法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

企業不祥事を防ぐ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 國廣 正 、 出版  日本経済新聞出版社
日本のメーカーも、あちこちでインチキしていることが次々に暴露されて、なあんだ、日本のメーカーもたいしたことないんだなと、何度も思わされました。
法令を形ばかり順守していたらいいんだろ、そんな企業の姿勢では不正はなくならない。もっと前向きに考えるべきだと著者は提案しています。
その内容は、まさしく前向きで、楽しく取り組めそうです。
コンプライアンスという言葉には暗いイメージがあり、「またコンプラかよ」といった面倒くささ、「やらされ感」がつきまとっている。
それではいけませんよね・・・。
法律の条文から話をスタートさせるのが、コンプライアンスをつまらなくさせる元凶の一つだ。
再発防止策を「こなす」ことに時間を奪われると、社員の士気を下げ、かえってコンプライアンスを軽視する風潮を助長することになりかねない。
「盗む不正」は、行為者が所属する企業に対する裏切り行為。「ごまかしの不正」は、そうではない。
甘い処分は、身内意識のなせる技だ。
多くの企業で、小会社の社員は非主流・傍流とみられている。すると、社員のやる気が低下し、不正に対する心理的な抵抗感が薄れる場合がある。
問題を起こしたときの記者会見では、その時点で知り得た情報を開示するとともに、世間の共感を得るためにはどう行動するのが適切か、という視点を欠いていたらダメ。
物事は、すべて前向きに考えるのが言いようです。
(2019年12月刊。1700円+税)

サービスの達人たち

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 野地 秩嘉 、 出版  新潮文庫
この本を読むと、サービス業の一種である弁護士として、いささか反省させられることばかりです。この本に紹介されるのは、さすがにおもてなしの神様ともいうべき達人たちですから、生半可にマネできるものではありません。
日本が「おもてなしで一番」なんて、日本人の大きな勘違いでしかない。
現金商売の店で従業員が売上金を自分の懐(ふところ)に入れてしまうのは、経営者をまねしているということ。経営者が売り上げを抜いているのを見て、従業員がそれを見習う。税務署が気がつく前に、それが横行し、そのうち店はつぶれる。
ソムリエがワインを客にすすめるとき、ワインリストをもって銘柄を紹介するのではなく、まず、世間話から入ったりして、まずは客に受け入れてもらう。客に、おっ、こいつはオレたちを歓迎しているなと感じてもらい、緊張感をほぐす。なーるほど、ですね。
繁盛する店、いい店とは客をちょっとだけびっくりさせること。感動とは、びっくりさせることなんだ。
カツオ節があるのに、マグロ節はない。なぜか・・・。カツオだけ赤身の成分が複雑なので、だしが出る。
宅配便の運転手にとって何が大切か・・・。先日、イギリス映画『家族を想うとき』をみましたが、宅配ドライバーの過酷な生活の一端を垣間見た思いがしました。昼の休憩もなければ、トイレに行くヒマもないほど働きづくめで、しかも配達先の人たちとトラブル頻発というのですから、本当に辛い仕事ですよね・・・。
配達の技術面でいうと、もっとも重要なポイントは車の運転ではない。多くの荷物を一日で運ぶために習得しなければならないのは、スタート前の積み込み作業だ。宅配便ドライバーとして食べていくためには、運ぶ前に荷物をどう入れるか、並べておくか、これを短時間でやり遂げなくてはいけない。優秀なドライバーは、ここが上手だ。荷物の並べ方がドライブルートそのものであり、効率的に回ることができるかどうかを決めるには、積み込みができていなくてはならない。
宅配便の現場での最大の問題は、届けたときに人がいないこと。あるいは、ベルを押しても人が出てこないこと。一日の荷物が100個だとすると、だいたい20個は不在。再配達の割合が2割を占める。家にいても、出てこない人がいる。
どんなサービス業も大変なんですよね・・・。
(2019年6月刊。520円+税)

歴史のなかの東大闘争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 大窪 一志、大野 博、柴田 章ほか 、 出版  本の泉社
1968年6月から1969年3月まで、東大では全学部がストライキに揺れ、この間、ほとんど授業がありませんでした。
東大闘争というと安田講堂攻防戦しかイメージしない人が多いと思いますが、私をふくめて当事者にとっては画期的な確認書を勝ちとったことの意義を再確認したいところです。この本は、その点が欧米との比較でも論じられていて、大変参考になります。
アメリカのコロンビア大学では1968年4月に1週間の校舎占拠、警察機動隊の導入と学生の大量逮捕があった。そして、コロンビア大学には、今も学生代表をふくむ大学評議会という全学的な意思決定機関がある。1960年代のアメリカの学生運動は、大学の管理運営の民主化に少なからぬ痕跡を残している。
フランスでも1968年の五月革命のあと、大学評議会が成立して学生参加が公認されている。学生は、もはや未成年者ではなく、自立した市民としての成人と認め、学内における政治的自由が公認されている。
欧米と日本の違いはどこから来ているのか・・・。西ヨーロッパ各国では、その後、学生参加などに親和的な左翼政権や中道左派政権が成立したことにもよる。それに対して日本では、東大確認書の破棄を迫った自民党政権が続いた。
では、東大確認書はどうなっているか。東大駒場の教養学部自治会は全学連から脱退しているが、今もHPには東大確認書がアップされている。そして、学生の懲戒に関しては学生懲戒委員会が存在するが、その手続のなかに参考人団による審議がなされることになっていて、学生団員5人を選出するにあたっては学生4人から成る学生参考人会があって、そのなかから互選で選ぶことになっている。これは、今もちゃんと機能している。
つまり、このように東大確認書は今も生きているのです・・・。
次に、東大闘争に東大生がどれだけ関わっていたかを確認してみます。
大野博氏によると、デモに71%、討論に85%、ビラまきに40%、ヘルメット着用したというのは34%というアンケート回答がある。そして、東大闘争によって人生観が変わったと答えた学生が70%いた。
東大法学部についてみてみると、6月から12月までのあいだ、毎週のように学生大会が開かれていて、定員数300人のところ、毎回、その倍の600人から最高821人の法学部生が参加していた。そして、無期限ストライキ突入を決議した10月11日の学生大会には、午後2時に始まり翌朝午前6時半まで、延々16時間以上も学生大会は続いた。このとき、629人の参加があり、うち430人が朝まで議場に残っていた。これって、今ではまったく信じられないほどの参加者ではないでしょうか・・・。
1969年1月の秩父宮ラグビーでの七学部代表団と加藤一郎代行ほかの大学当局の大衆団交には、教職員1500人、学生7500人が参加していた。全東大から9000人もの参加のある団交って、すごくありませんか。そして、駒場の自治委員長選挙の投票率は60%をこえ、最高80%にまで達していたのです。
このように、東大闘争では、きちんと議論もしていたのであって、警察機動隊に対してゲバ棒でふるう東大全共闘が東大闘争だというのは、まったくの誤解なのです。この本を読むと、その点がかなり理解してもらえると思います。
ちなみに、民青同盟員は全東大に1000人いたとのことです。これまたすごい人数です。その人たちは、その後、そして今、どうしているのでしょうか・・・。
(2019年10月刊。3200円+税)

呪いの言葉の解きかた

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上西 充子 、 出版  晶文社
子どもたちへの道徳教育に異常なほど執着している安倍政権ですが、自分たちは道徳を守ろうとははなから思っていない様子で、膚寒い思いがします。その意味で、人間にとって他人との意思疎通のために不可欠な言葉があまりにも軽くなっています。安倍首相のへらへらした口調で語るコトバの何と薄っぺらなことが、この人は道徳教育よりも前に小学生の国語からやり直すべきでしょう。
ところが、もう一方で、激しい悪罵を他人に投げつけて喜んでいる人もいます。残念ですが、それも現実です。
私たちの思考と行動は、ともすれば無意識のうちに「呪いの言葉」に縛られている。
本書で、著者は、そのことにみんなが気がつき、意識的に「呪いの言葉」の呪縛(じゅばく)の外に出ようと呼びかけています。思考の枠組みを縛ろうとする、そのような呪縛の外に出て、のびやかに呼吸できる場所にたどりつこうと誘っています。大賛成です。
「嫌なら辞めればいい」という言葉は、働く者を追い詰めている側に問題があるとは気づかせずに、「文句」を言う自分の側に問題があるかのように思考の枠組みを縛ることにこそ、狙いがある。
「呪いの言葉」とは、相手の思考の枠組みを縛り、相手を心理的な葛藤の中に押し込め、問題のある状況に閉じ込めておくために、悪意をもって発せられる言葉だ。
悪質なクレームについては、相手の土俵に乗せられないように、心理的に距離を置きながら対応するという心構えが必要だ。
たとえば、「野党は反対ばかり」という人には、「こんなとんでもない法案に、なぜ、あなた方は賛成するんですか?」と切り返す。このとき、「賛成もしています」では単なる弁解であり、相手の土俵に乗ってしまっている。
呪いの言葉を投げかけてくる相手に切り返していく。それができたら、より自由に、より柔軟に、状況を把握し、恐れや怯(おび)えや圧迫から、心理的に距離を置いたうえで、状況への対応方法を考えられる。
権利要求には「発声練習」の場が必要なのだ。
三の目の選択肢がある。言うべきことは言い、自分たちの会社を自分たちの手で、より良いものに変えていくという選択肢がある。
著者は駅前や街頭などの公共空間で届出することもないまま(届出は必要ありません)国会審議の映像を公開しています。パブリックビューイングといいます。安倍首相や菅官房長官などが、意図的に論点をずらし、くだくだしい説明をし、野党とその背後にいる国民を愚弄(ぐろう)する答弁を続けている国会審議を国民に見てもらう、これが日本の現実を知るのに一番だと考えるからです。
11月8日の田村智子議員(共産党)の安倍首相との質疑応答は私も日本国民必見のものだと思います。ユーチューブで簡単に見ることが出来ます。30分間があっというまです。いつまで「桜」をやっているのかという野次に対しては、安倍首相が辞めるまでと私は切り返すことにしています。今よまれるべき価値ある本です。新年に読んで、心も軽やかに生きていきましょう。
(2019年6月刊。1600円+税)

自発的対米従属

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 猿田 佐世 、 出版  角川新書
福岡県弁護士会は、昨年12月下旬に著者を招いて沖縄問題をテーマとする講演会を開きました。著者は日本の弁護士であると同時に、アメリカ・ニューヨーク州の弁護士資格を有し、民間外交に大車輪で活躍しています。少々早口すぎるのが玉にキズなのですが(ついていけない老人がいます)、その語る内容は恐るべきものがあり、圧倒されます。
外交とは「劇」である。この「劇」を切り盛りするのは外務省であり、東京の本省と各国にある大使館が舞台をつくっていく。外交では、登場人物が限られているので、「劇場」の運営が容易である。
アメリカ人は、日本に無関心で、日本についての報道も多くない。
外交の世界では、アメリカ政府はことあるごとに「日米は特別な同盟関係にある」、「日本は特別」と言うので、日本人は、アメリカから日本は特別扱いされていると勘違い(誤解)している人が多いが、実はアメリカはよその国に対しても、同じように「特別な関係」にあると言っている。つまり、日本は、アメリカにとって「特別」な国でもなんでもない。この「特別な国」とは、外交につきものの美辞麗句であり、単なる決まり文句にすぎない。決して真に受けてはいけない。
沖縄国際大学にアメリカ軍のヘリコプターが墜落したときの生々しい状況フィルムを講演会のとき初めて見ましたが、現場にいち早く駆けつけてきたアメリカ兵が現場を封鎖して日本のマスコミ、そしてなんと日本の警察官までも現場に立ち入らせなかったのです。ここはどこの国かと、情けないというより怒りが湧き立つ映像でした。ところが、日本の外務省は、それを問題視することなく受け入れ、容認してしまいました。元外交官(宮家邦彦)は日本の警察がアメリカ軍による規制線の内側に立ち入れなかったことを無視して、日米共同で捜査したと強弁したそうです。まったく奴隷根性の持ち主としか言いようがありません。捜査できなかった事実を認識しながら、それを捜査したと評価してしまう。日本の土地の汚染を、日本の警察自らが調査して日本国民の命と生活の安全を保障することができないのに、なぜ悔しく思わないのでしょうか・・・。
これは、対米従属を自ら選びながら、そのことに気付いてすらいないという状況である。「従属」があたり前になりすぎると、自分から「従属」を選んだことを忘れてしまい、疑問すら抱かなくなるのだ・・・。
沖縄のアメリカ軍基地面積の7割を海兵隊が占めている。そして、アメリカ本土では海兵隊の規模を縮小しようという動きが根強い。
アメリカにとって、辺野古に基地を絶対につくらなければならないということはない。日本がつくりたいのなら反対はしないというだけのこと。
いやはや安倍政権のアメリカべったり、沖縄県民の意思無視はひどすぎます。
著者は、アメリカの国会議員のうち日本に関心をもっているのに、せいぜい10人が20人くらいではないかと講演で述べていました。その国会議員の認識として、次のような問題が紹介されていて、驚きます。
「沖縄の人口は何人か。2千人ぐらいか」
実は2009年当時で138万人。
「飛行場を一つつくってあげたら、沖縄の人たちは飛行機を使えるようになって便利になるのではないか・・・」
沖縄には飛行場がないと思っていた、この国会議員は、なんと、アメリカの下院(国会)の外交委員会のアジア太平洋環境小委員会の委員長なのです。いやはや、それほどアメリカの国会議員にとって日本も沖縄も眼中にないということなんですよね・・・。
つまり、辺野古問題の根源はアメリカ(ワシントン)にあるのではなく、日本の東京(霞が関と永田町)にあるのです。もういい加減に対米従属一点張りはやめたいものです。
(2017年3月刊。860円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.