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脳はなにかと言い訳する

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著者:池谷裕二、出版社:祥伝社
 人間がうつ病にかかるのは、恐怖感や不安感がより強いからではないか。うつ病は動物の進化の過程で、いかに周辺に警戒心を素早く抱くか、ということと関係があるような気がしてならない。
 仕事の正確度を高めたければ、多くの行程をひとまとめにせず、細かなステップに分け、そのたびに報酬を与えるほかない。
 私の受験勉強もそうでした。おおまかな計画をまず立てますが、それは決して実現不可能なものではなく、ちょっとだけ無理したら実現しそうなレベルに設定します。そして当面の目標を次に立てます。こちらは、必ず達成できるものとし、達成感をひとつひとつ味わうようにしていきます。そうすると、ここまでやれたんだから、次へ進もうという気になるのです。ともかく挫折感をもたないように工夫しました。
 バイオリニストやピアニストは、指を動かす脳の領域が普通の人に比べて広い。これは、普通の人に比べて指の脳領域が広いからバイオリニストになるのではなく、バイオリニストをやっているから広くなったのである。
 脳には作業興奮という現象がある。興奮とは、脳の神経細胞が活性化するということ。
 まずは体を実際に動かしてみる。やる気がなくても、まず始めてみる。私も、なんだか気乗りがせず、準備書面を書く気にならないときでも、まずは机に座って何か書き始めてみるようにしています。そうすると、脳が次第に活性化し、やる気が出て、のめり込んでいく。朝、起きるときも同じこと。ともかく、すぐに動き出すこと。脳が目覚める。目覚めない、という前に、まず体を起こし、カーテンをあけ、顔を洗って雨戸を開ける。体を動かすことによって、それに引きずられるようにして脳が目覚めていく。布団のなかにいたら、いつまでたっても脳は目覚めない。
 薬物中毒は足を洗うのが難しいのに、恋愛感情のほうは急に冷めることがある。なぜ冷めるのか、その機構が分かれば覚せい剤の精神依存の治療につかえるだろう。
 快楽のやっかいな点は、ただ気持ちよいだけでなく、習慣性や依存性が出てくること。アルコールを飲んでも、ストレスを発散した気になっているだけで、体のほうは依然としてストレスを感じ続けている。
 重要なことは、ストレスを解消するかどうかではなく、解消する方法をもっていると思っているかどうか。そして、それ以上に重要なのは、別にストレスを感じていてもいいんだと考えること。つまり、ストレスをあまり怖がりすぎると、実際にストレスを受けたときに、必要以上に反応してしまう。
 子どもも日常的にド忘れしている。しかし、子どもたちは物忘れをいちいち気にしない。ところが、大人は年齢(とし)のせいだと落ちこんでしまう。ド忘れしたときには、それだけ自分の脳にはたくさんの知識が詰まっているのだと前向きに解釈するのがよい。うんうん、そうなんですよね。
 人間には後悔を嫌う本能がある。結婚や高額商談など、重要な選択をした後に、人はもっともらしい良いわけをして、後悔していないと思いこみたがる傾向が強い。
 集中力の高い人はアイデアマンではない。集中力の欠如した人のほうが創造性に富んでいる。集中力か創造性か、どちらに価値を置くのかは、その人次第。
 睡眠には、忘れかけた情報を呼び起こして記憶を補強する効果がある。
 自閉症の患者は嘘をあまりつけない。相手の気持ちが想像できないので、思ったままのことを相手に言ってしまう。
 いろいろ勉強になる本でした。それにしても、脳って、本当に不思議な生き物ですよね。

縦並び社会

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著者:毎日新聞社会部、出版社:毎日新聞社
 精神科医の香山リカさんは次のように語ります。
 問題なのは、格差の下とされる若い人たちが、甘んじて受け入れてしまっていること。自分探しや身近な幸せは考えるが、社会のあり方については考えようとせず、声も上げない。そして格差の上にいる人は、同情や共感が乏しく、他者に厳しい視線を向ける。こうした傾向が続けば、今後も格差は広がる。
 まことにもっともな指摘です。私たちは、とりわけ若者はもっと怒るべきです。そして怒りを行動にして表わすべきだと思います。
 生活保護を受けている人が100万人となった。これについて、アンケートにこたえた3割の人がもっと審査を厳しくして減らすべきだと回答した。つまり、弱者は勝手に死ねと考えている人が3割もいる。これは明らかに増えている。自分の幸せが維持できるかどうか不安で、人に与える余裕のない人、自分が生きるだけで精一杯の人が多くなってきたことのあらわれ。保険証をつかえない無保険者が、いま全国に30万世帯もいる。
 恐るべき事態です。身体の具合が悪くても、じっとガマンし、医者にかからず、安い薬ですますのです。
 ネットトレーダーが急増している。取引口座数は2005年9月に790万になった。1年間で200万増えた。これは売買金総額の3割を占める。市場にはプロがいるので、免許取りたての人がドロレースに出るようなもの。もうけ続けられるのは2割にみたない。プロはかえって売買しやすくなって喜んでいる。
 100万ドル以上の金融資産をもつ人は世界に830万人いる。その6人に1人が日本人。強い者をより強く、負けた者はそのままにするほうが社会が活性化するというのが政府の考え方。その結果、格差は拡大し、社会病理となって噴出している。
 韓国のサラ金業界の上位10社のうち、8社を日系、在日系企業が占める。債務者には事前に身体放棄書を書かせ、返済しないときには、酒場や風俗店に入れる。
 国民は「官から民へ」という言葉に踊らされた。小泉政権の5年間で、権力の砦はむしろ強化された。日本は特定の人間が牛耳る縁故(クローニー)資本主義へと後戻りした。
 ノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者であり、クリントン政権の委員会メンバー、世界銀行の副総裁だったジョセフ・ステグリッツによる次の指摘は重要です。
 アメリカの「小さな政府」政策は、実は小さな政府ではない。ブッシュ政権になって企業への補助金は増え、政府は規模を拡大している。「小さな」というのはレトリックであって、現実ではない。小さな政府というが、実際は大企業のための大きな政府で、うまくやっているのは、ブッシュ政権に個人的につながっているハリバートンのような国防関連企業や石油産業のトップにいる人のみ。
 アメリカでは、少数の人がますます豊かになり、中間層などそれ以外の人々がますます貧しくなっている。国民は「小さな政府」政策が、自分たちをより不安定にすることに気づき、流れを止めるべきだ。
 まことにもっともな指摘です。そのとおりだ、と私は大きな声で叫びたいと思います。

生かされて

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著者:イマキュレー・イリバギザ、出版社:PHP研究所
 都会の排ガスでうす汚れた魂がホースで水をじゃぶじゃぶかけて洗い流された。そんな気がしました。読み終わったときすがすがしい気持ちに浸ることのできる本です。そんな感想を口に出して何のはばかりもない本です。いえ、この本に描かれている情景は実に悲惨なのです。ところが、それを語る口調に救いが感じられるので、なんとなくホッとしてしまいます。
 ことが起きた場所は、アフリカのルワンダです。1994年、100日間で100万人のツチ族と穏健派のフツ族が虐殺されてしまいました。当時、大学生だった著者は、そのまっただなかで、なんと牧師宅の小さなトイレに女性ばかり8人で3ヶ月もこもって、ついに生き延びたのです。信じられない奇跡が起きました。彼女たちを殺そうとしたのは、ついこのあいだまで親しく話していた隣人であり、友人だった人々です。彼らは気が狂ったように大鉈(おおなた)、ナイフ、銃をもって殺戮(さつりく)してまわりました。著者の父も母も、アフリカのよその国に留学中だった長兄一人を除く兄弟みんなが殺されてしまったのです。なんと、むごいことでしょう。
 ルワンダはアフリカのなかでも小さな国の一つ。そして、もっとも貧しい国でもあり、また、一番人口過密な国だ。ルワンダでは、家族一人ひとりが違う苗字をもっている。両親が子どもが産まれると、それぞれに特別の苗字をつける。赤ちゃんが生まれたとき、父か母か、その子をどんなふうに感じたかによって苗字をつける。著者の名前イリバギザは、ルワンダのキニヤルワンダ語で、心もからだも輝いて美しいという意味。なるほど、写真でみる彼女は輝く美しさです。
 著者は、両親からルワンダが三つの部族から成り立っていることを教えられませんでした。差別を嫌う親の方針からです。
 多数派のフツと少数派のツチのほか、ごく少数の、森に住むピグミー族に似たツワがいる。ツワは、身長が低い。ツチとフツの違いを見分けるのは難しい。ツチは背が高く、色があまり黒くなく、細い鼻をしている。フツは背が低く、色が黒く、平たい鼻をしている。といっても、フツとツチは何世紀にもわたって結婚しあってきたので、遺伝子は入り混じっている。
 フツもツチも同じキニヤルワンダ語を話し、同じ歴史を共有し、同じ文化だ。同じ歌をうたい、同じ土地を耕し、同じ教会に属し、同じ神様を信じ、同じ村の同じ通りに住み、ときには同じ家に住んでいる。みんな仲良くやっていた。なんということでしょう・・・。これでは、日本人のなかの九州人と東北人の違いほどもないのではありませんか。同じ日本人であっても、毛深かったりそうでなかったり、背の高低があったりして・・・。
 ところが、1973年の革命で権力を握ったフツの大統領は、学校の生徒数や政府関係の人数は、人口の割合によると宣言した。フツ85%、ツチ14%、ツワ1%。これによって、ツチは高校からも大学からも、そして収入の良い職場からも追い出された。それで、著者も成績が良かったのに公立高校に入れなかったのです。
 ルワンダがドイツの植民地になったとき、また、ベルギーがその後を継いだとき、ルワンダの社会構造をすっかり変えてしまった。ベルギーは、少数派のツチの男たちを重用し、支配階級にした。ツチは支配に必要な、より良い教育を受けることができ、ベルギーの要求にこたえてより大きな利益をうみ出すようになった。
 ベルギー人たちが、人種証明カードを取り入れたために、二つの部族を差別するのがより簡単になり、フツとツチとのあいだの溝はいっそう深くなっていった。
 フツは、子どものときから、学校でツチを絶対に信じてはいけない。彼らはルワンダにいるべき部族ではないと教えられる。毎日、ツチに対する人種差別をみながら育つ。学校そして職場で。ツチを蛇とかゴキブリと呼んで、蔑(さげす)むことを教えられる。
 いよいよ大虐殺がはじまります。大統領が率先してデマ宣伝を大声でくり返すのです。ゴキブリどもを消毒しろ、ラジオでこう叫びます。
 ところが、インテリの父は信じないのです。ナチス・ヒトラーがユダヤ人の大虐殺をはじめたときと同じです。まさかそんな馬鹿なデマ宣伝を民衆が信じるはずがない。しかし、通りにはたちまち血に飢えた狂った大群衆であふれました。ツチと見たら殺す。それを止めようとした穏健派のフツもためらうことなく殺していきます。
 ツチの人々が逃げこんだ教会堂を取り囲み、火をつけて全員殺す。競技場に逃げて集合した人々を機関銃と手榴弾で全員殺戮してしまう。
 女性だけ6人がシャワー付きのトイレのなかに逃げこみました。牧師宅でも、そこしか安全なところはないのです。牧師は注意します。
 「トイレを流したり、シャワーをつかったりしないように」
 「この壁の反対側にトイレがある。そこは同じパイプでこことつながっている。どうしてもトイレを流したいときには、そこを誰かがつかうまで待つ。そして、確実に同時に流すこと」
 7歳、12歳、14歳、55歳の女性たちです。一人また一人と、当然、生理にもなる・・・。ずっとトイレにいたにもかかわらず、いま誰かが用を足しているところを思い出さない。匂いに苦しめられたことも思い出さない。
 牧師が食べ物をもってきたときだけ食べる。夜中の3時か4時まで現れないこともあり、まったく姿を見せない日もあった。飲み水はもってきてくれた。食べものも、余りものしかもってこれなかった。気づかれないためだ。
 6人いたのに、また2人の女の子が増えた。ところが、すき間はかえって増えた。人間が縮んでしまったから。十分に食べられないことから衰弱し、ほとんど一日中もうろうとして過ごしていた。著者も体重が18キロは減った。
 そして、驚くべきことに、この状況で、著者はなんと、英語の勉強を始めたのです。狭いトイレに女ばかり8人がこもって2ヶ月たった時点です。英仏辞典と英語の本を2冊、牧師は差し入れてくれました。
 フランス語のできる著者は必死で英語を勉強し、たちまちものにしました。
 著者が隠れていたトイレの写真があります。3ヶ月間、8人の女性が過ごしたとはとても思えない、本当に小さなスペースです。
 フランス軍に救われて、なんとか国連の仕事をするようになって、著者は刑務所に入れられている虐殺者のリーダーに面会します。そのとき、彼女は、私はあなたを許しますと言ったのです。私には、とても信じがたい言葉です。人間の気高い精神のほとばしりです・・・。
 アンネの日記とはまた違った魂をゆさぶる手記です。ぜひ、お読みください。あなたも、きっと、生きてて良かったと思うと思います。こんな感動を味わうことがきるんですから。

ドイツ戦車、戦場写真集

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著者:広田厚司、出版社:光人社
 戦車って戦場では万能の兵器のように見えますが、実は故障率が高かったのですね。ナチス・ドイツ軍が1993年にポーランドに侵攻したとき、戦車の4分の1が故障したというのです。
 ロンメル将軍もアフリカで戦車を動かしたわけですが、砂漠の砂とホコリは戦車の敵でした。戦車のエンジンの寿命を3分の1にしてしまいました。
 ナチス・ドイツ軍は、修理システムが十分でなく、また、多種の車輌による部品のため戦車戦力の15〜30%はムダにしていた。つまり、ヒトラーのナチス・ドイツ軍は補給のことを十分に考えていなかったのです。
 装甲部隊の作戦と戦力維持のための組織力に欠けていた。
 そして、ドイツ軍の機能化師団にとってもっとも深刻だったのは、燃料不足で進撃速度が落ちたこと。補給ラインが伸びて燃料が届かない。列車での輸送は、軌道幅が違うためにできない。船は黒海にソビエト艦隊がいて実行できない。空輸では、とてもまかなえない。さらに、ソ連軍のT34戦車にドイツ戦車は負かされていた。
 ヒトラーの求める狂信的な「撤退せず」という指令が、いつもドイツ軍の装甲部隊の致命傷となった。
 200枚もの戦場におけるドイツ戦車をとった写真集です。そこに戦争に悲惨さはまったく出てきませんが、その愚かさは十分に分かります。スターリングラードやレニングラードの戦いなどを先に紹介しましたが、それらの戦場の様子を具体的にイメージできる本です。

超・格差社会アメリカの真実

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著者:小林由美、出版社:日経BP社
 アメリカに26年も暮らしてきた著者が、自分の経験と知見をもとに、アメリカとはどういう国なのか、日本がアメリカのような国になっていいのかを根本的に問いかけた本です。
 アメリカの社会は4つの階層に分かれている。特権階級、プロフェッショナル階級、貧困層、落ちこぼれ。
 特権階級は、400世帯しかいない純資産10億ドル(1200億円)以上の超金持ちと5000世帯の純資産1億ドル(120億円)以上の金持ち。
 プロフェッショナル階層は、35万世帯の純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と純資産200万ドル(2億4000万円)以上で、かつ年間所得20万ドル以上のアッパーミドル層からなる。彼らは、高給を稼ぎ出すための高度な専門的スキルやノウハウ、メンタリティをもっている。
 特権階級とプロフェッショナル階級の上位2階層をあわせた500万世帯、これは総世帯の5%未満となる、に全アメリカの60%の富が集中している。アメリカの総世帯数1億1000万のうち、経済的に安心して暮らしていけるのは、この5%の金持ちたちだけ。
 アメリカは、人類の求める究極の社会なのか。アメリカの本質を理解した人は、ためらうことなく、一言で、ノーというだろう。
 アメリカの人口2億9000万人のうち、16%の4500万人は医療保険をもっていない。大人の5人に一人は医療保険がない。
 減税というのは、ワーキング・クラスからの徴税を大幅に増やし、投資収入で生きるトップクラスの税負担を減らす、というもの。
 アメリカの中産階級は、1970年代以降、アメリカの国力が相対的に低下する過程で、徐々に二分化してきた。メーカーなどで働く中産階級の大半は、貧困層への道をたどっている。
 アメリカ社会の最下層にいるのは、社会から落ちこぼれている層で、貧困ラインにみたない人々。アメリカの人口の25〜30%を占めている。
 著者は日本がアメリカのような国になってはいけないことを強い調子で訴えていますが、まったく同感です。

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