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少年審判制度が変わる

カテゴリー:司法

著者:福岡県弁護士会子どもの権利委員会、出版社:商事法務
 全件付添人制度の実証的研究というサブ・タイトルのついた本です。福岡県弁護士会が全国に先駆けて発足させた全件付添人制度の意義を、諸外国との対比もふまえて明らかにした画期的な労作です。
 この全件付添人制度がスタートしたのは2001年2月、春山九州男会長のときでした。春山会長の積極果敢な働きがなければ実現出来なかった偉業です。
 制度発足前の議論の焦点は二つありました。担当弁護士が確保できるのか、収支見通しは大丈夫なのか、という点です。いずれも深刻な議論となりました。
 福岡県弁護士会は国選弁護人の登録率が83%、当番弁護士の登録率も65%と全国的にみて大変高い率を誇っています。そのベースの上に当番付添人の登録率は51%となっています。全国水準をはるかに上まわる高率を誇っています。最近新規に入会してくる会員は全員登録するのが当然という状況です。
 付添人として出動した弁護士には10万円が支払われますが、これは少年の負担はありません(扶助付添人が適用されたとき)。この10万円は、法律扶助協会本部から3万円、日弁連の当番弁護士財政基金から3万円、扶助協会福岡県支部から4万円という負担となっています。県支部4万円は、福岡県弁護士会の基金から支出されていますが、そのため当会の会員は月5000円が会費に上乗せされています。
 この制度によって、2003年度に福岡県内で1296人の少年に観護措置決定がされたが、そのうち780人に弁護士付添人がついた。福岡家裁本庁では534人の少年のうち410人に弁護士付添人がついた(77%)。
 付添人の活動によって、家裁に送致されてから審判までの間に少年の要保護性が減少し、少年院送致はなく、社会内処遇が選択される比率が高まっている。
 多くの審判官や調査官が少年の更生のために熱心に職務を遂行していることは認めるが、外部チェックのない組織は独善に陥る危険性もあり、健全に発展するのが難しいことは社会の常識でもある。
 弁護士が付添人として少年審判に関与し、裁判所が恣意的判断に陥らないようチェックし、処分の決定基準そのものに付添人の意見が繁栄されることには大きな意義がある。
 福岡県弁護士会では、付添人活動のレベルアップのための研修会もひんぱんに行われている。月報にも、その苦労話が毎回のように紹介されています。必ずしも成功談ばかりではなく、頭の下がるような話のオンパレードです。
 審判書を少年本人や保護者に読んでもらうことは、たいていの場合、大きな意味がある。付添人はその点にも留意して活動している。
 470頁、4400円と、ズシリと重たい本ですが、少年事件の適正手続の実現と少年の更生に向けた環境づくりのために福岡県弁護士会の先進的な取り組みを詳細に分析・評価している貴重な本として、広く読まれることを願っています。

日本は略奪国家アメリカを棄てよ

カテゴリー:アメリカ

著者:ビル・トッテン、出版社:ビジネス社
 ついに母国アメリカの国籍を捨ててしまった元アメリカ人による警鐘の書です。うんうん、大きくうなずきながら最後まで一気に読んでしまいました。
 著者は1941年生まれのアメリカ白人です。私がまだ大学生のころの1961年に日本にやってきて以来、日本に住んでいて、日本で会社を経営しながら、京都に住み、ついに2006年に日本へ帰化しました。在日38年目のことです。
 著者は、その前、アメリカに帰国するとき、要注意人物としてブラックリストにのせられ、空港では徹底した身体検査を受けたといいます。テロ防止法の対象者とされたわけです。ひどい話ですね。アメリカ政府を単に批判したというだけなのに・・・。
 日本政府は在日米軍基地を維持するために、年間5000億円を負担している。在日アメリカ軍兵士1人あたり1400万円。日本政府が日本国民1人あたりにつかっている社会保障費はなんと、その100分の1の13万円でしかない。にもかかわらず、アメリカ軍が日本を守ってくれる保障は何もない。
 日米安保条約があるから、アメリカは日本を守ってくれるというのは、実は脳天気な幻想に過ぎない。
 つい最近、福岡県内の築城基地にアメリカ軍がやってきて演習をはじめました。ついに本土が沖縄なみになったわけです。
 アメリカ軍の公務中による民間人への損害賠償について、日米地位協定では、アメリカだけに責任があるときの賠償金は、アメリカが75%、日本が25%を負担することになっている。アメリカだけに責任があっても、日本は賠償金を分担させられる。いかにも不平等な協定である。これには、私もまったく同感です。
 アメリカでは、低所得層の家庭に生まれた子どもが、所得の上位5%の階層へと行ける確率はわずか1%。残る99%は、そのまま低所得層にいるか、せいぜい中所得層に上がるのが現状だ。それに対して、上位5%の階層に生まれた子どもが成人してもそのままの階層に属することができる確率は22%。まるで違う。
 アメリカでは、貧しい家に生を受けた人は、生涯貧しい。いつも解雇に怯え、公共料金の支払いを危惧し、医療保険にも入れない。努力すれば幸せになれるという夢や希望は、微塵もない。ところが、裕福な家に生を受けた人は生涯、裕福な人生を送ることができる。そして、生涯、快適に安全に人生を満喫するために、一度得た権利を決して手放そうとはしない。
 アメリカの二大政党というのは、実は表面だけで、その実体は一党支配に思える。共和党も民主党も、政策は似たり寄ったりである。表向きは違う顔をした政党だが、資産党ないし富裕党という、一つの大政党しか存在していない。
 資産党(富裕党)の中に、共和派と民主派という二つの派閥があって、政権交代は単なる派閥争いにすぎない。そして、いずれの派閥(党)も、戦争が好きだ。クリントンになって以降の民主党は、民主党という看板を掲げた共和党になったという実感をもっている。
 資本主義とは、資本家の所得や富を最大限にするためのシステムである。たしかに清算や消費は増大するが、地球環境に余計な負荷がかかってしまう。山や海、川は汚染され、ゴミは増え、石油などの地下資源は一層すくなくなっていく。資本主義はまったく不完全なシステムだ。
 私は昨年、突然、花粉症になってしまいました。今年も、目や鼻がやられてしまいました。鼻の詰まりがひどいのです。人間って、鼻で息をしていることを、しみじみ実感させられてしまいました。この花粉症にしても、単にスギ花粉の大量発生だけでなく、ディーゼル黒煙など、大気汚染がバックグラウンドに必ずあると私は考えています。そうでないと、昔から花粉はあったのに、なんで、現代人が大量に花粉症にかかって悩まされているのか、十分な説明がつかないと思います。いかがでしょうか?

ブドウ畑で長靴をはいて

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:新井順子、出版社:集英社インターナショナル
 ロワール地方にはたくさんのシャトーがあります。ブロワ城や有名なシュノンソー城もロワール河の支流シェール川沿いにあります。そのシェール河近くに日本人女性がワイン畑のオーナーとなり、無農薬でブドウを栽培してワインをつくっているのです。すごーい。日本女性をまたまた見直しました。
 1ヘクタールに6000本のブドウの樹が植わり、8ヘクタールのうち2ヘクタールは休耕地になっているから、6ヘクタールだと3万6000本。これを一本一本、手で剪定していく。一本の樹に5分から15分かかる。
 ブドウの赤ちゃんに「元気に育ってね。たくさんお世話するからね」と話しかける。ブドウの樹は人間よりずっと頭がいいから、フランス語でも日本語でも分かる。
 ブドウの樹は6月ころ花を咲かせ始める。気がつかないほど小さな白い花がプチプチ咲く。とても愛らしい。花が咲いて100日後にブドウの収穫が始まる。花が咲くと、その年の収量を調整するため芽かき作業をする。一本の樹から多くて10房までとした。ゴメンナサイネと謝りながら、残酷にもブドウの芽を摘んでいく。
 ワイン用の樹は小さく育て、皮を厚く実を小粒にして糖度を上げていく。
 8月は放っておいてもブドウが熟成するので、ワイナリーはバカンスをとる。
 ブドウジュースを樽に移し替えるとすぐに発酵が始まる。
 「チチチチ・・・・」
 木樽に耳を当てていると、発酵の始まった音が聞こえてきた。ワインが息をしはじめ、発酵が健全に動き出した証拠だ。音で確認できる。
 足踏み作業は醸造の大切な過程だ。水着の上にTシャツを着て、素足で開放桶に飛びこむ。ズボボボーと足がブドウの粒の中に沈んでいく。踏むというより、まるで底なし沼でもがいているようだ。それも酸欠状態で。笑いごとではない。桶の中にいる人間は要注意だ。ときどき桶から顔を出して息継ぎする。
 著者はスポーツ・ウーマンでもあります。19歳から29歳までの10年間、空手にいそしみ、3段をとっています。お稽古事にもいろいろ手を出しました。料理、華道、茶道、着付け教室、そしてワインスクールに通うようになったのが、彼女の運命を決めたのです。
 一級テイスターに合格第1号でした。なにしろ、1時間で15アイテムのワインをブラインド・テイスティングで14アイテム以上の銘柄を正解しないと合格できないというのです。よほど繊細な舌をもっているのでしょうね。私などは、これがまったくダメです。コンビニの安ワインの方を高級ワインよりおいしいと思ってしまうほどの舌でしかありません。残念です。年に4000本から6000本のワインをテイスティングしたというのですから、さすがプロを目ざす人は違います。
 彼女は、ワインは自分でお金を出して飲みなさいとすすめています。
 生徒の前に3つのコップがおかれる。どれも一見すると、タダの水。一杯を飲む。なんともない。2杯目、うむ、なんかある。3杯目、いよいよ何かある。3杯目のコップに何も感じなかったら鑑定家のプロになる資格はない。2番目のコップには、1リットルあたり1ミリグラムの砂糖が入っており、3番目のコップには3ミリグラムの砂糖が入っていた。これが分からないような舌では、まるでつかいものにならない。うーむ、厳しいんですね。恐らく私はダメでしょうね。
 丹精こめてブドウの樹を育て、心をこめてワインをつくっている姿が写真と文章でしっかり伝わってきます。実にうらやましい。生き生きした笑顔が輝いています。一度、彼女のワインを飲んでみたくなりました。
 庭にチューリップの花が50本ほど咲いています。まだまだ、これからが本番です。ピンクに白いふちどりのあるチューリップの花に気品を感じます。クロッカスの白い花、青紫色のムスカリの花が並んで咲いてくれました。お互いにひきたてあっています。まさに春到来です。雨戸を開けて庭を見るのが毎朝、楽しみです。

世界をリードするオンリーワン中小企業

カテゴリー:社会

著者:木村元紀、出版社:洋泉社
 日本の中小企業は、世界市場でも大いにがんばっているのですね。この本を読んで、そのことを知って、なんとなくうれしい気分になりました。
 私は年2回の人間ドッグで胃カメラを飲んでいます。私の場合、麻酔の注射をうってもらいますので、すぐに意識が薄れて痛みも何もなく、いつのまにか検査は終わっているという感じです。ところが、胃カメラのような長いチューブを喉から差し込むのではなく、小型カプセルを飲み込むだけ、しかも身体の中から生中継できるというのです。驚いてしまいます。いえ、もう実用化されているというんですよ。すごいですね。
 飲み込んで排泄されるまでの7〜8時間にわたって、体内の様子を撮影でき、リアルタイムでモニターできる内視鏡なのです。「ノリカ・3」は、大きさが23×9ミリ。照明用の発光ダイオード(LED)を3種類そなえ、解像度の高いCCDカメラで一秒間に30コマの動画が撮影できる。電池は不要。無線で体外から電力を供給する。
 患者はコイルを埋めこんだベストをつけて大きな固定子とし、体中に入るカプセル全体を小さな回転子とする。患者の着るベストは、撮影した画像の受信、電力の無線伝送の役割も果たす。これはスゴーイ、そう思いました。体の外から体内で電気を起こさせたり、遠隔操作するというのです。まさしく逆転の発想です。
 さらにすすんだものには、中央内部の二重構造になったカプセルの内筒の中央部分に 360度回転するレンズが付いている。
 痛みを感じさせない超極細注射針。注射で痛みを感じるのは、針先か神経の末端である痛点にあたるから。この痛みを感じさせない注射針は、毎日、インシュリンを注射しなければいけない糖尿病患者を大きく励ますものだ。
 実は、アメリカは中小企業の比率が高い国だ。従業員数は比率でみると、日本と変わらない。むしろ、大企業から独立した企業が多い。アメリカのGDPは日本の3倍。中小企業の数は3.5倍、個人事業主は6倍近い。
 いまの日本の国内企業の最大の問題は後継者。創業者は、今や65〜70歳となっている。どこも跡継ぎがいないと頭を痛めている。弁護士会でも、今、この問題に取り組もうとしています。中央では中小企業庁とタイアップし、福岡では商工会議所との提携を考えています。

団塊世代の定年と日本経済

カテゴリー:社会

著者:樋口美雄、出版社:日本評論社
 団塊世代とは、狭義には1947年から49年までの3年間に生まれた人のこと、人口にして691万人、就業者数にして539万人。他の世代に比べて2〜5割も多く、日本の全人口の5.4%、全就業者数の8.6%を占める。
 団塊世代の出生数は806万人。もっとも出生数が多かったのは1949年で270万人。2003年に生まれた子どもは112万人だったから、その2.4倍である。団塊世代が生まれた出生地は、東京都49万人、北海道46万人、福岡35万人、大阪32万人、愛知32万人、となっている。あれー、福岡って多かったんですね。筑豊や大牟田に炭鉱があったせいでしょうね。1950年時点で734万人となり、1975年には、711万人だった。その後の30年間に172万人が死亡している。
 アメリカは、日本と少し事情が異なる。アメリカのベビーブームは1946〜1964年の18年間。長期にわたって毎年350〜400万人が生まれた。イギリス、イタリア、フランスは日本と同じ3年間がベビーブームだった。
 団塊世代の女子が生んだ子どもは676万人。単純にいうと、自らの世代よりも130万人少ない子どもを残したことになる。
 これから退職一時金として5.5兆円、年金給付1.4兆円の合計7兆円の退職給付が毎年支給される。
 団塊世代の未婚率は、最近の世代に比べると低い。団塊世代を世帯主とする世帯は、 2000年時点で、夫婦と子ども世帯(子どもは平均2人)が4割以上と、もっとも多い。子どものいない夫婦のみ世帯と、離婚や死別などによる単独世帯があわせて3割もある。
 東京圏の団塊世帯数は、この5年間で2万世帯増加し、持家率も6ポイント上昇している。団塊の世代は、その上の世代に比べて、三大都市圏とりわけ首都圏に偏在して居住している。
 1980年代後半までは、日本の純家計貯蓄率は世界最高だったが、その後、低下し続け、今では絶対的にも相対的にも高いとはいえない。日本人は、以前は貯蓄好きだったがもはや貯蓄好きとはいえない。
 また、日本人は以前は借金嫌いだったが、近年は借金好きになっている。むしろ、日本人はG7加盟国の中でもっとも借金好きなのである。
 あれれ、日本人って、すっかり変わってしまったんですね。
 実は、私も来年、ついに還暦を迎えることになりました。ええーっ、そんなー・・・、と叫びたい気分です。先日、鏡を見て自分の顔を眺めたとき、眉毛に白いものを見つけて驚きました。初めは、何か糸くずがついていると思ったのでしたが・・・。まだ気はしっかり20代なんですが、お腹の出っぱりを見ると、そうでもないのを実感させられます。

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