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カップヌードルをぶっつぶせ

カテゴリー:社会

著者 安藤 宏基、 出版 中央公論新社
 私は、ホカ弁はもちろん、カップヌードルもまったく食べません。いえ、駅弁は食べますし、デパ地下の弁当は買って食べるのです。でも、ホカ弁にはご飯に化学調味料がまぶしてあるんじゃないか、カップヌードルは容器から化学物質が溶け出しているんじゃないかと気になって仕方がないからです。それは、絶対にコカ・コーラを飲みたくない、マックを食べたくないのと同じです。化学調味料まみれの得体の知れないものは口にしたくありません。
 ではなぜ、この本を読んだかというと、カップヌードルがなぜこんなに売れるのか、その秘密を知りたかったからです。
 私の小学生のころ、インスタントラーメンが初めて売り出されました。メンに味をしみ込ませてあるから、お湯を注いで3分間待てば美味しく食べられるというので大人気でした。大学生の頃には寮で夜中、小さな手鍋をもってうろうろし、夜食として食べていました。
 この業界での新製品競争はすさまじいものがある。まさに消耗戦だ。勝ち残るためには闘い続けるしかない。新しい医薬品に何十億、何百億円という開発費をかける業界とは違う世界である。消費者の食に対する嗜好はどんどん多様化し、日々変化している。日新食品だけで年間300アイテムの新製品を作り出している。業界全体では毎年600アイテムになる。このように数は多いが、1年後まで店頭に残って定着するのはわずか1%に過ぎない。食品業界の中でも名うての激戦区なのだ。
 日清食品は変人をきちんと評価する。つまり、非効率を許す風土を大切にしている。変人とは一般的な常識には欠けているかもしれないが、ある特定なことに以上に関心が高く、その専門領域では誰にも負けない知識を持っているような人のこと。このような変人を社内に3割は欲しい。逆に、3割を超えると経営が成り立たなくなるだろう。
 いやはや、会社経営というのはまことに大変なんですね。常識人ばかりの会社では生き残れないというのですからね……。
(2009年10月刊。1500円+税)

巡査の休日

カテゴリー:警察

著者 佐々木 譲、 出版 角川春樹事務所
 北海道警シリーズです。
 かつては捜査本部長は所轄署長がつとめた。しかし今は、捜査本部長は必ず道警本部の刑事部長があたることになっている。しかし、キャリア組の刑事部長が捜査本部長におさまったところで、捜査の現場もノウハウも知らず、土地勘もない刑事部長に、具体的な捜査指揮など出来っこない。ただ、精神論を言うだけの存在である。つまり、名前だけ。道警本部全組織一丸で捜査にあたっているという格好をつけるための制度だった。刑事部長本人もそれを知っているから、通常の捜査会議には顔を出さない。顔を出したところで、そこで語られることが理解できるはずもなく、余計な口をはさめば、むしろ捜査の妨害になる。謙虚なキャリアはそれを知っている。ときおり、むやみに指揮したり、指示・命令を連発する捜査本部長も出てくるが、そんなとき、現場はひどく混乱する。部下たちは、事件解決よりも捜査本部長の指示に従ったという形をとることに腐心する。結果として、事件解決は遠のく。
 なーるほど、そういうものなんでしょうかね……。それでもキャリア組は警察組織には必要なんですね……。
犯人は自衛隊の出身者。それを道警は追って、横浜にまで捜査員を派遣する。
 そして、女性が狙われる。かつてのストーカー被害者がまたもやメールで犯罪予告される。道警の威信をかけて守りぬく必要がある。
いくつかの事件が発生し、それぞれの捜査がすすんでいきます。ところが、次第に、これらの事件は相互に関連を持っていることが明らかにされていきます。ここらあたりの筋立てがとても巧妙で、感心してしまいました。
 いつもながらの巧みな警察小説です。いやはや、すごいと感嘆しながら読みふけってしまいました。
 
(2009年11月刊。1600円+税)

イカはしゃべるし空も飛ぶ

カテゴリー:生物

著者 奥谷 喬司、 出版 講談社ブルーバックス
 日本人は、年間1人あたりイカを1.2キログラム(イカ3~4杯)も食べている。これほど日本人のイカ好きのため、日本列島沿岸でとるイカ40~50万トンではとうてい足りない。
 イカには、血中のコレステロールを抑えるタウリンという物質が多く含まれている。イカは非常に良質のたんぱく質を含み、低脂肪でもあって、ダイエット志向にぴったりである。
 日本のスルメイカは1968年に空前の豊漁があり、70万トンもとれた。今では、その半分以下の30万トンもとれない。
 化石のアンモナイトはイカの遠い祖先筋にあたり、イカも昔は重い貝殻を背負っていた。イカは貝類の親戚なのである。
 イカの筋肉は運動力の強いものほどよく発達していて、そのようなイカほどおいしい。運動力の鈍いものは筋力も弱くて、まずい。
 同じ重さの金と同じ値打ちのある「竜涎香」(りゅうぜんこう)と呼ばれる高価な香料のもとは、実はマッコウクジラの腹の中にたまった不消化のイカの「からすとんび」の塊なのである。いやはや、とんだことですね。
 イカは水中を矢のように泳ぐが、それだけイカの筋肉は短時間に多量の酸素を必要とする。
 イカの墨は粘液に飛んでいるので、ぷっと吹き出すと、しばらくその雲は散らばらない。これは恐らく攻撃の目を欺くダミーと思われる。
 イカは一瞬にして体色を変えるという超能力を持っている。すべての色素細胞が収縮すると、イカの皮膚には色がなくなり、全体が透明となる。
 スルメイカは1年間で一生を終える。アカイカは胴長が1ヶ月で3~4センチも伸び、1年間で体重5キロ、胴長40センチを超す巨体になる。
 イカは水族館で慣らさない限り、生きた餌しか食べない。そこで、疑似餌を水中で跳ねるようにしてあやつり、イカを誘う。
 イカのことをいろいろ知ることのできる本でした。イカ刺しってホントおいしいですよね。また呼子に行ってみたくなりました。
(2009年2月刊。1600円+税)

狙われたキツネ

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 ヘルタ・ミュラー、 出版 三修社
 チャウシェスク独裁政権下のルーマニアを舞台とする小説です。あまりに寓話的なので、ルーマニアの実情を全然知らない私には、読み取り、理解するのが難しい本でした。
 ルーマニアという国は、ひところはソ連に追随することなく、自主的な社会主義としてもてはやされていたように思います。ところが、そのルーマニアを戦後ずっと率いていたチャウシェスク大統領夫妻が宮殿の中庭であっけなく銃殺される写真を見て、やっぱりひどい独裁者だったんだろうなと思いました。
 著者のヘルタ・ミュラーは、ノーベル文学賞を2009年にもらった人です。秘密警察による国民への迫害をテーマとする長編小説を書いていたそうです。
 独裁者(チャウシェスク大統領)は、毎朝下着を新品に取り換えた。背広、シャツ、ネクタイ、ソックス、靴。何から何まで新品だ。その服は、全部が全部、透明な袋に密閉してある。なぜか?毒を撒かれないためだ。冬になると、毎朝、新品の懐炉が用意され、コートや襟巻、それに毛皮の帽子からシルクハットに至るまで、まっさらだ。まるで、前の日に着ていたものがどれもこれも小さくなってしまったみたいに……。まあ、夜、寝ているあいだに権力がどんどん成長するんだから、仕方がないのかも。うーん、なんたる皮肉でしょうか。
 独裁者の顔は、年とともに縮んで小さくなっているというのに、写真ではどんどん大きくなっている。それに、白髪まじりのカールした前髪も、写真ではますます黒みを増している。
 チャウシェスク大統領夫妻の処刑シーンの映像は、1989年暮れに世界を駆け巡った。
 東欧改革の流れの中で唯一、流血の革命を経験したルーマニアには、「革命」という言葉が空虚に響くほど、旧支配層を権力にとどまらせた。1996年11月の大統領選挙で旧共産党支配に終止符が打たれるまで、革命のけりがつくのに7年もかかった。
 ルーマニアが今どうなっているのか、日本でニュースになりませんから、まったく分かりませんよね……。
(2009年11月刊。1900円+税)

カワセミ

カテゴリー:生物

著者 福田 啓人、 出版 雷鳥社
 熊野古道のわたらせ温泉旅館(ささゆり)で早朝、カワセミに出会いました。久しぶりの邂逅です。空飛ぶ青い宝石という名前のとおり、輝くブルーでした。
大きさはスズメと同じ。青い背中、オレンジ色のお腹、赤い脚。とても鮮やかな色彩なので、見間違うことはない。構造色のため、光の当たり方や見る角度、周囲の景色で色が違って見えるので、一種の保護色である。
 構造色自体には色がなく、CDやシャボン玉、青空などと同じ。いつもは無色透明なのだが、光の干渉によって、さまざまな色彩に変化する。いつもは青色に見える背中が光の加減で宝石の翡翠色に見えることもある。そのため、感じで翡翠と書くといわれている。しかし、その逆に宝石の翡翠の名前はカワセミを見てつけられたとも言う。
 オスとメスは、くちばしの色で見分けられる。くちばしの下が黒いとオス、赤ければメス。
チーっという独特の鳴き声は、自転車のブレーキ音のように聞こえる。水面スレスレを直線的に飛び回り、スピードにのてくると、弾丸のような形に身体をすぼめ、さらにスピードを増すこともある。水辺の岩や木の枝に止まり、水中を観察し、魚影を見つけては補色を繰り返す。ときには水面の上空でホバリングをし、魚を見つけて水中に飛び込む。捕まえた魚は岩や木に叩きつけて丸のみする。
 小さいドジョウ、小エビ、小型のザリガニ、小さいカエルなど、水中生物で丸のみ出来そうなものなら何でも食べる。
カワセミの寿命は平均して2年。ただし、ドイツで15年生きたという記録もある。
カワセミの一生は一夫一婦制だが、絶対ではない。
カワセミの子育ては2週間ほど。その間にヒナは魚捕りを覚え、一人前に育ち、親のナワバリから追い出されてしまう。逆のこともある。
よくぞこんな写真が撮れたものだと思うほど、くっきり鮮明なカワセミの写真のオンパレードです。これほど素晴らしい写真をとるには、じっと我慢の日々が何日も何ヶ月間も続いたのではないでしょうか。その成果を、わずか1600円で見られるのですから、安いものです。
カワセミの百の生態写真として、大いに推奨します。
 
(2009年2月刊。1600円+税)

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