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観光コースでないフィリピン

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著者:大野 優、出版社:高文研
 開放的でおおらか、過ちにも寛容な優しい世界。7000万人のうちカトリック教徒が83%、プロテスタント教徒が5%。イスラム教徒もミンダナオ島などに人口の4%いる。7100の島々から成る国で、言語は110もある。
 以上の数字は10年前のものです。今の人口は8000万人だと思います。スペインが333年間も支配し、その後アメリカが42年間、植民地として支配した。日本も第二次世界大戦中に3年間、軍事占領した。
 フィリピンという国名は、スペイン皇太子フェリペに由来する。
 日本との関わりでは、戦国期のキリシタン大名である高山右近が日本を追放されてマニラに住み、日本との交易は盛んだった。20世紀にはミンダナオ島ダバオでマニラ麻栽培を日本人が手がけていた。
 私は11月の連休を利用して3泊4日のフィリピンへ出かけてきました。二度目のフィリピン旅行です。
 ニノイ・アキノ空港は今回も人であふれていました。入国するにも出国するにも大変な行列をつくります。出国する前に空港内でみやげ物を買いたいと思っても、レジの前に並ぶ行列の長さに閉口して、あきらめてしまいました。私たちが出国するのに、上着をとり、靴を脱がされ、ボディーチェックされるのです。出国して数日後、高級ホテルに軍人などが立て籠もって反政府宣言したという事件が起きました。やはりフィリピンの政情は安定していないことを実感しました。
 アキノ元大統領の夫であったニノイ・アキノ上院議員が空港で暗殺されたのは1983年8月21日のことです。マニラのホテルで読んだ新聞に、その暗殺犯たちが24年たって釈放されたことが記事になっていました。空港警備隊長ら兵士16人が終身刑になっていたのです。当時のマルコス大統領が政敵のアキノ議員の暗殺を命じたというのが真相のようです。下手人役の兵士たちがワリを食ったのです。
 アラヤ財閥とかソリアノ家などは、今も純粋なスペイン人の血を保っているそうです。混血を拒否する、恐るべき「白いフィリピン人」です。
 マラカニアン宮殿にも見学に行きました。イメルダ夫人の2000足の靴のうち一組のみが展示されていました。宮殿の半分が開放されて観光コースになっているのですが、そこに至るまでに、何回となく厳重に警戒チェックされます。
 マルコスを追放した2月革命は、フィリピンでエドサ革命と呼ぶそうです。1986年2月22日にはじまりました。50万人のフィリピン人が結集したと言います。マルコス一族は、アメリカ軍のヘリコプターでマラカニアン宮殿を脱出し、ハワイへ亡命しました。ハワイで死んだマルコスの遺体はフィリピンに戻り、今も遺体が保存されているそうです。
 マニラ市内にはリセール公園という広大な公園があります。スペインからの独立をかちとる国民的英雄であるホセ・リサールが処刑された公園です。ホセ・リサールはスペインから独立するについて武力行使に反対したようですが、スペイン軍に捕まり銃殺されます。処刑されたときも、ホセ・リサールはいつものようにスーツを着てネクタイを着用し、山高帽をかぶっていました。リサールは背後から銃殺されたようです。
 サンチャゴ要塞を見学しましたが、リサールが刑されるまで歩かされたときの足跡がずっと残っていました。私は、まさか本物の足跡が残っているはずはないと疑いましたが、ガイド氏の説明は本物だということでした。本当でしょうか?
 サンチャゴ要塞は、スペイン統治のときは牢獄、アメリカ統治時代は陸軍本部、日本軍統治のときには憲兵隊本部と牢獄としてつかわれていました。1945年2月、日本の敗戦間近のとき、牢獄内で600人ものフィリピン人やアメリカ人が虐殺されたということです。水牢を見学しましたが、日本軍の残虐な行為を思って、息を呑みました。
 モンテンルパ刑務所も見学しました。山下奉文大将や本間正晴中将など、日本軍の将兵を敗戦後に収容したところです。戦後まもなく、渡辺はま子の「モンテンルパの夜は更けて」という歌が流行して有名になりました。私自身は聞いた覚えはありませんが、名前だけ知っています。刑務所の正面はアメリカのホワイトハウスを思わせるようなきれいな建物です。ところが、5000人を収容する、この刑務所内はギャングの支配する恐るべき状況があるそうです。
 日本軍の敗戦後、マニラでも日本軍の戦犯を裁く「マニラ法廷」が開かれ、山下大将、本間中将ら80人が処刑されました。
 刑務所の近くに世界平和祈念公園があります。ここで処刑された17人の名前が記されていますが、山下大将や本間中将の名前はここにはありません。彼らは別のところで処刑されたからです。
 日曜日、久しぶりにちょっとした山歩きをしました。ダイエットに励んでいる最中ですから、しっかり汗をかこうと思って、必要以上に着こんで出かけました。歩いて1時間あまりで山頂につき、上半身裸になって着換え、さっぱりしたところでお弁当をいただきました。といっても、目下、米、パン、めんを絶っていますので、おにぎりはありません。代わりにリンゴ丸かじりです。
 春霞ならぬ秋霞の日和りでした。風もなく、爽やかな山頂でしばし遙か彼方に海を見おろし、遠くの山を眺めて浩然の気を養いました。山のあちこちでジョウビタキを見かけました。人を見ると、尻尾をチョンチョンと下げて挨拶する愛嬌者の小鳥です。
 往復3時間あまりの山歩きのあと、少し昼寝をとってから、庭にチューリップの球根を植えました。久しぶりにのどかな秋の一日を過ごすことができました。
(1997年11月刊。1900円+税)

悪果

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著者:黒川博行、出版社:角川書店
 警察ハードボイルドです。読みはじめたら、その後の展開がどうなるのか、目が離せない思いで、一心不乱に読みふけってしまいました。
 ここではストーリーを展開するわけにはいきませんので、この本に書かれている警察の実情を紹介します。どこまで本当なのでしょうか?
 暴犯係の刑事はヤクザの犯罪を取り締まるのが仕事であり、どれだけの情報をもっているかでその手腕が分かる。日頃から組事務所に顔を出して様子をうかがい、ときには個人的な相談に乗って情報を拾う。組員とのつきあいにどこで一線を引くかは各人の裁量に任されている。
 暴犯係の刑事は、つかんだ情報をめったなことでは他にもらさない。刑事に情報開示は無縁。自分なりに裏づけをとって、これはいけると確信したときに、はじめて口を開く。そういう縄張根性と、手柄をひとり占めしようとする意思があってこその刑事稼業だ。
 刑事は情報が命であり、相手が上司であれ同僚であれ、不用意にたれ流していたら自分の首を絞めることになる。情報は独占してこそ値打ちがあり、もちネタが多ければ多いほど、この世界ではうまく立ちまわれる。
 ヤクザと飲み食いするのも仕事のうち。勘定はもちろんヤクザもち。こちらが弱みを見せればこそ、向こうもスキを見せる。それがマル暴担の刑事の度量だ。
 ひとりで組事務所に出入りしたり、ひとりで内偵捜査をしたがるマル暴担当の刑事は、ヤクザに取りこまれていることが多い。
 県警の監察の役目は警察官の犯罪や不正を摘発することではなく、いかにしてその犯罪を隠蔽するかにある。とりわけ保安や暴犯担当の長い刑事は女や博打や組筋とのつきあいで身をもち崩すことが多く、定年まで勤めあげる刑事はほかの部署に比べて圧倒的に少ない。優秀なマル暴担ほど、途中でドロップアウトする。
 警察はヤクザよりひどい。ヤクザの守り料は定額で、それ以上は要求しないし、払えば守ってくれる。だが、警察は守り料をとらないかわりに、しょっちゅうタダで遊んでいくし、マナーが最悪だから女の子も嫌がる。おまけに盆暮れの挨拶、異動時の餞別、各署対抗の武道大会のご祝儀なども要求され、際限なくお金を払わされる。もし払わないと営業停止になるので、いいなりになるしかない。
 これは風俗店の経営者の言葉です。
 マル暴担という利権を手にしながら気の利いたシノギのひとつも見つけられないような奴は出世する見込みがない。たとえばマンションころがし。マル暴担の刑事が第三者名義でヤクザが入居しているマンションを競売などで安く買う。そして暴対法の中止命令などをかけてヤクザを追い出し、マンションの値が上がったところで転売する。
 保安係、風紀係は最高の利権だ。飲食業や風俗業に対する許認可権と取締権の両方をもち、おのれの胸三寸でどうにでもできる。業者からの接待攻勢はひきもきらず、飲み食いはもちろん、ゴルフコンペ、温泉旅行と、次々にお座敷がかかって身体の空くヒマがない。
 元マル暴担はヤクザよけになるからツブシがきく。金融、保険、流通といった民間企業の顧問を5、6社もすれば、それで食っていける。
 警察官には三とおりある。ごますりの点取り虫と、まじめなだけのボンクラと、ほんまもんの捜査ができる本物の刑事だ。
 署長賞や部長賞や本部長賞といった褒賞をいくら受けたところで、巡査が巡査部長に昇進するわけではない。昇任試験を受けて合格しない限り、巡査は永遠に巡査のまま。警察という絶対の階級社会の中ではまじめに働く人間が損をし、試験に長けた要領のいいやつが得をする。
 警察官は、試験にとおって星の数を増やしたらうまい汁が吸える。妙な使命感や正義感は出世の妨げだ。
 日比谷公園を歩いてきました。見事に黄金色に色づいた銀杏の木から風に吹かれて大量の黄金の葉っぱが落ち、まるで黄金の大雨が降っているような夢幻の光景でした。師走も半ば近くになり、気ぜわしさを感じます。
(2007年9月刊。1800円+税)

蘇る「王家の谷」

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著者:近藤二郎、出版社:新日本出版社
 最新エジプト学というサブ・タイトルがついています。エジプト現地で30年も調査を続けてきた日本人学者による親切な解説本です。
 最古の人工ミイラの出現は、古王国時代(前2682〜前2145年)。古王国時代には、再生と復活の権利は、王族や一部の高官が独占していて、ミイラも王族や高官のものだった。
 中王国時代(前2025〜前1794年)に、人は誰でも死ぬとオシリス神となって、死後に再生・復活を果たし、永遠の生命を得るという、オシリス信仰の大衆化が起こった。
 新王国時代(前1550〜前1070年)になると、ミイラづくりが確立した。
 その後、ローマ支配時代まで、エジプト人は、オシリス信仰を持ち続け、遺体をミイラにする習俗を続けた。古代エジプト人は、脳を大切なものと扱わず、心臓こそ精神の働きをつかさどる中心的な器官とみていた。
 王のミイラはもちろん、ペットとしていたイヌやサル、そして神として崇めていたワシや魚、鳥などのミイラも多数のこっている。
 ピラミッド建設について、かつては専制王による奴隷労働と考えられていたが、最近は、国家の巨大事業として、農閑期の農民を中心とする余剰労働力を駆使して建設された失業対策事業であるとする説が多くの支持を受けている。
 ピラミッドを建設する作業員の大型住居も発掘されている。
 古代エジプトの人口は、200〜300万人とみられている。ナポレオンエジプト遠征時でも250万人だった。19世紀末に800万人、1945年に2000万人、現在は7000万人と、人口が急増している。
 エジプトには行ってみたいとは思いますが、なにしろ遠いでしょ。二の足をふんでしまいます。それで、こうやって、せっせとエジプト学の本を読んで我慢しているのです。
 それにしても、今が2007年でしょ。キリスト「生誕」年から2000年以上さかのぼって、さらに前にエジプト古王国は存在したのですよね。エジプト王国の息の長さをつくづく感じます。
(2007年9月刊。1400円+税)

パンダ

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著者:岩合光昭、出版社:新潮社
 ウワー、パンダって、ホント、可愛い。世界の不思議のひとつですよね。
 パンダは実によくヒトを見ている。誰もいないところでは、クマのような鋭い顔をしているのにヒトを見るなり、可愛いパンダに変身してしまう。パンダには、ヒトを惹きつける魔力がある。
 現在、パンダは野生で生息しているのは、1000頭から1500頭。いつ絶滅してもおかしくない。いやあ、パンダを絶滅させてはいけません。
 パンダの幼稚園の写真があります。10頭以上もの子どもパンダがブランコ周辺で固まって遊んでいる写真です。ぬいぐるみパンダより、もっともっと可愛いパンダたちです。
 生まれてすぐのパンダの赤ちゃんは体重100グラムほど。丸裸で、ピンクの肌が見えています。
 四川省にあるパンダ保護研究センターでは、パンダの繁殖に成功している。パンダの母と子の会話。子がクッワン、ミューミューと鳴くと、母はクゥーと一声鳴く。
 パンダはヒトの声を鋭く聞き分ける。飼育係の声で全員集合。集合したら、食事の時間。たちまち30本のタケノコをたいらげる。大昔、タケを主に食べるようになって、パンダは生き残れた。
 パンダの今後の生存は、人類の生存にもつながっていると考えるべきだと思います。日本も中国へ自動車を売りこむことばかり考えずに、生物保護のためにどうすべきか、両国は手をとりあって取り組むべきだと思いました。
(2007年7月刊。2200円+税)

越境捜査

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著者:笹本稜平、出版社:双葉社
 推理小説のような警察小説ですので、粗筋を紹介するわけにはいきません。千歳空港の本屋で買って、福岡までの飛行機のなかで読了しました。えーっ、警察署って、暴力団と同じ暴力的な体質の組織だったんだー、と思いました。警察内部の派閥抗争は邪魔者は消せということで、馳星周ばりのバイオレンス物の展開です。
 背景にあるのは、警察のトップに君臨しているわずか300人ほどのキャリア組の高級幹部警察官による裏金分捕り合戦、そして、つけ足し的に東京の警視庁と神奈川県警のナワバリ争いが問題となっています。
 あっ、もう一つありました。警察と暴力団幹部とが、実は裏でよく手を結んでいるという事実です。
 いま、福岡県内では、北九州の暴力団制圧作戦が進行中のはずですが、見るべきほどの成果をあげているとは思えません。筑後地方の対立抗争事件では、一方の組長が射殺され、下部組織の組長2人が殺されているのに、警察は「自首」してきた組員以外、誰も捕まえてはいません。いったい、どうなっているんでしょうか。警察の捜査能力の低下は目を覆わんばかりのひどさだと語ってくれた知人がいましたが、まさにそのとおりです。
 警察は、公安優先ではなく、もっと刑事・交通分野を優遇し、人々が安心して生活できるようにがんばってほしいと思います。
(2007年8月刊。1600円+税)

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