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マチベンのリーガルアイ

カテゴリー:司法

著者:河田英正、出版社:文藝春秋
 私と同じ団塊世代の弁護士です。岡山で弁護士会長をつとめ、法科大学(ロースクール)で教え、消費者問題に取り組み、オウム真理教と果敢にたたかいました。還暦を機に、そのブログを本にしたものです。毎日のエネルギッシュで地道な活動に触れ、頭の下がる思いです。
 刑事事件で、裁判官に対して「寛大な処分をお願いする」と言ってしまったことを後悔します。いつもは言わない言葉だというのです。ええーっ、私は、よく使いますが・・・。
 判決は裁判官にお願いして出してもらうものではない。法の見地から適正妥当な判決がなされるべきものであり、弁護人はその判決はどうあるべきか、被告人側からみた意見を主張すべきなのである。「裁判長さま」とか「判決をたまわりたい」など、卑屈な言い方はやめよう。これには私もまったく同感です。
 「上申書」という書面もおかしいですよね。「お上」に恐る恐るモノ申すということでしょう。冗談に「お上(かみ)」と言うのは許せますが、本気で言ってはいけません。国民が主権者であり、主人公なのです。裁判官も公務員の一人として、公僕にすぎません。
 天衣無縫とは天女の羽衣のように純粋に自然な流れのこと。私は知りませんでした。
 あちこちの裁判所を駆けめぐるため、昼食はコンビニでおむすびを買って運転しながらほおばることもある。もう少し時間があるときは、回転寿司やセルフのうどん店に立ち寄る。えっ、セルフのうどん店って、何のことですか?いずれも待ち時間ゼロで、すぐ食べられるからです。私は、最近ダイエットにはげんでいますので、昼食を抜いたこともあります。お茶で我慢しました。昼はおかずだけにしています。パンもパスタもやめています。
 クレサラ事件、つまり、たくさんの借金をかかえた人の相談に乗るのは疲れる。このように書かれています。実際そのとおりです。この本を読むと、弁護士の仕事って気苦労が多く、疲れてしまうものだということがよく分かります。著者は夜7時から示談交渉したり、土曜も日曜も相談に乗ったりして、気の休まる暇がないようです。私は夜に人と会うのはしていませんし、土・日は完全に事務所を閉めて休み、示談交渉もお断りしています。
 2歳ほどの子どもを連れてやって来た借金の相談。終わったとき、その子どもは「どうもすみません」とはっきり言って頭を下げた。親のいつもの仕草をまねたのだ。このくだりを読んで、悲しい思いをしました。子どもが、いつのまにかサラ金の取り立てに対して親の言う言葉と態度を覚えてしまったのです。
 坂本弁護士一家がオウム真理教(現アーレフ)に殺される3日前、著者の前に上祐史浩と青山弁護士がやって来た。著者が「オウムはカルトである」とコメントしたことの撤回を求めてのこと。1989年11月1日、上祐は著者に対して「おれは優秀だ。優秀なおれが洗脳なんかされるはずがない」と言い切ったとのこと。なんと傲慢なモノ言いでしょう。オウム真理教は坂本弁護士一家を殺害しておいて、ずっと否認していたのですから、許せません。
 いかにも誠実な著者の人柄がにじみ出ている本でした。読み終わって爽やかな気分に浸ることができました。ただ、表紙の絵がちょっと厳しすぎる表情なのには違和感があります。私の知る著者はもっと柔和な印象なのですが・・・。
(2007年12月刊。1429円+税)

株式会社ロシア

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:栢 俊彦、出版社:日本経済新聞出版社
 プーチン大統領の支配するロシアから目を離すことはできません。
 ロシアの経済成長を支えているのは、原油高を背景とする個人消費と投資の拡大である。
 新生ロシア政府は、1992年、国営企業の民営化にあたって、バウチャー方式という手法を採用した。政府が国民一人一人に一定金額のバウチャー(民営化証券)を無料配布し、国民はこれをつかって民営化企業の株式を取得できるとした。
 当初の民営化政策が一段落した1994年から、金銭による民営化が始まった。1995年、それまでとまったく違うタイプの民営化が実施された。後に「担保オークション方式」と呼ばれるトリッキーな手法である。これによって、資源産業を中心とする巨大な資産が一部の資本家に移管された。
 ユーコス事件は、現代ロシア最大の疑獄事件である。それは、1990年代前半の民営化以降続いた国家資産の争奪戦が行き着いた結果であり、エリツィン時代に台頭した支配勢力(新興財閥=オリガルヒ)がロシアの伝統的権力機関に屈するプロセスであった。国内の欧米派勢力(とくにユダヤ人)とロシア派勢力との路線対立が、ロシア派勢力の逆転勝利で決着をみたということができる。
 ロシアの権力機関内では、このユーコス事件を機に国益第一主義が確立し、1992年以降に欧米諸国が敷いたオービット(軌道)からロシアは離脱しはじめた。
 ユーコスは2004年に解体され、ホドルコフスキーは禁錮8年でシベリアに、レベジェフは同じく8年間、北極海に近い監獄に収容された。
 ホドルコフスキーは「泥棒貴族」としての出自をロシア国内では拭いきれず、欧米の庇護者をバックにプーチン政権を強引に押さえこもうとしたのがつまづきの始まりだった。ブッシュ政権に気に入られてからは自信過剰に陥り、プーチン政権との衝突を避けられないものとした。
 ロシアの大企業が資源系を中心に、政治と深く結びつきながら発展してきたのに対し、中小企業は逆に政府に忘れ去られ、自力で生き残ってきた。それだけに、成長している中小企業の経営者は強烈な個性を持っている。
 中小企業の経営者の成長がロシアの民主主義の基礎を生み出しつつある。ロシアの将来は、中小企業の発展が握っている。
 ここで紹介されているいくつかのロシアの中小企業が日本の経営論を学び、生かしながら発展しているというのは、日本人の書いた本だからなのでしょうか・・・?
 統一ロシアにみられる単独与党のモデルは日本の自民党である。かなり長いあいだ、大統領府内で自民党のモデルを研究した。党派性と安定性の結合がもっとも重要だ。
 1990年代以降、ロシア社会では年齢層ごとに意識の断層が生じた。ソ連崩壊時に 10代後半に達し、コムソモールの教育を受けた人と、まだその年齢に達していなかった人では意識は大きく異なる。現在30歳以下の若者は社会主義についての意識はほとんどなく、市場経済の社会を前提として受け入れている。ましてや20歳前後の人生観や価値観となると、おばあちゃんは宇宙人と同じ。何を言っているのか全然分からない、というほど距離がある。
 うむむ、なるほど、ロシアにおける世代間の断絶は日本以上でしょうね。
(2007年10月刊。1900円+税)

私たちは、脱走アメリカ兵を越境させた

カテゴリー:日本史(戦後)

著者:高橋武智、出版社:作品社
 1967年。私が大学生になったのはこの年の4月。ベトナムでアメリカ軍が侵略戦争をしていました。ベトナムが共産化したら、インドシナ半島全体が共産化するので、それを止めるというのがドミノ理論(ドミノ倒しになるのを防ぐというものです)で、それがアメリカ軍のベトナムへの介入の大義名分でした。本当にとんでもない言い草です。ベトナムに派遣されたアメリカ軍は50万人。アメリカ軍の戦死者だけで5万5千人です。アメリカの私と同世代の若者たちが死んでいました。もちろん、ベトナムの人はそれより2桁も多い人々がアメリカ軍に殺されました。もちろん、というのは、近代兵器の粋を尽くしたアメリカ軍が無差別にベトナムの人々を殺しまくった結果がそうだったという意味です。アメリカ軍のなかにも嫌気をさして脱走する兵士が相次ぎました。そこまでの勇気のない兵士はアルコールと麻薬におぼれました。
 この本は、アメリカ軍から脱走した兵士を日本人グループが国外逃亡に手を貸していた事実を明らかにしています。もちろん逮捕されることを覚悟のうえです。
 ベ平連が誕生したのは1965年。解散したのは1973年だった。
 アメリカ軍脱走兵士を国外へ逃亡させるための組織、ジャテックに脱走兵を装ってスパイが潜入してきた。海のCIAの別名をもつ海軍犯罪調査局(NCIS)の特別捜査官だったという。
 それまでは北海道から海路、ソ連へ脱出させていた。しかし、ソ連が断った。そこで別のルートを開拓するためにヨーロッパに飛んだ。その苦労話がこの本のメインです。
 いろんな人に会い脱出路を探ってたどり着いたのがパスポートの偽造。本物のスタンプに似せたものをどうやってつくるかという点をプロに教わった。完璧すぎるものをつくらないこと。インクをつけたペンで、それらしく点を打っていけばいいだけ。適当に歪みをつける。うーん、そうなんですか・・・。驚きました。
 脱走兵を日本国内でかくまったとき協力してくれたのが知識人たちです。中野重治、日高六郎などの名前が出てきます。軽井沢の別荘を借りたりして過ごさせました。2年も日本国内に潜伏していたアメリカ人脱走兵がいたというのですから、たいしたものです。いえ、本人も辛抱したでしょうけど、それを支えたジャテックも偉いです。
 いよいよ大阪空港から他人のパスポートで出国させます。ハラハラドキドキです。無事にパリのオルリー空港に到着。
 アメリカでは、元脱走兵に対して今も公然とした嫌がらせがあっているそうです。クリントンのような兵役忌避者は大統領になれたわけですが・・・。
 脱走が、実は、軍隊を内部から掘り崩した空洞化させるのに最大限有効な行為であり、国家からみたら絶対に許し難い行為だから、なのです。
 スウェーデンには、そのころ、400人ものアメリカ人脱走兵がいたとのことです。
 アメリカ軍の脱走兵を助けたジャテックの活動の全体像を知るためには、『となりに脱走兵がいた時代』(思想の科学社、1998年)が資料集として、よくまとまっています。
 この本は、その中の一人が、さらに個人的体験をふまえて、運動の実情を明らかにしたものです。
 あれから40年たち、今こそ書き残しておくべきだという思いから書かれた本です。
(2007年11月刊。2400円+税)

神の棄てた裸体

カテゴリー:アジア

著者:石井光太、出版社:新潮社
 今どきの日本の若者はエライ!つい、このように叫びたくなる本です。こんな危なっかしい現地まで、よくぞ足をふみ入れたものだという思いに駆られる報告がいくつもあります。なにしろ、スラム街に入りこみ、そこで生活をともにしながら底辺の人々の生活をじっくり観察するのです。危険なことは言うまでもありません。世界の現実は依然としてなかなか厳しいものがあることを痛感しました。
 バングラデシュの首都ダッカの町には路上生活者がいる。スラムの住人なら、粗末ながらも家族と生活している。路上生活者は孤独のうちに寄せ集まって生活している。
 そこには人さらいが暗躍している。子どもを誘拐して、売り飛ばす。男の子なら金持ちの家に売る。労働力として、6歳から8歳の子を外国へ売ることもある。女の子は、売春宿に売る。10歳から13歳になれば1000円から1万円で売れる。それも普通の売春宿ではなく、女を殴ったり、蹴ったりできるような売春宿だ。金持ちが子どもを売買する。しかし、自分の手は汚さない。路上生活者に子どもを誘拐させて、利益だけを得る。
 いま、中東では外国人娼婦やホステスが増加している。オイルマネーで潤っていること、欧米より容易にビザが取得できること、イスラムの戒律が厳しくて現地の女性が働けないことなどによる。
 ホステスは、ロシア、ルーマニア、ウクライナなどの白人かモロッコ出身の女性だ。白人女性は金髪や青い瞳を武器に、モロッコ人女性はアラビア語が話せるイスラム教徒であることを武器に男の気を引く。白人はモロッコ人を「がめつい詐欺師」、モロッコ人は白人を「でくのぼうの売春婦」と中傷して客を奪いあう。
 いま、中東だけで数百万人いや数千万人の出稼ぎ労働者が入っている。アラブ首長国連邦(UAE)では、人口450万人のうちの8割近くが外国人労働者だ。
 サウジアラビアも人口の4分の1ほどが外国人労働者だ。レバノンでは家政婦のほとんどが外国人だ。それは、フィリピン、インドネシア、スリランカなど貧しい国の出身者。もっとも犯罪に巻きこまれやすいのがフィリピン人。中東にはフィリピン人が40万人以上も働いている。同じ家政婦でも、インドネシア人やスリランカ人は英語ができないから、アラビア語の習得が早い。フィリピン人は、なまじ英語ができるために金持ちの雇い主と英語で会話をするため、現地社会に溶けこめない。そして、家政婦をまるで奴隷のように扱い、強姦事件や暴行事件にまで発展することがある。
 戦争が大勢の男たちを殺し、女たちは生きるために身を売らざるをえなくなる。親を戦争で失い、身寄りのない子どもたちは路上で生活するしかない。大きくなって奴隷のように働かされるか、身を売らされる。戦場体験が人々の心身を狂わせていく。そんな光景が臨場感をもって語られます。勇気ある28歳の日本青年のアジア底辺探訪記でした。その勇気と文才に拍手を送ります。
(2007年9月刊。1500円+税)

脳と心で楽しむ食生活

カテゴリー:未分類

著者:家森幸男、出版社:NHK生活人新書
 世界25ヶ国、61地域をまわって、のべ1万6000人の血液と尿そして食事のサンプルを集めたというのですから、すごいものです。
 男女間の平均寿命は8年以上あるが、その差は心筋梗塞にかかる率と関係が深い。だから、大豆や魚を毎日しっかり食べることで寿命をのばすことができる。
 楽天的に生きる人は、そうでない人に比べて、心臓死に至る確率は45%しかない。ナンクルナイサーと沖縄では言うそうです。なんとかなるさの精神が大切なんです。
 脳梗塞が起こりやすくなったのは、高脂血症や糖尿病が増えたため。
 脳卒中と食事との関係を調べるため、100%脳卒中を起こすラットをつくりあげたそうです。そのために5000匹のラットが飼える研究室をつくったというのですから、学者の世界も大変ですよね。5000匹ものラットを飼っている状況を想像すると、ゾクゾクしてきます。
 100%脳卒中を起こすラットに食塩を与え続けると、100日以内に確実に脳卒中になる。ところが、一緒に大豆や魚などのたんぱく質を与えておくと、脳卒中にならずに長生きすることができる。
 コレステロールは多すぎても問題だが、少なすぎても体に悪影響を及ぼす。
 長寿国のグルジアでは、肉はゆでたり蒸したりして脂肪分を除いて食べている。また、塩でなく香辛料をつかう。そして、グルジアでは、とにかくヨーグルトをよく食べる。朝昼は、ドンブリ一杯ほどの量。ヨーグルトは、乳糖が乳酸になっているので、お腹にやさしく、栄養分の吸収が良く、カリウムもとれる。
 長寿のマサイ族の食生活は食塩がなかった。そして、ひょうたんに牛の尿とすすを入れたうえで牛乳を注いで、ヨーグルトをつくり、1日に3リットルも飲んでいる。これで、ナトリウムのほかカリウム、カルシウム、マグネシウムもとっている。
 さらに、牛の首を刺して血をとり、発酵乳に混ぜて飲む。血を飲んで鉄分を補給し、ビタミンCをとる。マサイ族は食塩をとらないから、その汗がしょっぱくない。ふえーっ、そうなんですか・・・。
 ブドウやナッツやザクロにはポリフェノールが含まれているので、身体にいい。
 塩分を過剰にとっているチベット人は50代に亡くなるので、60歳以上は少ない。しかも、突然死が多い。これは心筋梗塞が多いということ。
 魚のタウリンをわずかとるだけでも、血圧を下げ、脳卒中や心臓死を予防できる。
 日本の女性は心臓死やがんによる死亡率が世界一少ないので、全体の死亡率を下げ、長寿になっている。
 糖質制限食をなんとか続けています。お米、めん、パスタは、なるべく食べないようにしていますが、知らない店に入って昼食をとろうとするときが困ります。ご飯を全然食べないと不審がられても困りますので、三口ほどは食べることになります。
 一ヶ月ほどたち、今、なんとか66キロ台に突入することができています。70キロになろうとしていたことからすると、3キロはやせたことになります。お腹が空きますので、そんなときには緑茶を飲んでごまかします。コーヒーも砂糖とミルク(植物性油のまがいもの)は入れないようにしました。目標の65キロ台になるまで、引き続きがんばるつもりです。
 本日が御用納めです。新年は1月7日から始めます。皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。新年が世界と日本の平和にみちた年になりますように・・・。
(2007年9月刊。700円+税)

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