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カテゴリー: 社会

統一教会との闘い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山口 広、 川井 康雄 ほか 、 出版 旬報社
 統一協会(この本では、本当は統一協会だけど、世間に広く知られている統一教会とすると断っています)と長く闘ってきた全国300人あまりの弁護士による全国霊感商法対策弁護団(全国弁連)によって緊急出版された本です。さすがに、長年の取り組みを反映して、本文は170頁ほどですが、ずっしり詰まった内容です。
 私がもっとも驚いたのは、2012年に死亡した文鮮明が教祖様であって、今も崇拝の対象とばかり思っていたのですが、今の代表者である韓鶴子は夫の文鮮明をけなしているということです。これには開いた口がふさがらないほどショックでした。
 韓鶴子は、アメリカで三男・顕進派との訴訟において、文鮮明には「原罪」があった、この文鮮明の「原罪」は、「独生女」であり、無原罪である自分と結婚したことでなくなったと証言した。これまで、文鮮明こそ「再臨のメシア」であり、無原罪だとしてきた教えを根本から否定するもの。なので、これに反発して韓鶴子派から脱退した幹部もいるとのこと。いやあ、統一協会の創始者の文鮮明を、その妻だった韓鶴子が批判するだなんて…。内部亀裂の深刻さを物語っています。
 そして統一協会は家庭平和連合として、あたかも家庭を守るように装っていますが、肝心要の文鮮明と韓鶴子の14人もの子どもたちは、両親から放ったらかされ、子育てに親が関わらず、信者まかせだったため、早死したり、事故死したり、浪費が激しくて社会的に能力がなかったり、散々のようです。実の母親と息子が利権争いをして、アメリカで10年以上も裁判を続けているというのも異常すぎますよね。
 最近、統一協会の「二世問題」の深刻かつ悲惨な状況が明らかにされつつありますが、本当に育児放棄、家庭崩壊、借金まみれ、社会的にも孤立という状況に追いやられた「二世」たちは哀れとしか言いようがありません。そんな「二世」が5万人以上もいるというのですから、大変な社会問題として放置できないと思います。ところが、そんな統一協会の幹部たちが表向きでは家庭を大切にしようというのですから、まさしく憤飯ものです。
 文鮮明は、日本を「エバ国家」と呼びました。韓国は「アダム国家」です。エバはアダムを墜落させた。「エバ国家」である日本は、「アダム国家」である韓国に侍(はべ)らなければならない。「万物復帰」として、サタンある日本の財物はすべて神(統一協会)の側に戻さなければいけないとした。
 信者に対して、国民を欺して大金を奪うが、そのとき、小さな「悪」にこだわってはいけない、統一協会に尽くすという「善」をなさないことこそが、大罪だと統一協会は説きます。
 冷静な頭で考えたら、そんなバカな…というところですが、もうろうとした頭になって聞かされた、有りがたい説教に、ついつい盲従させられてしまいうのです。
 統一協会は、文鮮明という男のホラ話を信じ込んで、本当に神が地上につかわした再臨のメシアだと絶対視する信者たちで構成されている。とはいうものの、教会のナンバー2だった郭錠煥が安倍元首相の襲撃事件のあと記者会見して「事件に責任がないとは言えない」と言ったり、大打撃を受けているようです。
 そして、一般の信者も8割ほどは自分で脱会していると山口宏弁護士はみているそうです。脱会する気になったのは、文鮮明が本当はメシアなんかではなく、単なる「ハッタリかます欲ばりじいさん」だと分かったから、という話は、聞いていて本当にそのとおりだし、むなしい日々を過ごして哀れだと思いました。
 統一協会の勧誘は、正体を隠して勧誘し、深みにはまっているところで文鮮明を登場させて、もはや抜け出せない状況に追いこむという巧妙なもの。
 信者の8割は女性。青年(男性)のほうは、もっと綿密な教化システムがある。
 統一協会問題が深刻なのは、自民党を丸かかえしていること、そして、自民党は今なお、統一協会と決別しておらず、関係を温存したまま、世間の忘却を待っていることです。その典型が萩生田光一政調会長です。萩生田議員は落選していたとき、統一協会の「教会」に何度も行って、「一緒に日本を神の国にしましょう」と言っていました。こんな議員を政調会長にしたままの自民党、そして自公政権が日本をダメにしてしまうのは明らかなのではないでしょうか…。
 いずれ日本の国民は忘れるから、しばらく黙っておこうなんていう自民党の政治を、あなたは許せますか…。私は許しません。とてもタイムリーな本です。ぜひ、読んでみてください。
(2022年11月刊。税込1650円)

過労死

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 過労死弁護団全国連絡会議 、 出版 旬報社
 KAROSHIはカラオケと並んで世界に通用するコトバです。なんと不名誉なことでしょう。しかも、過労死の企業の典型といったら、なんと日本を支配する電通です。まったくひどいものです。
 日本の過労死問題について、世界の人々の理解を広げるため、過労死弁護団は、1991年に「KAROSHI」英語版を刊行した。それから30年あまりが経過した今日でも過労死はなくなっていない。なくなっていないどころか、ますます増えそうな状況にある。
 それというのも、日本ではあまりに労働組合が弱体化し、労組への加入率は激減したまま低迷し続けていて、ストライキは現代日本では死語も同然。
 他人(ひと)への迷惑をかけたらいけないから、自分の権利主張も控えるのが当然だという風潮、他人の足をひっぱるのが「常識」になっている。いやいや、昔は日本でもストライキがあり、職場占拠も珍しくなかったのです。それは江戸時代の百姓一揆の伝統を良い意味で承継していたのです。でも、今では…。
 過労死とは、働きすぎによる過労・ストレスが原因で死亡すること。この分野で第一人者である川人博弁護士は、過労死が現代日本では毎年1万件ほど発生していると推定している。厚労省が労災と認定する脳・心臓疾患や精神症疾患等の疾病(死亡を含む)は毎年800件で、そのうち死亡者は200件。これは氷山の一角。
 過労死弁護団連絡会議が設立したのは1988年6月のこと。最初の10年間は、死因のほとんどは脳卒中や心臓病死だった。
 1998年以降は自殺が急増した。そして、40代、50代の男性が多かった。
 1998年以降は20代、30代の労働者のケースが増え、女性のケースも増えている。
 過労死KAROUSHIは3K、Karaoke、Kaizenと並んで、世界的に有名な日本語。
 日本の労働組合は、欧米に比べると、活動力が弱い。そのうえ、組織率は17%だけ…。
 労働時間が1日に12~13時間、2週間連続勤務、月350時間労働、そして、年間4000時間をこえる過重労働。これでは病気にならないほうが不思議ですよね。
 電通に入った東大卒の高橋まつりさんは、上司からのパワハラもひどく、24歳になったばかりのクリスマスの朝に、会社の借り上げ寮から投身自殺。
 「今週10時間しか寝ていない。1日2時間の睡眠時間」なんて、信じられません。
 ところが上司は、こう言ったのです。
 「会議中に眠そうな顔をするのは、管理ができていない」
 「髪ボサボサ、目が充血したまま出社するな」
 「今の業務量で辛いのは、キャパ(能力)がなさすぎる」
 まつりさんは、こう書いています。
 「死にたいと思いながら、こんなにストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」
 将来ある若い女性をここまで追い込む会社に存在価値があるのか、疑ってしまいます。ところが、先日の東京オリンピックの汚職事件の主要な舞台もまた電通でした。
 そして、アベ首相を押し上げていたのも電通。どこか、狂っているとしか言いようのない会社が日本を表でも裏でも動かしているのです。ここまでくると、日本の社会がおかしくなっている責任の一端が電通にあると言って、言い過ぎではないと私は思います。
 労災認定された過労死は2002年の160人を最高に、近年は減少傾向にある。それでも2020年は67人もいた。過労自殺のほうは、1999年の11件が少し増え、過去13年間は63~99人で横ばい。2020年は81人。2020年の過労死と過労自殺者の合計148人は、業務上死亡802人の2割を占めている。
 長時間労働は、うつ病、不安障害、睡眠障害の原因になる。
 メンタルヘルス休職者比率の高い企業のほうが、時間の経過とともに企業の利益率は悪化していく。
 では、電通はいったいどうなのでしょうか。相変わらず、超々大儲けしているように外見上は見えますが…。川人博弁護士は、過労死は、日本社会の構造的な原因によるものだと断言しています。本当にそのとおりだと思います。
 労働組合なんて、あってないような存在と化している現代日本において、労働者が自分の生命・健康そして基本的な権利を守り、主張することがとても難しくなっています。でも、あきらめてはいけません。そのための手引書もたくさん出ています。ぜひ活用したい本です。
 長年の知己である川人博弁護士から、本書の英語版と一緒に贈呈していただきました。ありがとうございます(英語版のほうの活用は検討課題です)。
(2022年12月刊。税込1430円)

決戦!株主総会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 秋場 大輔 、 出版 文芸春秋
 ドキュメント、LIXIL死闘の8ヶ月。辞任させられたCEOが挑んだ勝目の薄い戦いは、類例を見ない大逆転劇を生んだ。これが、サブタイトルであり、オビの文章です。
 創業者の一族がいつまでも大企業を牛耳るというのは、まるで感心しませんが、天下のトヨタも相変わらず創業者一族がトップなのですから、嫌になります。こうやって、下々の庶民階級とは別レベルの上流階級が日本の支配層として君臨しているのでしょうね・・・。
 創業家出身者といっても、株式自体は3%しか持っていないのです。なのに、天下の大企業を支配できるというのは、どんなカラクリがあるのか・・・。それも知りたくて読みすすめました。
 3%しか持っていない少数株主であり、会社に顔を出すことも滅多になく、月の半分以上はシンガポールで過ごしているというのに、日本の大企業を牛耳って、自分の思うように動かすなんて、信じられません。シンガポールでは、骨董品を収集したり、プロの声楽家を呼んで発声練習したり、悠々自適の生活。こんな生活を送りながら、鋭敏な経営感覚を持ち続けるなんて、ありえないことだと、しがない弁護士でしかない私は思います。
 ところが、世の中には、現場の実務なんて経営者は知らなくてもいい、大きな方向性を打ち出すだけでいい、そう考える人がいるのです。驚きです。
株主総会をめぐる死闘において、その背景にうごめいているのが弁護士。この本では、森・濱田松本法律事務所ともう一つ、西村あさひ法律事務所が登場します。CEOの解任が正当な手続を踏んでなされたのかどうかを検証する委員会が立ち上げられ、そこにも弁護士が関与しています。問題は、その内容を会社として、どういう形で外部に公表するか、です。あまりに会社に不利なないようだったら、会社としては隠しておきたくなりますよね。
財界、経済界の人脈は大切なようです。麻布・開成・武蔵という「私立御三家」の人脈、そして東大の人脈も登場します。私のような田舎の名もない県立高校の出身だと、人脈なんか、何もないわけです。大企業に就職しなくて本当に良かったと思います。
 アクティビストとは「物言う株主」。臨時株主総会の開催要求を常に視野に入れている。
プロキシーファイトとは、委任状・争奪戦のこと。ここでも弁護士の助言が求められます。機関投資家は、アクティブ投資家と、パッシブ投資家に大別できる。
こんな有象無象と渡りあう仕事なんて、私は絶対やりたくありません。なんで、こんな職業に大勢の若い人が興味があるのでしょうか・・・。私には理解できません。地方で人間と向きあっていたほうが、やはり一番私の性にあっています。田舎で弁護士をやるって、本当に面白いのですよ・・・。
(2022年6月刊。税込1870円)

テレビ番組制作会社のリアリティ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 林 香里 ・ 四方 由美 ・ 北出 真紀恵 、 出版 大月書店
 私はリアルタイムでテレビを見ることはありませんし、ドラマを見ることもありません。ただし、「ダーウィンが来た」とかドキュメントものを録画で見ることはあります。若者のテレビ離れが叫ばれて久しいわけですが、この本はテレビ番組をつくるほうの現状と問題点をレポートしています。
 テレビ局にとって、視聴率はイコール収入。なぜなら、広告収入の多くを占めるスポットセールスは、視聴率によって料金が決まる仕組みだから。
 持株会社グループとしては、番組を1本完全パッケージで外注するのではなく、必要なスタッフを労働力として「購入」することで、経費削減を図る。そのとき、自社系列の制作子会社に製作委託を集中させ、そこから番組にスタッフを派遣させ、また外部に孫請けさせる方法も増えている。
 製作会社のプロデューサーは、責任者ではあるが、あくまで下請けでしかなく、最終的な決定権は放送局の側にあるため、「調整役」だ。
 中堅世代の空洞化。スピーディーな意思決定が必要になるため、末端の若手制作者たちは全体像を見渡す時間的余裕がないまま歯車となって働くことを強いられている。そこで、入職して数年で辞めていく者が後を絶たない。
 制作会社と放送局の関係は、最近は「植民地」状態になっている。対等になるどころか、完全に子会社になっている。
 放送局では、入館証を首から下げる紐(ひも)の色で放送局員と制作会社の人の区別がつく。「番組」チームとして一体になって働いているが、実は、見えないけれど、厳然として「壁」が存在している。
 ディレクターになることで「Dに上がる」として「昇格」という感覚が共有されている。ところが、その判断基準は不透明だ。
 自主制作率は、大阪で3割、名古屋で2割、その他の地方は1割というのが目安だ。
 放送局内部の製作現場の厳しさがひしひしと伝わってくる本でした。
(2022年8月刊。税込2860円)

自民党の統一教会汚染

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鈴木 エイト 、 出版 小学館
 読めば読むほど腹の立ってくる本です。もう、ホント、つくづく嫌になります。これが日本の政権党の実体かと思うと、恥ずかしいやら、悲しいやら、いえ、はっきり言って、吐き気をもよおします。衆院議長の細田博之は依然としてダンマリを決めこんでいますよね。萩生田光一・政調会長も同じです。逃げきりを許してはいけません。ひどすぎます。
 統一協会(この本は「教会」としていますが、協会が正しいのです)の教義は、日本人について、「人間的に考えれば、許すことのできない民族」と決めつけ、原爆投下も引きあいに出して悔い改めを迫っているのです。
 文鮮明(元教主。故人)は、儀式のなかで日本の天皇を自分の前でひざまづかせました。その妻であり、絶対君主のように君臨している韓鶴子現総裁は、安倍元首相について、自分たちに侍(はべ)るべき存在とみて、「教えてあげ、教育しなければならない」としていました。
 安倍元首相や桜井よしこなどは「美しい国・ニッポン」などと声高に叫んできた(いる)わけですが、日本は韓国に隷従すべき存在であるから、贖罪(しょくざい)するのは当然のこと、莫大な献金をしても、まだ足りないという統一協会の教義とはまったく相反するはずですが、お金と票、そして「反共」の点で醜い手を結んだのです。
 この本は、自民党議員が、いかに統一協会と手を結んでいるのかについて、突撃取材も繰り返しつつ明らかにしています。大変貴重な労作です。発表以来の3週間で4刷というのも当然ですし、もっともっと読まれるべき本です。
 たとえば、自民党の北村経夫参議院議員は統一協会の組織票8万票を上乗せして当選したこと、その裏では、アベやスガが画策したことが明らかにされています。
 統一協会が日本の政治家へ働きかけ、抱き込みを図っている目標は、真(まこと)の父母様(文鮮明と韓鶴子)の主権によって日本という国を自由に動かすこと。人類の使命は、真の父母様の民となること、というのです。実に恐ろしい教義です。
 菅元首相は、首相官邸に統一協会の幹部たちを招待していました。これまた、とんでもないことです。
 そして、安倍内閣のとき、統一協会と関係の深い議員たちが次々に内閣や自民党の要職に抜擢(ばってき)されたのです。これまた驚くべき事実です。これは、今の岸田政権でも同じことです。その典型が萩生田政調会長でしょう。
 統一協会は日本は過去に間違ったことをした、とんでもない民族なので、自分をかえりみることなく(すべてを捨ててでも)、全てを惜しみなく(韓国の人々に)与えなければならないと教えています。もちろん、受けとるのは韓国の民衆ではなく、文鮮明・韓鶴子とそのファミリーです。その利権をめぐって、文鮮明の死後に、母親と息子たちとのあいだで醜い争いがあり、アメリカでは裁判にまでなったのでした。なにしろ、日本から韓国に送金された金額は毎年300億円以上(何十年と続いています)なのです。
 体当たり取材も重ねて自民党と統一協会との深い関係、その闇を明らかにしている大変貴重な労作です。300頁ほどの本ですが、怒りをおさえながら、1時間あまりで読みあげました。
(2022年10月刊。税込1760円)
 博多駅で映画「ザリガニの鳴くところ」をみてきました。原作はアメリカで2019年、2020年に一番売れた小説です。全世界で1500万部突破したというのですから、すごいものです。
 私は昨年読んで、まさしく圧倒されました。なので、もちろんこのコーナーでも紹介しましたし、本好きの人に勧め、感謝されました。
 ともかく自然描写がすごいのです。森の中、沼地で生活する、しかも家族がどんどんいなくなり、少女が一人で生きていくのです。
 ところが、世の中には蔑視するだけではなく、親切な人もいて、やがて学校に行かなくても読み書きが出来るようになり、ついには恋人までもつくれました。しかし、それが裏切られてしまい、ついに殺人の疑いで起訴される…。
 いやあ、原作ほどの感銘はありませんでしたが、すばらしい映像です。必見です。そして原作を読むことを絶対おすすめします。

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