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日本人はなんのために働いてきたのか

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著者:河原 宏、出版社:ユビキタ・スタジオ
 明治維新後、近代国家としての日本の成功は、しっかりとした中産階級を育てたことにあった。今も、この階層が薄弱な国の基礎は脆(もろ)い。せっかく育てたひと握りの知識層が外国に移住しはじめると、将来の可能性は閉ざされる。
 現代日本では、バブル期までにあった一億層中流の幻想は崩れた。少数の上昇組は金が金を生む金権至上になり、資産を2世、3世に伝えるほかに関心はない。その他の大部分は、ゆっくりか急速にかの差はあっても、中流の座から滑り落ちる運命にある。しかも、経済以上に、日本人から覇気・元気・活気・生気などのバイタリティーが消滅した。こうして四無主義、つまり無関心、無責任、無気力、無感動が生まれる。これが現代日本を表現する精神である。
 大正14年にうたわれた金々節を紹介します。
 金だ金カネ この世は金だ
 金だ金カネ その金ほしや
 バカが賢く見えるも 金だ
 酒も金なら 女も金だ
 神も仏も坊主も 金だ
 金だ 本から本まで金だ
 みんな金だよ 一切金だ
 金だ金だよ この世は金だ
 金、カネ、金、カネ、金、カネ、金だ
 そして、次は昭和4年(1929年)12月29日の新聞記事です。
 金!金!人の世のオールマイティ!金!
 金は現世のみならず、あの世まで征服して、ついに地獄の沙汰まで支配するに至った。人は何のために働き、何のために生きるのかと問えば、ただ一言、金、と答える。これが一般世間の哲学なのだ。
 ええーっ、これって今の日本とまったく同じセリフじゃん。そのまま、今の世相をあらわす言葉として通用するじゃん。つい、そう思ってしまいました。
 1900年から1950年までの半世紀のうちで1930年代は、自殺者数も人口10万人あたりの自殺率も、ともに一番高かった。この時代は前途に希望が見いだせない、生き甲斐に乏しい時代だったと言える。
 日本で顕在化している、人々の議会制度に対する不信感は、具体的には、各種選挙における棄権率の増大という形で広まっている。なんど選挙をして投票してみても、結局、権力を握るのは、特権層か、それにつながる人たちだという思いは、多くの人の意識の底に沈澱している。
 二大政党の対立は、必ずしも議会制度の活性化としては作用しない。多くの場合、二大政党は、装飾の部分に相違を残しながら、本質的には類似のものになってしまう。選挙民は、どっちか選べといわれても、カレーライスとライスカレーのどちらが良いかを選ばされるようなもの。つまるところ、選挙への関心と情熱を失わされる。
 こんな本があるそうです。ハックスリイの『すばらしい新世界』
 労働者階級になる幼児は、本や花を本能的に嫌うようにしつけられる。なぜ、労働者は本を嫌悪するように造られなければならないか?
 成長した彼らは、本など読んで、働く時間をムダにしてはならない。
 花や景色や自然については、どうか?
 これを愛してみても、生産労働には、何の役にもたたない。とりわけ自然愛好の欠点は、それがただで手に入るということ。働く者には幼児の段階から、世の中、ただで手に入るものがないことを、身にしみて刷りこんでおかなければならない。うむむ、そうだったんですかー・・・。認識を改めました。

コバウおじさんを知っていますか

カテゴリー:未分類

著者:チョン インキョン、出版社:草の根出版社
 韓国の新聞マンガにコバウおじさんというものがあるのは私も知っていました。韓国の世相と政治を庶民の立場から鋭く風刺したハイレベルのマンガです。なんと45年間も連載したというのですから、本当にたいしたものです。日本でも、それほど息の長いのはないでしょう。サザエさんは世相を反映していますが、政治批判はほとんどないでしょう。フジ三太郎には少し政治批判を感じていましたが・・・。
 韓国の学生運動は、日本と違って最近まで盛んでしたが、このところいささか低調のようです。そのかわり、労働運動は相変わらず過激なようです。労働者がデモやストライキをするときには赤いチョッキをユニホームのように着ます。
 コバウおじさんの作者である金星煥(キムソンファン)は、1932年10月、ソウル近くの開城(今の北朝鮮)で生まれました。父は抗日運動に関わっていて、5歳のときに旧満州に移り住みました。
 戦後、朝鮮が独立し、金星煥は高校生のときからプロのマンガ家としてデビューします。まだ17歳というから天才的です。やがて、朝鮮戦争が始まります。1950年6月25日のことです。金星煥は、多くの死体を目撃し、ショックを受けます。コバウおじさんは、この朝鮮戦争のさなかに生まれました。
 コバウのコは高で、名字。バウは岩という意味で名前。高は、韓国民族の孤高な精神を、バウは岩のような剛直な性格をあらわす。年齢は55歳。その後、ぜんぜん年をとりません。
 コバウおじさんには頭に一本しかない髪の毛がある。平常時は先が少し曲がっており、驚くとまっすぐに立つ。呆れ返ったり困ったりすると、ぐにゃぐにゃになる。だから、髪の毛の状態でコバウおじさんの気持ちが読みとれる。
 コバウおじさんは無表情な顔をしている。これは、思ってもいない感情を、迎合して派手に表現する、おかしくもないのに追従的に笑う習慣のある日本人とは別だという表現でもある。コバウおじさんは、無表情な顔で淡々と状況を伝える。これが、もし表情豊かで、可愛いキャラクターだったら、かえってこのマンガのインパクトは大きくなかっただろう。冷静なジャーナリストの役割をつとめているため、読者はかえって素早くその内容を理解し、共感できた。なーるほど、鋭い分析ですね。
 金星煥は、政府によって連行され、即決裁判にかけられて、大統領を侮辱した軽犯罪で450ファンの罰金刑を言い渡されたことがあります。
 コバウおじさんが休んだ日は読者からの問い合わせが新聞社に殺到し、政府の方があわてて政府の干渉によって休載したと思われないように金星煥を呼びつけ、干渉しないことを約束してマンガを描かせたというエピソードも紹介されています。それほど、国の内外で注目されるマンガでした。
 マンガの絵は変えられないとしても、セリフは何百回も変えさせられたと金星煥は語っています。わざと締め切り間際に入稿して、変えにくくもしていたそうです。
 著者は韓国うまれの女性です。自分でもマンガを描きます。小泉首相を風刺したマンガがいくつか紹介されていますが、なかなかの出来です。
 日本の新聞マンガも、もうひとつビシッと今の世相と政治を厳しく批判してほしいものだと、つくづく思いました。

天皇の牧場を守れ

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著者:横田哲治、出版社:日経BP社
 宮内庁の御料牧場(農場)は、大久保利通によって明治8年に開設され、以来130年になるが、鶏インフルエンザ、牛のBSE、豚の口蹄疫などの法定伝染病と無縁である。
 御料牧場では、鶏舎は三重の網で囲われている。カラスなどの中型の野鳥が入らないための大きめの網、スズメなどの小鳥が入らないためのネット、そしてさらに細かいネットが張られている。鶏インフルエンザのウイルスは、野鳥からの感染も心配なのだ。
 茨城県では570万羽の鶏が鶏インフルエンザのために処分された。そのうち、世界一の養鶏業といわれるイセファーム(株)では、350万場が処分された。これは、ウインドレス鶏舎(窓がない)である。御料牧場は、その近くにあるけれど大丈夫なのです。なぜか?
 御料牧場は、天皇家のライフライン。週2回、白い車で皇居へ搬入している。御料牧場では、第1に鶏の移動をしない。第2に鶏の糞便をつけたトラック、人、長靴などを十分に消毒する。第3に、野鳥や動物などを鶏舎に近づけない。
 鶏は生後700日たつと病気への抵抗力が低下する。そこで、御料牧場では、400〜500日で鶏のヒナを入れる。さらに、エサも工夫している。にんにくやとうがらしを加え、サプリメントを加えることもある。
 600万羽の鶏を処理するにも、お金がかかる。1羽につき500円を要する。つまり、600万羽で30億円かかる。そして、鶏インフルエンザは、人間も感染して風邪や高熱をひきおこす。死亡率は65歳以上で80〜90%という高率だ。
 現在に日本の食料自給率は40%(カロリーベース)だが、天皇一家の食事には輸入農産物はまったくない。すべて国内で生産された安全な食料だ。良質な卵は一ヶ月おいても、美味しく食べられる。家畜の健康管理には、4人の獣医師が目を光らせている。
 御料牧場は400頭のめん羊を飼育している。サフォーク種という、鼻の黒い肉用の品種。ここの羊の肉の旨さの秘密は、飼養管理にある。とりわけ餌が重要だ。
 御料牧場では、たとえ輸入飼料でも、可能なかぎり有機栽培の穀物をつかっている。有機栽培の資料は一般より30%以上も割高だが、そんなことは問題としない。
 このように、天皇一家は純国産の食料で健康保持を図っているわけです。ところが、私たち庶民は、いつもアメリカべったりの自民党政府によって、またもや狂牛病の心配のあるアメリカ牛肉を押しつけられつつあります。庶民がどうなろうと知ったこっちゃない。大切なのは、ご主人様であるアメリカ様のご意向だ。そんな安倍政権には、ほとほと呆れてしまいます。

萌えるアメリカ

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著者:堀淵清治、出版社:日経BP社
 米国人は、いかにしてMANGAを読むようになったか、というのがサブ・タイトルです。アメリカで日本のマンガを読む人が増えていて、オタク族であることを自慢気に高言する人がいて、ついにやおい系マンガ愛好者までいるというのです。そして、いまや「少年ジャンプ」がそのまま「SHONEN JYUMP」としてアメリカで発売されているというのですから、ビックリします。なんと、毎月20万部も売れているそうです。まあ、たしかに日本のマンガはストーリーがよく出来ていると私も思います。
 私はマンガは大学生で卒業した気分です。大学生のときは、少年マガジン、少年サンデーを毎週欠かさず読んでいましたし、「ガロ」のカムイ外伝なんて、歴史書物を読むような気分でじっくり読んでいました。その後は、手塚治虫のマンガを読んだくらいで、電車のなかで大人が少年ジャンプを読みふけっているのには、ちょっと異和感を感じたものです。
 2005年のアメリカ、カナダにおける日本マンガの単行本市場は210億円、北米における日本アニメのDVD売上総額300億円に急速に近づきつつある。しかも、このところ売上総額が横ばい傾向にあるアニメに対して、マンガのほうは、2002年に売上総額が1億ドルに達してから、2003年に1億2500万ドル、2004年に1億4000万ドルと、その市場規模は順調に拡大してきた。
 日本とアメリカの本の違いがある。日本は右開き、アメリカは左開き。だから印刷は反転印刷した。そして、翻訳も難しかった。
 苦難のときを迎えて、それをなんとか乗り切り、ヨーロッパにも進出しました。ところがドイツでは90年代末に爆発的に広がったものの、イギリスではもうひとつ。ふむむ、やはり、国民性の違いなんでしょうかね。
 やおい系というのは、男性キャラクターの同性愛をテーマにした女性向けのマンガやアニメ・小説のこと。女性が読者なので、男性同士の同性愛の実態とはかけ離れた幻想にもとづいている。そこでは、マッチョな肉体美とかギリシャ彫刻のような精悍さではなく、あくまでも女性たちが創り出した中性的な美しさがある。
 海外の日本マンガ・ファンは自分たちのことをOTAKUと誇らし気に呼んでいる。
 うむむ、アメリカで日本マンガがそんなに健闘しているのか。初めて知りました。著者は団塊世代より少し下の年代です。アメリカに渡ってヒッピー文化に触れながら日本文化をアメリカに伝えようと苦闘してきたようです。
 たかがマンガ。されど、マンガ。そんな気にさせる本でした。

滅びゆくアメリカ帝国

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著者:高野 孟、出版社:にんげん出版
 イラク戦争の失敗に気がついたアメリカ国民はブッシュ共和党を敗退させました。武力一辺倒のネオコン一派は総退場で、残るは親王ブッシュのみとなりました。でも、ブッシュの言いなりだった小泉首相と、その後継者である安倍の方はまだ何の教訓も引き出さず、開き直って逃げ切ろうとしています。そして、それを許してしまうマスコミの不甲斐なさに歯がみする思いです。
 石油屋出身のチェイニー副大統領と、軍産複合体マフィアの戦争好きラムズフェルド国防長官の強硬派コンビをユダヤ系中心の実権派スタッフが支え、それが在米ユダヤ人ロビーを経由してイスラエル右派につながっているというネオコン支配の病的な構造がある。裏を返せば、イスラエル右派がネオコンを通じてホワイトハウス中枢にまで浸食して暗愚の大統領(もちろん、ブッシュのこと)を操作する仕掛けは不変である。
 2003年のアメリカの経常収支赤字は5400億ドルで、80年代末の4倍、対GDP比で5%をこえた。国全体の消費と投資を貯蓄ではとうていまかなえず、2004年度で5000億ドル近い空前の財政赤字を出してもまだ足りず、1日あたり15億ドルずつ外国から借り入れしている有り様だ。今後10年間の財政赤字は5兆ドルに達すると見込まれている。
 アメリカの国債残高は、過去4年間に7860億ドル増えて1兆8400億ドルに達した。その増加分の半分以上の4040億ドルを日本が引き受けた。その結果、外国のもつアメリカ国債の4割にあたる80兆円は日本がもっている。それが単なる紙切れと化すリスクについて、日本政府は国民に説明していない。これって恐ろしいことですよね。
 絶対君主制のサウジアラビア、国家テロの常習者であるイスラエル、強権政治のパキスタンやウズベキスタンは、アメリカのいう「ならず者国家」のリストには入っていない。それは対テロ戦争でアメリカに協力しているからだ。
 アフガニスタンとイラクに対する派手な戦争は、アメリカの強さではなく、弱さの表れだ。経済的にみて、アメリカはモノもカネも全世界に依存して生きるほかなくなっている。それを維持できなくなる不安から、ことさら好戦的な姿勢をアメリカはとり、自国が世界に必要不可欠な存在であることを証明しようとしている。
 著者はこの指摘に同感だとしています。私も、なるほど、と思います。
 ある統計によると、イラクの夫婦650万組のうち、200万組がスンニ派とシーア派の組みあわせだ。また、それらのどちらかとクルド人の取りあわせも少なくない。彼らは、もちろん殺しあいを望んでいない。ひゃあー、そうだったんですか。ちっとも知りませんでした。どこでも戦争を挑戦したがる好戦的な人間はいるものなんですよね。
 大多数のアメリカ人は、なぜ自分の国アメリカがイスラム世界で、これほど憎まれているのか、まったく理解できていないし、しようとしていない。しかし、日本人はそれを笑うことはできない。東南アジアで日本がどう見られているか、について日本国内にいる日本人も同じく無知なのである。アメリカ人とまったく同じこと。日本人に自覚がなくても、日本は世界第4位の軍事大国なのである。だから、安倍内閣は防衛省へ昇格させようとしているのです。
 アメリカは世界最大の武器輸出国である。いわば最大の死の商人なのである。あー、やだ、やだ。こんなアメリカに追随して一緒に滅びるなんて、まっぴらごめんです。

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