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みえない雲(コミック)

カテゴリー:ヨーロッパ

著者   グードルン・パウゼヴァング、アニケ・ハーゲ 、 出版   小学館文庫
 ドイツを脱原発へ導いた話題の小説をコミック化したものです。映画にもなっているようです。恐ろしいマンガです。背筋がひたすら寒くなってきます。
 ドイツにも原発があります。そこで事故が起きて放射能が漏れ出します。付近住民は避難を命じられますが、道路はどこもかしこも渋滞します。
 両親が留守だったので、14歳の少女は小学2年生の弟を連れて脱出を図ります。自転車に乗って、ひたすら遠くを目ざします。ところが、弟は猛スピードで走る車にはねられて死んでしまうのでした。
放射能は臭いもせず、色もないので、不気味さばかり漂っています。
 大勢の人が逃げまどう様は哀れとしか言いようがありません。病院は、既に病人で満杯です。
 頭の髪の毛が抜けていきます。放射能で汚染されてしまったのです。学校では、そのことで、差別され、いじめられます。子どもたちから将来を奪ってしまうのが原発です。
 私は東電の歴代の社長を実刑にして刑務所に入れられないようでは、日本の司法の力って、口ほどのこともなく、たいして機能していないようにしか思えません。
 わずか1000円足らずの万引きで懲役1年の実刑という事件が珍しくなくなっています。何万人もの人々を突然家から追い出し、慣れない仮設住宅などでの生活を余儀なくさせているのは東電です。予見可能性はありました。予見する能力も十分です。単に利潤第一主義に走って、それらを怠っただけです。それなら、当然、東電の歴代の社長は懲役10年程度の実刑に処すべきではないでしょうか。東電の会長は居座ったままですが、それを許していて、この社会の秩序は維持できるのでしょうか。社会正義はどこへ行ったのでしょうか。いまこそ東京地検特捜部への出番なのではないでしょうか。
東電の社長がいなくても補償対策は十分にできると思いますし、原発事故対応も可能だと思います。
 皆さん、東電の歴代社長の刑事責任を問わなくていいと思いますか、おたずねします。
(2011年10月刊。543円+税)

フェア・ゲーム

カテゴリー:アメリカ

著者  ヴァレリー・プレイム・ウィルソン  、 出版  ブックマン社   
 映画もみましたが、アメリカ政府の卑劣さを改めて思い知らされる本です。
 そして、CIA検閲済となっているだけに、本のあちらこちらが黒塗りとなっているという異様な本でもあります。訳者は黒塗り前の文章を読んだのでしょうか・・・・。
 イラク戦争が、実は、何の根拠もないアメリカによる侵略戦争であることは、今や明々白々です。ところが、そのことがあまり問題になっていないのは、既成事実と大きな力の前にひれ伏す人間の悲しい習性によるものなのでしょうね。
 サダム・フセインのイラク政府が大量破壊兵器をつくったり、所持していた事実はないことをCIAは察知し、アメリカ政府トップに報告していました。しかし、それでは侵略の口実がなくなって困るブッシュ政府はその情報を握りつぶしてしまったのです。そして、アフリカまで調査に行った元大使が告発すると、逆に政府は元大使の妻はCIAのエージェントだと暴露して、マスコミの目がそちらに向くように操作・誘導しました。
 フェア・ゲームというから公正なゲームという意味かと思うと、さにあらず、格好の餌食だという、からかいの言葉なのです。
CIAの使命に忠実だった著者は、民主主義制度を信じ、真実が勝つと信じていた。しかし、ワシントンにおいては、真実だけでは十分だとは限らないことを知らされた。
ウォーターゲート事件で記者として名を上げたボブ・ウッドワードも厳しく批判されています。たしかに今では、ウッドワードの本を読んでも、かつての迫力は感じられません。
 同じく、日本によく来るアーミテージも分別のない政府高官とされています。要するに、自己保身ばかりを考えている、つまらない人物だということです。多くの日本人は今もアーミテージを大物として、あがめたてまつっていますけれど・・・・。
 映画をみて、黒塗りだらけの本を読むと、アメリカの民主主義も底が割れてしまいます。TPPにしても、アメリカの企業の権益擁護のためのものでしかありませんよね。アメリカって本当に偉ぶっているばかりいる、嫌味な国です。
(2011年11月刊。1714円+税)

パリ日記

カテゴリー:ヨーロッパ

著者   エルンスト・ユンガー 、 出版   月曜社
 1940年6月14日、パリはドイツ軍に占領された。以来、1944年8月25日までの4年2ヵ月あまり、その占領は続いた。
 エルンスト・ユンガーは、現代ドイツ文学の巨峰、100歳を過ぎてなお、執筆活動を続けた。そのユンガーは、1941年2月から1944年8月まで、途中の転出を除いても3年半のあいだパリに駐留していた。そのときの日記が本書で紹介されています。
 ユンガーは、ナチスとは距離をとり続けていたため、ゲシュタポから家宅捜索を受けたこともある。パリでは、参謀本部付きの将校としてホテルに宿泊していた。
 この本によると、ユンガーは文学サロンに出入りしていて、ジャン・コクトーなどの文人と広く付きあって文学論をたたかわせ、ピカソやブラックのアトリエも訪れています。当時、ユンガーは48歳、まさに男盛りでした。
 この日記には、何度もクニエボロという人物を批判する記述が出てくるので、誰のことかなと不思議に思っていたところ、巻末でヒトラーのことだと分かりました。つまり、著者は一貫して反ヒトラーだったのです。
 ただ、1944年7月20日のヒトラー暗殺計画には直接の関わりはなかったようです。それにしても、この日記には、ヒトラー批判派の人々が多く登場してきます。彼らの多くは7月20日事件で逮捕され、処刑されたのでした。
 ドイツ国防軍の上層部に反ヒトラーの気分が少なくなかったことが、この日記からも十分にうかがえます。たとえば、1944年までフランス派遣軍総司令官だったシュテルプナーゲルはヒトラーに反乱しようと失敗し、処刑されてしまいます。ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺についても目撃者となり、また、そのおぞましい真相を聞いています。
 ユンガーは1942年7月17日のパリでのユダヤ人の大量逮捕・移送についても、パリで見聞しています。先日、日本でも公開された映画が、この事件を扱ったものでした。
 両親がまず子どもたちから切り離され、悲嘆の声が町中で聞かれた。私は不幸な人たち、骨の髄まで苦悩に満たされた人たちに取り囲まれたことを一瞬たりとも忘れることができない。そうでなくても、私は何という人間、何という将校なのであろう。
 1944年6月の連合軍によるノルマンディー上陸作戦もパリにいて情報を得ています。
 1944年6月12日の日記にユンガーは次のように書いています。
 クニエボロ(ヒトラー)と彼らの一味は、まもなく戦争に勝つと予言している。再洗礼派の領袖とまったく同じである。賤民は、どのような人物たちの後ろについて走るのだろうか。一切を包括して衆愚になってしまったのは、どうしてだろうか。
 この日記を読んでいると、どこで戦争があっているのだろうかと思えるほど優雅なパリ生活をユンガーは過ごしていると思えます。それだけ、ドイツのインテリの頭脳の一端が分かる本として、面白く読み通しました。
(2011年6月刊。3800円+税)

小説・医療裁判

カテゴリー:司法

著者   小林 洋二 、 出版   法学書院
 医療事故を扱った本ですから、すらすら読めて、分かりやすいとまではいきません。それでも、医療裁判がどうやって始まり、そこではどんなことが問題になるのか、裁判はどのように進行していき、そして終了するのかが、そこそこ分かりやすく、一緒に体験しているかのように語られています。その点は、初めて本を書いたとは思えないほどの著者の筆力に感嘆しました。
 新人弁護士が医療過誤と思われる件の相談を受けるシーンから始まります。当然のことながら、経験の乏しい弁護士は自信がなく先輩に応援を求めます。
 そこで登場するのが、医療問題研究会です。私も、実際、この研究会を利用させてもらっています。医師も参加している研究会のメンバーからの疑問・感想そしてコメントがとても実務に役立ちます。
 事件を受任してすすめるときには、この研究会の発行している「事件処理マニュアル」を活用しています。医師に責任があるかどうかは、その当時の医療水準との対比で決められます。相対的評価です。その点について、詳細な文献・調査が欠かせません。医療水準が日進月歩で変化しているのとあわせて、判例もどんどん進歩しています。
 さて、いよいよ裁判を起こすことになります。このときは、調査・交渉してきた弁護士2人に、もう一人加えて、3人で弁護団を組む。医療過誤事件を適切に処理するには、一定の経験と作業量が必要になるし、三人寄れば文殊の知恵ということわざに従う。
 医療過誤訴訟は早ければよいというものではない。迅速に負かされるのは、多くの場合、患者側である。
 医療過誤訴訟は、対等な立場の者の争いではない。相手は専門家であり、自分の立場を、その専門性で正当化しようとする。
 医療過誤訴訟で患者側が勝訴するのは30%台であったころより年々低下して、今では20%ほどにまで下がっている。
 この原因に「医療崩壊」キャンペーンが無関係だとは思えない。
日本の医師数は人口千人あたり2.1人。OECD諸国は3.1人。日本の国民医療費のGDPは8.1%、OECD平均の8.9%を大きく下回っている。それだけ医療にお金をかけていない。
 証拠調べのあったあと、裁判所は和解案を呈示しました。そして、和解は成立せずに判決に至ります。実に詳しく、裁判の実相が描かれています。これから医療過誤訴訟を扱ってみたいという若手弁護士にとっては格好の手引き書になると思います。続編が期待されます。シリーズでいきませんか・・・。
(2011年9月刊。1800円+税)

恥さらし

カテゴリー:警察

著者  稲葉 圭昭      、 出版  講談社   
 北海道警の有名な「悪徳刑事」の告白です。懲役9年の実刑に服して出所してきて、自分が何をしたのか、北海道警がどう関わったのかを実名で明らかにしています。恐るべき警察告発本です。
 佐々木譲の警察小説の多くは、この本の著者の挙動をネタ元にしています。しかし、本人が書いていますので、小説とはまた一味ちがった迫真力があります。それにしても、オビに大書されていますが、覚せい剤130キロ、大麻2トン、拳銃100丁が北海道警の関与のもとで日本に密輸されて、その所在が分からないままとなっているなんて、とても信じられません。日本の警察というのは想像以上に腐敗しているようです。そう言えば、警察の裏金問題も、いつのまにかウヤムヤになってしまいましたね・・・・。著者は、2003年4月21日、懲役9年、罰金160万円に処するという判決を受けました。
 26年間にわたる人生の警察官人生のなかで、数多くの違法行為に手を染めてきた。捜索差押許可状(ガサ状)なく強制捜査、犯意誘発型のおとり捜査、所有者の分からないクビなし拳銃の押収、覚せい剤と大麻の密輸、密売、そして使用。組織ぐるみで行われる違法捜査によって感覚は完全に麻痺し、正と邪の区別がつかなくなってしまっていた。
 著者がスパイ(エス)として使っていた人物は拘置所内で自殺し、元上司も公園内で首吊り自殺した。
ヤクザのシノギを警察官が斡旋する。しかも、警察庁キャリアOBが関与して行われていた。そのとき、1000万円もの現金が動いた。
 ガサ状を取るための調書は刑事が適当に作文し、ほかの警察官に調書のサインと指印をしてもらう。しかし、この虚偽内容の公文書作成が問題になることはない。公判に出てくることはないからだ。
所持者不明の拳銃。いわゆるクビなし拳銃の押収は、銃器対策が本格化した平成5年以降、警察庁のお墨つきを得た。それまでは所有者不明のクビなし拳銃を押収するのは恥ずべき捜査だったが、むしろ奨励されるようになった。クビなし拳銃の押収は、拳銃の所有者を逮捕しないために手軽に見える反面、捜査員が暴力団に「借り」を作ってしまう危険がある。
 しかし、自首減免規定が銃刀法改正でもうけられたあと、著者はこの規定をよりどころとして、暴力団関係者を自首させた。
 拳銃密輸入を検挙するため著者は東京で潜入捜査し、危うく発覚してしまいそうになりました。柔道による耳の形を取引相手の暴力団が気がついて、怪しんだためです。そのときは、とっさに相棒がレスリングをやっていたからだとごまかしてくれて、窮地を抜け出せました。
著者は覚せい剤の密売に手を染め、アジトとしたマンションには、数百万円から数千万円の札束がぎっしりという状態にまでなった。そして、拳銃の保管庫にしていた車庫には、多いときで100丁近い拳銃を保管していた。
 これって、信じられない金額と数字ですよね。そして、覚せい剤中毒患者になっていくなかで、著者のつかっていたエス(スパイ)が逮捕されたとき、裁判官にぶっつけ告白したのでした。
 ここに書かれている警察の体質が改まったと本当に言えるのでしょうか・・・・。心配でなりません。事実は小説より奇なりとは、よく言ったものです。下手な警察小説には見られない真相が語られて、ド迫力があります。ぜひ、ご一読ください。
(2011年6月刊。760円+税)

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