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カテゴリー: 社会

特務(スペシャル・デューティー)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 リチャード・J・サミュエルズ 、 出版 日本経済新聞出版
日本人は、誰もが、男でも女でも、生まれながらのスパイである。
これは、蒋介石の言葉だそうです。ええっ、そ、そんな…、本当でしょうか。
冷戦期の日本は、CIAはもっていなかったが、KGBは実際にもっていた。それは、警察、外務書、防衛庁だ。ええっ、これにも驚かされますよね…。
日本のインテリジェンス部署は、小規模で包括的でなく、調和せず、財源不足で、長く続く政治的敏感性(とくにスパイの使用に関して)の結果、不必要に複雑だ。彼らは、みな相互不信の環境にある。
日本の陸上自衛隊のインテリジェンス部隊は、アメリカのパートナーには秘密のコードネームの下で稼働していた。
今日では、日本の分析官はもっとも進んだ宇宙スペースの画像処理技術の多くを用いて、中国の空母のデッキに並んで立っている5人のパイロットと1人の儀典官を識別できるという。
1997年、日本は、シギント(通信情報)とイミント中心の防衛庁情報本部を設立した。
データマイニングは、いまでは干し草の山のような情報の中から脅威をもたらす針を探し出すことを可能にしている。
6要素とは、収集、分析、伝達、保全、秘密工作、監視。収集は、常に故意に流された偽情報に立ち向かい、打ち勝たなければならない。
アメリカの秘密工作を担当する特殊計画局は、2800人の職員を擁し、イタリアや日本で反共政党を招集し、イラン、インドネシアなどで左傾政府を動揺させた。
日本の陸軍は、1917年から1937年までの20年間に、私立の英語の語学学校に75人の士官を送り込んで英語を身につけさせようとした。中国語に102人、74人をドイツ語に、63人にフランス語を学ばせた。ええっ、英語の比重の低さに驚かされます…。
ムサシ機関が、陸幕二部班として知られている。彼らは、基地の外で、私服で活動し、国内や東アジア全域で共産主義者を監視するようになった。山本舜勝は、日本帝国陸軍の情報将校であり、中野学校の教官であり、警察予備隊に参加している。
2014年から2015年にかけて、特定秘密は25%も増えた。
日本の特務(スパイ機関)はまったく霧の中で、見えませんよね…。
(2020年12月刊。税込3300円)

密約の戦後史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 新原 昭治 、 出版 創元社
いやあ、世の中には知らないこと、知らされていないことがこんなにもあるのかと、ついつい背筋が寒くなりました。
著者は福岡市内で出生し、日本敗戦を知らされたのは、中学2年生のとき、福岡市郊外の山あいでの塹壕(ざんごう)掘りに駆り出されていたときのことでした。当然のことながら、そのときまでは生粋の軍国少年。戦後は九大で心理学を学び、卒業して長崎のラジオ放送局に入って放送記者になります。そして、長崎で被曝の実態を調べ始めたのでした。ところが、原爆被害については、アメリカ軍の厳重な情報統制下にあって、自由に報道することがゆるされていなかったのです。
当時の記者は、「そんなことを書いたら、沖縄送りになりますよ」とアメリカ軍人から脅されていた。不穏分子と見なされると、沖縄にCIAの秘密基地があって、そこに監禁されていた。GHQが開いた記者会見で、アメリカの将軍はこう言った。
「原爆放射能の後遺障害はありえない。すでに、広島・長崎では、原爆症で死ぬべきものは死んでしまった。9月現在、原爆放射能のために苦しんでいるものは皆無だ」
これって、3.11のあとの安倍前首相の「アンダーコントロール」発言と本質的にまったく同じ。現実を見ないで、被害はなかったものにしようというもの。3.11のあと、たくさんの人々が10年たっても故郷に戻れずに今日に至っていますし、爆発したフクイチ(福島第一原発)の修復作業は放射能デブリの処理を含めて、あと何十年、いや何百年も、きっとかかってしまうでしょう。それほどの難事業なのです。それにしてもアメリカ軍の高級幹部がGHQの承認のもとで、こんな嘘を高言していたとは驚きでした。
アメリカ軍は朝鮮戦争のとき、核兵器を使おうとした。私は、マッカーサー将軍が独断専行しようとしたとばかり思っていましたが、本書によると、違うようです。
実のところ、トルーマン大統領は北朝鮮に核兵器をつかう(投下する)つもりだった。ところが、マッカーサー将軍が、先走って核攻撃をしようとするので、大統領がマッカーサー将軍を罷免した。
1950年8月5日、10機のB29爆撃機がアメリカ本土の空軍基地を飛びたった直後、うち1機が爆発して同機に乗っていた作戦全体の指揮官が亡くなり、重大な核兵器事故を起こした。結局、朝鮮戦争でアメリカ軍は劣勢挽回のために核兵器を使わなかった。それは核兵器の安全性の問題とイギリスなどから猛烈な抗議の申し入れがあったことによる。
そして、朝鮮戦争の後半段階で、アメリカ空軍は、核模擬爆弾投下作戦を繰り返した。
朝鮮戦争のとき、朝鮮での原爆投下作戦はひそかに準備がすすめられた。東京の横田基地と沖縄の嘉手納基地の二つ。アメリカ軍は厚木基地に、1953年、核攻撃任務だけをもつAJ-1サベッジ爆撃機部隊を配備した。
1953年10月には、アメリカ軍の横須賀基地に核爆弾を積んだ空母オリスカニ」が寄港した。同じく、アメリカ空軍は小牧基地に戦術核爆弾であるMK7(重量700キロ)を持ち込んだ。
イントロダクション(導入、移入)とは、固定的・本格的な配備のこと。貯蔵などによる長期の配置状態を言う。エントリー(飛来、立ち入り)とは違うもの。そして、トランジット(通過)とは、核兵器を積んだ艦船や軍用機が一時的に外国に寄港したり、離発着すること。格密約は、日本への核兵器の「トランジット」の自由を保証している。
この日本へのアメリカの核持ち込みを保証している密約は、二本立て。つまり、文書化されたものと、口頭だけのものと、二つある。日本政府は、核持ち込み反対の国民世論に従ったふりをしながら、アメリカ政府と核密約を結んで、日本国民をだましてきた。
アメリカのベトナム侵略戦争のとき、ニクソン大統領は核兵器を使う気だったが、キッシンジャー補佐官が反対したという話が出てきます。1972年4月と5月と、2回あったようです。
沖縄において、いつでも原子砲を使えるようにするための訓練がおこなわれていたのでした。さらに、アメリカ陸軍は、南ベトナムに1000人以上もの核兵器整備要員を常駐させていた。核兵器そのものは沖縄の米軍基地に置いていた。
東北地方のアメリカ軍の三沢基地にあった戦闘機部隊は核爆弾投下訓練をくりかえした。過酷な訓練のため、2年足らずのうちに11人ものパイロットが死亡している。
日本政府は、アメリカ軍による核兵器の持ち込みを許し、黙ってやってくれさえすればいいという態度をとってきたし、今もとっている。そして、日本国民には、核の持ち込みは事前協議の対象になると嘘をついて、国民をだましてきたし、だましている。
まことに腹ただしい話です。どうして、これほどまでに日本の政府当局者と官僚がアメリカに対して卑屈になってしまうのか不思議でなりません。自律した日本人としての誇りが彼らにはまったくないのですね…。
残念な日本の現実を知ることのできる本として、一読を強くおすすめします。とても分かりやすい文章で、内容自体はすらすら読めました。もちろん腹を立てながらですけど…。
(2021年2月刊。税込1650円)

沙林、偽りの王国

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 帚木 蓬生 、 出版 新潮社
オウム真理教の犯罪を医学者の立場から詳しく追跡していった労作です。もちろん著者も作家であると同時に著名な医師です。
残念であり、不思議なことにオウム真理教という、いわばインチキ宗教、人を救うのではなく、平気で何十人もの罪なき人々を殺害した集団に日本の最高学府を経た人々が多かったという事実です。東大理Ⅲ、医学部卒も2人いるそうですし、青山某は京大法学部出身の弁護士でした。
この本は、歴史的事実をもとに、小説として構成したフィクションだと著者が初めに断りを書いています。それにしても歴史的事実のほうは全部が実名ですので、オウム真理教とはいかなる集団だったのか、よくよく理解できる構成・ストーリー展開です。
私は、麻原以下の死刑執行に反対でしたし、今でも処刑すべきではなかったと考えています。処刑してしまえば、みんな過去の歴史になってしまいます。でも、オウム真理教は今も名を変えて存在しています(盲腸のように役立たない存在とみられてきた公安調査庁を起死回生させ、今やその存在意義となっています)し、問題を風化させて(忘却の彼方へ追いやって)はいけないと考えるからです。
オウム真理教は熊本でも大きな問題を引きおこしました。1990年から波野村で5万坪の土地を取得して教団の建物をつくり、信者が住みはじめたのです。そして、村民は追放運動をはじめ、裁判にまでなりました。1994年8月、オウム真理教は波野村から9億2000万円をもらって出ていきました(和解成立)。びっくりするほどの巨額です。
1995年1月17日、阪神・淡路大震災が起きた。そして、3月20日(月)朝、東京の地下鉄でサリン事件が起きた。さらに3月30日(木)朝、警察庁の国松長官が自宅を出たところを狙撃され、瀕死の重傷を負った。この犯人はプロの狙撃手としか考えられなかった。オウム真理教の信者にそんな人間がいるのか…。
警察はオウム真理教の信者であった警察官を取り調べていましたが、ついに起訴することができませんでした。犯人はオウム真理教の信者ではないという本があり、かなりの説得力があります。
林郁夫は慶応大学医学部を卒業し、その父も兄夫婦も医師。
教団ナンバー2の村井秀夫が教団総本部前で衆人環視の中で右翼・暴力団の男から牛刀で刺殺されたのも不可解な事件だった。
坂本堤弁護士一家を殺害したオウム真理教の犯人は6人(村井秀夫、早川紀代秀、新実智光、中川智正、岡崎一明、端本悟)。中川は、背広のポケットに塩化カリウム溶液の入った注射器3本を入れていた。岡崎が坂本弁護士の首を絞め、中川が本人の都子(さとこ)さんの首を絞めた。都子さんは、「子どもだけでも助けて」と叫んだのに、中川が子どもの鼻口を押さえ、新実がけいれんした子どもにとどめをさした。いやはや、本当にむごいことをする連中です。涙が出てきます。
都子さんは、1985年4月28日に大牟田であった全国クレサラ交流集会に参加して、受付を手伝ってくれました。10月20日、坂本一家の葬儀が横浜アリーナで行われ、弔問客は2万6千人に達した。私も行きたかったです。
麻原智津夫は金の亡者だった。修行の名目で在家信者から、数十万、数百万円単位でお金を吸い上げた。教祖の血を飲ませるとひとり百万円、教祖が入浴したあとの湯も高額で売りつけた。電極付きのヘッドギアは在家信者には1千万円で買わせた。
教祖・麻原の妻・松本和子に子どもがいるほか、石井久子は公然たる愛人であり、3人の子を産ませている。そのほか、少なくとも2人の愛人がいて、女性信者にはひとりずつ、2時間の「説法」に及んでいる。
化けの皮をはがされた麻原の反応は、まずは怒号。次は支離滅裂の弁明。そして最後は、何やら自分流の呪文らしいブツブツ。これら一連の反応は、すべて生きのびるためのあがきであり、窮余の一策としてのブツブツは、あわよくば精神異常の診断をかちとるための詐病だった。
2018年7月6日、7人に死刑執行された。新実54歳、井上嘉浩48歳、中川55歳、早川68歳、麻原63歳、遠藤誠一58歳、土谷正実53歳。20日後の7月26日、6人の死刑が執行された。林泰男60歳、岡崎一明57歳、横山真人54歳、広瀬健一54歳、端本51歳、豊田亨50歳。
麻原と遠藤は最期まで反省せず、林泰男は不明、あとの10人は罪を悔いた。
上川陽子法務大臣による死刑執行は政治的意向が働いた。この人の頭のなかは、残念ながら、それだけのようです。社会に責任を果たしているとは思えません。
大変な労作です。著者に敬意を表します。
(2021年3月刊。税込2310円)

ブラック霞が関

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 千正 康裕 、 出版 新潮新書
慶応義塾大学法学部を卒業して厚生労働省に入り、18年半ものあいだキャリア官僚(総合職)として働いてきた体験にもとづいた本です。
つい先日、厚労省の官僚たちが送別会で23人も夜中まで銀座の居酒屋で飲食していた事実が暴露され、世間のひんしゅくを買いました。しかも、クラスター発生とは…。開いた口がふさがりません。官僚の厳密なチェックを経て国会に提出された法案に多数の誤字等の誤りが判明したのも強い衝撃を与えました。
いずれも内閣人事局も官庁全体の人事を手中にして統制をきかせているはずなのに、いかにもタガがゆるんでしまっている状況です。いったい、官僚たちのホコリはどこに行ってしまったのでしょうか…。かつて、ほんのちょっぴりだけ官僚志向だったこともある私としては、情けないというか、腹立たしい思いに駆られます。
厚労省時代、著者は週の半分は終電過ぎまで働いていて、深夜のタクシーで帰宅していた。残業時間は、月に150時間から、国会審議のときには300時間…。信じられません。霞が関ではサービス残業が横行していて、本当の労働時間は公表できない。これまた、異常です。
幹部公務員は、土日にも国会議員からケータイに電話がかかってくるので、気の休まる時間がない。上から下まで余裕がなくなっている。
パワハラするような職員(公務員)には、仕事ができる人が多い。そして、パワハラする人に限って、先輩には丁寧だったりするので、上からは見えてこない。
最近の若手女性職員は、自分のライフデザインと合わないことを理由として離職するケースが多い。職員全体の働き方が変わらないかぎり、女性活躍など、実現できるわけがない。
公務員の定年を延長すると、現実には若手・中堅にしわ寄せが来て、いま以上に疲弊し、離職者が増加するだろう。それは、鉱務崩壊を招く。
うむむ、そういう視点をもたないといけないのですね…。
キャリア官僚の1割は体調を崩して休んだ経験がある。いやはや、これはひどい職場です。いつまでも、そんな職場であっていいわけがありません。
キャリア官僚の志願者はどんどん減っている。志願者は1998年度に5万5千人、2020年度は1万7千人弱。この20年間に3分の1になってしまった。これはこれは…。
キャリア官僚がやりがいのある仕事だと学生に見えなくなったことに原因がある。
それはそうでしょうよ。国会で平然と苦しいウソの答弁をさせられる。そのうえ、残業ばっかりで、給料は高くない。こんな仕事を誰が希望しますか…。
私は、官僚を全否定するつもりはまったくありません。そうではなくて、内閣人事局で人事を一元管理して、シロをクロに、クロをシロに言い換えさせられ、上にゴマをする人だけが出世するようなキャリアシステムをすぐにやめて、官僚は国民に対してのみ責任をもつという、本来の姿に戻るべきだと言いたいのです。
(2021年1月刊。税込858円)

忖度しません

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 斎藤 美奈子 、 出版 筑摩書房
反知性主義なるコトバは、私には、まったくピンとこないものです。いったい、誰が何を批判しているのか、さっぱり予測できません。
創価学会支持を高言している佐藤優は、結局、自公政権つまり与党支持者と考えるしかないと思うのですが、アベ政権を批判しているようでもありました(佐藤優の本をちゃんと読んでいるわけではないので、あくまで印象です)。
安倍晋三を批判する人を反知性主義の人たちと決めつけられると、違和感があります。いえ、ありすぎます。だって、安倍首相のやったことは、黒を白といい、「丁寧に説明する」と言いながら何も説明せずに時の過ぎるのをひたすら待つだけだったではありませんか。そこに知性のカケラもないことは明らかです。それを、なんだかこむずかしく「反知性主義」なんてコトバにしてしまうと、かえって、多くの国民は戸惑うだけなんじゃないでしょうか…。
やはり、物事はズバリ言えるときにはもってまわった言い方をせず、ズバリ、「ウソをついたらいけない」、「説明になっていない」と批判すべきです。
佐藤優のコトバは、もってまわった表現で、結局のところアベ政治の本質を擁護しているとしか私には思えませんが、どうなんでしょうか…。
この本の著者は、いつも歯切れよく時評をコメントしていますので、いつもいつも目を大きく見開かされる思いです。
コロナ禍は、おさまるどころか、急激に広がり、医療崩壊に日本中が直面している。ところが、政府のやっていることは相も変わらず「自粛」一辺倒。PCR検査はやらない、ワクチンの接種はいつになるか分からない。だけど、オリンピックはやる。「ムダ」な医療機関の整理・統合は既定方針どおり進める。
本当に日本の政治はまちがっています。アベ・スガ政権による大々的「人災」が進行中としか言いようがありません。
マスコミは、飲食店の「自粛」が徹底しているか「見守り隊」が点検してまわっているのを、さも行政が何かやっているかのように報道します。とんでもない報道です。その前に政府がやるべきことがあることを、なぜ厳しく追及しないのでしょうか、摩訶不思議としか言いようがありません。PCR検査を徹底させる、ワクチンをきちんと確保、病院で治療を受けられるようにする。これが政府の当然の使命です。ところが、どれもやられていません。なぜマスコミは厳しく糾弾しないのでしょうか。オリンピックにしても、聖火リレーの報道なんか止めて、オリンピックそのものを中止せよとなぜ言わないのでしょうか…。
「反中」、「反韓」、「反野党」。これをやっていると売れるとマスコミ経営陣はみているというコメントを読みました(本書ではありません)。戦前の大本営発表を無批判にたれ流していたマスコミの愚行を繰り返してほしくありません。マスコミに働く人々に、もっと現実を直視して、スガ政権に忖度しない報道をしてほしいと切に願うばかりです。
(2020年9月刊。税込1760円)

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