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生涯最高の失敗

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著者:田中耕一、出版社:朝日新聞社
 田中耕一さんがノーベル化学賞をもらったとき、ほとんどの日本人が驚き、また、喜びました(と思います)。なにしろ、まだ43歳で、フツーの会社員、それも肩書は単なる主任でしかないというのです。ノーベル賞なんて、有名大学の名誉教授がもらうものと思いこんでいた私のような日本人にはショックでした。しかも、賞の対象は、1985年の実験結果を1988年6月に論文で発表したものだというのです。まだ田中さんが弱冠28歳のときの実験にもとづくものなのです。これにも驚かされます。文系の世界では考えられないことです。
 その田中さんは、その後も現場で実験を続けることをひたすら願い、講演依頼は9割以上お断りしているとのことです。この本は、そのうちの貴重な講演を再現し、「分かりやすく」ノーベル受賞の対象を説明しています。といっても、実のところ、なんとなく分かった気はしましたが、十分に理解できたわけではありません。それでも、山根一眞氏との対談によって、少しは分かった気にはなります。
 田中耕一さんは、お見合い歴20回ということですが、奥さんは、富山県の同じ高校出身で理数科、耕一さんは普通科出身というのも面白い事実です。
 創造性を発揮するには、勇気、挑戦、不屈の意志、組み合わせ、新たな視点、遊び心、偶然、努力、瞬間的ひらめきの9つが必要だそうです。でも、これだったら、私にもありそうです。そんな元気を与えてくれる本でした。

心は泣いたり、笑ったり

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著者:マリーズ・コンデ、出版社:青土社
 カリブ海のグアドループで生まれ育ち、パリに渡った少女の回想記です。フランス語しか話そうとしない現地上流階級の娘として育ちますが、白人ではありません。次第に世の中の様々な矛盾にぶつかっていきます。いかにも生き生きと少女時代が語られ、すっとその時代に溶けこんでいく気がします。
 親友について、「きれいではありません。頭も良くありません」という書き出しで作文を書きました。それは友情を語ろうとしたのであって悪気はありませんでした。
 母についても、そのさまざまな側面を韻律のない自由詩で物語り、母の誕生日に45分にもわたって延々と1人語り続けました。それを黙って最後まで聞いた母は、涙を流し、ただ「おまえは、そんなふうに私のことを見ていたの?」と言っただけだった。
 真実を言ってはいけないのだ、絶対に。自分が愛する人には絶対に。愛する人は輝かしい光で彩らなければ、褒めそやさなければ、実際の姿とは違った存在であると思いこまさなければいけない。そのことを私は学んだ。
 これは10歳の少女がしたことなのです。圧倒されてしまいます。目下、NHKラジオのフランス語講座の応用編でマルチニック人が登場し、この本から抜き出したところがテキストとして使われています。それで私もこの本を買って読んだというわけです。フランス語を勉強して世界がまた少し広がりました。メルシー・ボークー。

チンパンジーにありがとう

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著者:堤秀世、出版社:フレーベル館
 すごい写真に圧倒されます。なんと24歳、芳紀さかりのメス・チンパンジーが高さ5メートルの竹馬に軽々と登って歩くのです。身長120センチ、体重も50キロあります。堂々たる体格です。猿まわしの猿とちがって首に鎖はありません。私と同世代の男性調教師が指示したとおりの芸を次々に演じていきます。そう、ムチはないのです。あくまでもほめて芸を教えるのです。
 チンパンジー・ショーなんて動物虐待だという声が強まり、動物芸はサーカスでもやられなくなったそうです。そんななかで著者は30年もチンパンジー・ショーを続けています。動物への愛情がなかったら、とてもやれないことです。
 この本は写真を見るだけでも価値があります。でも、そう言わずに内容も少し紹介してみます。私がこの本を読み終わってもち歩いていると、原田直子副会長が、「私もチンパンジーには興味があって、たくさん本を読んでるの」と声をかけてくれました。この本もぜひ手にとって読んでみて下さい。
 北大理学部に入学して馬術部に入り、在学中に移動動物園を手伝い、アルバイトとして働いているうちに大学を中退してしまいました。その後、動物調教の厳しさをアメリカに渡って学び、日本に導入しようとしましたが、なかなかうまくいきません。
伊豆シャボテン公園に入ってからも、すぐにはショーを演じることはできませんでした。
 チンパンジーの方も、そう簡単には芸を演じてはくれません。それに、芸を仕込んでも、いずれ公園内の野生の群れに帰さなければいけません。それがまた過酷な試練となるのです。
 ちょっと前屈みにしゃがみこみ、片手を前に出して、「おひかえなさい」という感じで、相手のノドのところに指先をださなければいけない。そして、相手からも同じように手を出されたら、その指先に軽く唇をあてる。それがチンパンジーの初対面の挨拶である。
 この道30年のプロの苦労話です。感激に胸が詰まりそうになりました。

コロンビア内戦

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著者:伊高浩昭、出版社:論創社
 コロンビアって、本当に怖い国だと思いました。1985年11月、ゲリラが最高裁を占拠し、軍隊が反撃して最高裁長官以下115人が死亡しました。ゲリラ(M19)が麻薬マフィアと結託して起きた事件だということです。
 コロンビアでコカインが生産されはじめたのはごく最近、1969年だというのを知って驚きました。メデジン・カルテルのエスコバルとか、カリ・カルテルは日本人の私たちにも有名です。公安庁本部が爆破されたり、大統領や法務大臣などの要職に
ある人々が次々に暗殺されていきます。殺されない人々はマフィアに買収されているのです。
 エスコバルは自分の所有地に自費で別荘のような専用刑務所を建ててから自首し、そこに「収容」されました。外を陸軍が警備し、なかでエスコバルは麻薬取引を指示し、好きなように刑務所を出たり入ったりしていました。そして、アメリカ軍が出動する直前に、エスコバルはこの刑務所から脱走し、翌年、包囲されて殺害されまし
た。
 コロンビアでは、日本人も何人も誘拐されています。日本はエメラルドをコロンビアから輸入しているのです。日本人のエメラルド王・早田英志という人物が存在するというのも驚きでした。熊本出身だそうです。エメラルドの合法取引の3分の1を占める日本は最大のお得意なのです。1人で年商数十億円、15万カラットを扱うというのですから、これまた信じがたい話です。よくぞ、こんな怖い国にいるなと、正直いって思いました。

シュピルマンの時計

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著者:クリストファー・スピルマン、出版社:小学館
 『戦場のピアニスト』は感動的な映画でした。『シンドラーのリスト』とはひと味違いますが、同じように心打たれる実話です。
 主人公のピアニストであるシュピルマンの長男が日本に、それも福岡に住んでいて、奥さんが日本人だなんて、不思議な縁を感じます。
 シュピルマンは戦後結婚して2人の子どもをもうけた。そして、88歳まで長生きすることができた。シュピルマンはユダヤ人ではあったが、ユダヤ教徒ではなかった。ふつうのポーランド人として生活し、ユダヤ人と意識してはいなかった。
 シュピルマンを助けたドイツ将校はナチス幹部ではなく、ドイツ国軍の将校だった。もとは高校の教師であり、シュピルマンに出会ったときは、靴磨きを探していた。映画の日本語字幕には出なかったが、シュピルマンに対して敬語を使って話した。
 シュピルマンは、過去の辛い体験を思い出したくないため、過去を思い出す時間を自分に与えないよう、ピアノを一日中弾き続けた。あの記憶をピアノの音で封印し続けていたのだ。
 映画をみたときの感動の余韻に改めて浸ることのできる本でした。

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