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カテゴリー: 社会

大量廃棄社会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中村 和代、藤田 さつき 、 出版  光文社新書
現代日本社会は衣料も食料も、まだ使えるのに、まだ食べられるのに、惜し気もなく捨てているのですね・・・。呆れるというより、寒気がしてきました。
バングラデシュの8階建てのビルが崩壊して、1000人をこす縫製工場の労働者が生命を落とした。日本の安い衣料を縫製しているのはバングラデシュの低賃金労働者なのだ。
ユニクロ・GAPなど、低価格の衣料品ブランドがバングラデシュに生産拠点を置いている。
1年間に10億枚の新品の服が一度も客の手に渡ることないまま捨てられている。日本で供給されている服の4枚に1枚は、新品のまま捨てられている計算だ。
ブランド品のタグを外して定価の1割で買って、17%ほどで売る企業も存在する。
待ってまで買ってもらえる商品は、そう多くない。だから、やっぱり多目につくるしかない。
高級ブランドの商品だと、安売りはせず、処分費用がかかっても、すべて破砕して焼却する。証拠写真をとって、確実に処分する。そうやってブランド価値を守る。
洋服の需要調整は難しい。どんな商品をつくるか企画して、発注から販売まで半年から1年はかかる。その間に、トレンドが変わってしまうことがある。需給ギャップは、ふたを開けてみないと分からない。
日本で1年間に発生する食品ロスは646万トン。1人あたり茶碗1杯のご飯を毎日捨てている計算になる。節分当日、全国のコンビニでは売れ残った恵方巻きが大量に捨てられた。
この本では、食品ロスをなくすパン屋さん、手づくり衣料品をつくる試みも紹介されています。何でも安ければいいという発想を変えたいものです。値段は、それをつくる人たちの生活を支えているわけなのですから・・・。
現代日本社会の悲しい現実を知ると同時に、怒りを覚え、また、ほんのちょっぴりだけ希望をもてる内容の新書でした。やっぱり、コンビニとかファーストファッション店ばかりになってしまってはいけないと改めて思います。
(2019年4月刊。880円+税)

福島の記憶

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 飛田 晋秀 、 出版  旬報社
3.11で止まった町。こんなサブタイトルのついた写真集です。
まずは、大津波の恐ろしさに圧倒されます。
大きな船が陸に打ち上げられ、無残な船体をさらけ出しています。そして、建物はスッポンポン、もぬけのカラです。
駅があり、電車が停車したまま。
地震で火災も起き、津波に流されて火災が広がった。久之浜町では、家の今に車が突っ込んだまま。
3.11の恐ろしさは津波の被害だけではなく、放射能汚染にある。
楢葉町(ならはまち)では、津波の被害があったところが広大な空き地となり、そこに除染土壌を入れたフレコンバックが置かれている。
川内(かわうち)村は、原発事故のため中心地は無人。人の姿は見えない。至るところにフレコンバックが置かれている。
都路(みやこじ)町では、放射能被害が影響したのか、元気だった中年の女性が6年後に亡くなった。
葛尾(かつらお)村は、地震の影響は少なかったが、原発事故のため、全村避難した。村の風景を写真にとると、ありふれたフツーの田舎の光景だ。しかし、どこにも人がいない。牛も鳥もそして犬や猫の姿も見かけない。村全体で3000頭の牛を飼育していたのが、今や、雑草に家がのみこまれている。
富岡町の目抜き通りに桜が見事に咲いた。しかし、この桜も放射能に汚染されている。
除染作業をしたあとでも、1.62とか1.67マイクロシーベルトという高い線量だ。
町なかでもイノシシが出てきて徘徊している。除染したあとでも3.15マイクロシーベルトを示しているのを見ると、除染作業って本当に有効なのか疑問をもってしまう。
大熊町では放置された家の玄関先がなんと24.2マイクロシーベルト。かつてはにぎわった商店街は、今や完全な無人街。不気味だ。
双葉町(ふたばまち)には、有名な「原子力、明るい未来のエネルギー」という大看板があった。原発の「安全神話」は、今なおなくなってはいない。日本経団連は、幸いにも実現しなかったが、これほど危険な原発をベトナムやトルコなどの海外へ輸出しようとしていた。正気の沙汰ではない。
無人の商店街のキャプション(説明書)は、「地震被害だけなら復興が進んでいたはず」と書かれている。
抜けるような青空の下に広々とした草原が延々と続いています。いやはや東北地方も狭い平野ばかりではないのです。アベ首相の「アンダーコントロール」宣言をせせら笑うかのようにフレコンバックがあちこちに広がっています。
よく出来た写真集です。全国の図書館には必携ですね。
(2019年2月刊。1800円+税)

物流危機は終わらない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 首藤 若菜 、 出版  岩波新書
日本のトラック業界には、200万人が働いている。
私も宅急便には大変お世話になっています。東京への出張は日帰りせず、必ず一泊出張とし、最低でも6冊は読み上げることにしています。そして、行きはなるべくかさばる本を読み、読み終わったら宅急便で自宅へ送ります。1回1500円もかかりませんので、私にとっては安くて便利なものです。東京の弁護士会館の地下にある本屋で、読むべき本、必要な本を仕入れますが、これはいくら重くても持ち帰るしかありません。ともかく、便利な宅急便は私にとって必須不可欠で、いかに地球環境を破壊していると言われても、やめられないのです。
佐川急便は、2013年にアマゾンジャパンの運送をとりやめた。
ヤマト運輸は、2006年から2016年の10年間で、取扱個数が1.54倍、6億700万個も増えた。そして、いま日本を流れる宅配便の半数を握っていて、「ヤマト一人勝ち」の状況にある。
トラック運転手には、労働時間の短縮より、収入の増加を求める声が少なくない。
「ドライバーズ・ダイレクト」は、ドライバーの労働条件を悪化させる要因の一つ。
ヤマト運輸は、グループ全体で20万人の従業員をかかえる巨大企業だ。
ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社でシェアの9割以上を占める。
高速道路料金は、荷主から支払われない。
深夜の運転は睡魔とのたたかい。ドライバーたちは、常に時間に追われている。
パレットを使うと、積載効率が下がる。
長距離ドライバーの労働現場では、連続運転時間も、拘束時間も、休息時間も、国の基準がことごとく守られていないという現実がある、ドライバーは、1週間で10時間、1ヶ月で40時間、年間で460時間も長く働いている。つまり、1週間あたり、平均より1日も多く働いている。
トラック業界は、一手に非効率を引き受けてきた。現代社会は、無駄に車両を走らせる物流を基礎として、便利で効率的な仕事や暮らしを獲得していった。
日本郵便は本業(中核)である郵便事業について、赤字が続いている。
働く人々の高学歴化は、ドライバーのなり手不足に拍車をかけた。
かつては、トラック運転手は、「きついけど、稼げる」仕事だった。ところが、今ではきついうえに、稼げない仕事になってしまっています。
ネット通販が急激に拡大するなかで日本の物流が危機的状況にあることがひしひしと伝わってくる新書でした。
(2018年12月刊。820円+税)

ふたつの日本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 望月 優大 、 出版  講談社現代新書
在留外国人は、昭和の終わりの1988年に94万人だったのが、平成の終わりの2018年には3倍ほどの264万人になった。ところが、多くの日本人は今なお外国人や移民の存在を「新しい」もの、「異なる」ものとして捉えている。つまり、大きく変化した現実に対して、多くの日本人の感覚は追いついていない。
日本では長らく、「移民」という言葉自体がタブー視されてきた。日本政府は、深刻な人手不足に悩む経済界からの要請に応じて、外国人労働者の受け入れをさらに拡大しようとしている。しかし、その政策について、今なお、かたくなに「移民政策ではない」と言い張っている。
日本にいる更新不要の「永住権」をもつ外国人は100万人をこえている。韓国・朝鮮籍の人は全体の2割未満でしかない。
日本には、109万人の「永住移民」がいて、155万人の「非永住移民」がいる。そして、少なくとも131万人の「移民背景の国民」がいる。その合計は400万人だ。このほか、7万人の超過滞在者(非正規移民)がいる。
今や、日本は、世界第7位の移民大国になっている。アメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、フランスに次ぐ。それでも、日本は、他国と比べて外国人が総人口に占める割合が1.7%と小さいため、目立たない。
日本政府は、永住権もつ人を増やさずに、出稼ぎ労働者を増やしたいと考えている。これをローテーション政策という。日本にいる在留外国人の6割は労働者だ。製造業の割合が低下し、コンビニなどの小売業や居酒屋などの飲食業で多く働いている。
外国人を「モノ」ではなく、「人」として扱うのには相応のコストがかかる。医療や年金などの社会保障システムの対象とするのかどうか・・・。
フィリピンからの女性は相対的に高齢化が進んでいて、もっとも多いのは40代後半だ。
技能実習生は、2011年に14万人だったのが、2018年には倍の28万人をこえている。来日前につくった大きな借金のせいで、多くの実習生は、「進むも地獄、退くも地獄」の状況に追い込まれている。しかも、多くの技能実習生が頼れる人・場所がなく、孤立している。
日本語指導が必要な児童生徒は4万4千人。そのうち1万人近くは日本国籍。日本国籍をもつ「日本人」の子どもにも日本語指導が必要な者がいて、その数はどんどん増えている。
日本における外国人、移民労働者のおかれている現実と、それへの対応が緊急に必要だということを痛感されられた新書でした。
(2019年3月刊。840円+税)

東京大学駒場スタイル

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 東京大学教養学部 、 出版  東京大学出版会
私の大学生のころにも、金もうけが一番と考えている学生は少なくなかったと思います。でも、それを公然と言うのは恥ずかしいこと、はばかれる雰囲気がありました。
「貧乏人」の寄せ集まる駒場寮で私たちは読書会をやり、卒業後どう生きるかを真剣に議論していました。いえ、これは政治的に色のついたサークル(部室)のことではありません。いわば、ノンポリの寮生が岩波新書を素材として社会との関わり方を議論していたのです。そしてサークルノートを6人部屋で記帳し回覧していました。今も私はそのノートを持っています。
この本を読むと、教養学部長(太田邦史教授)が、「自分のことだけ考えてお金が入ればいいという感じの学生が増えてきているように思う。今の学生は優しい、いい子たちなんだけど、もうちょっと社会や世界のために生きるということも考えてほしいという気持ちがある」と嘆いています。
この発言にノーベル賞を受賞した大隅良典・名誉教授が共鳴して、「われわれの時代だったら、授業がなくなるくらいストライキがいっぱいあっていいはずのことに対して、今の学生はまったく敏感でない」と指摘しています。また、石田淳・前教養学部長も「学生は、もっと社会に対して関心をもってほしい」と注文をつけています。
幸いなことに、私のころには戦前からあったセツルメントサークルが戦後再建されて、地域に出かけて社会の現実に触れ、大いに議論する仲間がいました。社会との関わりも考えさせられました。そして、大学当局が無茶したり、政府が学費値上げを企むと、学生投票で過半数の賛成を得てストライキに突入して、授業がなくなりました。
まあ、無茶といえば無茶なのですが、学生のころには、そんな無駄も許されるし、必要なのだと今では思います。
大隅名誉教授の次の言葉は味わい深いものがあります。
「年齢(とし)をとるということは、切り捨てることなんだよ」
「失敗してはいけないという感覚は、科学とは相容れないもの。科学というのは、ほとんどが失敗の連続」
「いまの社会には、1回だって失敗してはいけないという感覚が若者にある。とくに受験に勝ち残った東大生には、失敗したらマイナスのスパイラルに落ち込んでしまうという恐怖感がすごく強い」
「『できました、先生』、『次は、何をやりましょうか』・・・。こんな感じの学生が東大生にも増えている。自分で課題を発見するより、提起された課題をいかに早く手際よく解く力が大事なことだと思い込まされている。それが問題だ・・・」
これって、本当に大切な指摘だと私も思います。弁護士だって同じことで、自分で物事を考え組み立てる能力が求められます。
この本のなかに、中世フランス語辞典を1人で、5年かけて完成させ、アカデミー・フランセーズから大賞を授与されたという松村剛教授の話があります。これは、すごいことです。学者って、すごいですね。9世紀から15世紀までの北フランス語を中世フランス語と呼ぶのですが、著者は十字軍時代のエルサレム周辺の文献まであたったようです。
毎日毎朝、NHKラジオのフランス語応用編を聞いて書きとりしながら、なんでこんなに進歩しないのかと自らを嘆いている身として、驚嘆するほかありません。学問の道は深く険しいことを少しばかり実感することができました。
駒場寮はなくなりましたが、1号館や九〇〇番教室そして話題の8号館は健在のようです。毎朝、学生気分に戻って浸るつもりでNHKフランス語講座を飽きもせず、聴いています。
(2019年6月刊。2500円+税)

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