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黙って行かせて

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著者:ヘルガ・シュナイダー、出版社:新潮社
 自分の親がナチスに心酔していて、アウシュヴィッツの看守をつとめていた。しかも、今もそのことを反省も後悔もしていないとしたら、子どもである自分は親に対して何と言うべきか。やはり、ママと呼びかけ、抱きしめるべきなのか。4歳と2歳の2人の子どもと夫を捨ててナチスへ走った母親に、その捨てられた娘が50年たって再会する。そのとき、母親にどう接したらよいのか・・・。実に重い問いかけです。
 最初のうちは、本当にちょっと気の毒だと思ったんだよ。でも、あたしは、すぐにそれを乗りこえた。自分のうけもつ囚人に対して同情やあわれみをもつことはあたしのやってはいけないことだったから・・・。
 不眠症にかかったことなんてない。自分を甘やかすわけにはいかなかったし・・・。焼却されたのは、ただの役立たずだけさ。ドイツをあのつまらぬ人種からとことん解放したやらねばねと思ってね・・・。
 イギリスのチャールズ皇太子の息子がナチスの服装をしたことが問題になっています。ナチスが実際に何をしたのか、真実をきちんと子どもそして孫へ伝えていくことの大切さを今さらながら感じます。

私のサウンド・オブ・ミュージック

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著者:アガーテ・フォン・トラップ、出版社:東洋書林
 映画「サウンド・オブ・ミュージック」の完全リメイク版を東京・銀座の映画館で見ることができました。大画面一杯にオーストリアの山並みと草原が広がり、ジュリー・アンドリュースがギターをもって歌い踊ります。昔みたなつかしい心象風景を思い出し、胸が熱くなりました。DVDを買って自宅でも見たのですが、やっぱり映画は映画館の大スクリーンで見るのが一番です。感動のスケールが断然違います。
 ところで、この本は映画のモデルとなったトラップ・ファミリー合唱団の長女が語る実際の話です。やっぱり、実際の話は映画とはかなり異なることが分かります。子どもたちがみな歌をうまくうたえたのは、死別した母親のもとで音楽にみちた暮らしをしていたからなのです。家庭教師(マリア)が来てはじめて歌をうたいだしたのではありません。
 マリアが修道院で品行方正とは言えず、階段の手すりをすべりおりたり、廊下でうたったり、口笛を吹いたり、お祈りに遅刻したのは事実のようです。そして、マリアは社会主義思想の持ち主だったそうです。父親が子どもたちを笛で呼ぶシーンがありますが、あれは事実でした。ただそれは、住んでいた邸宅が広いからでした。映画とちがって、父親はとても優しいパパだったと、長女である著者はしきりに強調しています。
 ナチスから脱出するときには、山登りなどせず、歩いて駅に向かい、列車に乗って北イタリアに行きました。脱出のラスト・チャンスのころでした。それからイギリス、そしてアメリカに渡り、生活費を稼ぐためにファミリー合唱団をはじめたということです。
 また、「サウンド・オブ・ミュージック」を見てみたくなりました。

テレビの嘘を見破る

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著者:今野勉、出版社:新潮新書
 私はテレビを見ません。高校生のとき、紅白歌合戦なんて日本人を一億総白痴化する番組でしかないという文章を読んで、なるほどと思って以来のことです。ただ、自然界に生きる動物をとらえた映像だけはビデオで見ます。私がテレビを見たくないのは、テレビの時間割に縛られたくないという心理も働いています。私は、あくまで自由でありたいのです。テレビなんかに縛りつけられるのはまっぴらご免です。
 ところで、この本は、ドキュメンタリーと称する番組が「やらせ」でできていて何が悪いのかとテレビ側の人間がいわば開き直って書かれたものです。読んで、なかなか説得力があると思いました。マイケル・ムーア監督の『華氏911』はドキュメンタリーとして良くできていると私は拍手を送りました。しかし、あれは、単なる反ブッシュのプロパガンダにすぎないのではないかと批判する人がいます。でも、本当にそうでしょうか?
 事実を真向からブッシュ大統領にぶつけて、イラク戦争の是非を視聴者に考えさせる材料を提供するものとして、『華氏911』はすぐれた作品だと私は思います。
 ベトナム戦争のとき、アメリカ軍のナパーム弾を浴びた村から少女が素裸で苦痛の悲鳴をあげながら走ってくる有名な写真があります。幸い、この少女は今も生きています。この写真がどのようにしてとられたのか、初めて事情を知りました。アメリカ軍はカメラマンたちにナパーム弾をゲリラの村に投下するところを撮影させようと待機させていました。村人たちは寺に避難させられました。なんと、その寺にアメリカ軍はナパーム弾を誤爆してしまったのです。だから、つくられた偶然によって撮影された写真だったのです。
 テレビの「やらせ」が一般の視聴者に見破られない理由は、放送までに何重ものチェックを受けているからだといいます。それでも「やらせ」はあります。それは「再現」ビデオと明記されていても同じような問題があるのです。
 昔の風俗を伝えるために過去の事実を再現することは許されるし、必要なことだと著者は協調しています。なるほどと私は思いました。
 見知らぬ地へはるばる出かけるときの行きの行程シーンが、実は帰りに、ところどころUターンして撮られたものだという「しかけ」には目を開かされました。同じ道を帰ってくる必要がありますが、行きはノンストップで行き、途中、絵になりそうなところをメモしておくのです。そして帰路にところどころでUターンして映像をとるというのです。なるほど、なるほど、いろいろ勉強になりました。

芥川龍之介の歴史認識

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著者:関口安義、出版社:新日本出版社
 芥川龍之介は私も好きな作家です。今年度から、高校生向けの国語の教科書に『羅生門』が一斉に載っているそうです。
 芥川龍之介が社会主義者の久板卯之助から社会主義の信条を教わっていたことを初めて知りました。そして、社会主義の文献もかなり読んだようです。ところが、関東大震災のときには、自警団の一員として街頭に立ったりもしています。しかし、そのとき朝鮮人への虐待を目撃したことが、芥川龍之介の社会を見る眼をさらに深めたようです。
 この本の大きなテーマとなっているのは、芥川龍之介が一高に入学してまもなく(1911年、明治44年、2月1日)、徳富蘆花が一高の講堂で行った演説を聞いたかどうかということです。ひとつの演説を芥川が聞いたかどうかがなぜテーマになるかというと、やはり、演説の内容がすごかったことにあります。このときの蘆花の演説は謀叛論と言われ、ときの一高校長であった新渡戸稲造が文部省から戒告処分を受けたほどです。幸徳秋水らの大逆事件の処理に関して、蘆花は政府をきびしく弾劾しています。
 パラドックスのようであるが、負けるが勝ちである。死ぬるが生きるのである。政府は12名を殺すことで多くの無政府主義者の種をまくことになった。当局者はよく記憶しなければならない。強制的な一致は自由を殺す。すなわち生命を殺すのである。幸徳君たちは時の政府に謀叛人とみなされて殺された。が、謀叛を恐れてはならない。自ら謀叛人となるを恐れてはならない。新しいものは常に謀叛なのであるから。我らは生きねばならない。生きるためには謀叛しなければならない。停滞すれば墓となる。人生は解脱の連続である。幸徳らは政治上に謀叛して死んだ。死んで、もはや復活したのだ・・・。
 たしかに、芥川龍之介は、この蘆花の演説を聞いて大いに発奮したのだと思います。ところで、芥川龍之介は夏目漱石に『鼻』をほめられ、文壇に順調に登場したものと私は思っていました。しかし、とんでもありません。若い学生の分際でわけのわからん文章を書いている、そのように酷評されていたのです。もちろん、若い才能へのやっかみです。
 芥川龍之介は、それにめげることなく見返そうと必死の努力を作品にそそぎこみ、いくつもの傑作をものにしたのです。芥川龍之介を一層身近に感じることのできる本でした。

内側から見た富士通

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著者:城 繁幸、出版社:光文社ペーパーバックス
 富士通はいち早くアメリカ型の成果主義をとりいれました。そして見事に「失敗」しました。なぜか。その実情をインサイド・レポートした本です。
 秋草社長(01年10月当時)の発言には驚かされます。業績不振の原因について記者から質問されたとき、次のように答えたというのです。
 くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない。毎年、事業計画をたて、そのとおりにやりますといって、やらないからおかしなことになる。計画を達成できなければビジネスユニットを替えればよい。それが成果主義というものだ。
 秋草社長は、従業員に対して憎しみ、怒りを隠しません。しかし、こんな人がトップの会社で、人は気持ちよく働けるものなのでしょうか・・・。
 裁量労働制の目標を人件費のカット。しかし、現実は、2極化の進行。高い評価のもらえそうな社員はすすんで裁量労働制を選択し、実際にも高い評価と高い賞与を得る。しかし、高い評価なんて得られないと自覚している社員は自主的に裁量労働制をやめ、あきらめる代わりに残業時間をヤケクソになって延ばすことに専念する。すると、できる社員とできない社員の賃金はあまり差がつかないうえ、人件費は全体として2割もアップした。
 社員評価はインフレーションを起こした。これまでのSAはAに、AはBに実質的になってしまった。波風の立つのを嫌う上司は、危なげないA評価を選ぶからだ。
 降格制度がないため、中高年社員は無気力化し、仕事以外のことに生きがいを求めはじめた。成果主義の恩恵を受けるはずの若い層もやる気を失い、結果として、世代間の対立を深刻化させてしまった。
 転職率は高く、採用時の評価上位1割が、3年以内に全員退職してしまった・・・。
 富士通労組は従業員の味方ではなく、第2人事部、つまり完全な敵。
 従業員は、働いてよかったという充足感がほしいのだ。毎日毎日がむなしければ、働く気なんか起きない。未来に希望がありさえすれば、多少のことは我慢できる。辛い労働だって、ちゃんとこなす。成果主義への幻想を捨てるときだ・・・。
 著者は、きっと私と同じ団塊世代だと思い、共感しながら最後まで読み通しました。すると、なんと驚くべきことに、まだ31歳の東大法学部卒の人でした。うーん、今どきの若い人(失礼!)にも鋭い人はいるんだ、改めてそう感服してしまいました。

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