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ロボット兵士の戦争

カテゴリー:アメリカ

 著者 P.W.シンガー、 NHK 出版 
 
 クリックひとつで戦闘準備完了。戦場の3Dとは、危険(デンジャラス)、汚い(ダーティー)、単調(デュル)。3Dの環境を嫌がらず、効率よく任務を実行するのがロボットだ。人類はハイテクをつかって、リスクのない戦争をつくり出すことができるのか?
これはオビにある文句です。どうでしょうか、戦場をロボットで埋め尽くせるのでしょうか・・・・。
 無人偵察機プレデターは、2001年にはごくわずかだったが、2008年には5300機に達する。24時間もの滞空が可能なプレデターが発見・殺害したイラク武装勢力は、年間2400人にのぼる。このプレデターは、重さ510キロ、滞空時間24時間で、7900メートル上空を飛行できる。プレデターは一機450万ドル。ほかの軍用機に比べると割安。
イラクやアフガニスタンの上空を飛行する無人飛行機はアメリカ本土・ネバダ州にいるパイロットが操縦している。 うへーっ、ゲーム感覚で人殺しをしているんですね・・・・。
地上ロボットは、2003年のイラク侵攻作戦のときはゼロだったが、2008年末には1万
2000台がイラクで使われていた。戦争用ロボット事業は、年間60%も成長していて、
2008年には国防総省(ペンタゴン)との契約額が2億8600万ドルに達し、さらに3000台のマシンを供給することになった。2008年現在、イラクの地上で合計22種類のロボットシステムが活動している。
 イスラエルは、まもなくヒズボラを破ることはできないと気がついた。ヒズボラは国でもなく、イスラエルの国防予算の1%しか兵器等につかえる資金をもたない。しかし、ヒズボラは、攻撃前にイスラエル軍のコンピューターに侵入できたし、軍の無線システムにも侵入した。イスラエルのケータイ・ネットワークにまで入り込み、戦場にいるイスラエル軍の司令官や兵士が本土にかける電話を盗聴し、無線のコードネームなどの個人情報を手に入れた。
 ヒズボラは、戦力や規模という国家の強みを帳消しにする戦略を考え出し、独自のハイテクゲームで国家を負かすことさえできることを証明した。
 アルカイダは中央集権型の集団から世界中に「細胞」が広がる世界的な運動に進化している。テロリストは、新技術をさらに斬新かつ独創的につかって新兵を補充している。
 戦争ポルノは、戦闘の厳しい真実を隠しがちである。ほとんどの視聴者は、知人や同じアメリカ人がうつっている戦闘の映像を本能的に避ける。だが、名もない敵が死ぬ映像なら、平気で見る人が多い。
 戦争は、決して簡単にはいかない。戦争とは、そもそも複雑で厄介で予測がつかないものだ。たとえ無人システムが人間にとって代わることが増えても、この現状は変わらないだろう。無人システムによる誤認攻撃は、民間人の命を犠牲にするだけでなく、味方部隊に対しても起こりうる。
つまり、兵士を完全にロボットに代えることは出来ないのです。ロボット兵士の研究が進むほどに、誤爆の危険も増大すると思います。戦場のロボット化の実情を知ることができました。
(2010年7月刊。3400円+税)
 雑誌をめくっていたら、ネガをパソコンに取り込める器具が2万円で売られているのを見つけました。大量のネガアルバムをかかえて始末に困っていましたので、早速、通販に申し込みました。
 ネガを1枚1枚、手送りでSDカードに取り込んでいきますから、時間がかかります。それでも大学生時代、司法修習生時代そして結婚する前後のなつかしい写真が目の前にあらわれ、至福のひとときでもありました。
 今や、デジカメ時代になってしまいましたので、フィルムカメラ時代のネガは捨てるしかないかと、あきらめていました。こんなに便利な器具を発明したひとは偉いです。大いに感謝します。

実見・江戸の暮らし

カテゴリー:日本史(江戸)

 著者 石川 英輔、 講談社 出版 
 
 江戸時代の日本は、どんな社会であったのか、幸いなことに、たくさんの絵が描かれているので、今の私たちにもかなりイメージをもつことができます。そうは言っても、もちろん、専門家による解説は不可欠です。
 江戸時代の女性は、結婚すると眉を剃り落とす地方が多かった。しかし、結婚しても、若いうちは眉を剃らない人がいたし、東北地方や長崎のように、眉を落とさない地方もあった。
未婚の娘にとって、振り袖の着物は、おしゃれ着であって日常のものではなかった。帯は、昔の人は、好きなように結んでいる。未婚、既婚を問わず、いろんな帯の結び方をしている。現代より、大きく、派手に結んでいる。
家で着物を着るのに裾を引くような着付けも珍しくはなかった。町人女性の風俗としても、裾を引くのは特別なものではなかった。当て布だけ、つけかえればいいようになっていた。
 江戸時代の家屋の室内には、家具がほとんどないという特徴がある。
 なーるほど、畳の上にソファーとか机とかはないのですね。もちろん、今のようにテレビもステレオもありませんしね。
 裏長屋は集合住宅である。現代のアパートと同じく、全体の入り口は一つしかなく、そこを閉め切れば出入りができなくなる。それが木戸だ。木戸の上の横板に、住民が表札をかねた看板を出していた。口入れ屋、祈祷師、山伏、医者、儒者、尺八の師匠、灸すえ所、易者、糊屋など、さまざまな職業がある。
江戸の庶民の食事が、飯と味噌汁とたくあんだけの素朴な内食で暮らしていたとは、とても思えない絵がたくさんある。
 江戸時代は、平和な時期が長く続いたおかげで料理も発達した。そのことは、さまざまな料理本が出ていたことでもわかる。
江戸の一般庶民は、あまり複雑な料理をしなかった。あるいは、出来なかった。なぜなら、住民の大多数の住む長屋の台所の設備が単純すぎたから。
 江戸では、外食も盛んだった。町内の半分は飲食店だった。屋台もたくさんあり、露店もあった。江戸でとにかく多かったのが、そば屋である。
 幕末期の江戸には、どんなに少なく見積もっても、番付に出るほどの料理茶屋が300店はあった。
八代将軍の徳川吉宗が日本の人口調査を行った享保11年(1726年)に、日本の人口は2650万人だった。ただし、正確には、3100万人とみられている。江戸時代の日本の総人口は3000万人から3200万人で安定していた。
 そして、江戸時代には、100万人から110万人が住んでいた。ところが、江戸府内の半分は農村だった。江戸の全部に裏長屋があったわけではないのですね・・・・。
 江戸にはたくさんの行商人がいた。まるで動くコンビニかスーパーマーケットのように、金魚、スズムシ、薬、メガネなど・・・・。今より、かえって便利だったかもしれない。
 江戸の庶民の日常生活がたくさんの絵とともに紹介されています。具体的なイメージをもって江戸の人々の生活を知ることの出来る楽しい本です。
 
(2009年12月刊。1400円+税)
 フランス語の授業を受けているときのことです。フランス人の講師から、なぜ日本人は社会問題でデモしたりしないのかという問題が出されました(もちろんフランス語で)。フランスでは、いま、サルコジ政府が年金受給年齢を60歳から引き上げようとしていることに対して、全国で何十万人という人の参加するデモ行進や集会が開かれています。ロマ(ジプシー)追放に対する反対の集会も起きています。
 日本では、そういえば集会やデモは見かけませんよね。日本人の生徒たちは顔を見合わせるばかりです。40年前に学生のころは、よくデモ行進もしていたのですが……。やっと私は、年越し派遣村のことを思い出しました。
 すると、講師が、沖縄ではやっているじゃないかと指摘しました。そうなんですよね、沖縄ではアメリカ軍基地反対で盛り上がっています。本土の私がダメなのですね。物言わぬ羊の群れになってしまたのでしょうか、私たち……。

『偽史と奇書の日本史』

カテゴリー:日本史

著者:佐伯 修、出版社:現代書館
 この本を読むと、日本人は古くから歴史を愛する一方で、歴史の偽造も好む民族なのではないかという気がしてきます。
歴史を愛するという点では、佐賀の吉野ケ里遺跡が発掘されるや、年間数十万人もの見物客が押し寄せますし、青森の三内丸山遺跡もすごい集客力を持っています。
そして、邪馬台国はやっぱり九州にあったという本を立て続けに2冊読んで、九州説を信奉する私は心躍る思いがしています。やっぱり、日本の文明は九州の地で発祥したのですよ・・・。
 偽書といえば、私にとっては、まず第一に戦国時代の裏話を描いたという『武功夜話』が衝撃的でした。なにしろ、昭和34年(1959年)に発見されたというものです。戦国時代の先祖の体験にもとづいて江戸時代に書かれたというものの、明治や昭和の知識にもとづいて書かれた記述があるという指摘があり、後世の偽作であることは間違いないようです。ところが、あまりにもよく出来ているため、これを事実としてたくさんの小説が書かれています。
 たとえば、津本陽『天下は夢か』、遠藤周作『男の一生』、秋山駿『織田信長』などです。私が最近読んだ本にも、この『武功夜話』を史実とする前提のものが何冊もあります。そのたびに、もっと勉強してよねと疑問を感じるのです。
 『武功夜話』を史実だとして紹介するのなら、少なくとも、これらの偽書説についての合理的な反論を示すべきではないでしょうか。
 もう一つは、『東日流外三郡誌』です。「つがるそとさんぐんし」と読みます。戦後も戦後、1975年(昭和50年)に、青森県五所川原市の和田氏宅の天井裏から古文書が発見されたという触れ込みでした。
古代の東北に、西の邪馬台国や大和朝廷とは別の王国があったという内容です。今やとんでもない偽書だったことは明らかですが、小説家の高橋克彦などが、これを事実として小説を書いたりして大反響を呼んだのでした。
 まことに日本人は古来より歴史を愛する民族なのだと思わせる、面白い本です。
(2007年4月刊。2300円+税)

北帰行

カテゴリー:警察

著者:佐々木譲、出版社:角川書店
 いつもの警察小説ではありませんでした。長編クライム・サスペンスと銘うった小説です。
 ロシアから送りこまれたヒットウーマンが大活躍します。といっても、次々にピストルで男たちを殺していくのを活躍と名づけるのは、少し気が引けます。
 暴力団がもちろん登場します。六本木を縄張りにしています。このところ、我が福岡でも拳銃発射事件が相次ぎ、しかも犯人もピストルも検挙・押収されていませんので、治安上の不安がつのります。
 警察には、もっと頑張ってほしいですし、私たちも、本気で暴力団依存体質から脱却すべきではないでしょうか。
 そのためには、大型公共土木工事優先の政治を転換する必要があります。大型公共土木工事が暴力団の喰いもの、最大の資金源であることを知らない市民が多すぎると思います。マスコミは、そのことをもっと大々的に、かつ、連続的に報道すべきではないでしょうか。
 先日の西部ガスへの連続発砲事件についての解説記事のなかで、工事受注額の1~5%を暴力団へ上納するシステムがあり、西部ガスがそれを拒否したことによる嫌がらせだという指摘はそのとおりだと思います。そんなこといって、おかしいでしょ。これは、みんなで声をそろえて、おかしい、許せないと叫ばないと、いつまでたってもなくならないと私は思います。
 だって、誰だって、自分一人がピストル向けられたら、何も言えませんからね。ともかく、この不景気な世の中で、ひとり暴力団だけがぬくぬくとしているなんて、とんでもないことですよ・・・。
 新潟、稚内に巣喰うコリアン系のロシアン・マフィアも脇役として登場してきます。
 今回は警視庁組織犯罪対策部は、後手後手にまわっていて、ほんの刺身のツマとしてしか登場しません。
 そんなことじゃあ、困るんだよな・・・。そう思わせる内容でした。
 車中で読みふけっているうちに終点に着いてしまいました。まだ読み終わっていませんでしたので、喫茶店に入って好きなカフェラテを飲みながら読了してしまいました。
 だって、結末がどうなったのか知らなくては、次へ仕事への頭の切り換えができませんからですね・・・。
(2010年1月刊。1800円+税)

南アフリカらしい時間

カテゴリー:アフリカ

著者:植田智加子、出版社:海鳴社
 しっとりした雰囲気に浸ることの出来る本です。列車に乗って1時間で読みきれず、目的地に着いてから、しばしホームで読みふけって、なんとか読了しました。
 先に「インビクタス」(NHK出版)を読んだばかりでしたので、27年間の囚人生活を過ごしたマンデラ大統領に親近感を抱いていたところ、なんと著者はマンデラ氏を鍼治療していたというのです。しかも、大統領になる前からのことでした。マンデラ氏の早朝散歩にも一緒につきあっていたというのです。
 マンデラ氏だけではありません。タンボ氏そして、シスルも、著者の患者だったというのですから驚きです。日本人女性が、南アフリカでも鍼灸師として活躍していたなんて、まったく信じられないことでした。
 この本は、日本人女性が妊娠して出産し、一人で子育てする生活が淡々と描かれています。いえ、実は「淡々」どころではありません。「子殺し」がよく分かる心境が語られているのです。でも、それに待ったをかけたのが現地の人々でした。アパルトヘイトに身をもって反対した人々たちが、さりげなく著者の子育てを支え、また、子だくさんのなかで育ちあっている子どもたちにも助けられたのでした。
 南アフリカの治安の悪さ、そしてストリート・チルドレンの子どもたちの様子も紹介されています。
 10年ほど前に雑誌に連載されていたものが最近になって単行本化されています。
 この本に登場してくる長男さんは、今はどこで何をしているのでしょうか・・・?
(2010年4月刊。1800円+税)

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