法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

住宅営業マン・ぺこぺこ日記

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 屋敷 康蔵 、 出版 三五館シンシャ
住宅営業マン…、あまたある営業職のなかでも群を抜いたハードワーク。きわめて高い離職率を誇っている。一生に一度の高い買い物として、数千万円のお金が動く現場はきれいごとの通じない世界。会社から、「目標」という名のノルマを課され、お客からは過剰な要求、ときに不当なクレームをつけられる。
タマ「ゴ」ホームの固定給は「生かさず殺さず」ほどの金額、つまり、22万円。これに成果を出して歩合給がプラスされて、ようやく生活が成り立つ仕組み。うまくいけば年収1000万円以上も夢ではない。歩合給は、契約金額の1.2%を着工時、上棟時、完工時に3部割で支給される。
イベントの景品だけをもらいにくる「客」がいる。ところが、本気で住宅購入を考えている客ほど、景品をもらいたがらない。その逆に、景品目当ては客にならない人ばかり。
タマ「ゴ」ホームにはノルマはなく目標があるだけ。しかし、いつのまにか「目標」は「ノルマ」にすり替わっている。3ヶ月以上も契約がとれない営業マンは「接客停止」処分となる。 そして、精神的に追いつめて、自主退職の流れをつくる。
また、成績の悪い営業マンの罰ゲームとして、飛び込み営業させられる。成績が悪いと、こうなるよ、という見せしめに使われるのだ。
住宅メーカーによって、金額・坪単価にはかなりの開き(差)がある。これは、広告その他の諸経費・人件費をどれだけかけているかの差でもある。
規格設計と自由設計…。規格住宅は、間取りや外観の自由度がないだけでなく、設備のグレードも落ちて、見劣りしてしまう。
住宅営業マンは、客のもっている「お金のニオイ」に敏感だ。でも、その判断を見誤ることがある。そして、来た人のなかで、誰が決定権をもっているのかを探るのが肝心。本当にお金をもっている人は、逆にもっているフリをしない。
今日、家を買おうとは思っていない人に、今日、家を買わせるのが住宅営業マンの仕事だ。タイミングを逃がすと、客の住宅購買意欲は下がってしまう。
きのう初めて展示場に来た客に、今日、契約の確約をもらい、明日、契約する。所要3日で押し込む。これが、スーパー短期間クロージング。
住宅営業マンは、お客の前で理想の人間を演じ続ける、「一流の詐欺師」でなければならない。多くの人が、家という名の「夢」を買いに来る。
タマ「ゴ」ホームでは、頻繁に入社して退職するため、そもそも新入社員が長く働き続けることを期待していない。
タマ「ゴ」ホームでは、毎朝の朝礼で、まず額縁に入った社長の写真に向かって「おはようございます!」と挨拶する。これって、いかにも軍隊調ですよね、ひどく違和感があります…。
私の依頼者に、何人も住宅営業マンがいました。少しは、その苦労話を聞かされていましたので、話として、良く理解できました。それにしても大変な仕事ですよね…。いつまで、こんなハードな仕事をやれるものでしょうか…。でも、社会的には必要な仕事なんですよね。
(2022年6月刊。税込1430円)

非戦への誓い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版 あけび書房
ロシアのウクライナへの軍事侵攻、つまり戦争が始まって4ヶ月になります。ユーチューブの映像でリアルに戦闘場面を見ることができます(ドローンによる上空からの撮影動画)。
戦車が撃破され爆発する映像を見るたびに、戦車内にいた4人か5人の若者たちが一瞬に蒸発したかのように死んでいったのかと、本当に胸が痛みます。
そんなロシアによる戦争を見せつけられ、少くない日本人が平和憲法、とりわけ9条に不安を抱き、軍事予算を倍増させようという自民・公明の政権党、それをあおりたてる維新などに心を動かされているようです。
でも、ちょっと待ってください。日本が原子力潜水艦をもって、北朝鮮や中国から日本を守れるなんて、ありえないでしょ。日本海側にたくさん立地している原発(原子力発電所)へのミサイル攻撃を防ぐことなんて出来るはずがありません。そんな事態にならないよう、日本が戦争に巻き込まれないように外交努力を強めることこそが日本の政治家のつとめなのです。
イラクでは、日本の沖縄は、「殺人鬼を製造する島」だと思われている、とあります。これには、正直、ショックを受けました。イラク戦争でイラクの人々を殺したアメリカ兵の多くが、「自分は沖縄の基地から来た」と話していたから、イラクでは、沖縄というところは殺人鬼をつくる島だと信じられているというのです。
いやあ、これは、とんだ濡れ衣(ぎぬ)ですよね。いや、ちょっと待った。今、日本政府が強引に建設を強行している辺野古新基地建設において、沖縄の現地住民の気持ちは、玉城デニー知事を先頭とする沖縄県庁をふくめて、ほとんど無視されていますよね…。
敗戦直前の沖縄戦の過程で、軍隊(日本軍)は住民を助けることは二の次で、目標の主たる優先順位は軍隊であって、余裕があれば(そんな余裕は実際にはない)、住民を救助することがある、という程度でした。
沖縄県民にとって、自分たちを守ってくれるはずの沖縄の軍隊は、住民の身の安全を守るどころか、軍隊を守ることが最優先だった。
戦争は、ある日突然に起きるのではない。戦争になるのが当たり前という雰囲気がつくられていく。今、まさしく現代日本が同じ状況ではないでしょうか?
アフリカ沖のスペイン領のカナリア諸島に「憲法9条の碑」があるそうです。
ロシアのウクライナへの侵略戦争が続くなか、日本国憲法9条は意味を失ってしまったのではなく、逆に今こそ9条の出番なのです。平和は銃口の先に生まれるのではなく、みんなで話し合うこと、つまり外交交渉によってこそ実現できるものなんです。
自民・公明の日本政府が非核条約を批准せず、ウィーンで開かれている国際会議に出席もしないというのは、いつものアメリカ言いなりの姿勢そのもので、世界中をガッカリさせるものでした。日本国憲法9条を馬鹿にしてはいけません。この9条を生かすも殺すも、私たち次第です。
著者は私と同じ団塊世代です。私と違って語学の天才のようですから、まさしく国際派のジャーナリストです。いつも、いい本をありがとうございます。
(2022年3月刊。税込1980円)

二本の棘

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山下 征士 、 出版 角川書店
タイトルからは何の本か分かりませんが、兵庫県で捜査一課長をつとめた著者の体験記です。森永グリコ事件のような迷宮入り事件もとりあげられていますが、とくに目新しい事実が紹介されているわけでもありません。警察の捜査というのは地道な努力の積み重ねだということ、それには市民の信頼と協力が欠かせないという、しごく当然のことが書かれています。
それにしても、警察官による銀行強盗事件が兵庫県で連続して発生したというのには改めて驚きました。福岡でも警察官の銀行強盗事件が起きましたが…。
1984年3月、警部補(42歳)が大阪市内の泉州銀行難波支店にモデルガンをもって押し入り、現金1000万円を強奪した(5分後に逮捕)。動機は、ギャンブルなどによる借金苦。翌4月、大阪・池田市の幸福相互銀行池田支店に巡査長(43歳)が猟銃をもって押し入り、121万円を奪った。犯人は、翌日、逮捕された。40代の警察官が銀行強盗するなんて、まるでアメリカのギャング映画に出てくる悪徳警官です。
森永グリコ事件では、犯人を取り逃がした滋賀県警の本部長が自殺しました。たしか、ノンキャリア組の出世頭の本部長だったように思います。
捜査に必要なのは、体力と根性だけではない。それも重要だが、広範囲にわたる教養や知識、分かりやすく説明する力、ひらめきと想像力、目に見えない人間の心を理解する力、そうしたものすべてが捜査に役立つ。なーるほど、そうなんでしょうね。
キャリア組が捜査一課長になると、よほど現場での経験やある種の根性がないと、部下がついていかない。現場主義の思想が根強くあり、県警本部の捜査一課長は、「高卒叩き上げ」の指定席になっている。そうでないと、クセのある刑事たちをまとめきれないからだ。
捜査一課長には多くの「才能」を認めて活かすことが求められる。
1987(昭和62)年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局の記者殺害事件について、著者は犯人は右翼だと推測しています。
グリコ森永事件の犯人たちは金銭目当てだったが、朝日新聞を襲撃したのは右翼思想の人間の犯行だということです。
かのサカキバラ事件、そして1974(昭和49)年11月の「八鹿(ようか)高校事件」もこのころ起きたのですね…。私が弁護士になった年の秋のことでした。
(2022年3月刊。税込1870円)

白虎消失

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 大脇 和明 、 出版 新泉社
文化財の保護って、本当に大変なことだと痛感しました。中国に行ったとき、皇帝陵墓の発掘を止めていると聞かされ、驚いたことを思い出します。掘り上げるのは簡単だけど、その保存・維持に自信がないというのです。
千年以上も地下で眠っている貴重な文化財を掘り上げ、現代の汚染された空気にさらしたとき、たちまちボロボロになって朽ち果ててしまう危険がある。そうならないようにする技術が、まだ十分でない以上、簡単には発掘できないとのこと。うむむ、なるほど、なーるほど……。納得しました。
同じ問題を、高松塚古墳の色鮮やかな壁画もかかえているというのが本書のテーマです。
高松塚古墳は、1300年前の古墳時代の終末期に築造された円墳。石室内に壁画が描かれていることが分かったのは、50年前の1972年春のこと。鮮やかな古代の衣装をまとった人物群像は日本中を驚かせた。
私も本当にびっくりしました。源氏物語絵巻より古い衣装の女官たちが極彩色で突如として出現したのですから…。1ヶ月前に浅間山荘事件(連合赤軍事件)が報道されたので、明るいニュースに心が浮き浮きもしました。もちろん、この壁画は国宝に指定されました。
ところが、西壁中央に描かれていた「白虎」(四神図の一つ)の姿が、今やほとんど消えているというのです。これは本当に残念なことです。
その劣化の原因の一つにカビがあり、カビの繁殖を招いた要因の一つが石室への人の出入りだ。カビの繁殖や処置のくり返しのために人の出入りが繰り返され、カビがカビを呼ぶ「負の連鎖」に陥っていた。いやはや、なんということでしょうか…。
1972年3月27日の朝日新聞の一面トップに高松塚古墳に「法隆寺級の壁画発見」という大々的な記事が載った。いやあ、これはすごいです。このときは白黒写真でしたが、3月29日の夕刊のカラー写真は、まさしく世間の度肝を抜きました。早速、このカラー特報を表装して掛け軸をつくって売り出した商人までいたそうです。たしかに、それほどの衝撃がありました。
高松塚古墳は、奈良県明日香村平田にある、7世紀末から8世紀初めに造られた小さな古墳。私も数年前の夏、明日香村に行き、電動自転車にのって石舞台古墳などを見てまわりました。
高松塚古墳は、高さ5メートル、直径18メートルという小さな古墳。被葬者は「熟年の筋骨発育の良好的な男性で、身長は163センチ」で、天皇(大王)ではなく、皇族クラスのようです。明日香村を訪れる観光客は昭和50年代のピーク時には年180万人だったが、今では80万人ほど。そして、今では解体され、別のところで保存されている。
残念ながら、そういうことになるのですよね、しかたありません…。
(2022年3月刊。税込2200円)

「部落」は今どうなっているのか

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 丹波 真理 、 出版 部落問題研究所
弁護士になって25年目くらいだったと思います。なので、今から40年以上も前のことです。 中年の女性がやってきて、息子の結婚相手の女性が「部落」の人だと分かったので、結婚をやめさせたいが…という相談を受けました。内心、今どき、こんなバカなことを言う人がいるんだ…と驚き、かつ、呆れ、また怒りがこみあげてきました。なので、やんわり諭して、帰ってもらいました。しかし、私が「部落差別」に関わる相談を受けたのは、これだけです。あそこは「部落」だと聞かされたことは何回かありましたが、当時も今も、どこも混住していて、他地区と変わるところはまったく感じられません。私の兄も建売住宅を買って「部落」だと言われるところに移住しましたが、誰も気にしませんでした。
この本は、愛知県のある「部落」に移り住んだ団塊世代の女性が、「部落」に住み、また転出していった人々に聴き取りをしたレポート集のような内容です。同じ団塊世代の私にも実感としてよく分かりました。
60年前、600世帯も住む大型部落には、真ん中に共同風呂があり、そこを取り囲むように店があり、住居が密集していた。お好み焼屋、うどん屋、八百屋、肉屋、床屋、貸本屋、散髪屋、花屋、たばこ屋、パーマ屋、クリーニング取次店があった。ビリヤード場、古着屋もあり、公会堂では芝居が演じられた。地域の中だけでこと足りる生活があった。
今、当時の面影はまったくない。道路が広げられ、銭湯もほとんどの店もなくなり、今は、たまに開く肉屋が1軒あるだけ。居住しているのも、地区出身が多いけれど、地区から転入してきた人も半数近くいる。
この地域は常に水とのたたかいだった。何回も床上浸水した。同時に貧困とのたたかいもあった。地域には、少数の富裕層と多数の貧困層が多数の貧困層が入りまじって生活していた。地域の人々には、全国各地を行商してまわる人も多かった。暗く、いじけた人々ではなく、いたって人間好きで、たくましく、明るい人々が住んでいた。
地域内の富裕層の多くは、一族もろとも地域外へ転出していった。
この地域で育った30代前半の男性は、「歴史上の話でしか知らないこと。ぼくらの世代には実感なかったし、関係ないと思っていた。まわりに、そんなことを言う人もいなかった」と語った。
地域内で建て売り住宅が売りに出されたとき、この地域だから安いということもなく、また値段が適正なら、すぐに買い手がついた。
著者は、部落差別は全体として大きく解消の過程にあるとしています。まったく同感です。ヘイトスピーチは、今でも存在していますというか、自分と異なる人の存在を許さないという風潮は依然として根強く、ときに牙(きば)をむくこともあります。在日、ゲイ、LGBTそして、アカ…。いろんな「少数」者を差別し、自分の優位性を誇示しようとする嫌な人が存在するというのが哀しい現実です。
「部落」の昔と今が曇りなき目で丹念に掘り起こされている貴重な労作だと思いました。
(2021年10月刊。税込1000円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.