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カテゴリー: 社会

宮本常一、伝書鳩のように

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮本 常一 、 出版  平凡社
戦後日本の全国各地を歩いて、その風俗を詳しく記録した偉大な民族学者である宮本常一の著書が復刻されました。
昔の食事は、1回1回の食事はみなちがっているが、1回ごとに一つのものを食べる。
サトイモを食べるときはサトイモだけ、アズキを食べるときはアズキだけ・・・。
ええっ、信じられない食べ方です。
高知県の山中にはシレエモチという食べ物がある(あった)。シレエというのは曼珠沙華(彼岸花)のこと。飢饉の年には、ヒガンバナの根を掘ってとり、ゆでて川でよくさらす。根には有毒素があり、そのまま食べると血を吐いて死んでしまう。そこで、ゆでたものを一週間も流水の中にさらしておくと毒が抜ける。それを臼(うす)に入れてついて餅(モチ)にする。決してうまいものではないが、飢えをしのげる。うひゃあ、す、すごいですね。
副食物をともなわない食事は、山間部だけでなく、畑作地帯には多かった。ソバにしてもウドンにしてもヒヤムギにしても、それを食べるだけで事足りた。
日本人の多くは、米を主食とせず、雑食によっていた。海岸にすむ漁民には、穀物の乏しいときには魚だけで食いつないでいた。
山口県の大島には、サツマのあばれ食いというのがあった。メバルを七輪の炭火で焼き、頭や尻尾、骨を取り去って焼けた皮と白身だけにして擂鉢(すりばち)に入れ、炭火であぶったミソと一緒にすりこぎでよくすりつぶす。十分にすりつぶすと、茶を濃くわかしたものを擂鉢にそそぎこみ、すりつぶしたものをかきまわし、どろどろの汁にする。この汁をたきたての御飯にかけて食べる。これがサツマ。御飯も汁も、冷めないうちに食べる。競争で食べると10杯以上は食べられる。
昔の人は、ごはん(お米です)をたくさん食べていたようですね。2時間かけて、1人で1升2合も食べたといいますから、肥満が気になる私には、まったく信じられません。
四国を歩くときには、宿に困ることはなかった。どこにでも、気安く泊めてくれる善根(ぜんこん)宿(やど)があった。
昔は、若い娘たちはよく逃げだした。父親が何も知らないうちに、母親としめしあわせて、すでに旅に出ている朋輩を頼って出ていく。旅に出て、旅の文化を身につけてきて、島の人にひけらかすのが、女たちにとっては、一つの誇りになっていた。つまり、娘たちにとって、旅は見習いの場でもあった。村に戻ったら、村の言葉を使わないといけないが、一方では場所言葉も十分心得ていて、出るところへ出たら、ちゃんとした物言いの出来ることが、甲斐性のある女となる条件だった。
大正の初めのころまで、「奥さま」とか「お嬢さま」という言葉はほとんど通用していなかった。身分の高い武士階級の妻は「オウラカタ」、庄屋・神主・下級武士は「オカタサマ」、村の財産家の妻なら「オゴウサマ」だった。そして、その娘は「ゴウサマ」と呼ばれた。
宮本常一の書いたものを読むと、日本の村々は、性的な開放度がすごく高かったことに驚かされます。若衆宿とか夜這(よば)いとか、あたりまえの世界です。処女を大切にするなんて、カケラもありません。日本人にとっては、昔から不倫・浮気はあたりまえだったのです。この「良き」伝統は、もちろん現代日本の今も生きていると弁護士生活45年の私は実感しています。
(2019年6月刊。1400円+税)

憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 高橋 哲哉、斎藤 貴男 、 出版  日本評論社
13年も前の本なのですが、タイトルに惹かれて読んでみると、内容的にはちっとも古くなっていませんでした。まだ集団的自衛権行使を認める閣議決定がなされておらず、安保法制法も制定されていないときの本です。
安保法制法が制定されても、自衛隊が戦争に参加していませんので、すぐにでも戦争に突入するかのように言っていたのは嘘だったのかと問い詰める人がいるそうですが、これはアメリカが、中東などで戦争をしていないことによるものです。
そして、戦争への危険はますます拡大しているような気がしてなりません。
全体としてみれば、戦争は経済的にプラスではない。しかし、特定の国にとって戦争がプラスの経済的影響を与えることがある。アメリカは膨大な軍需産業をかかえているので、戦争の遂行がアメリカの産業を潤すことになる。
日本にも、経済界のなかにグローバリゼーションや構造改革で利益を拡大している人たちは、アメリカとは何かを仲良くしておきたいと考え、戦争してもいいと考えているようです。残念です。
北朝鮮は、大規模な軍隊を保有している。しかし、実際には、日本に大規模な侵攻作戦をやれるだけの「もの・金」の裏付けをもっていない。そして、北朝鮮が仮りにやぶれかぶれになって日本に戦争をしかけてきたときには、日本が軍隊をもっていたからといって、何の役にも立たない。原発(原子力発電所)が一つでもやられたら、日本全土がアウトになるのは間違いありませんから・・・。
アメリカが日本に基地とアメリカ軍を置いているのは、あくまでアメリカ防衛のためであって、日本を守るためではない。そして、日本は、在日米軍の駐留経費(思いやり予算を含む)を負担しているので、日本に基地を設けてアメリカは大きな利益を得ている。
自衛隊の任務は国民を守ることではなく、国家を守ることにある。国民の生命・身体・財産を守るのは、警察の使命なのだ。
みんなが流されていって、あれよあれよと叫びたてるなかで戦争への道が目の前に登場していることになったら本当に大変です。安保法制法をなくせ、平和憲法を守れの声をさらに大きくしたいものです。
(2006年7月刊。1400円+税)

日米地位協定

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 章子 、 出版  中公新書
日米地位協定については、知れば知るほど腹が立ちます。やっぱり日本はアメリカの属国でしかないんだ・・・。このことを改めて強く認識させられる本です。
アメリカ軍が日本にいるのは、決して日本を守るためではないのに、少なくない日本人は依然としてアメリカ軍が日本に基地をもって存在しているから日本の平和は守られているなんていう間違い(錯覚)をしています。しかし、アメリカ軍はアメリカを守るために安上がりの基地を日本に置いているだけのことです。アメリカ軍の基地は真っ先に攻撃目標となるのですから、日本は守られるどころではなく、無理心中させられるような存在でしかありません。怖い話なのです。
たとえば思いやり予算。これは、日米地位協定の明文にもない日本の負担のこと。在日米軍の労務費や施設費を日本が私たち国民の納める税金で負担しています。今から40年前の1978年に始まり、32倍の2000億円にまでなっている。
うっそー、うそでしょと叫びたくなります。日本政府にお金がないわけではなく、こんなムダづかいをしているのです。許せません。
アメリカと日本の密約では、沖縄のどこでも基地にできる全島基地方式が確認されている。したがって基地の場所が特定されていないから、アメリカは好き勝手に基地をつくれるのです。ひどい話です。
ドイツもイタリアも、もちろんアメリカ軍とは、友好関係にありますが、アメリカに対して言うべきことはきちんと主張するという、独立主権国家としてのプライドをもってアメリカと交渉しています。当然のことです。日本人として、日本政府の卑屈そのものの対応は恥ずかしいばかりです。
たとえば、イタリアでは、アメリカ軍の訓練、作戦行動は事前にイタリア軍司令官の許可が必要。イタリア軍司令官は、アメリカ軍基地内のどこにでも自由に立ち入ることができ、アメリカ軍の行動を危険だと判断したら、ただちに中止させることができる。
これって主権国家として当然のことですよね。ところが、日本政府は、そんなことすらしようとしないのです。まさしく名実ともに日本はアメリカの従属国家でしかありません。悲しいです。
これだけ日米地位協定の屈辱的内容の問題点を鋭く指摘しながら、「あとがき」によると、著者は日米安保条約を支援する立場だということです。これまた信じがたい話です。どうみたって、首尾一貫しないと思うのですが・・・。
(2019年5月刊。840円+税)

真夜中の陽だまり

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 三宅 玲子 、 出版  文芸春秋
福岡・中州にある夜間保育園の実情が紹介されています。
夜間保育園は増えていない。夜間保育園は81園のみ(2017年)。夜間保育は、昼間の保育より人件費の持ち出しが多くなるからだ。そして、夜間保育園の新設予定はない。夜間保育のニーズが数字としては現れないからだ。
これに対して、ベビーホテルは、この40年で約3倍ふえて、1749施設に3万2500人の子どもが預けられている。実際には、無届出のベビーホテルがあるため、この数倍あると推測されている。
ベビーホテルは預けるのが簡単。子どもを連れていったら、その日から1時間いくらで預かってくれる。紙おむつOK、決まりごとなし。夜も、お金さえ払えば、何時まででも預けられる。親にとっては楽。だけど、子どものためには良くない。ベビーホテルには保育士はいない。
この本で紹介されているどろんこ保育園には、ひとクラスに4人も保育士がいる。保育士の給料は20万円をこえていて、有給休暇もとれる。
夜間保育園に子どもを預ける保護者の25%は単親家庭。多い園では43,5%にもなる。
2016年の1年間で、ベビーホテルから認可保育園へ移行した園は全国で49園あった。しかし、ベビーホテルから夜間保育園に移行した施設はきわめて少ない。
ゼロ歳保育も延長保育も、今ではあたり前の保育制度として社会に定着している。しかし、夜間保育所だけでは、今なお社会から受け入れられていない。
シングルで子どもを育てている中州の女性がすくなくとも400人はいる。しかし、日本社会には、子育ての責任は母親にあるとする「母性神話」が依然として根強い。
日本社会のニーズにこたえている夜間保育園の実情を預けている母親にも取材して、温かい目で紹介している貴重な本です。
福岡の宇都宮英人弁護士よりいただいた本です。いい本をありがとうございました。
(2019年9月刊。1500円+税)

日本社会のヘイトスピーチ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 金 竜介・姜 文江 、 出版  明石書店
在日コリアン弁護士たちが怒りをこめて日本社会の現状を告白しています。私もヘイトスピーチに接すると背筋が冷たくなりますし、悲しい思いです。
ヘイトスピーチ解消法が2016年5月24日に成立しているのに、なかなか実効性が上がっていない。
現場では、ヘイトスピーチをがなりたてるデモ行進が行政当局により許可され、現場の警察官はヘイトデモを守るようにして、「トラブル防止のため」と称して、ヘイトへのカウンター抗議行動のほうを規制している。これでは公務の適正な執行にあたらない。
在日コリアン弁護士たちに対して大量の懲戒請求がなされた。
これは、福岡でもあり、在日コリアンを支持していると決めつけられた日本の弁護士と弁護士会の役員に対する懲戒請求がなされました。もちろん、そんな請求が認められるわけではありませんが、弁護士会に無用な事務処理の手間と費用をとらせました。
在日コリアン弁護士たちは、根拠のない懲戒請求をした人に対して謝罪を求め、応じない人に対しては慰謝料を請求する裁判を起こしました。そして、東京地裁も東京高裁も、明確に人種差別であると認定して、被告(懲戒請求した人)に慰謝料を支払うよう命じました。
この懲戒請求した人の実像は、ごくありふれた中高年でした。ネットのヘイトスピーチをうのみにした、思慮の足りない人なのです。
ヘイトスピーチは、単なる悪口ではなく、人種差別の一種である。
在日コリアンの永住権を「特権」であるかのように見て言いたてる人は、日本が過去にした侵略・植民地支配に対する反省が欠けている。その歴史認識をきちんと身につけていると、「特権」とは考えられなくなる。
日本政府は日本国内にある外国人向け学校に対して補助金を交付している。しかし、朝鮮学校に対する補助金を日本政府は打ち切ってしまいました。とんでもない差別です。このような安倍内閣の偏った姿勢こそがヘイトスピーチを助長し、後押ししている。そして、これを司法が情けないことに追認している。本当に残念です。
この点でも、勇気ある裁判官が求められています。
こんな本を今の日本社会に広く普及させなければ、いけないというのは、本当に残念無念です。でもでも、それだからこそ、ぜひ、あなたも手にとって読んでみてください。
(2019年10月刊。2200円+税)

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