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ライオンのクリスチャン

カテゴリー:生物

著者 アンソニー・バーグ、ジョン・レンダル、 出版 早川書房
 ユーチューブでライオンと若者たちの感動の再会シーンが話題になったことから、古い本が再生したのです。ともかく、感動の本でした。ライオンの子どもの頭の良さに感心しているうちに、1時間足らずの電車があっという間に目的地についてしまっていました。まさしく至福のときに浸って、時のたつのを忘れていたのです。
 オーストラリアの若者たちがイギリスに旅して、ロンドンのデパートで買ったライオンの子を育てたあげく、アフリカの地へ連れて行って野生へ戻すという話です。といっても、話は40年前のこと。この若者たちは、私と同じ団塊世代です。ロンドンのデパート(ハロッズ)でライオンの子が売られていた、それを20代の青年が買い受けてロンドン市内の住宅街で育てたなんて、とんでもないことですよね。今では考えられないことでしょう……。
 映画『野生のエルザ』を見た記憶はないのですが、本のほうは読んで感動したことをしっかり覚えています。それにしても、ロンドンのデパートって、ライオンの子どもまで売っていたんですね。信じられません。それって、はっきり言って怖いことですよね。
 売られていたライオンの子どもは、生後4カ月でした。若者たちが飼う(買う)ことを決意したのは、周囲の人たちが皆、反対したからだったというのは、笑わせます。親から結婚に反対されると、無謀にも駆け落ちするようなものですよね。
 生後4カ月で、体長は60センチ、体重も15キロしかありませんでした。
 ライオンはネコほど冷めた感じではなく、むしろイヌのように愛想よかった。だっこされたり、抱き締められたりするのが大好きで、そのたびにヒトの首に前足を巻き付け、舌で顔を舐めてくる。性格も明るく、穏やかだった。ライオンサイズのトイレを置いた。それを汚くするたびに注意すると、そのうちにきちんと使えるようになった。自分の名前もすぐに覚え、やってはいけないことも、すぐに理解した。
 どんどん大きくなって、体力的にヒトより強くなったが、それを意識させないように努めた。
 ライオンの子は、人間に従属しているという素振りは一切見せなかった。
 ライオンは、ほかの動物よりも人間とうまくコミュニケーションをとることができる。何かにつまずいたりして気まり悪いときには、何もなかったふりをしてごまかす。
 ライオンは大家族の群れで暮らすため、とても社交的な動物である。
 人間にちょっかいを出すのが大好きで、見知らぬ人がどんなリアクションをするか、いつも試していた。ある人が動物を苦手にしているかどうかはすぐに分かり、それを逆手にとってイタズラを仕掛けた。
 ライオンは口を使ってコミュニケーションをとる。ヒトの顔を舐めて愛情を表現した。
 ライオンは不機嫌なときはすぐに態度に現れる。歯をむき出しにしたり、爪を立てたりして、とても危険である。
 生後8カ月になったときには、体重60キロあった。
 ライオンは動物園で暮らすと、平均18~20年は生きる。ところが、野生では12~15年に縮まる。それだけ、自然界は厳しい。
 ライオンの子どもを僅かな間ですが育てて、アフリカの地の野生に放したあと、再会して旧交をあたためた実話です。たくさんの写真がほのぼのとした雰囲気をよく伝えてくれます。
 それにしても、アフリカの大草原で、昔馴染みとはいえ、ライオンと人間が久しぶりに再会して抱き合ったというんですよ。もちろん、人間は丸腰です。大人のライオンに顔中を舐めまわされるなんて、どうでしょうか。私には、とてもそんな勇気はありません。一度、ユーチューブで動く映像を見たいと思いました。
 
(2009年12月刊。1400円+税)
 日曜日の朝、おだやかな春の日差しを浴びて、チューリップがそれはそれはみずみずしく輝いていました。そっと近付いてカメラを構えます。私のブログに写真をアップしていますので、ぜひのぞいてみてください。春はやっぱりチューリップです。数えたら180本咲いていました。まだまだ全開ではありません。もう少しです。

夜明けの橋

カテゴリー:日本史(江戸)

著者 北 重人、 出版 新潮社
 江戸の町人生活の哀歓を見事に描いた短編小説集です。
 藤沢周平というより、山本一力の作風を思わせますが、またどこか違います。
 日照雨は、そばえと読む。狐雨ともいうのでしょうか。降りそうもない空から、ふいに雨が降るという言葉が続いています。
 縹組、縹渺。はなだぐみ、ひょうびょう。どちらも読めない漢字です。虚空の心を持つという意味のようです。したがって、縹色とは空色をさします。うへーっ……。
 江戸で旗本奴(はたもとやっこ)が武士の男伊達(おとこだて)を競っていたころ、武士を捨てて町人へ降りかかった災難。我慢に我慢を重ねますが、それにも限界があり、ついに切れてしまうのです。
 隅田川に端をいくつか架ける工事が進んでいます。競争なので、ねたんだ連中が嫌がらせを仕掛けてくるのです。それにもめげずに橋を作り上げます。今も名前の残るお江戸日本橋です。
 江戸の街並みができあがってまもないころの武士や町人たちの日常生活が実感をもって伝わってきます。山田洋次監督の映画『武士の一分』を思い出しました。
 著者は山形県酒田市の生まれだそうです。となりの鶴岡市は藤沢周平の故郷です。私も、弁護士になりたてのころ、鶴岡市には何回となく通いました。灯油裁判の弁護団の末席を汚していたのです。恥ずかしながら何の働きもしませんでしたが、大変勉強にはなりました。
 ところが、山本周五郎賞の候補になったものの、61歳の若さで急逝してしまったのでした。胃がんだったようです。本人もどんなに残念だったことでしょう……。
 がんの再発を聞かされ、ベッドのなかで深刻な症状を感じていたはずの状況で、これらのしっとりした短編を書いたというのは、すごいことです。本当に残念です。ご冥福を祈るばかりです。
 
(2009年12月刊。1500円+税)

まねき通り十二景

カテゴリー:日本史(江戸)

著者 山本 一力、 出版 中央公論新社
 江戸時代の下町の人情話なら、この人ですね。いつもながら、しっとり、じっくり、味わい深い話のオンパレードです。読みながら、ああ、生きてて良かったなと思わせます。ほんわか、まったり、じわーんと来る話が繰り広げられます。
 こんなストーリーを思い描くというのは、著者のどんな体験にもとづくのか、一度たずねてみたいという気もします。発想が日常的であり、かつ、奇抜だと思うのです。
 オビに書かれている言葉が、この本の山本一力ワールドを端的に表現しています。
 ウナギに豆腐に青物、履き物に雨具、一膳飯屋、駕籠宿―14軒の店が連なる、お江戸深川冬木町、笑いと涙を描く著者真骨頂の人情物語。
 そして、裏表紙にもありました。
 こつこつ働く大人たち。のびのび育つ子どもたち。家族にも、商いにも、大切なのは人のぬくもり。
 この、何とも言えない、ほんわかとした、あったかい温もりの山本一力ワールドをまだ知らない人は、一度ぜひ騙されたと思って浸ってみることをお勧めします。きっと、私をうらむことはないと思いますよ。信じるものは救われますからね……。
(2009年12月刊。1500円+税)

小太郎の左腕

カテゴリー:日本史(戦国)

著者 和田 竜、 出版 小学館
 ときは戦国時代。種子島から入ってきた鉄砲が大量に使われ始めています。
 火縄銃による試合があります。火縄銃は連射を旨とすれば、1分間に5発の弾を撃つことが可能だ。小太郎は、これをやった。もはや速いという程度のものではない。ほとんど無造作ともいうべき所作で、瞬く間に玉薬を銃口に流し込み、弾を押しこみ、火皿に口薬を盛り、火ぶたを閉じた。火ぶたを閉じるや、すぐさま鉄砲を構えた。火ぶたを切るや、引き金を引いて激発させた。
 小太郎は、実は雑賀(さいが)衆の一人であった。雑賀衆とは、現在の和歌山市を中心とする一帯に猛威をふるった鉄砲傭兵集団である。鉄砲についてまだ懐疑的な当時の武将たちも、その雑賀衆の鉄砲における精兵ぶりには舌を巻き、彼らを敵に廻すのを極度に恐れた。
 雑賀衆は、五組の代表者が合議のうえで衆としての方針を決め、雑賀五組に住む者たちは、その決定に従うという形態で運営されていた。とはいえ、五組の代表者が雑賀衆を支配しているわけではない。五組の代表者は各村々の決定事項を持ち寄るため、惣国の構成員は決定された事柄に当事者意識を持ち、それもあってその結束は比類ないものとなった。そして、雑賀衆として敵と認めた一国には、一丸となってこれに当たった。
 えいえい、おう。
 この叫び声は、漢字で書くと、曳々、応だそうです。初めて知りました。
 『のぼうの城』も傑作でしたが、この本も実に読ませます。たいした腕前です。感心しながら一気に読みとおしました。
 
(2009年12月刊。1500円+税)

脳ブームの迷信

カテゴリー:人間

著者 藤田 一郎、 出版 飛鳥新社
 私の子どものころ、味の素をふりかけると頭が良くなる、身体にいいというのが大流行しました。それまでは耳かき一杯だったのが、サッサという音とともに大量にふりかける、味が良くなるだけでなく、多いほど身体に効果があるということでした。
 しかし、この本はそれを二重に否定しています。驚くべきことに、第一に味の素は、そんな広告・宣伝をしていないのというのです。本当でしょうか……。私には信じられませんでした。
 第二に、グルタミン酸を外部から脳に取り込むことが脳の情報処理に役立つかと言うと、答えはノーだというのです。これは私にも理解できます。ギャバも青魚(DHA)も、食べた後脳細胞に到達するのは難しいのです。経口摂取しても脳にまでは届かない。
 では、今はやりの脳トレはどうか?
 簡単な計算問題を速く解いていると、血流量が増加した。しかし、この血流量の増加と脳の機能の工場とは別の話である。なーるほど、ですね。
 英語の熟練度が高い人ほど、英語文法の処理に関わる前頭葉領域における活動領域は小さくなる。
 ある物事の情報処理を脳がくりかえるうちに、脳のなかに効率的に情報処理する仕組みが生まれ、より少ない神経細胞集団で情報処理をすることができるようになる。
 脳トレ・サプリは脳に効果のないことを警告する、脳科学者による100頁にも満たない薄い本ですが、面白くて一気に読みました。
 
(2009年11月刊。714円+税)

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