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カテゴリー: 社会

半導体戦争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 クリス・ミラー 、 出版 ダイヤモンド社
 知らなかったこととはいえ、大変なショックを受けました。
 中国のコンピュータの大半は、機能するのにアメリカ製のチップが不可欠。中国は2000年代そして2010年代の大半の時期を通じて、半導体の輸入に石油以上の資金を費やした。半導体の設計に使われるソフトウェアツールはアメリカ企業が独占していて、中国のシェアは1%未満。
 IPコアの分野では、中国の市場シェアは2%で、大半をアメリカとイギリスが占めている。
 中国は世界のシリコン・ウェハーその他の半導体材料の4%しか供給していない。
 中国が占める半導体製造装置の市場シェアは1%、半導体設計は5%、半導体製造は7%。しかも、その製造能力に、付加価値の高い最先端の技術は一切ふくまれていない。
 半導体のサプライ・チェーン全体にわたって、半導体設計、装置、製造等の工程について、中国の市場シェアは6%で、アメリカ39%、韓国16%、台湾12%に遠く及ばない。
 ファーウェイの隆盛は、同社が市場シェアを獲得し、自社の機器を世界の通信網に組み込むにつれ、中国国家の利益になってきた。
 ファーウェイが中国国家によって目的をもってつくられたという説を裏づける強力な証拠はない。しかし、中国指導部がファーウェイの世界的な拡大を支援してきたのは間違いない。世界の有名な人工知能(AI)研究者の国籍をみると、中国29%、アメリカ20%、ヨーロッパ18%となっている。しかし、結局のところアメリカで働くことになる専門家はアメリカが59%も占めている。
 台湾がもつ半導体製造能力を他国で再現するのには長い年月がかかる。それまでは、全世界は引き続き台湾に依存することになる。したがって、もし戦争によって台湾のTSMCの工場が破壊されたら、ひどいことになる。つまり、世界経済や、アジア台湾海峡を縦横無尽に交差するサプライ・チェーンは、このような不安定な平和を大前提としている。アップル、ファーウェイ、TSMCなど、台湾海峡の両側に投資してきた企業は、暗黙のうちに平和が続くことに賭(か)けている。
 台湾は世界のメモリ・チップの11%、世界のロジック・チップの37%を製造している。
 コンピュータ、ケータイ、データ、センターその他の電子機器の大半は、こうしたチップなしでは動作しないので、台湾の工場が稼働を停止したら、計算能力は37%も減少する。これが世界経済に及ぼす影響は甚大だ。
 スマートフォン向けプロセッサの大半は台湾製、一般的なケータイに搭載されている10枚以上のチップも、多くは台湾製だ。台湾有事による経済損失は、数兆ドル規模になるだろう。計算能力の年間生産の37%が失われる。これは、コロナによるパンデミックや、経済に壊滅的な影響を及ぼしたロックダウンより、ずっと甚大な損失が生じる可能性がある。しかも、失われた半導体製造能力の再建には、少なくとも5年はかかる。
 アメリカの国防総省(ペンタゴン)には、10億ドルの潜水艦や150億ドルの空母専用の造船所があるが、使用される半導体の多くは台湾を主とした民間業者から購入している。最先端の半導体を設計するだけでもコストは1億ドルをこえるので、国防総省にとっては手に余る状態になりつつある。
最先端のロジック・チップの製造工場を建設するには、空母の2倍の費用がかかる。そこまでしても、数年たったら時代遅れになってしまう。
500頁をこす大作ですが、いま心ある人はぜひ読むべきです。これが世界の現実だと思いながらも、いつのまに台湾のー私企業が世界の根本を牛耳るようになったのか、その理由と事情について、ぜひ明らかにしてほしいと思います。
(2023年4月刊。2700円+税)

小川さゆり、宗教2世

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小川 さゆり 、 出版 小学館
 今も、たくさんの宗教2世の子どもたち(とっくに大人になっている人も)が苦しみ、泣いているのだろうと、この本を読みながらひしひしと実感しました。著者は統一協会2世です。父は教会長をつとめ、母も熱心な信者です(今でも、二人とも信者のようです)。
 両親は合同結婚式で結婚しています。1988年10月に韓国のメッコールの工場での合同結婚式です。メッコールは統一協会系の企業・一和が製造・販売する炭酸飲料です。私の事務所にも、それを知ってかどうか知りませんが、贈答品として持ってきてくれた人がいました。あまりうまくはないコーラです。
協会長までつとめた父は、大学生のころ原理研究会に誘われ、アメリカに渡って統一神学校に留学したエリートのようですが、教会長の座はおろされたようです。著者が大好きだった母は、家のなかと外の統一協会でのニコニコ顔の落差が激しかったようです。
 家には、祈禱室があり、文鮮明夫婦の写真が飾ってありました。母は6人の子を産み、著者の下の3人の妹は養子に出されています。経済的には楽ではなかったようですが、それは統一協会に献金した結果でもなさそうです。
「神の子」として育てられた著者は統一協会の試験(原理試験)を受け、高校3年生のときには父の指導も受けて原理講義大会に出場し、全国2位に選ばれました。
 大学は、韓国にある統一教会系の鮮文(ソンムン)大学に入ることを希望していました(入学はしていません)。
 父も母も、統一協会に行くと、いつもニコニコしていて、「いい人」であり続ける。しかし、家では、まったく違う顔を見せる。二人の親が言っていることとやっていることが違いすぎるのに、著者はついていけないと思い、ついに脱会します。自分の家族を幸せにしようとしないのに、統一協会では家庭の完成や、世界の幸せと統合を祈る。あまりにかけ離れた姿に、いよいよついていけないと思ったのです。
 あんなに噓つきで、家族に対して逃げてきた父を許せない。
 こんなにボロボロになった娘を気にも留めず、統一協会に行ったらニコニコといい人を演じている母が許せなかった。
 著者は、日本外国特派員協会で記者会見しました。仮名ながら、顔を出してのことです。ところが、記者会見の途中に、統一協会の代理人弁護士から直ちに中止しろというFAXが届きました。そして、そこには著者の両親のサインもあったのです。
宗教2世をこんなに苦しめる宗教って、いったい何なんだろうと、つくづく思いました。自分と家族の幸せを願って入信したはずなのに、それは主観的な満足だけで、客観的には子どもたちを肉体的にも精神的にも苦しめているという現実があるわけです。
この本とあわせて、ノンフィクションコミック「『神様』のいる家で育ちました」(文芸春秋)も読みました。マンガですが、とてもシリアスな内容で、笑える話ではありません。統一協会、エホバの証人、幸福の科学、創価学会、いろいろな「宗教」の2世たちの苦悩がとても分かりやすく描かれています。
 心の迷いを救ってくれるはずの「宗教」が、ますます苦悩を深めてしまう現実があることを知り、空恐しくなりました。
(2023年3月刊。1500円+税)

憲法改正と戦争・52の論点

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 清水 雅彦 、 出版 高文研
 今や「戦争前夜」になりつつありますよね。岸田首相は広島でG7の会合を開いて司会席にすわっていながら、核兵器禁止条約を結び核廃絶を具体的にすすめようとは全然訴えませんでした。アメリカの核は良くて、ロシアの核は悪いなんて言っても、誰もまともにとりあいません。
 ところが、広島に集まって何か宣言を出したというので、その中味を抜きにして外交上の成果を上げたとマスコミが持ち上げるので、岸田内閣の支持率がぐーんと上がったというのです。騙されやすい日本国民の悪いところが見えて、悲しくなります。
 この本は行動する憲法学者として著名な著者が、Q&A方式で憲法改正の問題点を具体的かつ簡潔に指摘しています。
 朝鮮(著者は北朝鮮とは呼びません。韓国と朝鮮と呼んでいます)と中国と日本にとって脅威だと考えるのは、「タカ派というよりバカ派」だと軍事ジャーナリスト(田岡俊次)が言っているそうです。朝鮮がミサイル発射したのは、アメリカを交渉のテーブルに着かせるためのものであって、日本を目標としたものではない、本当に、そうなんです。日本に陸上イージス基地を置くという計画はアメリカ本土とアメリカ軍基地を守るためのものでした。
 敵基地攻撃能力(自民党は反撃能力と言い換えて、ごまかそうとしています)は先制攻撃そのものになります。実際、朝鮮は移動式ミサイル発射機を200機もっていて、攻撃すれば必ず反撃されます。核兵器による報復だってありえます。
 ロシアのウクライナ侵攻を見て、やはり日本も軍備を持てと短絡的に叫ぶ(考える)人が増えているようです。果たして、そうでしょうか。日本が軍事力を強化しても、中国にはかないっこありません。人口が10倍以上もあるのですから、中国と「過度の」軍拡競争に陥るだけなんですよ…。それでは国際平和は守れません。
 災害などの緊急事態のときに備える必要があるといいますが、ナチス・ドイツは、国会の多数を占めると、今や非常事態になっていると一方的に宣言して、すべて政府が決め、国会を無視しました。それと同じなんです。有害なだけです。歴史にきちんと学ぶ必要があります。
 防衛費は青天井で増大していくのに、文教・福祉予算は伸びないどころか削減という自民・公明の岸田政権は間違っています。
 分かりやすく、元気の出てくる憲法改正論点集でした。ぜひ、ご一読ください。
(2023年3月刊。1280円+税)

消された水汚染

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 諸永 裕司 、 出版 平凡社新書
 ピーフォス、PFOS、ペルフルオロオクタンスルホン酸。航空機火災用の泡消火剤に入っている。沖縄の嘉手納基地、そして東京の横田基地でアメリカ軍が大量に使用してきた。このPFOSによる水汚染が基地周辺の住民の健康を損なっている。しかし、アメリカ軍は実態を明らかにしないし、日本政府も日米地位協定の壁もあって被害解明にまったくの及び腰。いやはや怒りを通りこして涙が出てきそうなほど、情けない状況です。
 日本国民が、なんとなく、日本にアメリカ軍がいるおかげで日本は守られている、安全だという、何の根拠もない幻想に浸っているなかで、実際には日本国民の生命・健康が現実に脅かされているのです。
 横田基地のある多摩地域の井戸がPFOS汚染によって使用停止が命じられているなんて、知りませんでした。水汚染は深刻な状況にあります。
 横田基地の周辺にある、立川市、国立市、国分寺市、府中市では井戸も浄水所もPFOSの汚染はきわめて深刻。多摩地区の地下水は、西から東に向かってゆっくり流れている。1年で130メートル、1日36センチという動きだ。横田基地では、2012年に泡消火剤3000リットルが漏出した。
 日米地位協定によって、アメリカの同意なしに日本が基地内に立入調査することはできない。日本は泣き寝入りするしかない。
 ところが、アメリカが基地を置いている国は、どこも、そんな治外法権を許していない。ドイツもイタリアも、イギリスもベルギーだって、アメリカ軍基地への立入調査が認められている。国内法がアメリカ軍に適用されないというのは日本だけ。まさしく日本はアメリカの従属国であって、独立国ではないのです。多くの日本人は自覚していませんが…。
しかも、アメリカ軍とその兵士が日本人に損害を与えたとき、賠償金はアメリカが75%負担することになっているのに、現実には日本政府が日本人の納めた税金で全額負担し、アメリカは1円も負担していない。まさしく、開いた口がふさがらないとは、このことです。
 これほどまでアメリカに馬鹿にされていながら、多くの日本人はアメリカを神様のように考えているのですから、まさしく植民地根性そのものとしか言いようがありません。本当に残念です。
 妊婦のPFOS血中濃度が高いと、出生後の低体重をもたらし、アレルギーや感染症のリスクが高まり、免疫機能や性ホルモンにも影響する。世代をこえて汚染が伝わっていくのが、PFOSの怖いところ。
しっかり現実に目を向け、声を上げないといけない。つくづくそう思いました。自分自身というより、子どもや孫が健康に育つ環境を保障してやるのは私たち大人の義務ですよね。
(2022年1月刊。980円+税)

巨大おけを絶やすな!

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 竹内 早希子 、 出版 岩波ジュニア新書
 しょうゆやみそは、大きなホーロー製のタンクでつくられているとばかり思っていましたが、なかには昔ながらの木桶(きおけ)でつくっている業者もいるのですね。ところが、木桶って100年もつというのですよ。それじゃあ、木桶をつくる業者が営業として成り立つはずはありません。そこをどうやって乗りこえるのかも本書のテーマのひとつです。
 瀬戸内海の島、小豆島(しょうどしま)。映画『二十四の瞳』の舞台となり、オリーブでも有名ですよね。私も一度だけ行ったことがあります。そこで大きな木桶がつくられているのです。木桶は直径2.3メートル、高さ42.3メートル、30石(5400リットル)入りです。
 木桶の中で2年かけてむろみをつくります。木桶や蔵にすみついている酵母や乳酸菌などたくさんの菌の働きによって、蒸した大豆と砕いた小麦でつくった醤油こうじを塩水と一緒に仕込んでもろみをつくるのです。
 2年かけてつくりあげたもろみを、醤油さんが買っていき、その店独特の醤油を完成させるのです。
冬に仕込んだもろみは、はじめは原料の大豆や小麦そのままのベージュ色。春先に気温が上がってくると微生物が活発に働いて発酵しはじめる。このころのもろみは、リンゴやバナナのような香りを放つ。そして、醤油を使って仕込んだもろみは、チョコレートのような香りを放つ。
 醤油を分析すると、300種以上の香り成分が入っている。
 今、日本でつくられている醤油のうち木桶でつくられているのは、わずか1%のみ。99%は、ステンレス、FRP、コンクリート、キーローなどのタンクでつくられている。
 木桶の板は多孔質で、目に見えない小さな穴がたくさんあいていて、その小さな穴に「蔵つき」と言われる蔵独自の微生物がたくさんすみついている。
 木桶以外の容器で醤油をつくるところでは、容器に微生物がすみつけないため、発酵にかかわる微生物を買って、加える。醤油には塩分があり、塩の効果で木桶は腐りにくく、塩分が固まって隙間を埋めるので、漏れにくいため、木桶は100年も使うことができる。
 木桶で使う杉は、樹齢100年以上のもの。
 桶を締める「たが」は、孟宗竹ではなく、フシ(節)が少なく割りやすい真竹を使う。15メートル以上の長さが必要。この真竹の秋から冬にかけて休眠する時期、吸い上げる水分の少ないときに、伐(き)る。
一つの「たが」を編むには、削った竹が4本必要。1本の桶に7本の「たが」が必要なので、30本、削った竹を準備する。
杉が世界で日本にしかない固有種だというのを初めて知りました。うひゃあ・・・、です。伐り倒された杉は、葉をつけたまま、頭を山の上に向けて半年ほど寝かされる。「葉枯らし」といって、葉を通して水分やアクが抜けていく。
写真とともに桶づくりが紹介されます。とても大変な作業だということが分かりましたし、欠かせない仕事だと実感もしました。
(2023年1月刊。860円+税)

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