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歴史のなかの新撰組

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著者:宮地正人、出版社:岩波書店
 本当に知らないってことは恐ろしいことなんですよね。私は、新撰組なんて単なる野蛮な人殺し集団であり、近藤勇って、知性のカケラもなく、保守思想にこり固まっただけの頑愚な男だから、偽名をつかって逃亡中に流山で捕まって首をはねられたのも身から出たサビだと思いこんでいました。
 この本を読んで、私の思いこみが完全に間違っていたことを思い知らされました。小説レベルで歴史をみてはいけないのですね。うーん、なるほど・・・。近藤勇は単なる暴力集団の親分ではなく、社会を見る目をもち、理論的にも一貫した主張をしたので、一橋慶喜などから絶大な信頼を得ていた存在だったのです。そして新撰組は、江戸末期、武士が頼りにならなくなった現実をふまえて、豪農層や中農上層部から剣客が続々と輩出していましたが、彼らによって構成されていた剣客集団なのです。しかも、情報収集能力にすぐれていました。闘い方にしても、やみくもに無謀な一騎うちなんかではありません。
 新撰組の闘い方は、いつもきちんとした正攻法だ。多人数で囲み、相手を疲労させたうえで殺害する。味方には死者を出さない。新撰組のおかれていた歴史状況がきちんと描かれ、内部矛盾も鋭く分析されています。
 新撰組とは何だったのか、改めて考えさせてくれる本でした。

無限気流

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著者:井上文夫、出版社:光陽出版社
 『沈まぬ太陽』(山崎豊子、新潮社)は日本航空の労務政策を厳しく問いかける側面をもつ長編感動作でした。その主人公のモデル役になられた小倉寛太郎氏と生前に立ち話しをする機会がありましたが、その慈愛にみちたまなざしを忘れることができません。
 この本は、同じ日本航空福岡支店内の労務管理と真正面からたたかった人々の様子を小説化したものです。企業内で地道に労働者の権利を守る取りくみをすすめるというのが、いかに大変なことなのか、よく分かります。長いものには巻かれろ。事なかれ主義で、場あたり的に生きていくだけでは人生だめなんじゃないのか・・・。人生の生き方を、子ども時代に身につけた弱い者いじめをしない、正義と道理を貫くようにがんばるというまっとうな心をふまえて描かれています。そうなんだ、つい大事なことを忘れようとしていた。ふと反省されられました。

ブラザーフッド

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著者:カン・ジェ・ギュ、出版社:集英社文庫
 すさまじい迫力です。戦闘場面はアメリカ映画以上の生々しさです。機銃掃射の弾丸が迫ってきますので、映画館の座席にいながら思わず身をよけてしまいました。
 朝鮮戦争で同じ民族が殺しあったのは、わずか50年前のこと。金日成の指揮する北朝鮮軍が一方的に南侵を始めたのは歴史的事実ですが、それが世間の常識として定着するまで20年以上かかりました。私が大学生になったころは、まだ北朝鮮は自衛反撃したのだというのが左翼陣営の「公式見解」でした。
 イデオロギーの違いだけでなく、報復が報復を呼んで暴力の悪循環が悲劇を拡大させ、莫大な犠牲者を出しています。映画でも、そのことが生々しく描かれています。日本も朝鮮戦争の発生した原因に深く関わっていますし、なにより朝鮮戦争特需によって日本経済が復興したという事実を忘れるわけにはいきません。
 先の映画『シルミド』は金日成の暗殺部隊の真相を描いたものでしたが、韓国人1100万人が見たそうです。今度の『ブラザーフッド』はそれをさらに上まわり1300万人を突破したというのです。信じられない動員力です。しかし、実際に映画を見ると、それだけのインパクトをもつ映画だと実感できます。単にチャン・ドンゴンやウォンビンが出演しているからだけではありません。
 99年の『シュリ』、00年の『JSA』に続いて韓国映画は社会の現実を生々しく描いて鋭く問題を投げかける感動的大作が次々にヒットしています。この勢いが日本映画にも欲しいものです。韓国には、韓国映画の上映率を定めて、映画界を国が支援しているそうです。そこが日本と違います。日本の文化行政は貧困そのものです。ちなみに、この集英社文庫は映画のノベライズ版ですから、映画を見た人々にはよく分って助かりますが、とても韓国人が書いたとは思えない重大な初歩的ミスが2つあります。
 朝鮮戦争に介入した中国軍を指揮したのは林彪ではありません。彭徳懐です。むしろ林彪は、朝鮮戦争のときに中国義勇軍の指揮を回避したことが死後に罪証のひとつとされています。毛沢東は中国軍100万人を投入し、実に90万人もの死傷者を出したのです。
 毛沢東が朝鮮戦争に介入する経緯については『中国と朝鮮戦争』(勁草書房)、『毛沢東の朝鮮戦争』(岩波書店)という詳細な研究書が出ています。もうひとつは南朝鮮労働党(南労党)です。これは北朝鮮人民委員会の下部組織ではなく、あくまで朝鮮労働党の一部です。南労党についても詳しい本がいくつのありますが、『南部軍』(平凡社)を私はおすすめします。

グローバリゼーションから軍事的帝国主義へ

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著者:大西広、出版社:大月書店
 大変知的刺激を受けた本でした。
 イラク戦争において、アメリカは実は敗戦した。著者は、このように断言しています。戦争に勝ったと言えるためには、その戦争を支えるだけの国力をもっていなければならない。しかし、アメリカは、財政赤字を3000億ドルから4500億ドルへとふくらませてしまった。
 とどまるところを知らないアメリカの貿易赤字は1.5兆ドルをこえている。これは金利を年率5%として毎年750億ドルの金利返済ができなければ、債務が無限に膨張することを意味している。根元的な資金不足国家が長期に国際金融の中心を担うことはできない。
 世界の資金をアメリカに流入させるために、アメリカは無理してドル高政策をとっている。ドル高政策は、アメリカの製造業に打撃を与え、ただでさえアジアの急追に悩むアメリカの基礎的な工業基盤の弱体化を加速させた。アメリカにとって、世界の「ドル離れ」を阻止できるかどうかがアメリカの生死を決める。アメリカは「国際通貨ドル」を絶対に守らなければならない。イラク原油がユーロ建てになっては困るのである。中東原油に依存する日本や中国などの東アジア諸国の決済通貨がユーロ化してしまえば、「ドル体制」の終焉を意味する。 原油のユーロ建てを企てたベネズエラのチャベス大統領がクーデターによって追放されようとしたのも、アメリカの意図が反映されていた。イラクのフセイン攻撃も同じ脈絡でとらえられる。なるほど・・・。
 このほか、北朝鮮や中国についての分析も興味深いものがありました。

欲望の植物誌

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著者:マイケル・ポーラン、出版社:八坂書房
 マックのアイダホ・ポテトのつくり方はこうだ。
 早春、土にくんじょう処理をほどこす。ネマトーダや土中の病原菌を抑えるため、ジャガイモを植えるまえに、そのなかの微生物をすべて殺せるくらいの化学薬品を土に浴びせておく。ついで除草剤をまく。レクサン、セルコン、エプタムをつかって雑草を根こそぎにし、畑をクリーンにする。ジャガイモを植えたあとは、ティメットのような組織性殺虫剤をまいておく。これは若い芽に吸収され、数週間のあいだ。その葉を食べようとする虫すべてを殺してしまう。さらに、その苗が6インチほどに育ったころ、雑草を抑えるため、再び畑に除草剤をまく。
 ジャガイモ畑は大きな円の形をしていて、中心にかんがい装置がある。農薬も肥料も、この装置によって水と一緒にまくことができる。週に10回、化学肥料のスプレーをする。葉が茂ったころ、ブラボーという殺菌剤をスプレーする。2週間おきにアブラムシを抑える農薬をまく。モニターと呼ばれる有機リン化合物もまく。だから、生産農家は、自分で食べるジャガイモは別につくっている。もちろん、無農薬の有機栽培だ。
 ええーっ、そんな薬づけのジャガイモを食べさせられているの・・・?うーん。恐ろしい・・・。
 ジョニー・アップルシードと呼ばれた男はアメリカ中をリンゴのタネをまきながら歩いた。しかし、リンゴをタネから育てても、美味しいリンゴはできない。食用リンゴは接ぎ木からしかできない。では、どうしてジョニー・アップルシードが歓迎されたのか。それは、リンゴ酒をもたらすからだった。初めて知りました・・・。
 チューリップも、リンゴと同じく、タネからは同じものができない。タネから育てられた子孫は親とほとんど似ていない。
 自然の営みに素直に耳を傾けて、人類の生存の可能性を探っていく時期だとつくづく思いました。

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