり春から夏で、冬場と比べて売上が3倍も違う。ものを売るときには、むしろ語感のほうが大切だ。
 豆腐の形にこだわるのは、値下げ競争やパクリから自由でいるため。変わった形というのは、自分たちの味を守る手段でもある。
 2005年3月から売り出して、一大ジョニー旋風が巻き起こった。出荷数は1日1万パックを軽くこえた。最高で1日1万5000パックをマークした。06年4月には、1日4万パックを記録。うちの豆腐づくりのコンセプトは、とにかく水にさらさないこと。水にさらすと、うま味が逃げる。レンジでチンして、ポン酢で食ってくれと売りこんでいる。うちは3丁の100円の豆腐とは市場がぶつかっていない。1丁380円の豆腐だ。
る。
 二子玉川にある玉川高島屋で催事をもったら、一日で40万円もの売上げがあった。今も「男前豆腐店」のコーナーがある。ショーケースを見ると、まるでケーキ屋のようだ。
 阪神百貨店で「ふんどし祭り」と銘うった催事をしたところ、ものすごい人だかりができて、社長がわざわざ見に来たほど。
 味と形とネーミングにとても凝った豆腐ですね。私もぜひ一度食べてみたいと思いました。福岡でも買えるのでしょうか・・・。

丸腰のボランティア

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著者:ペシャワール会日本人ワーカー、出版社:石風社
 この本を読んで、日本人もまだまだ捨てたもんじゃないんだなと思いました。イラクのサマワに派遣された陸上自衛隊は、こっそり逃げ帰ってきました。立つ鳥あとを濁さず、ということもしなかったため、残った基地跡をめぐって現地で醜い争奪戦が起きていると報道されています。莫大な日本の税金をつかいながら、ほとんど現地の人に感謝されることもなく(大量のお金をバラまいたわけですから、それを喜んだ人はいたでしょう。でも、だからといって、感謝されたかというと違うようです)、かえって、日本がアメリカ軍と同じ占領軍であるとして、それまでの親近感をぶちこわしたのです。まるで、日本にとって大損ではありませんか。自衛隊のイラク派遣は大金を投じて日本の国益を損なったのです。
 ところが、アフガニスタンのペシャワールを拠点として活躍しているペシャワール会は見事なものです。内乱状態のなかにあって、まったく丸腰で黙々と活動し続け、襲撃されたこともないというのです。それだけでもすごいものです。ハンセン病患者の医療にあたり、また井戸水を掘る。それも、すべて現地の人々との共同作業です。現地に技術が残るようにしていくのです。ちょっとできないことです。代表の中村哲医師を一度、福岡のとある駅のホームで見かけたことがあります。思いもよらず小柄な身体は風雪に耐えて鍛えられた険しい顔つきの男性でした。私とまったく同世代ですが、たちまち畏敬の念を覚えました。
 この活動の大きな特徴は、単に外国人による一時的な援助ではなく、スタッフは、ドクター中村ともう一人の日本人以外はみんなアフガニスタン人であり、みなアフガニスタンから逃れてきた人たちであり、祖国復興を真剣に考え情熱をもって取り組んでいることにある。本当に、アフガニスタン自身による自立のための援助を目標にしている。
 1年間で5万4000人を診療。スタッフも70人をこえる。
 中村医師のモットーは、現地のスタッフを主として、外国人は脇役で、だ。
 国際化とは、異質な人々と接することによって自分が変わっていくきっかけをつかむことでもある。自分を変えようという意思がないところには真の国際化はない。
 アフガニスタンの人々がなぜ子沢山なのか、その事情が次のように紹介されています。ある医師は13人の子持ち、ある門番は14人の子持ちです。
 我々は夜になると何も楽しみがないのですよ。ナイトクラブもない、ディズニーランドもない。夜になると治安が悪くて外にも出られない。朝から晩まで働いて、唯一の楽しみがこれですよ。夜間の娯楽の欠如も人口爆発の重要な原因なんですよ。
 うむむ、なるほど、そうだったんですか・・・。日本の少子化は、夜の楽しみがいろいろあるからなんでしょうか・・・。
 バカだから続くんだ。小利口者ばかりじゃ、世の中、面白くない。バカも世の中の味つけなんだ。
 ペシャワールというのは、アフガニスタンにあると思っていましたが、正確にはパキスタンにあります。人口200万人の大都市です。しかし、中村医師たちの活動範囲はアフガニスタンの方にも及んでいます。国境はあっても、一連の地域のようです。そして、掘った井戸がなんと630ヶ所。すごいものです。井戸を掘ると、その井戸の保守・点検は現地の人々でできるように機械・工具を残していくのです。2年間に800本以上の井戸を掘ったとも書いてあります。井戸の深さは27メートルもあります。
 入院費用は、入院するときに150ルピー(300円)支払ったら、あとはタダです。
 そして、これまで柳を10万本、桑を2000本、オリーブを2000本、あんずを 400本ほど植えたといいます。
 医療・水源確保・農業援助に従事する現地専従スタッフは300人、それに現地作業員が300〜800人。日本人ワーカーは20人。これを日本で支えるのがペシャワール会で、事務局は福岡市にあります。会員数1万3000人。補助金なしの年間予算が3億円。事務局員30人。最後に次のようにまとめられています。
 この事業は、現地で1日1000人の失業対策になっている。この1000人には5〜10人の家族がいるので数千人の生活を支えている。灌漑用水路が完成すると、10万人の暮らしがなりたつ。この事業がなければ、人々は軍閥やアメリカ軍の傭兵になるか難民になるしかない。治安の不安定化につながる。このような事業が日本人への信頼につながり、結果として、軍事によらない日本人の安全保障になる。まことに、そのとおりだと思います。日本の自衛隊の「国際貢献」なんて、まったくかすんでしまう偉業です。こんなところにこそ、私たちの貴重な税金をまわしたいものだと、つくづく思いました。

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