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弁護士が書いた究極の勉強法

カテゴリー:社会

著者:木山 泰嗣、 発行:法学書院
 試験に受かるためには、一読了解の文章を書く必要がある。一読了解とは、頭が疲れていても、ユーウツな気分であっても、目で追うだけで分かる文章。そのためには一文は短くする。論理的な流れをつくるため、接続詞を正確に、有効に使う。分かりやすい文章を書くためにはまず書くこと、書いて書いて書きまくること。
 新しいことを勉強するにあたって習慣にしたいのが、音読。音読するメリットは脳の活性化。そして記憶への定着。仲間同士で口でする議論も大切。
 成功を約束するのは、圧倒的努力。単なる努力ではなく、圧倒的な努力こそ必要。ハンパな努力では足りない。好奇心を持つことが、脳をスポンジ状態にするためにも必要。
 スポンジ状態というのは、何でも貪欲に吸収するという意味です。病的な状況を指しているのではありません。念のため。
 試験委員がヘトヘトになって答案を読んでいるときに、すらっと読める答案が光る。人間的なゆとりのある生活、のんびり、ゆったりとした生活は大切なもの。でも、仕事ではスピードが必要。試験でも勉強でもスピード感が大切。速くやるほど成功の確率は高まる。勉強に限らず、集中力は、あらゆる分野で重要。
 試験会場は選べないのだから、ふだんからうるさい場所で勉強しておくと、本番でちょっとやそっとのことがあっても影響を受けず、あわてることなく実力を出し切ることができるようになる。そうなんですよね。集中できないのは困ります。
 とにかく気になった本は、すべて買うようにする。お金がかかるのは、先行投資だから仕方がないと考えたらいい。私も本は買える限り買います。買えないのは図書館で借りてコピーをとったりします。
実力が飛躍的にアップする究極の勉強法は、採点する側を体験すること。なーるほど、これは本当にその通りだと私も思います。
 なるほど、なるほど、そうなんだよね。思わず膝を打ってしまいたくなるほど、勉強法の基本的心がまえを真面目に紹介しています。
(2008年10月刊。1200円+税)

東大合格生のノートはかならず美しい

カテゴリー:社会

著者:太田 あや、 発行:文藝春秋
 東大合格に必要なのは、かなりの量の知識はもとより、それをまとめ組み立てて記述する力、そして問題を見たら反射的に手が動くスピード力。な、なーるほど、そういうことなんですか・・・。
 東大は入試の科目数が日本で一番多い。入試センター試験では、文系だと6教科7科目。理系では5教科7科目。その次の2次試験は全問記述式。このとき文系も理系も4教科5科目が課される。つまり、幅広い分野の知識が求められる。ここに東大入試の特徴の一つがある。
 2次試験では、覚えた知識をフル活用しながら、文章や数式を組み立て、いかに早く答案用紙を埋めていくかという作業がポイントになる。問題を見た瞬間、頭の引き出しを開け、似た問題をそこからたぐり寄せ、反射的に手が動くようにしておかないといけない。そのためには、入試までにできるだけ多くの問題に取り組み、解法パターンを体に刻み込んでおく必要がある。
 知識をまとめる力やスピード力を意識しなくてはいけない。意識して書くことを続けることで力が身についていく。「東大ノート」は、途中で投げ出したりせず、ノートの最初から最後まで同じテンションで書きつづられている。
 「東大ノート」に共通する7つの法則がある。 
第1、文頭をきれいにそろえる。
第2、写す必要がなければ、コピーして貼り付ける。
第3、余白をたっぷりと大胆にとる。あとで追加情報を書き込む。
第4、インデックスを活用して、復習の際の検索機能を高める。
第5、書いたことの全体像を一目で見渡し、体系的に確認できるようにする。
第6、オリジナルのフォーマットを持つ。
第7、筆圧が一定で、文字も同じテンションで書く。採点者にとっての見やすい答案を想定し、読みやすい答案づくりにそなえる。
 東大生の書いたノートを200冊も集めて、そこに法則を見出すという地道な作業を思いつき、それを実行した著者もエライですよね。そして、なるほど、こうすれば理解と記憶に役立つだろうな、と思いました。
ここに書かれていることは単に大学受験に役立つテクニックだというだけではなく、社会人になってからもメモの取り方に生かせるものだと思いました。
(2008年10月刊。952円+税)

アマゾンの森と川を行く

カテゴリー:アメリカ

著者:高野 潤、 発行:中公新書
 アマゾンというと、大自然そして密林(ジャングル)というイメージですが、実際には鉱物資源の開発、牧場用の開拓などで、どんどん切り拓かれているようです。といっても、まだまだ奥地のジャングルは残っています。そこへ大胆にも入りこんで生活し、写真を届けてくれる著者の行動力は、いつものことながら感嘆させられます。この本はカラー版なので、アマゾンの大自然の威容を居ながらにして少しばかり味わうことができます。
 ワニの叫び声を模写してワニを呼び寄せる現地の男性がいます。寄って来たワニは、舟のすぐ近くまで「何だい、何だい」と咆哮を上げながら近づいてきます。夜の川に目をギョロギョロさせて舟に近づいてくる大きなワニなんて、不気味そのものですよね。
でも、怖いといえばやっぱり蛇です。黒くて太い大蛇がアマゾンにはうじゃうじゃいるのです。木の上で昼寝しているアナコンダ。川の中を泳ぐ模様つきのボア。シカも丸呑みするのです。うっかりジャングルに踏み込むと、大蛇に飲み込まれてしまいそうです。おー、こわ、こわーい。
 いえいえ、ジャガーもいます。人間が一人だと分かると襲ってくるほど賢いジャガーです。よく見張っているのです。ブルブルブルッ。寒気がしてきました。ジャガーは、森の王、というべき存在なのです。
 アマゾン特有の風土病もある。治ったはずの風土病が再発した。寄生虫が皮膚を食い荒らす。これには抗生物質は効かない。そして、原因不明の肺炎にもかかった。
いやあ、大自然のなかには素晴らしい自然とともに自然の脅威にみちみちているのですね。私は、アマゾンは写真だけで結構です。写真でガマンすることにします。
 水曜日、朝からハローワークそばの空き地で相談会があり、担当者の一人として参加しました。医師や医療関係者が大勢きていました。法律相談のコーナーに来た人は2人だけでした。過払いの可能性が大いにあります。もう一人は、昨年12月に解雇され、2月から失業保険はもらえるけれど、その間のマンションのローンの支払いが大変だという話でした。こんなとき、つなぎ資金の制度があれば、と思いました。
(2008年10月刊。1000円+税)

戦争サービス業

カテゴリー:アメリカ

著者:ロルフ・ユッセラー、 発行:日本経済評論社
新しいタイプの傭兵(民間兵士)は、イラクに3万人いる。これはアメリカ軍に次ぐ第二の規模の軍隊であり、アメリカ以外のどの同盟国軍よりも多い。そして、この民間兵士は、この数年間で数千人が殺され、数万人が負傷した。しかし、メディアで報道されることはない。
イラクには、公式の契約により業務の委託を受けている民間軍事会社が68社ある(非公式の推計によると100社を超える)。たとえば、エアースキャン社は、パイプラインと石油関連基盤を特殊カメラで夜間監視する業務に就いている。エリニュス社は、イラク全土のパイプラインと石油採掘基地を地上で警備する任務にあたっている。ブラックウォーター社は要人の身辺警護を担当している。ISIは、グリーンゾーンでの身辺警護と政府建物の警備にあたっている。
民間軍事会社は、イラクだけでなく、アラビア半島のほとんど全ての国で活動している。たとえばサウジアラビアでは、本来なら軍隊や警察が担うはずの任務の大半をアメリカの民間会社が引き受けている。民間軍事会社と民間警備会社との境界は近年ますます流動的になりつつある。いや、むしろ、この両者を明確に区別することは、もはや不可能だ。
軍事分野で補給関連の最大手となったのがハリバートン社で、その社長だったのは今のチェイニー副大統領だ。
アブグレイブ刑務所での拷問事件の予備兵士たちに資金をあたえていたのは、アメリカの民間軍事会社CACIであり、彼らは尋問の専門家であった。この刑務所では尋問官30人のうちの半数は民間軍事会社の職員だった。
かつての傭兵が民間軍事会社に組み込まれると何が変わるかというと、まずは身分だ。会社職員になリ、固定給がもらえる。国際的に承認された政府と契約しているのだから、法の番人に追われる心配もない。このようにして、国連などが定めた傭兵禁止のための条約や法律は完全なザル法となった。民間軍事会社は賃金コストを下げるため、人員の大部分を現地調達でまかなっている。
チェイニー副大統領が社長だったKBR社は、決算報告の粉飾、不透明な契約の数々、ペンタゴンへの水増し請求、仕事なしで代金だけはちゃっかり受け取るなどのスキャンダルで相次いでマスコミをにぎわした。
民間軍事会社の職員が射殺したイラク市民の数は明確に記録されていないが、イラク内務省は少なくとも200件以上としている。この数字は氷山の一角だろう。殺害された民間人に対して補償金が支払われることは滅多になく、あっても、その額は5000ドルから1万5000ドル程度でしかない。
ブラックウォーター社の要員が明らかな過剰防衛をしたときにもアメリカ国務省は何の制裁措置をとらずに放置した。そして、任務遂行上正当な武力行使であると認定した。
治安の基本的条件が不安定につながり、安全を求める声が高くなる。国家にこれ以上期待しても無駄ということになれば、結局は民間のチャンネルを通じて警備会社に話をもっていくほかなくなる。
アメリカでは、1997年から2005年までの7年間に、民間軍事会社への発注高は2倍になった。
民間軍事会社は、彼らが結んだ契約と、その時々の営業法以外にその行動を制約されることがない。国家機関と違って、彼らは、一国の、あるいは国際的な同盟義務による安全保障機構に縛られることもなければ、法律によって公的に課せられた義務に従う必要もない。民間軍事会社は、ひたすら市場原理、つまり需要と供給の法則に従って動く。
民間軍事会社に契約履行を強制することは誰にもできない。敵対的な状況の下では契約が守られる保証はまるでないのだ。企業や団体が民間軍事会社の保護を頼るしかない。その結果。国家機関は次第に管理権限を失うことになった。安全は公共財から、お金さえあれば誰でも我が物にすることのできる私的な商品に変わる。こうして保護のために投入される武力はますます管理不可能になってしまう。
民間軍事会社は、目下のところ、規制のない、法によって制限されることのない空間で活動している。その結果、やりたい放題に近いのが現状だ。民営の方が安上がりという人は多いが、果たしてそうだろうか?
どれだけ調査・研究を重ねても、この主張の正しさを裏付けする証拠は見つからなかった。むしろ、軍隊業務を民間経済に委託すると納税者の負担は増える。そして、アフリカなどで、民間軍事会社は一国の政治に介入した。
紛争解決と平和確保は事柄があまりにも重要すぎるから、これを民間軍事会社の戦争と経済の倫理にまかせるわけにはいかない。軍人の倫理だけでも好ましくない結果が生まれかねないのに、これに金儲けの欲望が加わったら、どんなに恐ろしい結末が待っていることだろうか。
民間軍事会社が存在できるのは、ひとえに戦争のおかげ。その儲け口は武力紛争と不安定にある。民間軍事会社は、人々、そして諸国民が民主的な共同生活を営む上うえで余計で、しかも危険な存在なのだ。民間軍事会社を使うホンネは、政治的な妥協、政治的なご都合主義の問題でしかない。つまり、民間軍事会社は、国際法も含め、あらゆる法の枠外にあって、民主主義国に暮らす市民一人一人の身に及びかねない政治的な問題を投げかけている。
民間軍事会社の危険な本質をズバリえぐり出した本です。著者はイタリアに住むドイツ人ジャーナリストのようです。
(2008年10月刊。2800円+税)

責任に時効なし

カテゴリー:社会

著者:嶋田 賢三郎、 発行:アートデイズ
 著者は私より少し年長ですが、同じ団塊世代です。有名なカネボウの常務として財務経理を担当していました。そして、カネボウの再建に尽力しながら、粉飾決算の疑いで逮捕されます。その貴重な体験をもとにした小説ですので、ともかく迫真的です。どこまで事実なのかよく分かりませんが、大企業で恐るべき粉飾決算がまかり通っていること、公認会計士がそれを知りながらチェック(阻止)できていない実態がよく分かります。
大銀行のバンカーは、あからさまなものの言い方は極力さける。いわんや頭取クラスであれば、よほどのことがない限り露骨に直接的な言及はしない。化粧品の営業から叩き上げてきたトウボウの社長にはそれを理解するセンスが欠けていた。むむむ、なるほど……。
 企業粉飾によくつかわれる手法がいくつかある。
 キャッチボールは、トウボウが翌期返品を前提に商品を商社に引き取ってもらう、もっともプリミティブなやり方。
 三角取引とは、トウボウから商社Aに商品を売り、商社Aから商社Bに転売してもらい、翌期以降、トウボウは商社Bから仕入れ形態で買い取る。
 宇宙遊泳とは、トウボウから売られた商品を引き取った商社Aがいろいろな商社に転売していくため、まるで宇宙を遊泳しているように見えるので付けられた栄えあるネーミング。
 これらのとき、商社間で転売されるときには、そのたびに商社マージンが必ず乗せられる。だから、同じ在庫で何回もそれを繰り返すと、簿価が法外にアップする。その結果、異常な在庫簿価を形成してしまう。うひゃあ、すごいですね、ケタ違いの違法行為ですよね。
 労使運命共同体というトップの経営思想が、すべからくトウボウを鵺(ヌエ)のような不可解な企業体質にしてしまった。労働組合は、やはり資本からの自立が必要なのですね。
 トウボウは不良資産の解消のため、「逆さ合併」という手法を長年使ってきた。逆さ合併とは、規模の小さい会社を存続会社として、規模の大きい会社を消滅会社として、小が大をのみこむ合併をさす。赤字会社を存続会社とし、黒字会社を消滅会社として、赤が黒を飲み込む合併をさすこともある。
 黒字会社が赤字会社を吸収合併することは、商法によって原則として禁じられている。ここで赤字会社とは、債務超過または不良資産をかかえた実質債務超過の会社を指している。つまり、財産的な裏付けのない「負の会社」を被合併会社として吸収合併することはできない。だけど、逆に、赤が黒を合併することは禁じられていない。合併法人である赤字会社の繰越欠損金と被合併法人である黒字会社の利益とが相殺されて、合併後の会社は税金逃れ、つまり課税回避のメリットを享受できる。ただし、税務当局から、そんな認定を受けないように知恵を働かす。うむむ、いろんな手法があるものなんですね。
 日本の監査法人は立ち遅れている。企業のトップにあまりにも弱すぎる。監査法人は、組織的な業務運営という看板を掲げながら、有力会計士を中心に実質的にはタテ割運営がなされる傾向が強い。それが「なれあい監査」という悪の温床につながっている。
 もっとも不埒なのは、粉飾決算で利益を出したことにして、多額の役員退職慰労金を手
にして安寧をむさぼっている輩だ。その責任に時効なんかない。
 なかなか読みごたえのある経済企業小説でした。経理や会計用語について解説も入っていますので、理解を助けます。といっても、私はよく理解できないところが多くありました。といっても、大企業の経理って、まるで伏魔殿のようなものなのだということだけはよく分かりました。
(2008年12月刊。1800円+税)

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