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果てしなき論争

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著者:ロバート・マクナマラ、出版社:共同通信社
 720頁もあり、手にとるとズシリと重たい本だ(定価も3800円と高い)。マクナマラ元国防長官というと、団塊世代にとってはベトナム侵略戦争の立役者の1人である。その彼が1995年11月にハノイを訪問し、ボー・グエン・ザップ将軍と対談したというのだから、世の中は変わった。
 この本は、マクナマラ元長官たちがベトナム戦争について、ベトナム側の将軍たちと討議したことをふまえ、ベトナム戦争を総括しようとしたものだ。私としては珍しく2ヶ月ほどもかけて少しずつ味読した。
 大事なことは、過去というのは歴史家のためだけにあるわけではないということ。強さと持久力は、自分自身の歴史とつながりを持つことから生まれる。過去と未来は現在で均衡を保っており、人は自分自身の歴史に深く強く触れる範囲に応じて、将来を制御することができる。
 北ベトナムが正規軍の連隊を送って南の解放戦線を支援しはじめたのは、アメリカが北爆を開始して南に軍隊を送りこんだあとだった。1965年に北の3個連隊が中部山岳地帯に送りこまれ、11月にイアドラン渓谷でアメリカ軍と戦った。このとき、アメリカ兵は300人が戦死し、北ベトナム軍も少なくとも1300人の戦死者を出した。
 アメリカによる北爆によって、北ベトナムの戦意をくじいたどころか、民衆の怒りをかきたて、ますます政府のもとに結束を固めた。当時のベトナムには爆撃対象となるほどの工場はもともとなく、効果は薄かった。ホーチミンルートは複線のルートであり、いくらアメリカ軍が爆撃しても補給ルートを根絶やしにすることなど不可能だった。
 南の解放戦線の方が主戦派であり、北ベトナムは当初ずっとアメリカ軍との衝突を回避すべく南を抑えようとしていた。北ベトナムの統制力は決して想像されるほど強くはなかった。ところがアメリカ政府は、ずっと北ベトナムがすべての戦闘を指令していると考えていた。まったくベトナムを誤解していたのだ。
 アメリカが北ベトナムへ地上侵攻したときには、中国軍が直ちに反撃のためにベトナム内に入って反撃する密約が北ベトナムと中国のあいだで成立していた。そうでなくても現に20万人の中国軍工兵隊がベトナム内にいて、アメリカ軍の爆撃機を撃墜したりしていた。
 マクナマラ長官がベトナム戦争について教訓を引き出すためにベトナム側と対話するについてはロックフェラー財団の後援があったという。ベトナム後遺症は今回のイラク戦争にまで影響していると言われるアメリカならではのことだ。それにしても、かつての敵と真剣な対話をしてまで真実を明らかにし、教訓を引き出そうとするアメリカ側の努力には心うたれるものがある。ベトナム戦争はまだ終わっていない。

佐伯チズの頼るな化粧品

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出版社:講談社
 お化粧なんかに縁のない男の私がどうしてこんな本を読んだのか。もちろん、すべての女性に、いつまでも若々しく美しくあってほしいからだ。厚化粧で嫌な感じを与えるのも困るけれど、髪の毛はボサボサ、身なりを全然かまわないなんていうのは、もっと困る。
 朝のメイクは、これから始まる一日の戦闘服。この言葉を目にして、正直いってのけぞるほど驚いた。そうか、女性は、朝、家を出るとき戦場へ戦いに出かけるのか・・・、と。男性も家の外に7人の敵がいると言われているけれど、女性は、もっと多いのかもしれない。
 この本には化粧品のつかい方についてきわめて実践的な注意がたくさんある。技術的なことはさっぱり分からないので、紹介を省略する。気のついたところを2つのみ書き出してみよう。
 30代からのメイクには意外性は不要。求められるのは知性と清潔感、これに尽きる。・・・これはまったく同感だ。週に一度は、お肌の断食。家に帰るとすぐにメイクを落とし、休日は一切メイクをしない。・・・なんだか、よく分かる心境だ。
 著者は1日2人に限定した完全予約制の美容サロンを開設している。すごーく高いんだろうな、と思う。それにしても、高校を卒業して以来、水着を一度も着たことがなく、海水浴にもスキーにも行ったことがないというのだから徹底している。やはり、何事によらず、プロは違う。

知恵伊豆に聞け

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著者:中村彰彦、出版社:実業之日本社
 三代将軍・徳川家光の懐刀として小姓から老中まで昇りつめた松平伊豆守信綱の一生を描いた感動小説。
 この本は歴史書ではなく小説なので、私もそのつもりで読んだ。つまり、歴史書なら長所と短所、そして当時の社会状況とのかかわりあいのなかでのプラス・マイナスの双方をあげつらうことになる。しかし、この本は小説なのだから、主人公に感情移入するためにもマイナス要素はできるだけカットしてある。「知恵伊豆」とは、どういう経緯でそう呼ばれるようになったのか、幼年時代のエピソードが丹念に紹介されている。島原の乱(これには宮本武蔵も参戦し、負傷している)について、攻める側がいかに苦労したか、どんな工夫をして落城させたのか、その点がとくに興味を魅いた。
 知恵と工夫を一言でいうと、それは臨機応変ということなのだが、日頃からよく物事のウラとオモテとを考えておかないと、とてもすぐには出てこないような非凡な発想な持ち主だったということ。

暇つぶしの時代

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著者:橘川幸夫、出版社:平凡社
 40歳をすぎてから、無性に自分の時間が欲しくなった。世のため、人のために生きることが苦になったわけではない。でも、自分のためにつかう時間だってあっていいはずだ。なにしろ一回限りの人生なんだから・・・。日曜日の朝、家の外に広がる青空を仰ぎみて、さあ、今日一日は自分の時間だ、自由につかえるぞと心のうちで叫ぶ。家中を雑巾がけして汗をかき、シャワーで身体を冷やす。フランス語の勉強にたっぷり一時間はかける。仏和大辞典を隅から隅まで少しずつ読んでいく。赤エンピツでアンダーラインをひき、頁がどんどん赤くなっていくのを見ると心が躍る。まだ何かしら、これまでと違った人生が切り拓ける気がしてくるのだ。
 この本は、日本がもうモノづくり大国であるのは止めよう。それよりコトづくりでいこうと呼びかけている。なんだか分かったような分からない考えであり、ノドにつかえるものがあって共感しにくい。しかし、いくつか大いに共感する指摘もある。子どもと大人の違いは何か。それは時間に対するとらえ方の違いだ。自分の時間を生きる者が子ども。社会の時間を生きる者が大人だ。子どもは、自由に時間を使うことによって、現実の枠組みに支配されない可能性を発想することができた。私は、これからも自分の時間を生きる者、つまり「子ども」であり続けたいと願っている。

21世紀の刑事施設

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著:刑事立法研究会、出版社:日本評論社
 名古屋刑務所における収容者への虐待はひどいものでした。もっとも、冤罪事件ではないかという指摘もあり、被告人となった刑務官が無罪を主張している以上、軽々しく虐待があったと決めつけることはできません。
 この本は、日本の刑事施設の現状を十分認識したうえで改革・改善のための問題提起をしています。およそ現実をふまえない理想論だと批判されたこともあると書かれていますが、私はどれも重要かつ現実的な改革提言だと思います。
 犯罪者が激増していると言われています。たしかに、公判請求は5年間で9万人から12万人に増えています(2000年)。不起訴人員も31%増えています。刑事施設の収容定員は6万5千人ほどで、収容率は100%を越えています。とくに代用監獄(警察の留置場)の被収容者は65%も増加しています。これには判決の重罰化も影響しています。覚せい剤(28%)、窃盗(24%)の判決が重くなっているのです。
 ところで、警察官を増やして捜査能力を増強すれば犯罪が減って安全な社会になるというのは幻想であると指摘されていますが、私もまったく同感です。社会のなかに犯罪を生む温床をつくり、それを放置しておきながら警察官を増やしても抜本的な対策になるはずがありません。私は日々の刑事弁護のなかで、このことを強く実感します。
 日本の刑務所では、高齢者、外国人、女性が増加しています。それぞれ深刻な問題を引き起こしています。それでも、人口10万人あたりの被収容者数は、日本は40人で、イギリス125人の3分の1、アメリカ650人の6%でしかありません。
もっとも、これは英米の方に被収容者が多すぎるのです。
 現行監獄法は今から100年も前の1907年に制定されたまま、ほとんど改正されていません。まったく現代社会にあわないといって過言ではありません。1ヶ月1回しか面会や手紙の発信が許されないなんて、今どき、とても信じられません。電話をかけることがなぜ許されないのか、Eメールはどうなのか、検討すべきでしょう。また、家族面会ももっと自由にしないと、受刑者が本当に社会復帰するのは難しいと思います。
 私たちは、受刑者もいずれは社会に復帰するんだという点をしっかり認識すべきです。その意味で、本書で提案されているコミュニティ・プリズンの構想を日本でもしっかり検討すべきです。それは、刑務所の民営化という安易な方法で置きかえられるべきではありません。

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