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カテゴリー: 社会

小さな労働組合、勝つためのコツ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鈴木 一 、 出版 寿郎社
 今の日本社会ほど労働組合の存在が忘れられている時代はないように思えます。
 著者は、あとがきに次のように書いていますが、まったく同感です。
 先進資本主義国のなかで、日本ほど実質賃金の下がった国はない。その原因は、労働運動が弱くなったことにある。労働組合の多くが、企業で不祥事が起きても、それを告発したり防止しようとはせず、ただ傍観するだけの「名ばかり組合」になっている。政府や資本を牽制・対峙するような労働運動が日本にほとんどなくなった。
 そして、このような状況を打破するため、著者はその32年間の血と汗、苦労のエッセンスをこの本に実例とともに分かりやすくまとめました。いわば労働相談の手引書です。
 著者は、これまで150をこえる職場で労働組合を結成したというのです。すごいですね。そして、その8割で組合つぶしの不当労働行為が発生して、たたかったのでした。
 労働組合の結成を成功させるコツは、組合員に労働者の権利と不当労働行為制度を理解させること。当事者が腹をくくり、専従オルグがしっかりサポートすれば、職場での多数派を直ちに形成するところまでいかなくても、組合結成は必ず成功する。
 組合員がパニックに陥らないように、あらかじめ対策を立てておく。会社側が表の顔と裏のそれを使い分けているようなときには、裏で何を企むのか、想像力を働かす必要がある。
 団体交渉では、ハッタリにひるまないようにするのが肝心。団体交渉は、格闘技であり、相手をどう抑え込むかにかかっている。
 何の計画性もなく、ただ「その場で思いついた」という争議行為はとても危険だ。
 32年間ものあいだ、労働組合づくりと団交等に生き甲斐をかけた日々を振り返って後進に自分の経験から学べるものを伝えるべく、整理しています。とても実践的かつ分かりやすい本です。どうぞ手にとって読んでください。
(2022年10月刊。税込1980円)

若葉荘の暮らし

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 畑野 智美 、 出版 小学館
 40歳以上の独身女性というのが入居条件となっているシェアハウスに入居するようになり、そこでの生活にいつのまにか安らぎを覚えるようになる主人公の日常生活が描かれています。とくに何か大事件が起きるわけではありません。
 主人公は一度も結婚したことがなく、ずっと独身。それでも、彼氏はいたのです。ところが、なんとなく踏み切れないまま別れてしまったのでした。仕事は、洋食屋のウェイトレス。小さな店なので、正社員ということではなく、アルバイト。
 ところが、コロナ禍で客が激減し、店の存続が心配になる。オーナー夫婦はいい人だし、従業員同士の人間関係も悪くはない。シェフ見習いは、新しいメニューを開発しようとしていて、試作品を店員みんなに持ち帰らせて、意見を求める。主人公もシェアハウスに試作品のコロッケなどを持ち帰って、その住人に意見を求めてみる。
 飲食店はコロナ禍の下、客が減って大変だ。主人公は、かといって簡単に転職するなんて考えられない。まったく移る先の宛(あて)がない。
 主人公が5年前までつきあっていた彼氏は、別の女性とも交際していて、結局、そちらを選んだ。浮気とか二股とかとは、少し違う。なので主人公は怒ってはいない。彼氏が対等に生きていける女性を人生のパートナーとして選んだ。そのことをとがめだてするつもりはない。今は、洋食店に客としてやって来る男性と交際してもいいかなとは思うものの、なかなか踏み切れない。
 彼氏とは別れる直前までセックスもしていたけれど、それは特別なことではなくて、日常的な行為だった。セックスは、若いときほど貴重でないというが、そんなに大事にすることなのかなという感じ。経験した人数は、そんなに多くはないし、どちらかというと少ないとは思うけど、ひとりとしか寝ないということでもない。もっと色んな人と寝ておけば良かったと考えることもある。
 もう子どもを産むこともないだろう。そうすると、セックスになんの意味があるのか、悩んでしまう。これから彼氏ができたとして、なんのためにセックスするのか…。それが愛の証(あかし)と言えるような、重要なことには思えない…。
 これが40代の独身女性の心境なのでしょうか…。
 このシェアハウスは、もとは学生向けのアパートだった。それを改装して、台所と風呂場とトイレを共有スペースにして、40歳以上の独身女性限定のシェアハウスにした。
 学校でちゃんと勉強してきた人と、そうでない人で、ベースが違うと感じたことがあった。中学生や高校生のときに、まったく興味がもてないと文句を言いながらも暗記した日本史や世界史、なんの話をしているのか分からないと思いながらも考え続けた生物や化学や物理、見るだけで頭が痛いと感じながらも解き続けた数学。役に立ったとはっきり思えるような出来事があったわけではないけれど、たしかに覚える力や観察する力、そして考える力が養われていたのだ…。
 女性にも、男性にも、それぞれ抱える問題がある。本来は、政治がどうにかしていくべきことなのだろう。でも、それを期待できるような国でないことも、分かっている。声を上げることは必要だ。でも、変わることを待つばかりでなく、自分たちで助けあう方法も考えなくてはいけない。
 いろいろ、しみじみと考えさせられるストーリー展開でした。
(2022年9月刊。税込1980円)

統一教会とは何か

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 有田 芳生 、 出版 大月書店
 2022年7月8日、奈良市の大和西大寺駅前で安倍晋三元首相が銃撃を受け暗殺された。その映像は生々しく、警察の警備があまりにスカスカだったことにも驚かされました。容疑者は特定の宗教に恨みがあったからと供述していると報道されましたが、参院選の投票日(7月10日)のあとになって、ようやく、統一協会がらみだと報道されはじめました。
 この本では「統一教会」となっていて、一般の報道もそうなっていますが、正式名称は統一協会ですから、「教会」ではないのです。あたかもキリスト教の教会の一種かのような誤解を与えようとしているのに乗せられてはいけません。なので、私は「協会」とします。
 日本の警察も、オウム真理教の次は統一協会だとして情報収取を始めていたそうです。それがいつのまにか、「天の声」によって雲散霧消してしまったのでした。要するに、「政治の力」がかかったのです。文科省が下村博文大臣のとき、名称変更を急に認めたのと同じです。安倍―下村ラインは、それまで拒否され続けていたのに名称変更を受理しました。
 統一協会の信者に若い女性が多いのは、「堕落論」に惹(ひ)かれるほど、日本社会に歪みが多いということの反映だ。
 統一協会に入る若者には、何でも受け入れてしまう性格で、それが本当かどうかを他の方法で確認せず、論理よりも感覚的という共通点がある。
 統一協会への入信テクニックは強烈で、個人のニーズに合わせて多様だ。
 統一協会の信者をやめるときのポイントは、本人が自分の頭で考える姿勢になること。
 ノルマは1日に3万円。人を騙しているという罪悪感は一切ない。すべてはお父様のため、地上天国実現のため。早朝から深夜まで、押しつけ的なモノ売りに走らされます。
 統一協会を離れたりしたら、家族や先祖が霊界でどんなひどい目にあうか分からない。だから、どんなに辛くても、逃げ出すわけにはいかない。こんなひどい心境に置かれています。
 お父様(文鮮明)は、不本意ながら、ぜいたくな生活をしていらっしゃる。信者(食口。くっく)は、北朝鮮の人々より高い生活水準をもつと、霊界からのしっぺ返しをくうことになる。
 いやはや、文一族のぜいたくざんまいは「不本意」だと思わされているのですね、アベコベです。
 合同結婚式のあと、4割くらいのカップルが実際には破綻していると言われている。家庭を大切にと言いながら、自分たちは実践してもいないのです。
 統一協会は国会議員の選挙を応援するに際して、議員(候補者)本人に確認書にサインさせています。
 ①統一協会の教養を学ぶためセミナーに出席する。②国際勝共連合系であることを認める。③統一協会を応援するというもの。
 そして、統一協会は議員秘書養成所で教育した若者たちを自民党の議員秘書として送り込んでいるのです。統一協会秘書軍団が議員を動かし、自民党を動かしています。
 韓国人が人間であるのに対して、日本人は、パンくずを拾う犬の立場、乞食に等しい存在だ。文鮮明の前に、日本の天皇はひざまずく存在だ。日本は韓国に仕える国であり、いずれ世界の言語は韓国語に統一される。
 こんな極端な韓国中心主義、いわば「反日」の典型の教団と安倍派を筆頭に自民党の国会議員たちが文鮮明と韓鶴子夫婦を最大限もち上げてきた(いる)のです。信じがたい、また日本人として許せないことではないでしょうか…。
 統一協会のいわば僕(しもべ)として活動してきた萩生田議員(自民党の政調会長)、細田衆議院議長が議員辞職することもなく、ひたすら、ほとぼりのさめるのを待っているなんて、日本の政治の醜悪の極致です。いま広く読まれるべき本です。
(2022年10月刊。税込1650円)

ウトロ、強制立ち退きとの闘い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 斉藤 正樹 、 出版 東信堂
 京都府宇治市にあった在日朝鮮人集落ウトロ地区に建てられたウトロ平和祈念館を10月24日に見学しました。秋晴れの日の午後のことです。
 ウトロ地区は、今では地区改造がすすみ、市営住宅が2棟建築中(1棟は完成して入居ずみ)で、昔の「不良住宅」の面影はわずかに残っているだけです。
 その一角に、ヘイト思想にこり固まった若者が放火した建物の残骸がまだ残っています。
 なぜ、ここが在日朝鮮人集落になったのかというと、戦前、日本軍が近くに飛行場をつくろうとして、朝鮮人労働者を朝鮮半島からひっぱってきたからです。戦後も、彼らはそのまま住みつきました。
 戦前、1300人もの朝鮮人労働者が集められました。慶尚南道の農民が多かったとのこと。
 飯場は連棟式長屋で、単身者だけでなく、家族もちも多かったそうです。
 戦後は、国有地ではなく、民間企業の所有地でしたが、低湿地のため、大雨が降るたびに水びたしになり、水道もない、まさしくスラム街。そこに在日朝鮮人が固まって生活していました。住民の3分の1は戦前の飛行場建設に関わって働いていた人たち、残り3分の2は、他地域からの転入者。
 ウトロは土地全体が、ここに住む在日朝鮮人の共有財産のような感覚だった。
 1970年2月、ウトロの住民代表は、土地の売却を要望する文書を土地所有者に送った。これが、あとで時効取得の成立を妨げることになった。
 そして、1988年に、土地所有者はウトロの住民を被告として、建物収去土地明渡訴訟を提起した。これに対して、住民側は、土地(地上権)の取得時効を主張した。
 裁判所の和解案は、住民側が土地を14億円で買いとること。とても、そんなお金はない。そして、敗訴判決が1998年1月に出た。先の要望書がウトロの住民に所有の意思がなかったことの証明にされたのです。
判決にもとづき強制執行がされるのを防ぐため、住民は結束して立ち上がった。道路を占拠して座り込んでいる住民の写真があります。実に壮観です。
 それだけではありません。住民は学者の応援を得て、国連に訴え出たのです。国際人権規約にもとづいて、日本政府は、もっとも効果的な救済措置を即時にとるべきであって、これは人権条約上の国の義務だという申立をし、これに対して、国連は政府に同趣旨の勧告をしたのでした。いやあ、こんなときに国連と国際人権規約が使えるのですね。
 そして、これが日本政府だけでなく、韓国の政府と世論を大きく揺り動かしたのでした。その結果、2つの財団ができて、ウトロ地区の土地は財団の所有となり、住民は市営住宅に入ることができたのです。そして、立派なセンターとつくりあげました。すごーい。
 知恵と工夫が、住民の団結を後押しし、世論を大きく動かしたことはよく分かりました。何事も、あきらめたらいけないんですよね…。
 この付近で育ったという福山和人弁護士(京都弁護士会)が案内してくれました。ありがとうございました。
(2022年4月刊。税込1320円)

玉城デニーの青春

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤井 誠二 、 出版 光文社
 「オール沖縄」候補が那覇市長選挙において大差で自公のアメリカ軍基地増設容認候補に敗北したのはショックでした。何より市長選の投票率が50%に達しないというのが残念です。
 なんだか、どっちもどっちだな。そんなら、わざわざ投票所に足を運ぶこともないんやな…。
 有権者の半分も投票所に行かないなんて、日本はそれだけで異常な国だと思います。よその国は、投票に行きたくても行けなかったり、監視つきでしか投票できなかったりしているのに、日本国民は、あまりに怠慢です。まさしく惰眠をむさぼっています。そのツケはすでに来ていて支払わされているのに、そのことに気がつかずに、毎日、オレ(ワタシ)は忙しいんだし(忙しいのよ)、なんてウソぶいているのです。本当に残念です。
 でも、私は絶望してはいません。やれば、たたかえば出来ることを、この本の主人公が示してくれているからです。玉城デニーが沖縄県知事選挙で当選したことは万鈞の重みがあります。このとき、自由と民主主義を求め愛好する人々の良心が勝ったのです。
 その沖縄県知事の青春を振り返った本です。ああ、そういう人だったのか、それで沖縄の厳しい選挙選を勝ち抜くことができたのか、よく分かりました。
 何よりも人柄がいい。強さと明るさには頭が上がらない。
 沖縄は日本の中で差別され、沖縄の中でハーフは差別され、そのねじれの間を生き抜いてきて、差別がトラウマになって脱しきれない人がたくさんいるなかで、デニーはそうではない。デニーという名前はいじめられる。
デニーの父親は沖縄に来ていたアメリカ海兵隊員。でも今、どこで何をしている人なのかは明らかにされていない。玉城デニーも、父親の素性には触れない。
 「十人十色で10本の指のかたちも長さも違うのだから、気にする必要なんかない。容姿は皮一枚なんだよ。皮を脱いだら、みんな赤い血が流れていて、同じなんだよ」
 これは玉城デニーに母親が言ったコトバ。すごいですね、まったくそのとおりですよね。
 玉城デニーは、高校生のときにロックバンドを結成し、素人グループながら、米軍基地内でも演奏していたそうです。デニーは、ボーカル。ロックバンドの名前は、「ウィザード」。魔法使いですかね…。
 デニーは強い。母ひとり、子ひとりで、ハーフとして差別もされて、それが強さになっている。東京で生活して、苦労して、沖縄に戻ってきた。そして、誘われて音楽をやるようになった。
 ハーフであり、見かけで差別されたこともあったのに、よくぞいい性格のままで大人になれたものだ。そういう扱いを受けたからこそ、反発として性格の良さが磨かれたのかもしれない。
 そうかもしれない、きっとそうだろう。私もそう思います。弁護士になって、いろんな人と出会い、苦労したことが必ずしも人格を円満にするとは限らないという人を嫌になるほど見てきました。トゲトゲしさばかり、他人(ひと)を見下してばかりの「苦労人」がいます。そして、まともなことを言って、少しでも政権にタテつくと、「アカ」というレッテルを貼りつけて切り捨てるのです。その心の狭さに私は何度も呆れてしまいました。
玉城デニーには、2人の母がいる。産みの親(玉城ヨシ)は「おふくろ」で、育ての母(知花カツ)は「おっかあ」と呼んだ。この二人は、とても仲が良かったので、産みの親が育ての母にデニーをまかせたのだった。子どもって、愛情たっぷりに育てたら、産みの親かどうかは関係ないんですよね…。
沖縄の現実の一つを知ることのできる貴重な本だと思いました。
(2022年8月刊。税込1760円)

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