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日本人が知らない世界のすし

カテゴリー:社会

 著者 福江 誠、 日経プレミアシリーズ 出版 
 
 この夏、フランスに出かけたときパリだけでなくリヨンそしてディジョンにまで回転寿司の店があるのを知って驚きました。寿司のヘルシーさをフランス人が好んでいるようです。
今、アメリカには1万をこえる日本食レストランがある。アメリカは日本を除く世界の日本食の3分の1を占める日本食先進国だ。オーストラリアのシドニーには、市内に1000件もの寿司店がある。フランスも同じく1000店の日本食レストランがあり、パリに700店ある。いま、全世界で寿司を食べることのできるレストランは5万店をこす。回転寿司の先進地は、アメリカではなく、イギリスのロンドンだ。日本の寿司屋ではニンニクは臭いがつくため避けられているが、海外ではそれが必須となっている。海外では、きつい酢の味わいは好まれず、押し寿司のような甘い酢加減の店が多い。
海外では、突飛で派手な外見が「目にも楽しい」と好まれている。日本人の感覚とは違って、シンプルに美しいものよりも、ゴテゴテと華やかに楽しいものが受けている。
フランスの寿司屋の経営は9割以上がベトナム系中国人。
海外で寿司店や日本食レストランを経営するうえでの心構えとして必要なのは、自分の哲学を持っていること。寿司の勉強は誰でも出来る。ただし、なぜその町で寿司を食べさせたいのかという根本が必要だ。店のコンセプトをはっきりさせないと長続きしない。
 海外では寿司職人の方がニーズがある。給料も、板前より2倍もいい。カウンターでお客とやりとりしながら仕事をするので、チップもバカにならない。お客は寿司職人に名前を覚えてもらうのがうれしい。海外で寿司職人として成功する秘訣の一つは客の名前を覚えること。海外で生きていくには寿司の技術と知識だけでは足りない。現地の言葉と人々の考え方への理解がないと、店を経営するのは難しい。寿司職人として雇われるのなら、一定の語学があれば足りるが、経営者として人を使う立場になると、スタッフの考え方まで知っていた方がいい。
 日本の現状は、回転寿司店が6000店舗で6000億円の市場。テイクアウト寿司店も同程度の市場をもつ。回転寿司専門店(立ち店をふくむ)と三分の一ずつ市場を分けあっている。
東京寿司アカデミーには、2ヶ月間で短期集中して学ぶコースと、1年かけて英語の接客技術や海外での店舗経営まで学べる寿司シェフコースがある。外国人も入学するが、その9割は韓国人である。いい魚を見分ける目利きの力と、包丁の扱いにはある程度の経験が必要だが、繰り返し練習すれば、誰でも必ず上達できる。
 寿司はカウンター越しの対面商売という、「行為そのものを消費する」独特の日本文化だ。世界には、こうした食文化・習慣はないので、カウンター商売が非常に新鮮に映る。
 世界のなかでの日本の寿司の置かれている状況がよく分かりました。カラー写真で、見た目も楽しいカラフルな巻き寿司がたくさん紹介されていて、つい手が出そうになります。20年ほど前、シカゴの高層ビルにアメリカのローファームを訪問したとき、昼食として出た寿司がびっくりするほど美味しかったことを思い出しました。ああ、寿司が食べたくなりました・・・・。
(2010年8月刊。850円+税)
 先日のフランス語検定試験(準1級)の結果が届きました。自己採点とぴったり同じ76点で合格していました。基準点が65点で、合格率26%です。ペーパーテストはこれで6回ほど合格したことになります。問題は面接試験です。時事問題をフランス語で話せなくてはいけません。とても難しいのです。これまで2回しか合格できていません。1月下旬まで、集中的に勉強するつもりです。
 チョコさんは長野にある「ちひろ美術館」に行かれたようですね。うらやましい限りです。私は東京の美術館には行ったことがありますが、まだ長野の方には行ったことがありません。ぜひ信州の高原にある美術館めぐりをゆっくりしたいものだと思います。
 本年は単行本を560冊読みました。チョコさんのような励ましがあると、書きつづる勇気が湧いてきます。いつも、ありがとうございます。

カントリー・オブ・マイ・スカル

カテゴリー:アフリカ

 著者 アンキー・クロッホ、 現代企画室 出版 
 
 タイトルからは何の本やらさっぱり分かりません。南アフリカで続いていたアパルトヘイトの被害者と加害者のあいだで「和解」を成立させようという大変地道な努力がなされているのです。血には血を、ではいつまでたっても社会に平和は来ない。平和と秩序を回復するためにはどうしたらよいのか、真摯な努力がえいえいと続けられてきました。その困難な状況が明らかにされています。
今の日本では、死刑制度賛成が85%、圧倒的です。複数の人を殺したら、即、死刑にせよというムードにあふれています。本当にそれでよいのでしょうか。死刑制度は決して犯罪を抑止する効果をもたないし、「犯人」を死刑にしたからといって被害者が生きかえるわけではありません。遺族の「報復感情」に国は易々と応じるだけで、本当に責任を果たしたことになるのか、みんなで真剣に議論すべきだと思います。裁判員裁判で相次いで死刑判決が出た今こそ、もっともっと根本的な議論をして、深めるべきではないでしょうか・・・・。
スカルとは頭蓋骨のこと。南アフリカ内外に人骨が無数に埋められている現実がある。
1994年4月、南アフリカで1人1票の全人種参加の総選挙が実施された。そして、ネルソン・マンデラが初の黒人大統領に就任した。そして、1995年、国民統合和解促進法によって真実和解委員会(TRC)が設置された。1996年4月から活動を本格化させたが、その中心が公聴会であり、南アフリカ全土に実況中継された。
 このとき、加害者は、自らの罪を詳しく述べたてることと引き替えに、責任を問われないことになった。嘘をつけば、刑事訴追の対象となる。だから、虐殺に加担した警官は、誰の命令によって、誰を、どのように拉致し、どのように拷問し、どのように殺害し、どのように遺体を処分したか、正直にすべてを語ることになる。そして、被害者(遺族)には、真実と若干の保証金と引きかえに加害者を許すことが期待される。
 南アフリカの白人といっても、アフリカーナとイギリス系白人(ユダヤ系をふくむ)に分かれ、両者には、心理的な距離があり、インテリをのぞくと通婚もない。黒人を弾圧する警察機構の担い手はアフリカーナであり、黒人労働者を殴打する工場長も農場主も、その多くはアフリカーナであった。イギリス系白人は、汚れ仕事をアフリカーナに押しつけつつ、白人としての特権は手放さず、「私はアパルトヘイトにはずっと反対だったんです」と語る。きわめて偽善者である。
 そして事態は単純ではない。加害者が白人だとは限らない。警察に協力し、同胞に対して歯止めのない残虐行為を働く黒人がいた。
 さらに、犠牲者は活動家だけではない。「密告者」のレッテルを貼られ、活動家に焼き殺された無実の人々がいた。解放運動の爆弾闘争によって生命を失った白人市民がいた。白人警察官に殺される白人の共産主義者もいた。拷問による自白情報によって同志が居場所を知られ、無慈悲に虐殺されることもあった。
公聴会では、拷問したものと拷問された者が対面する場面が何回もあった。 
 アパルトヘイト犯罪のなかで地位の高い政治家たちが責任をとらず、現場の警察官の逸脱のせいにしようとした。自己の罪に向きあって人格が破綻していく殺人者の方にこそ、人間としての誠実さが感じられることがあった。
 正常な社会では、子どもがいるべき時刻に家にいなければ友達の家にまだいるかもしれないと考えられる。しかし、アパルトヘイトの下では、警察署に行って捜し、次に刑務所、それから病院、そして最後には死体保管所へ出向く。なんという残酷な現実でしょうか。 真実和解委員会が調査していた期間に2500人、年に100人もの囚人が絞首刑に処せられた。その95%が黒人であり、判事は全員が白人だった。うむむ考えさせられますね。
上下2段組で400頁をこす大著です。内容もぎっしりと重味があります。思わず目をそむけたくなる真実が語られています。でも、目をそらすわけにはいかないのですよね。
(2009年2月刊。1600円+税)

村人の城、戦国大名の城

カテゴリー:日本史(戦国)

 著者 中田 正光、 洋泉社歴史新書 出版 
 
 北条氏照(うじてる)の領国支配と城郭。こんなサブタイトルがついています。氏照は、今の八王子に城を構えていたようです。そして、村人の城のほうは有名な黒沢明監督の『七人の侍』をイメージするといいとのこと。この映画は時代考証がよく行き届いていて、戦国期の村人の生活や風習が実によく再現されているそうです。
 北条早雲は、実は本人は「北条」を名乗ったことがない。北条を名乗ったのは、二代目の氏綱から。北条早雲は、江戸時代につくられた名前である。実際に呼ばれていたのは、伊勢盛時(もりとき)とか、伊勢宗瑞(そうずい)であった。うへーっ、そうなんですか・・・・。
早雲は一介の素浪人から一国の主にのし上がったというのは間違いで、実際には歴とした家柄であり、中央政府で将軍に仕えて、「申次(もうしつぎ)」という外部の仲介役をつとめていた役人だった。なんと、なんと、思い込みというのは恐ろしいものですね。
滝山城のかつての雄姿が図解されていて、よくイメージが伝わってきます。
 戦国時代、平百姓でも苗字をもった者がいたことは既に知られている。日本人は、昔から識字率も高く、名なしの権兵衛を嫌ったのですね。
武田信玄が信州志賀城を攻め落としたときのこと。城内の兵を攻め立て三千人を討ちとり、その首を志賀城の周りにことごとく晒した。そして城内に残された婦人、子ども、老人を生け捕りにし、意気揚々と甲州へ引き上げた。帰陣してから人身売買市を開き、2貫、3貫、5貫、10貫という値段をつけて売りさばいた。要するに、身代金を得る場になった。捕らわれた者の親類が身代金を支払って生け捕りにされた人たちを買い戻した。これが当時の戦いの現実だった。相手を殺し、領主から名誉の感状を受けるより、生け捕りにして身代金を獲得した方が得だということ。殺さないで身代金を手にすれば、現実の生活は豊かになっていく。
 当時の合戦の実態は、相手の領国に侵入して田植え時の苗代を踏みあらしたり、収穫時の稲を刈り取って強奪することが多かった。さらには、民家に押し入って金目になるものを手当たり次第に盗み、奪い去った。
 当時の戦場は、うまくすれば人身売買で身代金を手に入れられる、大金が入ってくるうれしい稼ぎ場でもあった。二男三男たちが家長(長男)から離れ、積極的に戦場に赴いていった背景には、こうした事情があった。うむむ、そういう実情があったのですか。『七人の侍』も、そんな前提でみると、また認識が深まりますよね。
 ルイス・フロイスは、『日欧文化比較』のなかで、「日本では、ほとんどいつも小麦や米や大麦を奪うために戦っている」としている。つまり、当時、合戦する狙いは食糧を奪うことにあるといっているのです。
 一乗谷の朝倉氏の支配は100年間続いたが、伝染病の記録がない。いかに一乗谷が衛生的に管理されていた都市であり、住民がすぐれた衛生思想の持主であったか理解できる。城内は馬小屋に至るまで常に清潔が保たれていた。私も、朝倉の一乗谷に行ったことがあります。戦災にあって消滅した町屋が復元されていて、当時の生活を実によくしのぶことが出来ます。
 中世の城が図解され、とても分かりやすく読める本です。
(2010年4月刊。840円+税)

ハーフ・ザ・スカイ

カテゴリー:アジア

 著者 ニコラス・D・クリストフ、 英治出版 
 
 世界のなかで女性の実情と展望を語った本です。そこで明らかにされる実情はあまりに暗く、悲惨です。読みすすめるのが辛くなる本でした。それでも勇気をふるって最後まで読み通したのですが、最後に元気の出る話があって少しは救われた気になりました。
逆説的なことだが、強制売春の数が飛び抜けて多いのは、インド、パキスタン、イランといった、もっとも束縛が強く社会の性規範が保守的な国々である。こうした社会では、若者はめったに恋人と寝ることはなく、売春婦で性的欲求を満たすことが容認されている。上流階級の少女は純潔を守り、若者は売春宿で満足を得るというのが社会の暗黙の了解になっている。
売春宿には、ネパールやバングラディシュ、インドの貧しい村から人身売買された奴隷の少女が送られてくる。19世紀の奴隷制との最大の違いは、現代の多くが20代後半までにエイズで死亡すること。
オランダは、2000年に、それまでずっと黙認されてきた売春を公式に合法化した。売春婦に健診と労働チェックを実施することによって未成年者と人身売買犠牲者の売春業への流入を阻止しやすくなると考えたからだ。
 スウェーデンは、1999年に逆のアプローチをとった。性サービスを買うことを処罰の対象とした。売春婦が身体を売ることは処罰の対象とはしなかった。これは、売春婦を犯罪者というより、被害者だと見ることにもとづく。その結果、スウェーデンでは、売春婦は5年間で41%も減り、セックス料金も下落した。
 オランダでは、非合法の売春婦は増え、性感染症やHIVも減ってはいない。
 難しいのは少女を売春宿から救い出すことではなく、売春宿に戻らせないこと。売春宿の多くの少女は、メアンフェタミン依存症になっている。
多くの売春婦は、自由に行動しているわけでなく、奴隷にされているわけでもない。その両極端のあいだのどこか、どちらともつかない世界の中に生きている。
人が神の名の下に行うことで、初夜に出血しなかったという理由で少女を殺すほど残酷なことはない。国連人口基金は、毎年5000件の名誉殺人があると推定する。名誉殺人の逆説は、もっとも厳格な道徳的掟をもつ社会が殺人という最大の反倫理的ふるまいを許容するところにある。
WHOは、2005年に、53万6000人の女性が妊娠中または出産で命を落としたと推計している。妊産婦の死亡の生涯リスクは、貧困国では欧米より1000倍も高い。ところが貧困国でも妊産婦死亡率の高さは不可避というわけでもない。スリランカでは女性の89%が読み書きできることが妊婦による死亡率を低めている。スリランカを見れば、妊産婦の死亡率を低下させるためには、家族計画、結婚を遅らせること、また蚊帳も役に立つことが分かる。
就学率を高めるうえで費用対効果の高い方法の一つは、寄生虫の駆除だ。寄生虫は年に13万人を死亡させる。貧血や腸閉塞が主因であり、貧血は月経(生理)のある少女に影響を与える。高校に通う少女を増やすためには生理(月経)の管理を手助けすること。
ルワンダは、コスタリカやモザンビークと同じように、国会の全議席の3分の1を女性が占める。アフリカでもっとも腐敗が少なく、成長がもっとも速く、最良のガバナンスをもつ国である。
 ルワンダで起きた大虐殺の結果、人口の7割を女性が占めた。国は女性の動因を余儀なくされた。男性は虐殺で信用を失った。女性のほうが虐殺への関与が少なく、殺人罪で投獄された加害者のうち2.3%しか女性はいなかった。女性のほうが責任感があり、虐殺行為に傾きにくいという認識が虐殺後に広く確立し、女性にいっそう大きな役割をまかせる用意が国全体に出来上がっていた。
 日本の株式市場で、女性社員の割合ももっとも高い企業は、もっとも低い企業と比べて50%近くも業績がいい。それは、女性を昇進させるほど革新的な企業はビジネスチャンスへの反応でも一歩先んじている。経済を活性化させたいなら、人材の金脈を埋もれさせ開発せずに放っておく手はない。
アメリカでは、今、ハーバード大学、プリンストン大学、マサチューセッツ工科大学などの学長が女性である。このほか、フォード財団とロックフェアー財団の会長も女性だ。
全世界の人口の半分を占める女性を活用してこそ地球は救えるという呼びかけがなされています。私も賛成します。いろいろと考えさせられることの多い本でした。
(2010年10月刊。1900円+税)

土の科学

カテゴリー:生物

 著者 久馬 一剛、 PHPサイエンス・ワールド新書 出版 
 
 世界の土が紹介されています。動物や鳥が土をなめたり、食べたりするのはテレビで見て知ってはいましたが、人間も土を食べるところがあるのですね。私にとって、日曜日の午後からの庭づくりは土に触れあう貴重な機会です。昔の子どものころの泥んこ遊びを思い出して気分転換に絶大なる効果があります。不耕起農法というものがあり、とても良いということですが、私はせっせと庭を耕し、EM菌を混ぜた生ゴミ処理の産物を庭に投入し、またコンポストで落ち葉や枯れ草を肥料にしたものを混ぜ込んでいます。おかげで庭の土は黒々、ふかふかしています。そのためミミズは繁盛し、モグラが縦横に地下に道を掘り、ヘビが庭を徘徊しています。ヘビとの共存は困難な課題です。
 日本の水田面積は、昭和40年ころには300万ヘクタールをこえ、国土の総面積の9%を占めていた。ところが、今では、イネの作付面積は200万ヘクタールにまで減少している。日本の米消費量は減少し、100年前に1人1年間に130キログラムになっている。
 稲作技術は進歩して、単位面積当たりのイネ収量は2倍をこえた。
 イネを畑で連作すると、やはり障害が起きる。しかし、水田は、水を張る湛水時と水を落として畑の状態にするというように交替でつかうため、連作障害の原因となる病原性生物がはびこるのを妨げている。そのため水田の稲作に連作障害は起きない。
 うへーっ、そういうことだったんですね。今、わが家のすぐ下の田んぼは作り手が老齢のために耕作が放棄されてしまい、水を入れて水田になることはなくなって残念です。夏の蛙の大合唱が開かれなくなりました。うるさくて閉口してはいたのですけど、蛙がいなくなってしまうと寂しいものです・・・・。
 畑も畠も、いずれも日本でつくられた国家であり、中国の漢字にはなかった。
 アフリカのタンザニアでは、妊婦が土を食べている。日本でも昔、同じように妊婦が土を食べていた。タンザニアの市場で売られている土は白色と茶色の二つあるようです。写真が紹介されています。 
 たまには、土を知ってみるのもいいかと思って読んでみました。面白かったですよ。
(2010年7月刊。800円+税)

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