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帝国

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著者:アントニオ・ネグリ、出版社:以文社
 本文のみで510頁もある大著です。恒例の人間ドッグ(1泊)に持ち込んだ4冊のうちの1冊です。さすがに読みごたえがあるというか、歯ごたえがありすぎて、大半がよく分からなかったというのが正直なところです。でも、いくつか、なるほどと思えるところがありました。これは決して負け惜しみではありません。
 この本で著者2人が主張したいことは、アメリカ(合衆国)もまた中心とはなりえない。帝国主義は終わった。今後、いかなる国家も、近代のヨーロッパ諸国がかつてそうであったようなあり方で世界の指導者となることはない。グローバリゼーションへの抵抗とローカル性の防衛という「左翼的」戦略は間違っていて、有害である。むしろ、帝国のなかへグローバルに分け入り、それらの流れのもつ複雑性のすべてに向きあう必要がある。
 タキトウスが「彼らは殺戮を行い、それを平和と呼ぶ」と言ったそうです。アメリカのイラク戦争を見て、けだし明言だと思いました。大いに考えさせられる、ズシリと重たい本です。

しぶといモノ作り

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著者:山根一眞、出版社:小学館
 「週刊ポスト」に連載中の「メタルカラーの時代」を本にしたものです。日本のモノ作りの現場を掘りおこしています。著者も団塊の世代ですが、モノ作りの現場で意外に団塊世代ががんばっているのを知って、同世代としてうれしくなってしまいました。
 この本を読んで一番ショックだったのは、技能五輪国際大会で日本の成績がいまひとつで、韓国に完全に負けているということです。これでは、日本の将来は明るくありません。韓国は金メダルを20個もとっているのに、日本はたった4個でしかありません。デンソー工業技術短大の学生が金メダルをとった話が紹介されていますが、もっともっと優秀な技術者を確保することが必要だと思いました。
 それにしても、ニュートリノの話は理解を超えてしまいます。なにしろ、人間の身体の1平方センチあたり、太陽から来たニュートリノが1秒あたり660億個入ってきて、全部突き抜けていく。身体のなかで何かに衝突するのは一生の間に1粒しかない。なんだか気の遠くなるような話です。でも、いったい、その衝突した1粒はどうなってしまうんでしょうね?
 世の中には、コツコツ真面目に努力している人がこんなにも多いことを知ると、なんだか安心してしまいます。田中耕一さんのようにノーベル賞をもらうまでには至らないにしても、すごい人はたくさんいるんですね・・・。

雪国の自然と暮らし

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著者:市川健夫、出版社:小峰書店
 長野県と新潟県にまたがる日本有数の豪雪地帯、秋山郷の暮らしを紹介した本です。昔は、冬になると積雪3メートルに埋もれ、陸の孤島でした。今では、冬でも除雪がすすんでいますが、それでも急病人が出るとヘリコプターが出動します。
 『半日村』という絵本を子どもに読んでやったことがあります。秋山郷は、高い山で囲まれているために、日が当たる時間は平野の半分ほどしかありません。まさに半日村です。
 日頃、私たちは「○○をかてとして」と言うことがあります。あの「かて」とは糧飯(かてめし)のことです。米やアワのほか、ダイコンやカブをまぜて炊いたご飯のことです。昔の日本の主食でした。お米だけのご飯は、お祭りの日だけに食べる特別食で、御飯(ごはん)と丁寧な言葉で呼ばれ、ふだんの「めし」は糧飯のことです。
 雪の多い新潟や富山でチューリップ栽培が盛んな理由も説明されています。積雪が地表を寒さから守ってくれるので、球根を浅く植えることができるのです。春に雪が消えると、浅く植えられた球根は太陽の熱をより多く受けるので、大きく成長できる。こういうわけです。そうは言っても、暖かい九州で生まれ育った私にとっては、「半日村」とか、寒い冬に閉じこめられるなんて、とても耐えられそうにありません。

武士の家計簿

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著者:磯田道史、出版社:新潮新書
 加賀百万国の算盤(そろばん)係をつとめた猪山家の家計簿が36年間分も残っていたのです。天保13年(1842年)から明治12年(1879年)までの記録です。さすが日記大好きの日本人です。
 「地位非一貫性」という言葉があるそうです。武士は威張っているけれど、しばしば自分の召使いよりもお金を持っていない。商人は大金持ちだけど卑しい職業とされ、武士の面前では平伏させられ、しばしば武士に憧れの目を向け、献金して武士身分を得ようとする。このように権力・威信・経済力などが一手に握られていない状態を言います。地位非一貫性があれば、革命は起きにくく、社会を安定させることにつながります。
 江戸時代の女性は考えられている以上に自立した財産権を持っていた。離婚が多く、それも農民より武士の方が多かった。宇和島藩士の結婚56組のうち、20組がわずか3年で離死別していた。だから、妻の財産も独立的になりがちだった。妻は実家との結びつきをずっと強く保っていた。
 子どもに英才教育をほどこし、立身出世を願うというのは、江戸時代でもかなり強力だったことがこの本からもはっきり読みとれます。日本人って、昔から変わらないな。そんな気を抱かせる本でした。

モスクワ劇場占拠事件

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著者:タチアーノ・ポポーヴァ、出版社:小学館
 モスクワ市内の中心部にある満席のミュージカル劇場がチェチェン武装勢力に襲われたのは2002年10月23日夜9時過ぎのこと。53人の武装勢力が912人の観客や俳優を人質として劇場(国営ボールベアリング工場文化宮殿、ドゥブロフカ劇場センター)を占拠し、2日たった26日早朝4時半に特殊ガスが注入され特殊部隊が強行突入した。その結果、武装勢力は50人が殺害され、3人が逮捕された。人質は130人が死亡。うち125人は銃撃戦ではなく、特殊ガスで死亡した。舌の落ち込み、急性中毒、心脈不全、呼吸不全、高血圧クリーゼ、アナフィラキシーショックによるもの。特殊ガスの成分は公表されておらず、現場には解毒剤は手配されていなかった。
 ロシア政府は死亡した人質1人に10万ルーブル(37万円)、生き残った元人質に5万ルーブルの見舞金を支払ったのみ。そこで、被害者や遺族は政府を相手に120件もの訴訟を提起しているという。
 この本は劇場占拠から強行突入までを報道と手記で刻明に再現している。ただし、政府当局のインサイド情報がないため、少し物足りない。殺された武装勢力50人のうち、女性が18人もいた。ほとんどが肉親をロシア軍から殺された20代の若い女性。これらの女性は「全員が大変頑強な鉄のような神経を持っていた。休むことなく、常に自分の持ち場であるホールにいた。彼女たちからは凄まじいばかりの憎悪が滲み出ていた」という。
 日本でも、いつこのように大規模なテロ事件が起きないとも限らない。しかし、その対策として警備を強化するだけでは本当の意味の防止策にはなりえないように思う。やはり「凄まじいまでの憎悪」を生み出すようなことのないようにするのが先決だ。

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