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カテゴリー: 社会

ぼくがアメリカ人をやめたワケ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ロジャー・パルバース 、 出版 集英社
著者は1967年9月に日本にやってきました。私が、その年の4月に福岡から上京して大学生としての生活を始めたころになります。私は6人部屋での寮生活をはじめて、人間の社会というのを少しずつ分かっていきました。
著者は1944年生まれですから、私より4歳だけ年長です。21歳のとき、アメリカを離れて自分探しの旅に出たのです。日本で宮沢賢治に出会い、人生における意味と目的を発見したのでした。
著者がこの本で言いたいことは、みんなが自分なりにグレイト(great)な人生を送ることができる。それは、「情け心、ミンナニデクノボートヨバレテモとホメラレナクテモ」という気持ちにあふれた人生をさす。そうなんですよね…。
著者はユダヤ人です。ユダヤ人の天職は三つ。医師、弁護士そして公認会計士。
なるほど、アメリカの有力法曹にはユダヤ人が多いようです。
ところが、著者は、三つのいずれにもなりませんでした。
著者は、謝る理由なんかないと確信していても気前よく謝罪しようとする性格だそうで、それが「根拠のない謝罪」をする国である日本での長年の暮らしで役に立ち、日本文化に同化するための助けとなったのだろうとしています。
うむむ、残念ながらあたっていますよね…、と書いて、いやいや日本の首相は違うぞと、思い直しました。前のアベ首相は妻を「私人」だと言いはり、今のスガ首相は長男について「完全に別人格」と開き直って、苦しい弁解も謝罪もせずに強行突破を図ったのでした(ています)。日本人を代表しているはずの首相がそうだとしたら、ちょっとばかり認識を変える必要がありますよね…。
アメリカでは偽善の上に二つのアメリカが成り立っている。表向きの上品ぶったアメリカと、裏の悪徳だらけのアメリカ。
そうですね、トランプ前大統領はその二つを見事に結合させていましたね。
著者は生前の井上ひさしと親交があり、小沢昭一とも面識がありました。
ソ連の偉大なスパイだったゾルゲを助けた尾崎秀実(ほつみ)について、祖国を愛するあまり、祖国がアジア太平洋地域で無数の人々を犠牲にするのを許せなかった英雄として、現代日本人は大いに讃えるべきだと強調しています。私も大賛成です。
あまりにも多くの罪なき日本人を死に至らしめた人間こそ「売国奴」と言うべきですから、死刑となった東条英機を見直す前に尾崎秀実こそ英雄として見直さなければなりません。売国奴なんて、とんでもありません。
ベアテ・シロタのことも紹介されています。日本国憲法に人権条項を盛り込むことに功績のあるユダヤ系アメリカ人です。この「シロタ」というのは、孤児を意味していて、ユダヤ系の名前としては珍しくないということを始めて知りました。
著者は、日本人と暮らしてみて、度を越した謙遜はうぬぼれの印だということもあることが分かったといいます。ヘイトスピーチに走る日本人は、まさしくうぬぼれに溺れたかっているのでしょうね。日頃、職場で認められていない自分を鼓舞するため、他人をおとしめてヘイトスピーチをして、自分を高くもちあげようというのです。まさしく、さもしい根性です。
日本とは、どんな国なのか、アメリカを対比させながら考えている貴重なヒント満載の本でした。
(2020年11月刊。1800円+税)

にほんでいきる

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 毎日新聞取材班 、 出版 明石書店
外国から来た子どもたちは日本語が話せないまま、放置されているのではないか…。
在留外国人は過去最高の293万人(2019年12月)。
100の地方自治体に住民登録していた義務教育年齢の6~14歳の外国籍の子ども7万7000人のうち、就学不明(学校に通っているかどうか確認できない)子どもが2割、1万6000人。全国には2万2000人。その多くは、日本に「デカセギ」に来た外国人労働者の子どもだ。
久里浜少年院には、「国際科」がある。日本語のほか、ごみ出しなどのルールや日本の習慣・文化を教える。1993年に設置され、2020年までに300人が学んだ。
全国の1100超の自治体は、学校に通っていない子どもがどんな状況に置かれているか、まったく確認していない。
前川喜平・文科省の元事務次官は、外国籍の子どもの保護者にも就学義務があることを適用すべきだとしている。本当にそうですよね。便利な「人材」として受け入れたのは日本なのですから、その子どもに日本は責任をもつのが当然です。
法令に「外国籍を除外する」という文言はないので、当然のこと。まったくそのとおりです。人間を大切にしない政治はダメです。
子どもに通訳をつけてもダメ。通訳は、あくまで言語サービスであり、日本語教育ではない。うむむ、なーるほど、そうですよね…。
日本国内の学校や教室に通う日本語学習者は26万人。1990年度の4倍超。これに対して日本語教師が4万人のみ、しかも、その大半はボランティアと非常勤。
これはいけません。こんなところにお金を使わないなんて、政治が間違っています。人間を大切にするのが政治の役目です。
2019年に公表された日本語指導調査によると、日本語教育が必要な児童・生徒は5万人超(外国籍4万人超、日本籍1万人超)で、2016年の調査より7千人近く増えた。無支援状態の児童・生徒が1万1千人もいる。
15~19歳の不就学・不就労は、フィリピン16%、ペルー11%、ブラジル11%、ベトナム10%。学校に通っているのは、中国と韓国・朝鮮で8割超。ブラジル63%、フィリピン57%、ベトナム53%。
外国籍の生徒の高校中退率は10%近く、全体の7倍にもなる。
コンビニのレジに外国人が立ち、日本語で応対するのはもう日常の風景です。そんな彼ら彼女らが、どうやって日本語を身につけたのか、あまり考えたことがありませんでした。もっと小さい、小学生のときに日本に来たら、どうするのか、どうしたらよいのか、私たち大人はもっと周囲に目を配る必要があります。そして、そこにきちんとお金と人を手当てすべきだと改めて思ったことでした。
(2021年2月刊。税込1760円)

政党助成金、まだ続けますか?

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
河井議員夫妻が有罪となり、どちらも議員を辞職しました。当然のことですが、問題は買収資金となった1億5千万円が自民党本部から出ていて、しかも、政党交付金という税金が使われていたのではないか、ということです。その点が解明されずに幕引きするのは許されません。
自民党の二階幹事長が「他山の石」と放言しましたが、まさしく「自民党の石」であって、他人事(ひとごと)ではありません。
河井夫妻も1億5000万円が自民党本部からもらったこと、そのうち1億2000万円が政党交付金だったことを認めています。
政党交付金は1994年の「政治改革」の産物です。政治腐敗を防止するため、政党を助成するという名目でしたが、「政治とカネ」のスキャンダルは今に至るも続いていて、まさしく「泥棒に追い銭」状態。
自民党の元議員たち(金子恵美、豊田真由子)は、選挙のとき実弾(現金)が飛びかっている状況を真のあたりにして驚いたと告白しています。自民党の金権腐敗選挙に私たちの税金が勝手放題に使われているというのですから、許せません。
政党交付金は、政党が消滅したとき、残金があれば国庫に返還すべきは当然です。ところが、この本によると、解散寸前に、あちこち勝手に「寄付」してしまって国庫に返還していないというのです。これまた許せません。プンプンプンです…。
橋下徹の「維新の党」は、解党する寸前に9912万円を寄付した。橋下徹は、国庫へ返還すると約束したのを平然と反故(ほご)にしてしまった。ひどい話です。「日本のこころ」(中山恭子)、「希望の党」(松沢成文)も同じでした。
政党交付金は税金を減資としていますから、説明(報告)義務があります。ところが、その内訳の一つ、「人件費」は、いつ、誰に、いくら支払ったという明細を記載しなくてもよいというのです。信じられません。
総額の8千億円をこえる政党交付の7割、6千億円近くは自民党に交付されます。消費税値上げを推進してきた自民党の活動資金の多くを私たち国民の税金が支えているというわけです。いわば自民党は国営政党なのですが、本当に私たち国民のためになる政治をしているとは、私には、とても思えません。コロナ禍の対策にしても、GoToトラベルとかイートとか、アベノマスクに始まって、一部の大企業などが不当にボロもうけして、肝心のPCR検査やワクチン確保は大幅に遅れ、医療・福祉は切り捨てる一方…、ひどい政治をやりたい放題です。
それもこれも、投票率の低さ、政治不信をあおるばかりの一部マスコミの論調に大きな原因があるとしか思えません。みんなで投票所に足を運んで、ダメなもの、嫌なものにはキッパリ「ノー」という意思表示をしないといけません。
改めて、怒りをフツフツとたぎらせてくれる本でした。あなたもぜひ読んでみてください。
(2021年2月刊。税込1320円)

菅義偉の正体

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 森 功 、 出版 小学館新書
「庶民宰相」として高い支持率でスタートしたものも束の間、たちまちメッキがはげて正体があらわになって、支持率は低迷中。GoToトラベル、オリンピックにしがみついて、コロナ対策は国民の自粛まかせで、政府としての無策・無能ぶりには呆れるばかりというか、怒りを覚える毎日です。
前のアベ首相は、ペラペラペラと平然とウソをつきましたが、今度のスガ首相は、「ひたすら、何の問題もない」かのように装い、言葉で国民の前に立ち説明し尽くそうとはしません。
裏でコソコソと黒子役ばかりを演じてきたスガ首相は、表の舞台で語る才能もコトバも持ちあわせていないようです。平時ならともかく、コロナ禍の渦中にあっては、日本人全体の不幸を招く首相としか言いようがありません。
スガは、「秋田の農家の長男として生まれ、集団就職で上京…」と紹介されていたが、「集団就職」とは真っ赤なウソ。スガは、秋田の裕福なイチゴ農家で育ち、父親は町会議員を4期もつとめる町の名士(実力者)。高校を卒業して、集団就職ではなく東京の工場(段ボール会社)に就職したが、2年遅れで法政大学に入学した。
スガの母親も2人の姉も教員。スガ本人も北海道教育大学を受験したが失敗。イチゴ農家を継げという父親に反発して上京して就職した。集団就職とは関係ない。
法政大学法学部を卒業したあと、大学就職課に相談して、横浜選出の小比木(おこのぎ)彦三郎・衆議院議員の書生(秘書)になった。それがスガの政治家人生の始まり。
スガは総務大臣としてNHKの会長人事に口を出し、自民党によるNHK支配を強めていった。
橋下徹の「大阪・維新」と接近した。
沖縄では、翁長(おなが)県知事と対決した。
横浜にカジノを誘致しようとしている。これで横浜港のドン(藤木)とケンカ別れした。
GoToイートのおかげで「ぐるなび」は息を吹き返した。「ぐるなび」の滝はスガの強力な応援団の一人だ。
そして、楽天の三木谷浩史、金権腐敗の学者と目されている竹中平蔵…。また、スガを支える官僚としては不倫騒動で名前を売った和泉洋人、…。ろくな人物は周囲にいませんね。
菅首相の正体を知るには手ごろの新書です。
(2021年2月刊。税込1100円)

「パチンコ」(下)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ミン・ジン・リー 、 出版 文芸春秋
「在日」というと、今でもヘイト・スピーチの対象になっています。自らが大切に、愛されて育った実感がないまま、自分の抱いているコンプレックス(劣等感)のはけ口として「在日」を虫ケラよばわりして、うっぷん晴らしをしている哀れな人たちが少なからずいるという悲しい現実があります。
「在日」の人は、職業選択の点でハンディがあるのは間違いありません。弁護士の世界は少しずつ増えているとはいえ、まだまだ少ないです。医師は、昔から多いと思います。学者にも少なくないですよね。芸能人には美空ひばりをはじめ、日本の芸能界を支えていると思います。そして、財界にも孫さんをはじめ巨大な力をもっている人が少なくありません。そして、裏社会にも…。
弁護士を長くしてきて私も「在日」の人たちとの交流はずっとありました。なかでもパチンコ業界の人たちとは、今はありませんが、以前は何人も依頼者にいました。金融業者にも多かったですね…。
下巻は、日本社会における在日コリアンの複雑な心理が、見事に描かれていて、現代日本社会のいやらしさに、ほとほと愛想を尽かしたくもなります。でもでも、この本は決して、いわゆる「反日」の本ではありません。日本社会の複雑・怪奇な一断面が小気味よいほど切りとられ、物語となっています。
この本は、アップルTVで連続ドラマ化されているそうです。知りませんでした。テレビは見ませんので、無理もないのですが、アメリカで100万部も売れた本なので、それもありでしょう。
登場してくる男性たちが次々に死んでいき、残ったのはたくましい女性たちだけというのも、男性である私としては、少しはハッピーエンドにしてもらえないものかと、ないものねだりをしたくなりました。
ということで、下巻は車中と喫茶店で読みふけってしまうほどの出来でした。これほどの読書体験は前に紹介した『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)以来でした。一読を強くおすすめします。
(2020年12月刊。2400円+税)

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